アダム・バルディヒ

2024年2月 1日 (木)

アダム・バウディヒ& レシェク・モジュジェル Adam Bałdych & Leszeck Możdżer 「Passacaglia」

究極のポーランド・ジャズのクラシックとの融合からの発展系の美

<Jazz>

Adam Bałdych & Leszeck Możdżer「Passacaglia」
ACT / Import / ACT9057 / 2024

Passacagliaw

Adam Bałdych (vln)
Leszeck Możdżer (p)

Recorded at Polish Radio S4 Jerzy Wasowski Studio in Warsaw on January 23rd – 25th 2023

 ポーランドを代表するジャズミュージシャンの「ヴァイオリンの天才」アダム・バウディヒと、ピアニスト、レシェク・モジュジェルによるデュオ作品の登場(ポーランドの名前は発音が難しい。日本語で書くといろいろとあります)。すでに両者はここで過去に紹介ずみだが、特にバウディヒはヘルゲ・リエンとの共演などや、2019年の来日の際には話をすることが出来たりと、たっぷり楽しませていただいており、ここにニュー・アルバムを喜んでいる。又ピアニストのレシェク・モジュジェルも私の好きなピアニストで、『Komeda』(ACT9516,2011)などのアルバムで過去にここで取り上げてきた。とにかく澄んだ硬質のピアノ打鍵音は素晴らしい世界を構築する。
 二人の共演は、2009年にヴロツワフ歌劇場が初めてで、マウリッツ・シュティラー監督の無声映画「アルネ家の宝物」の即興音楽を演奏した。好評でありながら彼らは10年以上も経って、ようやくここに、2023年1月にポーランドのスタジオに入りが出来て、この「パッサカリア」セッションを実施できたという経過だ。


Maxresdefaultw_20240130184501  アダム・バウディヒは、最新の紹介では、"1986 年ポーランド生まれのヴァイオリニスト/ 作曲家。カトヴィツェ音楽アカデミーを卒業し、ヘンリク・ゲンバルスキに師事。「ヴァイオリンの天才」と称され、14 歳でキャリアをスタートさせ、クラシック音楽の成果とヴァイオリンの現代言語を即興演奏家の才能と組み合わせた革新者としてすぐに認められた。ポーランド、ドイツ、日本、アメリカ、オーストリアなど、様々な国のジャズフェスティバルや一流のコンサートホールでツアーを敢行している。ラース・ダニエルソン、ニルス・ランドグレン、ビリー・コブハムなど、並外れたアーティストと共演し、ドイツの音楽業界賞である ECHO Jazz、ポーランドの金功労十字章、ポーランド文化功労勲章など、数々の賞を受賞している。"と書かれている。

417727778_8152939w   レシェク・モジュジェルも最新紹介は、"1971 年生まれのポーランド出身の音楽家 / ジャズ・ピアニスト/ 作曲家。5 歳の時に両親の勧めでピアノを始め、1996年にグダニスク音楽アカデミーを卒業。これまでクシシュトフ・コメダ賞、ポーランド外務大臣賞など、国内の主要音楽賞を多数受賞している。これまでに100以上の音楽作品に参加しており、パット・メセニー、デヴィッド・ギルモア、トーマス・スタンコなど多数のアーティストとコラボしている。映画音楽の作曲家ともコラボレーションしており、日本を舞台にした『HACHI 約束の犬』などの映画音楽で演奏している。世界各国で公演を行っており、ショパン生誕 200 年にあたる2010 年には、東京紀尾井ホールなどで来日公演を行った。"と、ある。


 さて今作『Passacaglia』は、バウディヒとモジュジェルが共同で書いた自由な即興演奏を多用したオリジナル曲4曲をメインに、バウディヒが6曲、モジュジェルが2曲のオリジナル曲を提供。そしてクラシック畑よりエリック・サティや、ジョスカン・デ・プレスなどの3曲の演奏が含まれている。
 また、このアルバムでは、私にはその内容や意義は知るべしも無しの「ルネッサンス様式のヴァイオリン、2台のピアノ(A+442 HzとA+432 Hzの調律)、プリペアドピアノという特別な楽器の組み合わせにより、その音色に驚くべき、高貴な音の組み合わせによる融合を巧みに作り上げた」と紹介されている。この組み合わせにより、確かに彼らの持つ複雑にして分類困難な独特のスタイル、そして多岐にわたるジャンル、さらには聴いてすぐ解る音色の変化に伴っての音楽表現の多様性を実現し、もともとの美しくエレガントなクラシック調の室内楽の世界を表現したり、両者の交錯による激しさのあるジャズ即興演奏が繰り広げられている。
 聴きようによっては、昔よく聴いたクラシック古典派のベートーベンなどのヴァイオリン・ソナタを愛していた私にとっては、むしろこのようなデュオは、音楽学者には笑われるかもしれないが、その発展形にも聴けて一層楽しいのである。

