アメリカン・ジャズ

2024年5月14日 (火)

ティム・レイ TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」

グルーヴ感あるバップ・ジャズに叙情性のあるバラードも

<Jazz>

TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」
Whaling City Sound / Import / WCS137 2024

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Tim Ray (piano) (keyboard on 03, 07, 11, 13) (melodica? or accordion? on 04)
John Lockwood (bass except 03) (electric bass on 03)
Mark Walker (drums) (percussion on 03, 04, 07, 12, 13)

   アメリカのベテラン・ピアニスト、ティム・レイTim Ray(下左)が、2014年からのジョン・ロックウッド(b,下中央)、マーク・ウォーカー(d,下右)を迎えてのジャズとしては私が好むピアノ・トリオ・スタイルで吹き込んだ最新作。彼はボストンを中心に活躍しているが、2021年まで伝説のボーカリスト、トニー・ベネットの音楽監督兼ピアニストであり、現在は教育者(全米芸術基金からの助成金の受給者であり、バークリー音楽大学の教授)としても活躍中。サイドマンとして100以上のレコーディングに参加しているが、リーダー作は『Excursions & Adventures』、『Windows』(Trio作品, 2016)、『Ideas & Opinions』(1st 1997,Trio作品 Lewis Nash(d), Rufus Reid(b))、『Tre Corda』(2nd, 2003)、『Squeaky Toy』(2013)、『On My Own Vol. 1』(ピアノ・ソロ)の6枚のアルバムをリリース。しかし過去に私自身は彼の作品にあまり深く関係してこなかった。

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 今回は、彼自身が敬愛する音楽界のヒーローの作品を取り上げ、現代的にアプローチしたもので、ジャズそのものにも迫るほど良いグル-ヴ感溢るる作品ということでここに聴いてみた次第である。
 もともと彼のジャズ・スタイルは、ハード・バップ系とみてよいのだろうが、ジャズ特有のアンサンブルやハーモニーも重要視していてのどちらかと言うと私好みのブルース系とは違ったファンキー・バップ色が濃いが、メロウ&スウィート・テンダーな色合いもみせて結構楽しめるアルバムが出来ているので取り上げてみた。 

Tim-ray-pic-2017w (Tracklist)

01. Bye-Ya
02. Stolen Moments
03. NO Worries
04. The Meeting: The Jbug and the Kman
05. Mojave
06. Theodore the Thumper
07. Fire and Rain
08. Lawns
09. Moon in the Sea
10. Improv #1 (for Chick)
11. Nighttime
12. The Windup
13. Fire and Rain (radio edit)

  ダイナミックなトリオ・アンサンブルに満ち満ちている展開から、バラードとロマンティックな色合いまで聴かせる内容たっぷりのアルバムだ。

 モンクのM1. "Bye-Ya"で、ちょっと難解だが、ジャズの醍醐味のアンサンブルの楽しさでスタートし、オリバー・ネルソンのブルース調のM2. "Stolen Moments"でジャズの奥深さを聴かせる。
 M3. "NO Worries" ジャレットの曲をグルーヴィーに展開、ここではエレキ・キーボードを使用しお見事。メンバーの年期を感ずる仕上げ。
 M4. "The Meeting: The Jbug and the Kman" 家族の世界か、ぐっと美しいピアノで・・後半は盛り上げ最後は再び静の美。
 M5. "Mojave" アントニオ・カルロス・ジョビンの曲を繊細にリズムカルに。
 M6. "Theodore the Thumper" 明るめのブルースフィーリングの登場に驚き、ドラムスの響きも楽しい
 アルバム・タイトル曲のM7. "Fire and Rain" ジェームス・テイラーの曲で決して明るい曲ではないがハーモニーなど聴きどころ満載
 M8. "Lawns" 極めて静かな安堵感にも通ずる曲で、ほっとして聴ける
 M9. "Moon in the Sea" 多彩な情景が浮かぶロマンティックなムードも聴かせ、中盤のベースとピアノの静かな世界が魅力
 M10. "Improv #1 (for Chick)" ちょっとフリージャズっぽい展開
 M11. "Nighttime" 当初のイメージと異なって心に響く優しさと美しさ、後半の流麗なピアノ・プレイは圧巻、最後は再び静の世界に
 M12. "The Windup" アクティブなアンサンブルでの終結、ドラムソロが印象的

 なかなか粋なファンキー節が込められ、三者の掛け合いの味が見事なバップ系のタイプが主力で、ダイナミック・スウィンギンなジャズの程よいグルーヴ感があって良好。そしてそれに留まらずバラードや抒情性の濃いロマンティックな曲が流れてきてぐっと心をつかむのがうまい。そのあたりは結構期待以上にスウィート・テンダーなフレーズが顔を出しメロウな美メロ・センスをちゃんと聴かせるところが魅力。最終的にはなかなかの名盤という感じであった。

(評価)
□ 編曲・演奏  90/100 
□ 録音     88/100
(試聴)

*

 

 

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2024年4月24日 (水)

リズ・ライト Lizz Wright 「Shadow」

人生模様が物語風に展開して充実感たっぷりの世界

<Jazz>

Lizz Wright 「Shadow」
Concord / Import / 6945087 / 2024

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Lizz Wright : Vocal
Adam Levy(g), Chris Bruce(g, key, b, perc)
Lynne Earls(el-p, g, hand perc), Glenn Patscha(p,el-p, org)
Kenny Banks, Sr.(p, org), Rashaan Carter(b)
Deantoni Parks(ds), Abe Rounds(perc)
Trina Basu(vln), Arun Ramamurthy(vln) 
Katherine Hughes(vln), Elizabeth Brathwaite(vln)
Jeff Yang(vla), Melissa Bach(cello)
Brandee Younger (Harp)

Angelique Kidjo : Vocal
Meshell Ndegeocello: Bass

1699042699546_mobilelargew   デビュー・アルバムのリリースから約20年が経ち、高い評価を得ているヴォーカリストのリズ・ライトが8thアルバムをリリースした。彼女に関しては、2017年のアルバム『GRACE』(Ucco-1192)がお気に入りだが、南部出身の彼女は、ゴスペルとソウルのスペシャリストである。1980年1月22日、米、ジョージア州生まれでいよいよ脂が乗ってきた。
 教会の牧師で、音楽監督を務めていた実父の影響でブルース、ジャズに開眼する。ハイ・スクール時代は聖歌隊に参加、ナショナル・コーラル・アウォードという賞を受賞。その後ジョージア州立大学では本格的なバンド活動をスタートし、シンガーとしての頭角を現した彼女は卒業後、2003年、ヴァーヴ・レーベルと契約、アルバム『ソルト』でデビュー。2005年にはクレイグ・ストリートをプロデューサーに迎え、2ndアルバム『ドリーミング・ワイド・アウェイク』をリリース。ゴスペルで培った深みと憂いのあるスピリチュアル・ヴォイスで、オリジナリティ溢れるR&B/ブルースの世界を創り上げている。

 今作はリズ・ライト自身の親族関係(祖母との別れ)の個人的な悲しみの経験から、悲しみを経て人間愛という力で自身の生きる希望への展開を織り交ぜたアルバムと見て取れる。
 そして彼女のオリジナル曲は5曲登場し、それは"Root of Mercy"、"Circling"、"This Way"に加えて、Angelique Kidjoをフィーチャーした"Sparrow"、Meshell Ndegeocelloとの"Your Love"だ。そしてコール・ポーター、ジリアン・ウェルチ&デヴィッド・ローリングス、サンディ・デニー、キャンディ・ステイトン、トシ・リーゴン、ケイトリン・キャンティの曲を彼女の世界に導入し、ジャズやブルースからフォークやソウルまで官能的なボーカルで歌い込んでいる。

