カティア・ブニアティシヴィリ Khatia Buniatishvili 「LABYRINTH」
タイトルどうりの異常ともいえる静から迷宮へと誘う演奏
・・・・久々の名盤である
<Classic, classical music >
Khatia Buniatishvili 「LABYRINTH」
Sony Classical / Germ / 19439795772 / 2020
Khatia buniatishvili(p)
Gvantsa Buniatishvili(p track 5,13)
arr. Khatia Buniatishvili track 1,5,8,11
Recording: Paris, Philharmonie, La Grande Salle Pierre Boulez,
June 16–20, 2020
どちらかという奔放な解釈でありながら繊細な表現に秀でていることで知られる今や注目のピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリの新作。なんとクラシックから映画音楽と現代音楽にまでの幅広い分野の曲がセレクトされていて多彩そのもの作品集。(彼女については、詳細は既にここで取上げているので、そちらを参照)
そしてタイトルが「Labyrinth 迷宮」ですから、これまた聴き手を惑わす世界かとおそるおそる聴くことになった。しかしアルバム自身は彼女のお気に入り曲を集めたものであり、多くの人に聴いてもらうべく多彩であり気軽に聴ける世界と銘打っている。
彼女の言う「迷宮」とは、「運命・宿命と創造」、「難局と放免(悪魔祓い)」ウンヌンが・・・これを聴くことによって理解できるかどうか。
(Tracklist)
1.Ennio Morricone:Deborah’s Theme( from the film Once Upon a Time in America
2.Erik Satie:Gnopédie No. 1
3.Frédéric Copin:Prélude in E minor op. 28/4
4.György Ligeti: Arc-en-ciel No. 5 from Études pour piano – Book I
5.Johann Sebastian Bach:Badinerie(from Orchestral Suite No. 2 in B minor BWV 1067 for piano four hands with Gvantsa Buniatishvili
6 Johann Sebastian Bach:Air on the G String 5:19 from Orchestral Suite (Overture) No. 3 in D major BWV 1068
7.Sergi Rahmaninov(arr.Alan Richardson):Vocalise op. 34/14
8.Serge Gainsbourg:La Javanaise
9.Heitor Villa-Lobos:Valsa da dor
10.François Couperin:Les Barricades mystérieuses from Pièces de clavecin – Book II
11.Antonio Vivaldi/Johann Sebastian Bach:Sicilienne Largo from Bach’s Organ Concerto in D minor BWV 596 based on Vivaldi’s Concerto in D minor RV 565
12.Johannes Brahms:Intermezzo in A major op. 118/2
13:Arvo Pärtt:Pari intervallo for piano four hands
14.Phlip Glass(arr. Michael Riesman & Nico Muhly ):I’m Going to Make a Cake from the film The Hours
15.Domenico Scarlatti:Sonata in D minor K 32
16.Franz List:Consolation (Pensée poétique) in D-flat major S 172/3
17.John Cage:4:33
18. Alessandro Marcello/Johann Sebastian Bach:Adagio from Bach’s Keyboard Concerto in D minor BWV 974 based on Marcello’s Oboe Concerto in D minor
とにかくとにかく上のように選曲がユニーク。クープラン、スカルラッティ、バッハなどのバロック期の作品からサティが登場し、モリコーネ、ペルト、ゲンスブールをはじめジョン・ケージまでの近現代作品まで網羅し、時代を超えて多彩な曲が登場してくる。
M1."Deborah’s Theme"はモリコーネだが、暗く沈んで静かに物思いの世界で始まり。M2."Gnopédie No. 1"サティは静かな世界に心安まる。そしてM3."Prélude in E minor op. 28/4"ショパンの超ゆったりの演奏で美しい世界にと、完全にこのアルバムの世界に弾き込まれてしまう。
M4." Arc-en-ciel No. 5 from Études pour piano – Book "になって初めて強打鍵盤音が出現。
バッハのM5."Badinerie", M6."Air on the G String"はほっとする安堵感あり、現実の世界に呼び戻される。M7."Vocalise op. 34/14"ラフマニノフは抒情性たっぷり。
M9."Valsa da dor"は強弱のメリハリが素晴らしく、彼女の特徴を聴ける。弱の深い情感に心が惹かれる。
M11."Sicilienne Largo from Bach’s Organ Concerto in D minor BWV 596"ビヴァルディ・バッハも美しい。M12."Intermezzo in A major op. 118/2"ブラームスは納得の美。
M13."Pari intervallo for piano four hands"の「断続する平行」は、姉のGvantsa B.とのフォー・ハンド演奏。とにかく深遠に奥深さは出色。
M14."I’m Going to Make a Cake from the film The Hours"の展開はまさに映画を見る世界。
M15."Sonata in D minor K 32"スカルラッティのソナタ、M16."Consolation"リストの「慰め」は、このアルバムを聴いてよかったと心に染み入る名曲・名演奏。
M17.はあの有名なジョン・ケージの"4分33秒"、全ての楽器の休章。これが登場するとは思わなかった。ここではかすかに聞こえる小鳥のさえずり。そして終曲M18."Adagio from Bach’s Keyboard Concerto in D minor BWV 974 "は締めくくりに相応しい美しいバッハのアダージョ。
とにかく、久しぶりに素晴らしいアルバムを聴いたという気持ちで聴き終えることが出来る。カティア・ブニアティシヴィリも自分の好きな曲を演奏したと言うだけあって、情感の入れ方も素晴らしい。彼女の色に染められて、曲によってこんな哀感があったのかとも新しい発見がある。彼女のこうした面は初めてと言うことではないが、しかしこの世界は彼女がこれからも大切にしていく世界であろうと思うし、是非そうあって欲しいと願うのである。
(評価)
□ 選曲・演奏 95/100
□ 録音 88/100
(視聴)
最近のコメント