(Tracklist)

1: Passacaglia (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
2: Jadzia (Adam Bałdych)
3: Moon (Adam Bałdych)
4: December (Adam Bałdych)
5: Gymnopedie (Erik Satie)
6: Polydilemma (Leszek Możdżer)
7: Le Pearl (Leszek Możdżer)
8: January (Adam Bałdych)
9: Beyond Horizon (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
10: Saltare (Adam Bałdych)
11: Circumscriptions (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
12: Resonance (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
13: Aurora (Adam Bałdych)
14: O ignee Spiritus (Hildegard von Bingen)
15: La deploration sur la mort d’Ockeghem (Josquin des Prez)

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 とにかく、両者の卓越した作曲と演奏能力により、その上に楽器にも曲により組み合わせの配慮がされ、この組み合わせにより、確かに彼らの持つ複雑にして分類困難な独特のスタイル、そして多岐にわたるジャンル、さらには音色の変化に伴っての音楽表現の多様性を実現し、もともとの美しくエレガントな室内楽の世界を表現したり、両者の交錯による激しさのある即興演奏が繰り広げられている。このあたりは過去にも聴く度に驚かされていながら、引き込まれて行く世界であったが、このアルバムでも同様で、魅力が溢れていた。
 私自身はなれてきたのか、かっての作品より今作の方が、かなり身近に受け入れやすく感じたところである。

 M1." Passacaglia " 美しいヴァイオリンのピッチカートの音とクリアなピアノの音からスタートし、この両者の即興の交わりが見事。うっとりと聴いていると4分があっという間に終わってしまう。
 M3." Moon "M11." Circumscriptions"の両曲は、どこか民族的響きの曲。両者の跳ねるような音の展開が圧巻。
 M4."December" ヴァイオリンの美しい響き、非常に魅力的な曲。ピアノは支えるがごとく控えめな音。
 M5."Gymnopedie" サティの曲、ピアノとヴァイオリンの静の世界を描く美。
 M7."Le Pearl" モジュジェルの曲で美しいピアノ。M8."January"はバウディヒの曲で美しいヴァイオリン。両曲とも後半のコラボレーションも見事。
   M9."Beyond Horizon" 共作だけあって、美しさの溢れたインタープレイ。
   M12."Resonance" タイトルどうりの響きが美しい。 
   M13."Aurora " ヴァイオリン奏法の技量の高さ、ピアノの美的世界がみごとに展開され、即興と思われるところにおいても聴き応え十分。
 M14."O ignee Spiritus " 深遠な世界に導かれる。
 M15."La deploration sur la mort d’Ockeghem" 最後を飾る悲嘆から安堵の世界。

 
Img_1826trw2w いずれにしても、アダム・バウディヒとレシェク・モジュジェルは、持ち合わせている教養とミュージックにおけるジャズの意義の上に、その卓越したセンスと技法で高貴な室内楽における美的バランスの取れた情緒と美に満ちた世界を創り出し、ときに激しい感情を沸かせ、即興の対話と交錯をも演じている。彼らの音楽的な世界の高さはまさにハイレベル。聴く者の心を知りつつ訴えるところは、繊細さとダイナミックさとの組み合わせにより並みでない世界を構築し、そこには神秘的な魅力で迫ってくる。おそらく今年の最高傑作の一つであろう。 (写真→バウディヒと私 2019年)                                                                                                   

(評価)
□ 曲・演奏 95/100
□   録音   92/100

(試聴)

 

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2019年9月27日 (金)

アダム・バウディヒAdam Bałdych =「sacrum profanum 」ジャパン・ライブ

Daldychdys アダム・バウディヒとクシュストフ・ディスのライブ・デュオ

・・・小ホールでの白熱の緩急自在の完全アコースティック演奏
・・・今年リリースしたアルバム「sacrum profanum」から

 