(Tracklist)

1. Sparrow (feat. Angelique Kidjo) *
2. Your Love (feat. Meshell Ndegeocello & Brandee Younger) *
3. Root of Mercy *
4. Sweet Feeling
5. This Way *
6. Lost in the Vallet (feat. Trina Basu & Arun Ramamurthy)
7. I Concentrate on You
8. Circling *
9. No More Will I Run
10. Who Knows Where the Time Goes
11. I Made a Lover’s Praye
(*印 彼女のオリジナル曲)

 さすが、NYタイムズ紙がその歌声を「熟成したバーボンや上質なレザーを思わせるようななめらかでダークなアルト・ヴォイス」と称した彼女のヴォーカル世界にたっぷり浸かって、ゴスペルで培った深みと憂いのあるスピリチュアル・ヴォイスが響き渡り、オリジナリティ溢れるR&B/ブルースの世界を創り上げている。
 彼女はこのアルバムについて、「ついに、私の人生を決定づける愛、祖母マーサを失う番がやってきた。彼女が私を愛してくれたおかげで、見知らぬ人たちの前で何年も歌い、決して孤独を感じないというバックボーンが生まれました。彼女は世界を小さく、暖かく見せた。彼女の長い変遷を見ていると、彼女の愛が私に残した印象と、それをどうするかについて考えさせられました。『Shadow』は、悲しみを辛抱強く感じ、探求すると同時に、喪失や不確実性を前にして、より明白で力強い愛を讃えた結果です」と語っている

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M1. "Sparrow" 中音の落ち着いたヴォーカルで不幸から新しい物語の始まりの意欲的情景を描いてスタート。Angelique Kidjoの協力を得ている。
M2. "Your Love"  Meshell Ndegeocelloのベースの活力ある音で進行し、そしてBrandee Youngerの希望に満ちたハープ音とで描く世界。そこには愛の未来への希望が歌われる。
M3. "Root of Mercy" 低音でしっとりとしたヴォーカル。
M4. "Sweet Feeling" Candi Stantonの曲でソウル感あふれたブルースが圧巻。
M5. "This Way" 物憂げではあるが、自分の歩む道に堂々とした展望の雰囲気を見せている見事なスローバラード。 
M6. "Lost in the Vallet" フォークぽい世界
M7. "I Concentrate on You" 迷いのない心を訴える
M8. "Circling" 彼女の曲だが、優しさと明るさがあるところが救われる。
M9. "No More Will I Run" 訴える響きが見事な歌声。
M10. "Who Knows Where the Time Goes" 情景が描かれ見事に心に訴えるが如く歌い上げる
M11. "I Made a Lover’s Praye" アコースティック・ギターの落ち着いた調べて、人生の意欲を見事に力みなく響かせるヴォーカル。

 いっや・・・、感動のアルバムですね。とにかく無駄な曲が無く充実していて、彼女の歌声と共に聴けば聴くほど味わいが出てくる。このアルバムには彼女のステートメントが存在し、それはアメリカ文化の評価と社会の複雑な分断を極めつつの愛と人間性への焦点を当てての世界は深い。アンジェリーク・キジョーとメシェル・ンデゲオチェロが参加した意義も大きい。バック演奏ではアコースティックギターを軸に、弦楽四重奏、ハープ、オルガン、ゴスペル・ヴォーカルなどが厚みを構築している。今年の名盤として推薦できるアルバムである。

(評価)
□ 曲・歌・演奏 :  90/100
□   録音     :  90/100

(試聴)

*

 

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2024年4月 1日 (月)

ブランドン・ゴールドバーク Brandon Goldberg Trio 「 Live At Dizzy's」

10代の神童の技=よき時代のジャズを受け継いで現代風に展開

<Jazz>

Brandon Goldberg Trio 「Live At Dizzy's」
Cellar Live Records / Import / CMR050123 / 2024

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Brandon Goldberg (piano)
Ben Wolfe (bass)
Aaron Kimmel (drums)
Recorded at Dizzy's Club at Jazz t Lincoln Center,January 17 & 18 2023

Bgoldbergphototrw  まさに神童ピアニストとして話題の、フロリダ州マイアミ出身のブランドン・ゴールドバーグBrandon Goldberg(18歳)のサード・アルバムが登場した。2023年1月NYのディジーズ・クラブでライブ録音されたものというので、従って録音当時は17歳?)。
 彼は、3歳の頃からピアノを弾き、音楽に親しんできたと。批評家たちは彼の「揺るぎないテクニック、高度な和声理解、深いスイング感覚、そして最も印象的なのは、ほぼ完璧なまでに実行される明晰さとアイデアの多さ」と高く評価しているようだ。
 とにかく、デビュー作『Let's Play!』(2019 下左)とセカンドアルバム『In Good Time』(2021 下右)はともに、ダウンビート誌で 4つ星を獲得し、その年のトップアルバムに選出されている。2024年度ヤングアーツ優秀賞受賞、2023年度ハービー・ハンコック・インスティチュート・オブ・ジャズ国際ピアノ・コンクールのセミファイナリスト、2022年度ASCAPハーブ・アルパート・ヤング・ジャズ・コンポーザー賞を最年少で受賞という経歴も凄い。
 そして彼は今や10代でなんと、ニューポート・ジャズ・フェスティバル、サンフランシスコ(SFJazz)、PDXジャズ、リッチフィールド、ツインシティーズ、カラムーアなど、全米の主要なジャズフェスティバルで演奏し、又ディジーズ・クラブ、メズロウ、バードランド・シアター、オールド・ライムのザ・サイド・ドア、ボルチモアのキーストーン・コーナーなど、ニューヨークで指折りの有名なジャズ・クラブで演奏している。

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 ゴールドバーグ(下左)の3rdアルバムとなる本作は、彼のピアノにリズム隊はベテランのベン・ウルフ(下中央) のベース、アーロン・キンメル(下右)のドラムスという確かなメンバーによるピアノトリオ作品である。収録はスタンダードナンバーと2曲のオリジナル曲のプレイされたものだが、特に1950年代と1960年代の偉大なピアノ・トリオの音楽を彼なりきに現代風にアレンジをほどこしての新鮮な感覚でのプレイに注目、アフマド・ジャマール、レッド・ガーランド、オスカー・ピーターソン、ソニー・クラークなど、彼自身が影響を受けたピアニストや伝統に敬意を表しているというところだ。

(Tracklist)

1. Unholy Water
2. Wives and Lovers
3. It Ain't Necessarily So
4. An Affair to Remember
5. Let's Fall in Love
6. I Concentrate on You
7. Circles
8. Lujon (Slow Hot Wind)
9. Compulsion

 この若きピアニストが、古いニューヨークが舞台でのヒットを演じている。まあ昔のジャズ・ピアニストを聴き込むとこんなスタンダードが出てくるんでしょう。そしてそれにゴールトバーグが惹かれ技量発揮し、ウルフが旨くリードしキンメルの協力の結果であろう。なかなか良いトリオだ。

