リズ・ライト Lizz Wright 「Holding Space - Live in Berlin」
ゴスペル調のカントリー風ブルースに彼女らしさが満ち満ちている
<Jazz, Gospel, Funk, Soul, Blues>
Lizz Wright 「Holding Space, Live In Berlin」
Blues & Greens Records / FLAC, MP3 / Published July 2022
Lead Vocals - Lizz Wright
Bass - Ben Zwerin
Drums – Ivan Edwards
Guitar – Chris Bruce
Keyboards – Bobby Sparks Ⅱ
Recorded live at the Columbia Theater in Berlin, Germany
しかしなかなか面倒な時代の到来である。ここに取り上げたのは注目株のリズ・ライト(1980年米国ジョージア州生まれ)のニュー・アルバム。しかし残念なこと(?)に、CDなどの従来は当然であった形でのリリースでなく、所謂現在欧米では主流のストリーミングでの形で昨年公開されているもの。私は中年音楽狂氏のブログから知ったもので、こんな素晴らしいアルバムを聴かずにいてしまいそうになったものなのだ。従来はCDやビニール盤発売で知ったニュー・アルバムも、この世界ではちょっと知らずに通過してしまいそうな時代になったという事なのである。
さて、彼女のアルバムは、私にとっては2017年の「GRACE」(ucco-1192)以来かもしれない。パンデミックの最中に、それ以前のライブ音源を聴く中で感銘を受けたという2018年のヨーロッパサマーツアーの最終日であるベルリンで録音されたショーだ。彼女自身のレーベルであるこの「Blues & Greensレコード」からリリースされた最初のアルバム。
とにかく冒頭から彼女のなんとも人間的味のある聴衆との交わりが感じられるところとバンドの描くところのグルーヴ感が素晴らしく、録音の味もよく、魅力的なライブ・アルバムに仕上がっている。
(Tracklist)
1 Barley 6:57
2 Old Man 6:38,
3 Wash Me Clean 4:56
4 Somewhere Down The Mystic 5:51
5 The New Game 7:23
6 Walk With Me Lord 8:34
7 Southern Nights 3:48
8 Grace 5:52
9 No More Will I Run 3:15
10 Seems I'm Never Tired Lovin' You 8:04
11 All The Way Here 5:42
彼女の歌は、もともとゴスペル、ジャズ、R&B、ブルース等をうまくミックスして仕上げられていて、彼女豊かな声の低音からアルトへの流れは、ややダークなところから非常に心温まるところまで充実していて、アーティストとして多才なところを聴かせてくれる。
このライブ・アルバムの会場はドイツのベルリンにあるコロンビアシアター。冒頭のM1." Barley "では、演奏陣のしっとりとしたギターの音からスタートしてオルガンが乗ってソウルフルでいいムードだ。そしてリズの登場と会場の聴衆との親密なる関係が彼女の歌と話から感じ取れる。
支えるバンドは、クリス・ブルース(ギター上左)、ボビー・スパークスII(キー上左二番目)、ベン・ズウェリン(ベース上右2番目)、アイヴァン・エドワーズ(ドラム上右)をフィーチャーし、11曲を演奏する。なかなかソウルフルな世界にピッタリの演奏。
彼女の直近のスタジオアルバム『グレース』から6曲を演ずる。M3." Wash Me Clean"の情感たっぷりの世界から、特に後半に登場したアルバム・タイトル曲のM8."Grace"の心からの歌いこみはもう哀愁の世界。そして締めのM11."All The Way Here"は心温まるところに、彼女のスピリチャル・ヴォイスのライブの真骨頂。
又デビー作『Salt』のゴスペルソングのM6."Walk With Me Load"も登場。
M2."Old Man"は、すべてに中庸を得た魅力ある曲だが、M5."The New Game "のような、活力十分なアクティブなカントリーブルースをまじえながらも、M10."Seems I'm Never Tired Lovin' You"のようなしっとりとした美しさのブルースがキーボードとの歌い合いが見事に演じられ多彩。それはM7."Southern Nights "の熱唱とM8."Grace"の心に響く世界の対比にもみられ感動的な世界。
これはパンデミック直前の充実感たっぷりのライブから生まれたアルバムだが、彼女の存在感もここまで来ているのだ。しかし2017年以降スタジオ・ニューアルバムがお目見えしていない。このところは十分にライブ活動も再開したようで、このアルバムは彼女の独立宣言にもとれる。そろそろスタジオ盤がお目見えしそうな感じがするがどうだろうか。とにかくその線を期待している。
(評価)
□ 曲・歌 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
*
最近のコメント