謹賀新年 2024 ビル・エヴァンス Bill Evans 「TALES」
明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
新しい年2024を迎え、取り敢えず音楽は何から聴いてゆこうかと考えたが、幸い昨年も遅くにこのニューアルバムの登場があったので、やはりスタートはビル・エヴァンスだろうという事で・・ここに登場させることとした。
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ゼヴ・フェルドマン・プロデュースの発掘作品もここに11作目の登場
<Jazz>
Bill Evans 「TALES - Live in copenhagen (1964)」
ELEMENTAL MUSIC / JPN / KKJ224 / 2023
(1-6)
Bill Evans (piano), Chuck Israels (bass), Larry Bunker (drums)
Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, August 10, 1964
(7-10)
Bill Evans (piano), Chuck Israels (bass), Larry Bunker (drums)
TV-City, Copenhagen, August 25, 1964
(11)
Bill Evans (piano), Eddie Gomez (bass), Marty Morell (drums)
Stakladen, Aarhus, Denmark, November 21, 1969
ビル・エヴァンス物語は未だに終わるところが無い。なんとゼヴ・フェルドマンが手がけたビル・エヴァンス・エステートとしての正式な発掘発売作品が昨年末に又もや出現しました。
昨年春は、ここで紹介した3枚組LPと2枚組CDで『Treasures: Solo, Trio and Orchestra Recordings from Denmark (1965-1969)』(KKJ-10013)を発売、それに収録できなかった全く別の貴重な録音がエレメンタル・レコードのジョルディ・ソレイ、カルロス・オーガスティン、そして名盤発掘請負人のゼヴ・フェルドマンの共同プロデュースによってここにお目見えした。ゼヴ・フェルドマンが手がけたビル・エヴァンス・エステートの正式な発掘発売作品はこの作品で『Live at Top The Gate』以来11作目。(過去の2019年の『SOME OTHER TIME』(KKJ1016)にも飛びついたものです(笑))
もう昔話の1964年に、ビル・エヴァンスは初めてのヨーロッパ演奏ツアーを行ったが、訪問したデンマークの2か所で収録された貴重な音源。古き名盤『TRIO'65』(1965, Verve)のチャック・イスラエル(b)、ラリー・バンカー(ds)というメンバーで、いくつかの名盤を残しているトリオだ。
内容は、主たるは国営デンマーク放送の本部、コペンハーゲンの“ラジオハウス”で1964年8月10日に録音収録された6曲で、聴衆なしのスタジオ・セッションもの。それに加え、2週間後の8月25日にコペンハーゲン郊外グラッドサクセにあるデンマーク国営TV “テレビ・ビューウン(TV-Byen)”で、これは聴衆を前にしたライブ・レコーディングとして収録されたものが追加されている。更にボーナス・トラックとしてエディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds)のトリオが1969年11月オーフス大学の学生会館のライブ会場で演奏した「Round' Midnight」(『Treasures』未収録)を追加収録されている。
(Tracklist)
1. Waltz For Debby (Bill Evans) 5:32
2. My Foolish Heart (Ned Washington-Victor Young) 5:15
3. How My Heart Sings (Earl Zindars) 4:51
4. Sweet And Lovely (Gus Arnheim-Jules LeMare-Harry Tobias) 5:33
5. I Didn't Know What Time It Was (Richard Rodgers-Lorenz Hart) 4:40
6. Five [Theme] (Bill Evans) 2:09
7. My Foolish Heart #2 (Ned Washington-Victor Young) 5:06
8. How My Heart Sings #2 (Earl Zindars) 4:32
9. Sweet And Lovely #2 (Gus Arnheim-Jules LeMare-Harry Tobias) 4:24
10. Five [Theme] #2 (Bill Evans) 2:23
11.’Round Midnigh (Thelonious Monk-Bernie Hanighen-Cootie Williams) 7:06-BONUS TRACK
さてこのトリオは結成し体裁が整ってきての1年余りという時の録音で、エヴァンスの目指す三位一体、有機的一体感がしっかり作り上げられているところが聴きどころと言えるだろう。そしてもう一つは何といっても古い記録であるので問題は録音の質だが、なんと現代の技術を注ぎ込んでの改良が試みられたと言われ、思いの外M1-M6のスタジオ・セッションものは良いレベルに到達している。もともとエヴァンスものは録音の質に問題の多いアルバムが多かったが、そんなことを意識しての改良であったと思われる。しかしM7以降は若干落ちるも耐えられないものではない。そんな点は取り敢えず満足できるところである。
とにもかくにも" Waltz For Debby "、"My Foolish Heart"の代表曲がたっぷり聴ける(それぞれ2録音の4曲)というのが驚きだ。アルバム『Walz for Debby』(2023リマスター,UCCO-46013)のVillage Vanguardのライブ(1961年)と比較して聴いてみると面白い。
エヴァンスの描くトリオ全体が対等で自由な展開のインタープレイの世界を特にこのメンバーでの欧州演奏では更に発展させているように見えるのが、この"Walz for Debby"であり、彼のピアノのはずみは明るい。そしてそれに答えてのチャック・イスラエルのベースも、どこかゆとりのある明るさを感ずる。
そして"My Foolish Heart"の情感は、美しいメロディーと響きの中での表現が、いわゆる暗さはなく未来展望に希望的に向かうところが感じられ、その点はここでは一層聴きとれる演奏だ。
そして続く"Haw My Heart Sings"での明るさは、ベースのやや高音部の音、ドラムスのブラッシングの音と繋がり、3者の展開が躍動する。
又、過去にも未来にもここだけだろうと言える曲"I Didn't Know What Time It Was"の登場も意義深い処。
なかなかこのスタジオ・セッションも、欧州への演奏ツアーにおける結びつきも良好だったと推測できるところが伺える。
ビル・エヴァンスものを、いろいろと評価するのも奥がましいので、取り敢えず期待以上の音質で、しかもトリオの充実感を感じて聴けることに、このアルバムの評価をしたいと思うところだ。
なおこのアルバムには、丁寧にも、エヴァンスの研究者、ウォール・ストリート・ジャーナルのレギュラー寄稿家マーク・マイヤーズによる解説が載っている。また、メンバーのチャック・イスラエルやラリー・バンカーの未亡人ブランディン・バンカーの貴重なインタビューや証言も納められている。又音質に関しては、放送音源マスターテープからマスタリング・エンジニアのバーニー グランドマンがマスタリング(M1-M6はオリジナルのMONO録音音源を24bit ステレオでリマスタリング)したことも注目して良いところ。
(評価)
□ 選曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(試聴) "My Foolish Heart"
"Copenhagen Rehearsal 1966"
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