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M1. "Unholy Water" ピアノの快調な展開、中盤の活気あるドラムス・ソロ、トリオ・ジャズの楽しさの序奏。これが最後のM9.に繋がる。
M2. "Wives and Lovers"  軽妙なタッチのピアノの流れが聴きどころ。
M3. "It Ain't Necessarily So"   古くはLouis ArmStrongでElla Fitzgeraldが歌ったGeorge Gershwinの曲ですかね、ゴールドバーグのひいおじいさんの喜んだ曲でしょう。ここで演ずる結構軽さと展開の妙と速攻とパンチ力とが見事。
M4. "An Affair to Remember"  映画「めぐり逢い」の"過ぎし日の恋"ですね、これも古いなぁ・・・でもあの良き時代のほのぼの感としっとり感を出してますね。彼が演ずると聴く方もビックリですね、変なアドリブで攻めなくてむしろ良い感じだ。
M5. "Let's Fall in Love" 映画「恋をしてしまう」から、最近はDiana Krallが歌うので良く聴きますね。ここでは軽快な演奏。
M6. "I Concentrate on You" 映画「踊るニュウ・ヨーク」、コール・ポーターの曲ですね。やさしく演じ切るところがにくいところ。
M7. "Circles" ジュージ・ハリスンの曲なんだろうか、彼のオリジナルか良く解らないが、素晴らしい演奏。彼の新世代を演ずるスウィングへの変調の妙とインプロの技とが感じますね。
M8. "Lujon (Slow Hot Wind)" ヘンリー・マンシーニのムードを化けさせるベースとドラムス、そしてピアノの的を得たインプロに脱帽。
M9. "Compulsion" 三者の掛け合いの楽しさが満ちている。

 若い人のジャズというよりは、私の印象としては一世代前のジャズを現代風に味付けして蘇らせてくれている感がある。これが十代の演ずる世界かと、いやはや脱帽の世界。とにかくこの軽妙さぱ確かにアフマド・ジャマールの私の好きな部分を継いでくれている。なかなか味がある。

(評価)
□ 編曲・演奏  88/100
□ 録音     87/100

(試聴)

"Circles"

*
"An Affair to Remember"

 

 

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2024年3月22日 (金)

イエス!トリオ YES! TRIO (Aaron Goldberg & Omer Avital & Ali Jackson) 「 Spring Sings」

三者のインタープレイで築くグルーブ感、これぞジャズ・トリオだ

<Jazz>

YES! TRIO ( Aaron Goldberg & Omer Avital & Ali Jackson ) 「 Spring Sings」
(CD) Jazz & People / Import / JPCD824001/ 2024

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Aaron Goldberg (piano except 03)
Omer Avital (bass)
Ali Jackson (drums except 03)

  ドラムスのアリ・ジャクソン(1976年米ミシガン州デトロイト生まれ)をリーダー格とする、ピアノのアーロン・ゴールドバーグ(1974年米マサチューセッツ州ボストン生まれ)とベースのオメル・アヴィタル(1971年イスラエルのギヴァタイム生まれ)のピアノ・トリオである。
  このYes! Trioの好評前作『Groove Du Jour』(2019)に続いての最新アルバム(第3作)が5年ぶりに登場である。
  彼ら3人は1990年代にニューヨークで出会い、それぞれが独自のジャズを極めつつ異なった経験から積み上げた違いを尊重しつつ、ここに三者で彼らならではのジャズを作り上げているところに妙味がある。

 このトリオの特徴を見る意味で、三者の略歴を下に紹介。

6303856118_dbdew  アリ・ジャクソンは、デトロイト出身のアフリカ系アメリカ人ジャズプレイヤーの家族に生まれたドラマー、10代の頃にウィントン・マルサリスに見出された。ニューヨーク市のニュースクール現代音楽大学の学生として、マックス・ローチとエルヴィン・ジョーンズに師事する機会に恵まれ、彼は全額奨学金で大学に通い、作曲の学士号を取得。1994年、伝説のジャズ・ドラマー、マックス・ローチを称えるビーコンズ・オブ・ジャズ・プログラムのゲスト・ソリストに選ばれた。セロニアス・モンク・インスティテュートとジャズ・アスペンは、才能のあるミュージシャンのための第1回ジャズ・アスペンに参加するために彼を選抜した。また、1998年にミシガン州の権威あるArtserv Emerging Artist Awardの最初の受賞者である。又トランペッターのウィントン・マルサリスのジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラで10年以上もドラマーを務める。

Omeravitalalw   オメル・アヴィダルは、イスラエルに生まれ、独自の旋律とグルーヴを生み出して彼ならではのスタイルを切り拓いたベーシスト。幼い頃からクラシック・ギターを学び、イエメン系ユダヤ人独特の聖歌を耳にして育ったという。テルマ・イエリン芸術学校に入学するとジャズにも開眼。92年、アヴィシャイ・コーエンらとともに米・ニューヨークへ移住、ニュースクール大学に在籍しながら本場ジャズ・ムーヴメントの中でキャリアを積む。2001年に初のリーダー作『Think With Your Heart』を発表。NYジャズ・シーンで頭角を表わしつつある中で、一時イスラエルへ帰国するが、再びNYへ戻り、自身のスタイルを確立。2014年2月、スタジオ・アルバム『New Song』をリリース。

Aarongoldbergw   アーロン・ゴールドバークは、ボストン生まれの秀才、両親は著名な科学者。7歳からピアノ、14歳でジャズを始める。ハーバード大学で歴史と科学の学位を取得し、意識の科学的理論に関する論文にて新プログラムの学位を取得し優等で卒業。しかし音楽にも集中し続け、国際ジャズ教育者協会のクリフォード・ブラウン/スタン・ゲッツ・フェローシップを授与された。バークリー音楽大学でもジャズ・ピアノでの演奏を習得、ボストンそしてニューヨークのジャズシーンで演奏。ブラッド・メルドーなどのバンドで頭角を現して以来、多忙を極めるピアニスト。卒業後の1996年、ニューヨークに戻り、再び音楽活動に専念。1998年、アーロン・ゴールドバーグ・トリオを結成し、1999年にデビュー・アルバム『Turning Point』をリリース。そんな多彩な音楽活動を続ける中でもタフツ大学の修士課程にて2010年に分析哲学の修士号を取得。2010年にはアルバム『Home』、ブラジル音楽も研究し2012年にギジェルモ・クライン(アルゼンチン作曲家)とのコラボによる『Bienestan』をリリース。2012年にはアルバム『Yes!』、2014年11月、自身の曲、スタンダード、ブラジルの曲のアルバム『The Now』をリリースし高評価。多くのジャズ・ミュージシャンと共演している。

(Tracklist)
01. Spring Sings
02. 2K Blues
03. Bass Intro To Sheikh Ali (solo bass)
04. Sheikh Ali
05. The Best Is Yet To Come
06. Sancion
07. Omeration
08. How Deep Is The Ocean
09. Shufflonzo
10. Fivin'

 まさに現代ピアノ・トリオと言わしめるところの三者の役割が見事に結集している。それは上の三者の紹介に見るようにそれぞれの経歴が非常に異なっている中での実力者で、その為の効果が著しく味を高めている。


