グレッチェン・パーラト

2021年5月 2日 (日)

グレッチェン・パーラト Gretchen Parlato 「FLOR」

久々の登場は意外性たっぷり、家族愛に満ち満ちて

<Jazz>

Gretchen Parlato 「FLOR」
Edition Records / EU / EDN1170 / 2021

81bhdjmzn2l850

グレッチェン・パーラト Gretchen Parlato (voice)
マルセル・カマルゴ Marcel Camargo (g,cavaco,moog,rhodes,add engineering,voice)
アルティョム・マヌキアン Artyom Manukyan (cello,voice)
レオ・コスタ Léo Costa (ds,perc,moog,rhodes, add engineering, voice)

  グレッチェン・パーラトとにかく久々です。スタジオ・アルバム『the lost and found』(2011)から10年なんですね、私は実はCDとDVDのカップルのライブ・アルバム『live in nyc』(2013)から入ったので8年ぶりと言うことだ。この二枚で彼女はジャズ界の評価を勝ち取っている。その後は、よく知らなかったが、息子の誕生を契機に、家庭生活を優先というグレッチェン・パーラトだったようだ。しかしここに待望の最新作をリリース。彼女は1976年ロサンゼルス生れの45歳。
 いずれにしても、彼女は異色のヴォーカリスト、ミステリアスな歌い回し、スキャットを入れての曲の仕上げなどがまさに個性的。そして今回それを支えるメンバーは2018年から『New Brazilian-inspired project』として始動しているという、ブラジル人ギタリスト&カヴァキーニョ奏者のマルセル・カマルゴ、アルメニアのチェリストのアルティョム・マヌキアン、パーカッション奏者レオ・コスタである。
 さらに曲によって、ブラジル音楽の巨匠アイアート・モレイラ(vo,perc)、ジェラルド・クレイトン(p, rhodes)、マーク・ジュリアナ(ds)他も参加している。

 

B_w1sicmvzaxpliiw2njbdlfsibwf4il0swyj3zs (Tracklist)

1.É Preciso Perdoar 5.56
2.Sweet Love (featuring Gerald Clayton)4.11
3.Magnus (featuring Magnus, Thaddeus, and Ashley Thompson) 4.10
4.Rosa 4.32
5.What Does a Lion Say? 5.55
6.Roy Allan (featuring Airto Moreira) 4.11
7.Wonderful (featuring Gerald Clayton and Mark Guiliana) 6.02
8.Cello Suite No. 1, BWV 1007 : Minuet I / II 5.48
9.No Plan (featuring Mark Guiliana) 5.57

 

  選曲も多彩ですね、ブラジルの曲やバッハが出たりデヴット・ボウイなどなどで驚くが、なんとグッッチェン・パーラトがアレンジし歌詞を作って、彼女の信念である彼女自身の世界になってゆくからお見事である。

 冒頭のM1."É Preciso Perdoar" ブラジル作家の曲。チェロの独特な世界にマルセル・カマルゴのギターが描くバックがブラジリアン・ムードで流れ、静かに沈み込みながらも抑揚を描くグレッチェンのヴォーカルだ。
 M2."Sweet Love" はアニタ・ベイカーの曲。フュージンっぽい演奏と展開、ヴォーカルも協調して流れてゆく。
 M3."Magnus" 彼女のオリジナル曲。彼女の独特のスキャットで始まり、展開はブラジルムードの軽快な展開。昔の彼女を思い出す。
 M4."Rosa" チェロのソロで始まり、彼女のヴォーカルもクラシック的世界に美しいスキャットで、これは注目曲。
 M5."What Does a Lion Say? " ここでもチェロと協調して流れるヴォーカルは美しい。
 M6.".Roy Allan" 合唱のパターンで流れるが、パーカッションなどがリズムを刻み完全にブラジル・ムード。

G-p-1

 
   M7."Wonderful" これが注目曲ですね、グレッチェンのオリジナル。この明るさもこのアルバムを印象づける。子供の歌声を上手く取り入れて面白く、"I know in woderful"の叫びと歌が印象的。まさに家族礼賛の世界。
 M8."Cello Suite No. 1, BWV 1007 : Minuet I / II" 得意のスキャット。バッハがグレッチェン節に変化。どこか聴くモノに真摯な気持ちを描いてゆく。
 M9."No Plan " あのデヴィット・ボウイの最後のスタジオ録音曲から、人生を謳歌し、最大限に生きる必要性を歌い上げる。彼女の母親としての生き様から世界をここに見ている美しさと神秘性と。 

 私が過去のアルバムから描いた世界とは全くの別物の、意外性たっぷりのグレッチェンの母親としての人生賛歌のアルバムだ。「私はついに芸術的創造性と母性の育成のバランスを見つけることができました」と、彼女が言う通りの世界であった。バックの演奏陣は決して大所帯で無いが、その基礎にあるブラジル・テイストを十分に描いたり、一方人間賛歌の壮大な世界を描いたり、そこはかなりハイレベルの技量をも感ずるところである。
 とにかく花で包まれたアルバム・デザインと共に聴くのが良いアルバムだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・作詞・歌  88/100
□ 録音          85/100

(視聴)

*

 

 

| | コメント (2)

2014年2月14日 (金)

グレッチェン・パーラトGretchen Parlato 「live in nyc」&「the lost and found」

ニューヨーク発の新時代のヴォーカル?