 ポーランドのヴァイオリニストのアダム・バウディヒは牧歌的であり静謐な世界を描くことで数年前から注目しているが、その彼とピアニストのクシュストフ・ディスの昨日(2019/9/26)ライブ・デュオ演奏。(アダム・バウディヒのアルバムは過去にもここで取り上げている=アルバム「Bridge」(2015/11/14)、アルバムBrothers」(2017/7/30))

 会場は上越ラ・ソネ菓寮。曲目はACTレーベルから今年リリースされたアルバムからである。(↓)

<Jazz>
Adam Bałdych Quartet「sacrum profanum」
ACT / Germ / 9881-2 ACT / 2019

Sacrumprofanum

(このジャケはアダム・バウディヒとクシュストフ・ディスに当日サインして頂いたもの)

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 収録曲は上のようで、アダム・バウディヒのカルテットである。そして今回来日ライブはそのメンバーのアダム・バウディヒとクシュストフ・ディスのデュオという形である。

Adam Bałdych アダム・バウディヒ - violin
Krzysztof Dys クシュストフ・ディス - piano

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 曲目は全く私には解らないのだが、紹介による上のように神聖でクラシックな Hildegard von Bingen (ヒルデガルト・フォン・ビンゲン )或いは Thomas Tallis(トーマス・タリス)の曲などを アダム・バウディヒによりアレンジされたものとポーランド・フォークの影響を受けた彼の曲と言うことだ。
 過去のアダム・バウディヒのアルバムも、ヘルゲ・リエン・ピアノ・トリオをバックに、牧歌的な優雅にして広大な世界、そして静謐な音展開、更に時として激しい高揚をみせる演奏で注目してきたが、今回もその通りの演奏を小さなホールで、完全アコースティック演奏を聴かせてくれた。
 特に緩急自在の彼のヴァイオリンは感情を込めた静謐の演奏が特に素晴らしい。それにクリシュストフ・ディスは元クラシック・ピアニストであるだけに演奏の確実性はみごとで、インプロもまじえながら美しい世界を描いていた。

 何時も感ずることだが、この上越のラ・ソネ菓寮に於けるライブは小会場であるだけに、完全アコースティックで、静かな中の緊張感は尋常で無く、そこに繊細なデュオによる音が交錯しそして次第に演奏は盛り上がり絶頂に至る流れは素晴らしい。とにかくアット・ホームで、演者と聴衆の親密感があり素晴らしいライブであった。

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(会場ラ・ソネにて    右は私も一緒に記念撮影)

 

[(参照) 以下 ブログ「タダならぬ音楽三昧」よりの紹介文]

Adam Bałdych (アダム・バウディヒ)

 ポーランドのヴァイオリニスト、作曲家。16歳で既に国際的に活躍(ドイツ、ポーランド、セルビア、ハンガリー、インドネシア、スペイン、フランス、アメリカ)していた。最初、天才児と呼ばれ、今はヨーロッパで最もすぐれたジャズ・ヴァイオリニストの一人と言われている。2012 年、ACT Music レーベルより最初のアルバム "Imaginary Room" をリリース。これはヨーロッパの第一線で活躍するジャズ・ミュージシャン (Lars Danielsson、Jacob Karlzon、Verneri Pohjola、Morten Lund、Marius Neset)と録音されたもの。第二作目 "The New Tradition"はイスラエルのピアニスト Yaron Hermanと録音され、2014年5月にリリースされた。そして三作目 "Bridges" はノルウェーの Helge Lien Trio とコラボレーションしたもので 2015 年 8月に、四作目 "Brothers"は 2017 年 8月に Helge Lien Trio と Tore Brunborg とが参加している。

 Adamはドイツで最も重要な音楽賞 ECHO Jazz 賞の2013 年優勝者であり、ポーランドの「素晴らしき芸術」(Gazeta Wyborcza、Radio Zachod とTVPの三つのメディアによる)投票の優勝者でもある。更に、2011 年 Jazz Melomani の Jazz Hope 部門でグランプリ、 2012年には Jazz Melomani で年度優勝している。