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 スタートのM01."Spring Sings"からアルバム・タイトル曲が登場し、スウィングを愛しながらもジャズを探求している試みの集合がコンテンポラリーに展開。ベースは弾きに独特なうねり感があり時にアルコも響かせる、軽やかに繰り出してくるが意外なところでパンチを効かせるドラム、歯切れのよさや透明感たっぷりのクリアー・タッチのピアノが心地よい。三者の乱れぬ交錯が対等に進行してまさにトリオ演奏。     
 M02."2K Blues"は、ベースの速攻とピアノの旋律、ドラムスのブラッシ音の躍動的攻め合いはものの見事に展開される。中盤のベース、それに続くドラムスの響きが曲のメリハリに貢献、最後は早弾きピアノが印象的。
 M03."Bass Intro To Sheikh Ali "は、ベースソロ。充実した低音が心に響く。そして M04."Sheikh Ali"のピアノ・トリオ演奏に繋がって、ピアノの役割を盛り上げ最後は硬質な繊細なピアノでまとめる。
 M05."The Best Is Yet To Come" ジャズの溌溂とした流れが生きている。トリオの流れが楽しい。
 M06."Sancion" 珍しいゆったりとしたピアノ旋律主導の曲。リズム隊のドラムスとベースの協調が品格ある。
 M07. "Omeration"息の合ったトリオの繰り返すハーモニーとユニゾンが見事、それを誘導するドラムスが頼もしい。
 M09. "Shufflonzo" スウィングしてのピアノに、ベース、ドラムスが快調に展開する。軽やかなベース・ソロ、続くドラムス・ソロのパンチ力も聴きどころ。演者の楽しさが伝わってくる。
 M10 "Fivin'" ドラムスのリズムに乗ってのベースとピアノとの掛け合いがこれまた楽しさ十分。

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 ピアノ・トリオであるので、自ずから旋律がピアノによる曲の運びは当然みられるが、ベースの多彩な音、ドラムスの展開を誘うダイナミズムが、これぞトリオ演奏と色付けされ聴き応え十分。とにかく剛柔バランスが絶妙にとれていて、今日感覚溢れるコンテンポラリーな展開が続く。トリオとしての主役であるゴールドバーグ(p)の自然体な正攻法に展開する流れに、アヴィタル(b)のそれに難題を振り向けるような熱い演奏が色付けにいい役割をしている。このトリオのリーダーのジャクソン(ds)は、やはり一歩引いているが、インタープレイの誘導がなかなか旨く、三者三様の立ち振る舞いが、それぞれの個性を発揮していてグルーヴ感を築く楽しい演奏だ。これぞ現代ジャズの一つの重要な流れであろう。ユーロ・ジャズのクラシックからの発展形としての流れなどに私などは満足している今日ではあるが、ジャズの王道をしっかり築いている風格すら感ずるこのタイプは当然歓迎だ。

(評価)
□ 演奏  90/100
□ 録音  88/100

(試聴)

 

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2024年2月 6日 (火)

ヴィジェイ・アイヤー Vijay Iyer, Linda May Han Oh, Tyshawn Sorey 「Compassion」

アメリカ社会の暗部を背景に人間的に迫ろうとする意欲作

<Contemporary Jazz>

Vijay Iyer, Linda May Han Oh, Tyshawn Sorey 「 Compassion」
ECM Records / JPN /  UCCE-1204 / 2024

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Vijay Iyer(p)
Linda My Han Oh(double-b)
Tyshawn Sorey(ds)

Recorded May 2022, Oktaven Audio, Mount Vernon, NY

399423767_18403083w 「21世紀のECM」を代表するピアニストといわれるヴィジェイ・アイヤー(米、右、紹介は末尾に)の3年ぶりのECM通算8作目となるピアノ・トリオ・アルバムの登場。   前作『Uneasy』(ECM352696)に続いての彼は多くのインスピレーションを二人から受けているというベーシストのリンダ・メイ・ハン・オー(1884年マレーシア生まれ、中国系移民、オーストラリア育ち、下左)とドラマーのタイショーン・ソーリー(1980年米国生まれ、クラシック・ジャズ両面で評価を受けている、下右)をフィーチャーしたトリオの2作目。 "独特な創造性のある作品"と前評判のコンテンポラリー・ジャズ・アルバム『Compassion』だ。

 ニューヨークタイムズ紙は、「新たな領域を探求する意欲を持ち続けると同時に、レーベルに長く関わってきた先人たちにも言及している。このアルバムには、スティーヴィー・ワンダーの「Overjoyed」の力強い解釈が収録されており、故チック・コリアへの間接的なオマージュ。もうひとつの「Nonaah」は、ピアニストにとって重要なメンターである前衛の賢人ロスコー・ミッチェルの作品。オリジナル曲群は、メロディアスに魅惑的でリズミカルな爽快な曲、物思いにふけるようなタイトル曲、フックが絡み合ったハイライト曲「Tempest」や「Ghostrumental」まで、多岐にわたる」と評価し説明している。

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  収録曲は13曲で、新たな世界の展開を試みるヴィジェイ・アイヤーのオリジナル曲は9曲、それは社会に存在するレイシズム(人種主義)そしてアパルトヘイトなどの不安、一方コロナ禍のような社会不安などがテーマで、ここ数年で作られてきたものだ。そしてその上に、彼の尊敬する人たちの曲やそれにまつわるもの等の4曲である。

(Tracklist)

1. コンパッション Compassion (Vijay Iyer)
2. アーチ Arch (Vijay Iyer)
3. オーヴァージョイド Overjoyed (Stevie Wonder)
4. マエルストロム Maelstrom (Vijay Iyer)
5. プレリュード:オリソン Prelude: Orison (Vijay Iyer)
6. テンペスト Tempest (Vijay Iyer)
7. パネジリック Panegyric (Vijay Iyer)
8. ノナー Nonaah (Roscoe Mitchell)
9. ホエア・アイ・アム Where I Am (Vijay Iyer)
10. ゴーストゥルメンタル Ghostrumental (Vijay Iyer)
11. イット・ゴーズ It Goes (Vijay Iyer)
12. フリー・スピリッツ / ドラマーズ・ソング Free Spirits / Drummer’s Song (John Stubblefield / Geri Allen)

 アイヤーのECMからのデビューは、2007年のロスコー・ミッチェルのメンバーとして参加したアルバム『ファー・サイド』で、マンフレート・アイヒャーの支持を受けECMと契約し、2014年に室内楽との共演作品『ミューテイションズ』をリリース。その後、その都度異なるミュージシャンとの共演が展開され、2021年には新トリオ作品『Uneasy』をリリースし、絶賛を受け評価を勝ち取った。その為か今作はその同トリオによる待望の2ndとなる新作である。

 何といっても、その心結ばれるメンバー同士において、センスと技量においての認め合う関係があり、その上での自由な空間でのインタープレイがインパクトのある音世界を演じ見事である。 アメリカン・ジャズのエッセンスはしっかり持って、その上に築かれる創造性はこのアルバムで一層充実した。しかも、その根底にあるところの"アメリカ社会の暗部"に対しての訴えがにじみ出ているところにも注目すべきである。

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 スタートのM1."Compassion"から、アルバム・タイトル曲の登場。「思いやり」ということか、彼の話からもインストゥルメンタル曲に深い意味を持たせるがための試みである今作のスタートである。 静というか深層心理に迫りそうな静かなピアノの演奏から終盤への盛り上がりが素晴らしいのだが、ピアノとベースの絡み合いも聴きどころ。アメリカ社会におけるそれは苦しみや不安の表現から、襲ってくる得体のしれない波を表現しつつ、思いやりの心を描きたっかったのだろうか。このトリオは「有色人種の3人組」というところにも意味が見えてくる。
 M2." Arch" アパルトヘイト廃止へ尽力したDesmond Turu大主教に心を寄せた曲。
 M3." Overjoyed"は、ピアノ・ジャズの世界そのものの演奏。アメリカン・ジャズの匂いがプンプンとしている。亡きチック・コリアを脳裏に描きつつ彼の感謝・祝福の言葉なのだろうか。
 M5."Prelude: Orison" 静かな世界に響く祈りの心。哀感と美しさのピアノの世界にベースの響きも美しく。これは彼が尊敬し愛した南インド出身の薬学博士で平等主義者のY.Raghunathanに捧げた曲だ。
 M6." Tempest " 激動と動揺の社会現象を荒々しく表現し、M7."Panegyric"では、努力と尽力の礼賛の心の表現か、メイ・ハン・オーの低音ベースが光る。。
 M8."Nonaah" アイヤーの拠り所であるRoscoe Mitchellの曲で、前衛的攻めのトリオのインタープレイは圧巻。 ソーリーの巧みなアタックが印象的。
 M11." It Goes" 失った人(人種問題研究者でもあった作家・詩人Eve L. Ewing)への思慕と感謝、そして寂しさの複雑な世界を描く。優しさ溢れる曲。
 M12." Free Spirits / Drummer’s Song " 喜びの表現が感じられ、前途への意欲を感ずるところが救いか。