 

<Jazz> gretchen parlato 「ive in nyc」
              ObliqSound Production / USA / CD+DVD / OSD-CD-114 / 2013

 

Liveinnyc2 <CD>

 

1. Butterfly (Herbie Hancock)*
2. All That I Can Say (Lauryn Hill)
3. Alo Alo (Paulinho Da Viola)*
4. Withing Me (Francis Jacob)
5. Holding Back The Years(Mick Hucknall)
6. Juju (Wayne Shorter)
7. Weak (Brian Alexander Morgan)*
8. On The Other Side (Francis Jacob)
9. Better Than (Parlato)*

(*印 DVD(Live映像))

 

taylor eigsti, alan hampton, mark guiliana
tracks 1, 3, 4, 6.

 

taylor eigsti, burniss earl travis II, kendrick scott
tracks 2, 7, 8, 9.

 

 Hancockの”Butterfly”のから始まる8曲のカヴァー曲と自己の一曲の最新ライブ・アルバム。それが控えめというか、囁きというか、熱唱タイプとは全く異なる変幻自在な不思議なヴォーカル。それを誘導するかのドラムス、そして洒落たピアノと、とにかく格好いいコンテンポラリー・ジャズ。・・・・・こんなアルバム(4曲のDVD映像付き)が友人から届いた。このグレッチェン・パラートという女性のヴォーカルは私にとっては初物。さっそく調べてみると、2005年からの彼女のリーダー作のDiscographyは下のようである。これが4枚目。

 

Live in NYC (Obliqsound, 2013)    
The Lost and Found (Obliqsound, 2011)
In a Dream (Obliqsound, 2009)
Gretchen Parlato (self-released, 2005)

 

・・・・・と言うことで、これはほっとけないと、スタジオ・アルバムの近作(2011年)を早速入手、取り敢えず聴くことにしたのである(↓)。

 

<Jazz> gretchen parlato 「the lost and found」
              ObliqSound / USA / CD / OSD-CD 113 / 2011
              Recorded on August 19-21, 2010 at Sear Sound, NYC

 

Thelostandfound

 

 
Gretchen Parlato (vo,per)
Taylor Eigsti (p,fender rhodes,hammomd B3)
Derrick Hodge (b,el-b)
Kendrick Scott (ds)

 

Dayna Stephens (ts) #4,14
Alan Hampton (vo,g) #5
Robert Glasper (fender rhodes) #10

 

  彼女のヴォーカル・アルバムではあるが、バックのピアノ・トリオを主とした演奏陣との融合が素晴らしく、ヴォーカルも一つの楽器のようでカルテットと言っても良い世界を構築している。
 彼女のウィスパー・ヴォイスといってよい歌唱法は、セクシー・アッピールを目的とした部類で無く、とにかくお洒落というところに尽きる。ボッサを歌い込んできたと言われているところは、洗練されたスピリチュアルな面にも生きている。

 

Gretchenparlato2

 

  Tracklistは下記のごとく15曲。このアルバムでは彼女の自作曲(*印)が面白く出色、なかなかミュージシャンとしての技能も並々ならぬといったところか。それと共にStephensのアルバム・タイトル曲や、彼女の師匠であるWayne Shorterの曲(”Juju”)なども登場させて、アレンジ面も一級品。

 

1. Holding Back the Years
2. Winter Wind*
3. How We Love*
4. Juju
5. Still
6. Better Than *
7. Alo, Alo
8. Circling*
9. Henya
10. In A Dream ( Remix )
11. All That I Can Say
12. Me and You
13. Blue In Green
14. The Lost and Found
15. Without A Sound

 

 彼女はNYで活躍している。丁度10年前の2004年にThelonious Monk Competition ヴォーカル部門で優勝して名乗りを上げたとか。とにかく囁き系とはいえテクニカルな唄は一級品。そしてこのコンテンポラリーな仕上げは、彼女自身のアレンジが生んだ方向なのか、はたまた今時のコンテンポラリー・ジャズの注目株ドラマーのKendrick Scottのリードによる流れからのものか、いずれにしてもNY発の新時代ジャズだ。
 若手とは言えTaylor Eigstiのピアノも彼女のヴォーカルとうまく絡んでお見事。彼女の曲”Better Than ”におけるピアノ・プレイは、私好みで聴きどころ。
 又Da Vioraの”Alo Alo”などでは、ちょっとやそっとのヴォーカリストでないところを見せつける。
 とにかく新時代を開いて行くジャズ・ヴォーカル・アルバムとして喝采を浴びせたい。いやはやNYもやっぱり一派値なら無いところがある事を知らしめてくれた。