 彼はまた 2013 年と 2015 年にポーランドの音楽賞 Fryderyk 賞(アメリカのグラミー賞相当)にノミネートされた後、2016 年度ジャズ・アーティストに選ばれている。アルバム "The New Tradition" は Best Jazz Album 2014 賞を受賞(TVP プログラム 2 と Jazz Melomani 協会により毎年 Gala Grand Prix Jazz Melomani の中より選ばれる)。2016 年 6 月にはポーランド大統領より Gold Cross of Merit 勲章を受章した他、Medal of Merit 勲章を文化的貢献・成功に対して受章している。

 2019年に 3月、新たにAdam Baldych Quartet (Baldych / Dys / Baranski / Fortuna)のアルバム "Sacrum Profanum" を発表している。

 

Krzysztof Dys (クシュストフ・ディス)

 1982 年生まれ。ポーランド人のピアニストで即興演奏家。イグナシー・ヤン・パダレウスキー音楽院でクラシックピアノの博士号を取得、現在は同学院で講義も受け持つ。クラッシックではスクリャービン国際ピアノ・コンクールで 3位(2007 年、パリ)、ジャズでワルシャワ・ジャズ・コンテストで 2位、「ジャズ・ナッド・オドゥラ」フェスで 1位となるなど、若いうちからクラシックピアノの賞を数々受賞。マイルス・デイビス、ハービー・ハンコック等に触発され、ジャズに傾倒。2002年以来、Soundcheck Quartet の一員として、6 枚のアルバムをリリースし、国内外の名だたる賞を受賞している。2016 年に自身が主宰するトリオとして初のアルバム『Toys』を発表。Adam Bałdych Quartet のメンバーでもある。

(視聴) Adam Baldych Quartet

 

 

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2017年7月30日 (日)

アダム・バウデフとヘルゲ・リエン・トリオAdam Bałdych & Helge Lien Trio のニュー・アルバム「Brothers」

牧歌的な静謐とスリリングな緊張感と・・・私好み!!
 ~果たして、神への賛美の叫びか~

 

<Jazz>
Adam Bałdych & Helge Lien Trio 「Brothers」
ACT / Germ / ACT 9817-2 / 2017

 

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Adam Bałdych (vln, renaissance vln)
Helge Lien (p)
Frode Berg (b)
Per Oddvar Johansen (ds)
Tore Brunborg (sax) (M5,6,8)

Music composed and arranged by Adam Bałdych
except 7 composed by Leonard Cohen and arranged by Adam Bałdych & Helge Lien

 

 ヴァイオリニストのアダム・バウディフAdam Bałdych(ポーランド1986年生まれ)の新作だが、前作『Bridges』(ACT9591-2,  2015)同様にノルウェーを代表する我が愛するヘルゲ・リエン・トリオとの共作となっている。しかし曲はバウディフによるもので(レナード・コーエンの”Hallelujah”の1曲以外)、あくまでもヘルゲ・リエン・トリオはサポート役。と、言ってもヘルゲ・リエンのピアノが重要で、この音なしでは考えられない曲作りである。
 又ノルウェーのサックス奏者トーレ・ブルンボルグが3曲に参加して味付け。
 どうもバウディフの原因は解らないが亡くなった弟の為に捧げられたアルバムのようだ。そんなところからも哀感あるアルバム作りとなっている。

 

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(Tracklist)
1. Prelude (1:22)
2. Elegy (7:34)
3. Faith (4:52)
4. Love (6:21)
5. One (6:50)
6. Brothers (6:06)
7. Hallelujah (6:08)
8. Shadows (6:32)
9. Coda (4:21)

 

Adambaldych4_teaser_700x M1. ”Prelude” は、ヴァイオリンとピアノのデュオで冒頭から私が勝手に感じている北欧的な哀愁そのものだ。
 M.2. ”Elegy”の入り方はドラムスとピアノの不安なる打音でピンク・フロイド(ロジャー・ウォーターズ)流。ここでもヴァイオリンとピアノが哀感のある叙情を描き、又一方スリリングな味のヴァイオリンも登場し、懐かしのキング・クリムゾンといった雰囲気をみせる曲。ロジャー・ウォーターズの近作『is this the life we really wants? 』は、ピアノの音を重量感を引き出すに使っているが、それは感覚的には、この曲でも共通点。・・・・と、こんな具合にプログレッシブ・ロックと比較することは叱られそうだが(リエンがウォーターズのファンだと言うのでお許しを)、しかしその共通点が見いだされるところが面白い。しかし醸し出す哀感は完成度の高い曲だ。
  M3.”Faith”はピアノの美しさが前面に。M4. ” Love”の、ヴァイオリンのピッチカート奏法は意外に牧歌的というかトラッド的雰囲気を生み出すんですね。