 この究極のアイヤー音楽は、人種問題を背景にした葛藤と不安とある意味での戦いが描かれている。そして一方歩んできた人生の経験の中で得られた感謝の心の世界の表現の曲も含めている。それは社会的に政治的に共感的な立場を取れる重要人物を賞賛する。又痛ましい出来事に対しては追悼の心を表すことを忘れていない。

 インストゥメンタル・ミュージックでの表現において、創造的な試みが彼の一つのテーマでもあったようで、このアルバムは、曲単位というよりはトータルに聴いて理解すべきものと思った。全体的に派手な華々しさの明るさはない、テーマからしてもちょっと重く暗い世界だ。しかし音楽的展開においては多彩で聴き応え十分。単なる暗さというのでなく、感謝の世界や、人間の生き様への敬愛の心の美しさのある音楽も演じてくれ心休まるところもある。これには特に息の合った三者のインタープレイが見事で、描くところ現代アメリカン・ジャズではやはり異色の世界を構築している。
 アイヤーの音楽スタイルは、アメリカの歴史的な偉大な作曲家・ピアニストの世界が基礎にあるのは間違いないが、60年代から70年代のアフリカ系アメリカ人の創造してきたジャス音楽の影響を受けての彼自身の独創的な世界を構築するに至ったものだろう。そしてそこには「社会的問題意識を表現してゆく作品としての意義」を、このようなコンテンポラリーなジャズ世界に求めているのかもしれない。

(参考)
<ヴィジェイ・アイヤー VIJAY IYER>  (SNSより引用)
 ニューヨーク、オルバニーで生まれた(1971年)。アメリカ合衆国へのインド系タミル人移民の息子である。3歳から15年間、西洋クラシックのヴァイオリンを習う。更にほとんど独学でピアノを習得。イェール大学で数学と物理学を学び、カリフォルニア大学バークレー校で音楽認知科学を学びながらジャズ・クラブに出演し音楽の道へと進んだという異才。
 マンハッタン音楽学校、ニューヨーク大学、ニュー・スクールで教鞭をとり、カナダ、アルバータ、バンフ・センターのジャズ・クリエイティブ・ミュージック国際ワークショップのディレクターをつとめている。2014年1月には、ハーバード大学の芸術科学学部初のフランクリン・D、フローレンス・ローゼンブラット教授に就任した。
 多くのレーベルで作品をリリース。2009年のACTデビュー作「Historicity」がグラミー賞にノミネートされ、一躍ニューヨーク・ジャズ・シーンをリードするピアニストとして注目を集めた。 又、イラク・アフガニスタン戦争に行った兵士たちの詩がフィーチャーされた『ホールディング・イット・ダウン』は注目された。
 ECMにおける初リリースは、2007年のノート・ファクトリーのメンバーとして参加したライヴ・アルバム『ファー・サイド』。そして2014年に室内楽との共演作品『ミューテイションズ』でECMリーダー・デビューを果たす。続く『Radhe radhe:ライツ・オブ・ホーリー』、そして2015年トリオ作品『ブレイク・スタッフ』など次々と異なるプロジェクトで活動し精力的に作品を発表。2021年リリースの新トリオ(今アルバム・メンバー)作品『Uneasy』は、各メディアで絶賛された。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    87/100

(視聴)

 

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2023年10月24日 (火)

ケヴィン・ヘイズ HAYS STREET HART 「Bridges」

刺激を抑えた旅情や叙情性の流れがハイレベル

<Jazz>

HAYS STREET HART 「Bridges」
SMOKE SESSIONS RECORDS / Import / SSR2307 /2023

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Kevin Hays (piano)
Ben Street (bass)
Billy Hart (drums)

2023年4月13日米NYのSear Sound Studio 録音

  ピアニストのケヴィン・ヘイズ(1968年米ニューヨーク州生まれ)は、 Kevin Hays Trio 、そして近年 Kevin Hays New Day Trio などで知られるところだが、 先ごろのベーシストのベン・ストリート(米メーン州生まれ)、ドラマーのビリー・ハート(1940年米ワシントンD.C.生まれ)と組んだトリオによるこれは第 2 作目となる『Bridges』が リリースされた。
 このメンバーの前作『All Things Are』(SSD-2102/2021)を取り上げたのは2年前だが、元々、これはビリー・ハートの80歳という誕生日を祝うために集まった即席セッション・ライブを行ったもの。そしてパンデミックの最中、ストリーミング配信のためのライブ演奏であったが、リハーサルの時間もほとんどなかった 1 回きりのコンサートのつもりだったようだ。しかし、この3 人のミュージシャンが、なんとこのトリオの世界を探求に向く方向に一致して、2021 年に3人名義でのトリオのデビュー作『All Things Are』を発表した経過だ。それの評価が良かったせいか、ここに2ndが登場することになった。この世代を超えたトリオが、多分相性が良かったのだろうと思うが、どこか抒情的な中に何となく温かみみたいなものがあり、そうかといって甘くは無く冷静な世界が構築されていて聴き応えあるアルバムを老獪に造り上げている。今回は環境の良いレコーデング・スタジオでの録音である。

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(Tracklist)

1. Butterfly (Kevin Hays) 6:16
2. Capricorn (Wayne Shorter) 5:52
3. Song For Peace (Kevin Hays) 4:31
4. With A Little Help From My Friends (John Lennon / Paul McCartney) 4:34
5. Row Row Row (Kevin Hays) 4:28
6. Throughout (Bill Frisell) 5:24
7. Irah (Billy Hart) 5:44
8. Bridges (Travessia) (Milton Nascimento, Fernando Brant & Gene Lees) 6:34

 どうも"Bridge"というタイトルは、"架け橋"の意味で、このトリオ結成後、相性の良さから継続的な取り組みの成果で実現したアルバムとしての意味に繋がっているようだ。現代の巨匠3人によるアンサンブルの繊細さハーモニーの美しさは、完成度が高くまさに、現代NYピアノトリオの実力を聴かせてくれる感がある。

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 M1." Butterfly" は叙情的なヘイズのピアノが地に付いたリズム隊の流れをベースに暖かさを感ずる世界を描く。昔ハンコックのファンク時代に同じ名の曲があったが、同じなのかあまりにイメージが違って解らない。
 M2."Capricorn"はウェイン・ショーターの曲で、後半にかなり3者それぞれのマニヤックな世界が展開して面白く刺激的。しかし沈み込んでゆくが如しで旨く最後はまとめる。
 M3."Song For Peace"  ヘイズの曲で、バラード演奏は静の中に息をのむようなスリルもあって見事。このアルバムの注目曲。
 M4."With A Little Help From My Friends" ビートルズの登場、ヘイズのロック心、まあこんなところか。
 M6."Throughout " 静に宿す神秘性が描かれる。
 M7."Irah" ハートの曲、変調するリズムの味付けはやはりドラマーか。
   M8."Bridges" 締めはアルバム・タイトル曲、ピアノの優しく美しい響きでスタートして、なんとなく心にしんみり響いてくる。