(視聴)

 

 

| | コメント (5) | トラックバック (2)

その他のカテゴリー

Audio CLASSIC Progressive ROCK アイオナ アガ・ザリヤン アダム・バルディヒ アデル アメリカン・ジャズ アヤ アレクシス・コール アレッサンドロ・ガラティ アンジェイ・ワイダ アンナ・グレタ アンナ・マリア・ヨペク アンヌ・デュクロ アヴィシャイ・コーエン アーロン・パークス イエス イタリアン・プログレッシブ・ロック イメルダ・メイ イモージェン・ヒープ イリアーヌ・イリアス イーデン・アトウッド ウィズイン・テンプテーション ウォルター・ラング エスビョルン・スヴェンソン エスペン・バルグ エミリー・クレア・バーロウ エミール・ブランドックヴィスト エレン・アンデション エンリコ・ピエラヌンツィ エヴァ・キャシディ オルガ・コンコヴァ カティア・ブニアティシヴィリ カレン・ソウサ ガブレリア・アンダース キアラ・パンカルディ キャメル キャロル・ウェルスマン キング・クリムゾン キース・ジャレット クィダム クレア・マーティン グレッチェン・パーラト ケイテイ・メルア ケイト・リード ケティル・ビヨルンスタ コニー・フランシス コリン・バロン ゴンザロ・ルバルカバ サスキア・ブルーイン サラ・ブライトマン サラ・マクラクラン サラ・マッケンジー サンタナ サン・ビービー・トリオ ザーズ シェリル・ベンティーン シゼル・ストーム シネイド・オコナー シモーネ・コップマイヤー シャイ・マエストロ ショスタコーヴィチ シーネ・エイ ジェフ・ベック ジャック・ルーシェ ジョバンニ・グイディ ジョバンニ・ミラバッシ ジョルジュ・パッチンスキー スザンヌ・アビュール スティーヴン・ウィルソン スティーヴ・ドブロゴス ステイシー・ケント ステファン・オリヴァ スノーウィ・ホワイト スーザン・トボックマン セバスチャン・ザワツキ セリア セルジオ・メンデス ターヤ・トゥルネン ダイアナ・クラール ダイアナ・パントン ダイアン・ハブカ チャンピアン・フルトン チャーリー・ヘイデン ティエリー・ラング ティングヴァル・トリオ ディナ・ディローズ デニース・ドナテッリ デヴィット・ギルモア デヴィル・ドール トルド・グスタフセン ドリーム・シアター ナイトウィッシュ ニコレッタ・セーケ ニッキ・パロット ノーサウンド ハービー・ハンコック バンクシア・トリオ パスカル・ラボーレ パトリシア・バーバー ヒラリー・コール ビル・エヴァンス ビル・ギャロザース ピアノ・トリオ ピンク・フロイド フェイツ・ウォーニング フランチェスカ・タンドイ フレッド・ハーシュ ブッゲ・ヴェッセルトフト ブラッド・メルドー ヘイリー・ロレン ヘルゲ・リエン ペレス・プラード ホリー・コール ボボ・ステンソン ポーキュパイン・ツリー ポーランド・プログレッシブ・ロック ポール・コゾフ マッツ・アイレットセン マツシモ・ファラオ マティアス・アルゴットソン・トリオ マデリン・ペルー マリリオン マルチン・ボシレフスキ マーラー ミケーレ・ディ・トロ ミシェル・ビスチェリア メコン・デルタ メッテ・ジュール メラニー・デ・ビアシオ メロディ・ガルドー モニカ・ボーフォース ユーロピアン・ジャズ ヨアヒム・キューン ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ ヨーナ・トイヴァネン ラドカ・トネフ ラーシュ・ダニエルソン ラーシュ・ヤンソン リサ・ヒルトン リズ・ライト リッチー・バイラーク リリ・ヘイデン リン・エリエイル リン・スタンリー リヴァーサイド リーヴズ・アイズ ルーマー レシェック・モジュジェル ロジャー・ウォーターズ ロバート・ラカトシュ ロベルト・オルサー ローズマリー・クルーニー ローレン・ヘンダーソン ヴォルファート・ブレーデローデ 中西 繁 写真・カメラ 北欧ジャズ 問題書 回顧シリーズ(音楽編) 女性ヴォーカル 女性ヴォーカル(Senior) 女性ヴォーカル(ジャズ2) 女性ヴォーカル(ジャズ3) 寺島靖国 戦争映画の裏側の世界 手塚治虫 文化・芸術 映画・テレビ 時事問題 時代劇映画 波蘭(ポーランド)ジャズ 相原求一朗 私の愛する画家 私の映画史 索引(女性ジャズヴォーカル) 絵画 趣味 雑談 音楽 JAZZ POPULAR ROCK SONYα7