  結構スウィングする中に、刺激度の抑えた演奏で温かみとか優しさというか人間愛が感じられる世界を構築している。なんといってもむしろ難解にしないところにハイレベルを感ずる演奏である。やはりストリートとハートの曲の流れを作り上げる展開に、悠々とヘイズが余裕のピアノ・プレイで聴か̪し、それはどこか人間的なところに迫ってくるところがあって、前作に続いて、かしこまらずに余裕で聴けるところが良い。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100 
□ 録音    87/100

(試聴)

*

 

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2023年10月 3日 (火)

オリヴィア・メイセル Olivia Maisel 「A Moment In Time」

大人のジャズ・ヴォーカルを精神性を込めたスタイルでしっとりと聴ける

<Jazz>

Olivia Maisel 「A Moment In Time」
OLIVIA MAISEL / Canada / OLIVIA2301 / 2023

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Olivia Maisel - vocals
Thélonius Garcia -piano
Luc Herrmann - guitar
Alex Le Blanc - upright bass
John Buck - drums

 フランス・トゥールーズ出身、現在はカナダ・モントリオールで活躍するフランス系アメリカ人女性シンガーのオリヴィア・メイセルが、スタンダード中心に歌う、ソフトで透明感溢れる1枚。彼女の自己出版のデビュー・アルバムだ。

 彼女は、シューリッヒ・スクール(マギル大学)でジャズ・ヴォイス・パフォーマンスの学士号を取得し、モントリオールのシーンで活躍するカナダの偉大なジャズ・シンガーたちと共演してきた。音楽活動に加え、オリヴィアはニューヨーク大学(NYU)で音楽療法の修士号も取得している。
 そして在学中、カナダの偉大なジャズ・マスターたちとの関係を持ち、ジャズの即興演奏や作曲、そして編曲技能も習得した。一方ブラジリアン・カルテットのリーダーとして演奏したり、更にシンガーとしての技能の取得に努力したという。
 従って、このアルバムはデビュー盤であるが、かなりの遅咲きである。

(Tracklist)

1. Crazy He Calls Me 6:23_bp15643trw
2. My Foolish Heart 6:10
3. The Nearness of You 6:34
4. Send in the Clowns 7:23
5. Easy to Love 5:26
6. Embraceable You 5:30
7. Que Reste-T-Il De Nos Amours? 6:01
8. Last Time for Love 5:16

  M1."Crazy He Calls Me" 静かなギターの音から始まりおもむろに彼女の歌が始まる。どこか自己を振り返っての静かな中に意思の感じられる様を描くがごとくソフトなヴォーカルが好感だ。ピアノの美しい旋律のバックも頂きというところ。
 M2."My Foolish Heart" ピアノのしっとりとしたムードの前奏でぐっと静かに迫るヴォーカルは大人のムード。適度な編曲とインプロが光る。中盤のベース・ソロとピアノの味付けも味がある。

 このアルバムは彼女の何十年にもわたる個人的な経験を反映しているとのことで、「団結の物語、私たちが共通する過去、私たちが一緒に経験できる現在、そして希望と変化の未来」という彼女が伝えたい物語に基づいて曲を選んだという事を語っているようだ。
 そしてそのの背後にある彼女の意図についてあまり多くを明かしておらず、彼女は誰もがここで自身の物語のバージョンを見てもらう事を望んでいるようだ。そんなことをふと考える年齢になってのファースト・アルバムだということを知りつつ聴くのも良いことだ。

 M4."Send in the Clowns"には、フランク・シナトラを思い出すところだが、どこか明るさ・楽しさも感じられるところが良い。
 M6."Embraceable You" このラブ・バラードを、ベースのアルコ奏法の音とともに、ただ明るいだけでなくちょっと憂いを感じさせしっとりと描くところは大人の世界だ。
 
 いやーーしかし久しぶりに芸術性のある中に、精神性を感ずるしっとりとしたヴォーカル・アルバムに出会った感がある。その声には透明感があるし表現力も見事、スタンダード曲を自分の世界に取り込んで、フランスの洒落たところも取り入れつつ一つの世界を描き切ったところは納得である。
 バックの演奏も、ピアノ、ギター、ベースなどが歩調を合わせてのジャズ世界をしっとり描いていて好感がもてる。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌   90/100
□ 録音        87/100

(試聴)

 

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2023年9月23日 (土)

ミシェル・ンデゲオチエロ Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」

孤高の世界からの一大絵巻を展開する

<Funk, Soul, Reggae, R&B, Jazz>

Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」
Blue Note / Import / 4896894 / 2023
Digital File 88.2kHz/24bit Flac

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Meshell Ndegeocelle (Voc, Key, Bass, e-harp)

Jason Moran
Ambrose Akinmusire
Joel Ross
Jeff Parker
Brandee Younger
Julius Rodriguez
Mark Guiliana
Cory Henry
Joan As Police Woman
Thandiswa  (and others)

Gmn1w_20230920124801   ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello、本名: ミシェル・リン・ジョンソンMichelle Lynn Johnson、1968年8月29日 - )は、アメリカ合衆国の女性シンガーソングライター、ベーシスト、ボーカリストである。ベースのみならず、ギター・ドラム・キーボードといった楽器をこなすマルチ・ミュージシャンで、グラミー賞10度ノミネートの実績を誇る。今作は2018年以来となる待望のニュー・アルバムである。もともとネオ・ソウルのさきがけとして知られており、音楽的にはファンク、ソウル、ヒップホップ、レゲエ、ダブ、R&B、ロック、ジャズの要素を含むという彼女自身のオリジナルの世界であった。今回は名門ブルーノートへ移籍してのリリースで、いよいよジャズとしての本格的スタートとして期待されるところだ。
 今作は全曲ミシェル本人のもので、マルチ奏者/作曲家のジョシュ・ジョンソンがプロデュースを担当。さらに上記のようにジェフ・パーカー、マーク・ジュリアナなどジャズ界を中心に多くがゲストとして参加している。ジャズの因子は濃くなりつつも、彼女のルーツであるソウル、R&Bなど演じそれらを独自のサウンドへと構築しているところが聴きどころ。

  ミシェルは旧西独・ベルリン出身。米・ヴァージニア州へ移った後、ワシントンD.C.で育つ。ゴーゴー・ミュージック・シーンに加わってベースの腕を磨きながら、ハワード大学で音楽を学ぶ。その後、ニューヨークへ進出し、93年に『Plantation Lullabies』でアルバム・デビュー、既に30年のキャリアだ。翌年にジョン・メレンキャンプとのデュエット「ワイルド・ナイト」が全米トップ10のヒット。その後、多くの作品を発表し、グラミー賞ノミネートの常連にと評価は高い。スタジオ作品の前作は2018年の『Ventriloquism』。
  彼女の曲・歌詞にはアフロセントリズム(アフリカ系アメリカ人が,自らの起源をアフリカにもとめる思想。アフリカ中心主義)の世界観から、セクシュアリティ、ジェンダー、黒人のプライド、白人の人種差別のテーマが聴き取れる。

(Tracklist)

1.Georgia Ave (feat. Josh Johnson(sax,vo)) 2:40
2.An Invitation  2:21
3.Call The Tune (feat.Hanna Benn(vo))1:54
4.Good Good (feat. Jade Hicks(vo), Josh Johnson(sax, vo)) 3:28
5.Omnipuss 2:51
6.Clear Water (feat. Deantoni Parks(ds), Jeff Parker(eg), Sanford Biggers(vo))4:35
7.ASR (feat. Jeff Parker(eg)) 7:38
8.Gatsby (feat. Cory Henry(p), Joan As Police Woman(vo))  4:21
9.Towers (feat. Joel Ross(vib)) 3:35
10.Perceptions (feat. Jason Moran(p)) 2:14
11.THA KING (feat. Thandiswa(spoken words)) 0:27
12.Virgo (feat. Brandee Younger(harp), Julius Rodriguez(clavichord, organ)) 8:38
13.Burn Progression (feat. Hanna Benn(vo), Ambrose Akinmusire(tp)) 4:01
14.onelevensixteen 2:49
15.Vuma (feat. Thandiswa(spoken words), Joel Ross(vib)) 3:00
16.The 5th Dimension (feat. The Hawtplates(vo)) 5:24
17.Hole In The Bucket (feat. The Hawtplates(vo)) 5:30
18.Virgo 3 (feat. Oliver Lake (Arr.), Mark Guiliana(ds), Brandee Younger(harp), Josh Johnson(sax)) 6:53

 パンデミック期間中に音楽とじっくり向き合う時間を取ることが出来たというミシェルは、ブルーノート・デビューとなる本作について「昔からレコードのブルーノート・ロゴを見るのが好きだったわ。ジャズという言葉は私にはとても重いけど、自己表現を追い求めているこのレーベルに参加出来てとても感動している。このアルバムは、古いものを新しい方法で見るやり方について表現した作品で、両親が亡くなった時に全てが動き出したの。両親の死後、すべてが急速に変化し、私自身のものの見方も瞬く間に変わった」と語っている。そして「この作品は私の全てであり、私の旅、そして人生の一部よ」と言う。そんな気合いが入っているだけ一つの絵巻と言える充実感がある。
 タイトルは、Omnichordを使ってコロナ禍で自宅で今までの総決算を考えながら音楽製作をしていたことの表現らしい。

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 このように18曲73分という重量級で、曲はそのタイプも多彩である。リリース前に公開されM12.”Virgo”は近未来感覚というか宇宙感覚というか、なかなか味のある洒落たヴォーカルのアフロビートのジャズ、8分強の曲だがなかなか洗練されている。一方M15."Vuma"はヴォーカル・ムードは古典的アフリカンのイメージだ。
 M16."The 5th Dimension"はギターの響きが印象的でなかなか凝った曲で面白い。アルバムは、オープニングのM1."Georgia Ave"から多彩な楽器がバックで使われ、リズム感が快適である。このように全体にみてもしっとり感というものではない。
 ヴォーカルも多彩でバックはコーラスが効果を上げている。M2."An Invitation"はソフトでいいし、M8."Gatsby"のスロー・バラード調も良い。
 とにかく多彩で、M9"Towers "は他の曲とイメージが異なり、明るいポップの雰囲気であったり、M12."Virgo"はファンキーでかっこいい曲だ。

 私は、この世界は殆ど聴かないし、彼女の過去のアルバムも知らない方が多いので、曲の評価や味付けの内容の分析は全く出来ないのだが、過去の流れからみてちょっと違う世界なのかもしれないが、ハウス・ミュージックぽい曲の展開もあり、ディープ・ハウスを思わせるところもあった。
 しかし、まあフォークソウルの流れを重視したファンク、アフロビートの世界として聴きたいところだ。

 いずれにしても音楽技術の曲作りや演奏、歌にかなりの高度なところを感ずるし、なかなか味わい深い。ただ所謂ジャズ色はそう濃くなくて、このジャンルは簡単には語れない。今後がどんな方向に行くのかと注目したいところだ。

(評価)
□ 曲・演奏・歌   88/100
□ 録音       87/100

(試聴)
 

*

 

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2023年9月 7日 (木)

ニッキ・ヤノフスキー Nikki Yanofsky 「Nikki By Starlight」

懐かしのアメリカン・ソングを若き力で歌い上げる

<Jazz>

Nikki Yanofsky 「Nikki By Starlight」
MNRK Music Group / Import / MMUC286912 / 2023

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Nikki Yanofsky : Vocals 
Produce : Nikki Yanofsky、Paul Shrofel

 いままでその気で聴いたことのなかったカナダ・モントリオール出身のニッキ・ヤノフスキー。今回のニュー・アルバムはグレイト・アメリカン・ソングを取り上げたジャズ・ヴォーカルものということで考察を兼ねて聴いてみた。

Iha024382nikkiyanofsky400x600  彼女は、2006年、当時12歳でモントリオール・ジャズ・フェスティバルで最年少のアーティストとして単独公演、その後ジャズなど音楽界で活躍を続けるヴォーカリスト。子供の頃からエラ・フィッツジェラルドを敬愛し、2007年にはトリビュートアルバム『We All Love Ella』にNatalie Cole、Chaka Khan、Dianne Reevesなどの中に弱冠13歳で参加し世界中のジャズファンに知られることになった。2008年アルバム『Ella…Of Thee I Swing』でデビューした。又、2010年にはバンクーバー冬季五輪の開会式で、カナダ国歌を歌唱し世界中の注目を集めたまさに経過は驚きのヴォーカリストだ。

 2010年2ndアルバム『Nikki~for Another Day』では”A列車で行こう”などのジャズスタンダードも歌うが、若さのポップ路線を披露し、2014年『Little Secret』、2020年『Turn Down The Sound』とR&Bからポップ系でのアルバムを多くリリースしている。
 今回は全編ジャズ・スタンダードとちょっと大人の味に傾いてきたというところが聴きどころのようだ。

(Tracklist)

1.Hoagy Carmichael: I Get Along Without You Very Well (Except Sometimes)
2.Lew Brown, Sam H. Stept, Charlie Tobias: Comes Love
3.Carl Sigman, Sidney Keith Russell: Crazy He Calls Me featuring Greg Phillinganes(p)
4.Cole Porter: I Get A Kick Out Of You
5.Murray Grand: Comment Allez Vous
6.Victor Young, Ned Washington: Stella By Starlight
7.Bob Haymes, Marty Clarke:They Say It's Spring
8.Lorenz Hart, Richard Rodgers: It Never Entered My Mind featuring Greg Phillinganes(p)
9.Andre Hornez, Henri Betti: C'est Si Bon
10.John Wes Montgomary: West Coast Blues
11.Bart Howard: Let Me Love You
12.Antonio Carlos Jobim, EUGENE LEES: Quiet Nights Of Quiet Stars (Corcovado) featuring Nathan East(eb)
13.Bruno Brighetti, Bruno Martino: Estate featuring Arturo Sandoval(flh)
14.Gus Kahn, Nacio Herb Brown: You Stepped Out Of A Dream
15.Lennard Bernstein,Beetty Comden,Adolph Green: Some Other Time


  確かに選曲はアメリカン・ジャズの多岐にわたっているのに気が付く。彼女は、このアルバムのレコーディングを、「自分の最も純粋な部分を再び引き出すことができた楽しい時間だった」と回想しているようで、もともと入り口がエラ・フィッツジェラルドであってやはりアメリカン・ジャズが好みだという事が解る。まあ30歳前後であってここらあたりから、ポップは卒業してもいいのかもしれない。

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 M1." I Get Along Without You Very Well " ストリングス入りのバックでスタートするもあいさつ程度で、メインはギター、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテットでオープンニングにふさわしくリズムカルに比較的オーソドックスな歌。
 M2."Comes Love"になってニッキ節が始まる。バックはビック・バンド・スタイルで意外に古臭い印象。ヴォーカルは中高音にウェイトがある。
 M3."Crazy He Calls Me" ピアノとのデュオ・スタイル、ちょっと節回しに彼女らしさが。
 M4."I Get A Kick Out Of You"ベース誘導型で疾走してジャズっぽさがある。ここでもバックは管楽器が入って古臭い。
 M5."Comment Allez Vous" バックの女性コーラスのハモリで聴かせる。
M6."Stella By Starlight", M8."It Never Entered My Mind" のスロー曲は、意外に女性っぽい味を出していて味がある。しかしM6は、相変わらずバックの複数の管楽器がうるさい。M8.はピアノとストリングスでいい味だ。
 M7."They Say It's Spring"は意外にオーソドックス。M9."C'est Si Bon"は軽快でいい。
 M10." West Coast Blues"ハモンド・オルガンのバックで楽しい。
 M12." Quiet Nights Of Quiet Stars" バックのギターが生きていてムード良好。歌はやっぱりうまいし、発声も余裕たっぷり。
 M13."Estate " 待ってましたの登場、Arturo Sandovalのflhのサポートも気が利いていて旨く仕上げている。
 M14."You Stepped Out Of A Dream" ごくオーソドックスに。最後のM15."Some Other Time" アルバムの締めをゆったりと語り聴かせてくれる好感。

 なんと想いの外、極めてオーソドックスなスタイルのヴォーカルで逆に驚いた。優しさの編曲でジャズ入門型のアルバムで角もなく聴き応えは気持ちいい。女性ヴォーカリスト王国のカナダで彼女は成長していることが解る。更に旨く育ってジャズを楽しませてほしいものだ。

(評価)
□ 編曲・歌   87/100
□ 録音     87/100
(試聴)

 

 

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2023年9月 2日 (土)

ビル・エヴァンス・リマスター・シリーズ Bill Evans 「Waltz for Debby」etc

2023年リマスタリングにて、ハイレゾにてSACD盤、MQA-CD盤にて登場

ビル・エヴァンス・リマスター・シリーズ Bill Evans Trio 
3アルバム 「Waltz for Debby」 「Sunday at the Village Vanguard」「You Must Believe In Spring」

 50年以上の経過の中で、LP、CD にて何回かリマスタリングされリリースされてきた名作中の名作が、ここに来て10年ぶりの2023年リマスターを施し、Hi-Res盤として、SACDとMQA-CD(UHQ-CD)の二本立てでリリースされた。

■ Bill Evans Trio 「Waltz for Debby」
  MQACD(UHQCD) 176KHz/24bit
  CRAFT REcordings / JPN / UCCO-46012 / 2023

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ビル・エヴァンス(piano)
スコット・ラファロ(bass)
ポール・モチアン(drums)

1961年6月25日 ニューヨーク、ヴィレッジ・ヴァンガード・ライヴ録音

 2016年にRIAJゴールド・ディスクにも認定され、日本で最も売れているジャズの名盤『ワルツ・フォー・デビイ』が、10年ぶりにオリジナル・テープからオール・アナログ・マスタリングが施されたことを受け、同日録音された下のアルバム『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』と共に最新リマスターリング音源でHi-Res高音質盤でリリースされた。そして後期の高品質録音での名盤である『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』も同時に同様にHi-Res盤でリリースされた。

Bill_evans1w  今や、Hi-Res時代迎え、CD盤よりビニール盤(LP)の方が売れる時代となり、音楽産業も大変革を迎えている。もともとネットによるストリーミングという便利で高音質の世界が構築され、それが当たり前となってきた今、一般CDの意味が無くなってきてしまった、そこで高音質盤ということでHi-Res盤として"SACD"、"MQA-CD"という世界なのである。
 そこで、私としては廉価で高音質ということで、現在いろいろと話題の絶えないMQA盤を取り敢えず購入してみたと言うことである。まあ手元には過去のアルバムが存在しているのであるが、果たして音質でも何処まで改良されたかと言うことが聴く目的になってしまったが、この「Waltz for Debby」「Sunday at the Village Vanguard」の2枚を仕入れた。「You Must Believe In Spring」の方は既にHi-Res-MQA版192kHz/24bitのMQA-FLACで手に入れて聴いているため、今回は購入してない。

 なお、このCD、ビル・エヴァンスが兄の愛娘デビイに捧げた可憐なタイトル曲や、何処か優美な知的あふれる永遠のピアノ・トリオ名盤である。そしてこれは本ライヴの11日後に突如亡くなってしまった天才ベーシスト、スコット・ラファロとの最後の共演版で、ポール・モチアンとの至高のトリオの4枚目作品で、ニューヨークのクラブでの録音モノである。

(Tracklist)

01.マイ・フーリッシュ・ハート My Foolish Heart
02.ワルツ・フォー・デビイ Waltz For Debby
03.デトゥアー・アヘッド Detour Ahead
04.マイ・ロマンス My Romance
05.サム・アザー・タイム Some Other Time
06.マイルストーンズ Milestones

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

■ Bill Evans 「Sunday at the Village Vanguard」
    MQACD(UHQCD) 176KHz/24bit
  CRAFT REcordings / JPN / UCCO-46013 / 2023

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ビル・エヴァンス(piano)
スコット・ラファロ(bass)
ポール・モチアン(drums)

 上の超人気アルバム『Waltz for Debby』と対をなす同日同場所録音のライヴ盤である。

(Tracklist)

1 グロリアズ・ステップ Gloria's Step  6:11
2 マイ・マンズ・ゴーン・ナウ My Man's Gone Now 6:27
3 ソーラー Solar 8:59
4 不思議な国のアリス Alice in Wonderland 8:37
5 オール・オブ・ユー All of You  8:19
6 ジェイド・ヴィジョンズ Jade Visions  3:45

 今回は、米国オリジナル・アナログ・マスターを基にした2023年リマスタリング音源192khz24bitを採用。ジャズ愛好家ならもう既に手を変え品を変えしてリリースしてきたアルバムなので聴き飽きているといっても過言でないだろうが、ビル・エヴァンスものは素晴らしい録音物って殆どと言っていいくらい無いので、どのくらい良くなったというところが今回の興味であって、その為なんとSACDとMQAの二種のHi-Res盤のリリースなんですね。MQAに関しては英国MQA社の経営破綻という事で今後にいろいろと噂されているわけであるが、私の場合はオーディオ装置はMQA対応している為、SACDよりは廉価であるMQA盤でHi-Res音源として聴いている。
 なお今回のリリースでも、オリジナルLPのライナーノーツの日本語訳を収載している。

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 結論的に、そんなに目の覚めるような画期的高音質を実現したという事はない。しかし右から聴こえてくるピアノの音は確かに透明感をました感がある。それよりも私は今回は、アルバム『Sunday at the Village Vanguard』の方に興味を持った。それはもともとビル・エヴァンスはピアノ・トリオものといっても、ピアノ・ワンマンというのでなく、トリオそれぞれ3者の味を大切にする演奏スタイルであり、このアルバムでは、特に演奏時間が8分を超える曲が3曲あって、それらではスコット・ラファロのベースがより温かみを持って前面に配置されしっかり聴きとれるようになった事だ。更にポール・モチアンのドラムスでもブラッシによるスネアやシンバルなどの音がより繊細に明瞭となっているように感じ、この点でも実に楽しい演奏となっている。そんなことからトリオ演奏の楽しみが増したアルバムとして評価したくなったのである。
 とにかく、いくら技術的に音質改良が進歩したと言っても、元の録音がどうであったかが命であって、その上での改良だという事は知っているべきところである。今回も取り敢えず記念的に購入してみたが、それでも効果があってよかったと思っているのだ。

(評価)
リマスター・Hi-Res盤としての効果  80/100

(参考試聴)

 

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