02helgelientrio2014_lamapre M6.”Brothers”が凄い。静から動、そしてダイナミックな展開。これは単にジャズという世界に止まっていない。聴きようによってはプログレッシブなロックでもある。人一人の激動の人生を表現しているのだろうか?素晴らしい。さすがピンク・フロイド党のリエンが・・・関わっているだけのことはある。
 M7.” Hallelujah” 先頃惜しまれて亡くなったレナード・コーエンと言えばこの曲だ。彼が亡くなる直前までライブで歌い込んでいた。しかし私はこの曲の良さは知っているが、実はその唄う意味を完全に理解しているわけで無い。これ自身は”神の賛美、喜び・感謝の叫び”というのは解るが、ここに取りあげられたことから逆にその中身の深さに迫ってみたいと思ったところである。しかしこの曲も完全に彼らのこのアルバムのモノに昇華している。
 M8.“Shadows”の、ヴァイオリンとサックスが、このように美しく重なり合っての演奏は発聴きだ。
 M9.”Coda”ヴァイオリンそしてピアノの調べは如何にも哀愁感たっぷり。

 

 実はこのアルバム、購入に若干ビビッていたのだが、Suzuckさんが絶賛しているので、これはと言うところで手にしたモノ。なんとそれは正解で、全編ムダな曲が無く完璧なコンセプト・アルバム。傑作だ。

 

(参考視聴) Adam Bałdych とHelge Lien Trio の共演(当アルバムとは別)

 

 

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2015年11月14日 (土)

アダム・バウディフ&ヘルゲ・リエン・トリオAdam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」

トラディッショナル・ジャズ・ヴァイオリンとピアノ・トリオの描く不思議なカルテットの世界

 

<Jazz, Traditional>

 

      Adam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」
       ACT Music / Germany / 9591-2 / 2015

 

Bridges

 

Adam Bałdych (vn)
Helge Lien (p)
Frode Berg (b)
Per Oddvar Johansen (ds)

Recorded by Klaus Scheuermann at Hansa Studio, Berlin, March 13-15, 2015

 

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 ポーランドのトラッドやフォークの因子を持って創造的ミュージックを展開するジャズ・ヴァイオリニストのアダム・バウディフとノルウェーのヘルゲ・リエン・トリオとの共演作品の登場。
 共演と言っても、あくまでも主としてアダム・バウディフの曲によって主導するアルバムで、ヘルゲ・リエンはサポートと言って良いでしょう。若くしてこうしたヴァイオリニストがいることだけでも驚きだが、それにどんな関係にて成立したのか解らないが、ヘルゲ・リエン・トリオがこれ又絶大な効果を上げていて、現代音楽とトラッドとジャズ・ピアノ・トリオの一体化によるまさに不思議な世界が聴かれる。

 

Bridgeslist スタート曲がアルバム・タイトルの”Bridges”、この曲でこのアルバムの世界が見えてくる。とにかくトラッドといってよいヴァイオリンの技巧的な音と調べ、そしてあのヘルゲ・リエンの叙情的なピアノがそれに協調して美しい世界を展開。しかしそれは我々の馴染んでいる世界とは遙かに離れた異世界。当然私はこのアダム・バウディフという人の演奏と描く世界を知るのは初めてなので、いやはやこれが彼の創造の世界なのかと初聴きの興味で聴き入ってしまった。
  ”Requiem”はさすがに哀愁そのもの。何故か北欧の自然をイメージしてしまう。
 ”Karina”では、ヘルゲ・リエン・トリオならではの北欧トリオが生きている。
 そしてACT Music は相変わらず良い録音盤を提供している。ここでもヴァイオリンとピアノの澄んだ音色が素晴らしい。この音があってこそこの世界が迫ってくるのだ。

Adambaldych
 アダム・バウディフは2011年のベルリン・ジャズ・フェスティバルでセンセーショナルなデビューを飾ったポーランド出身の目下30歳前後の若きヴァイオリニスト。バークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークをベースに活動しているらしい。2012年にラーシュ・ダニエルソンらと1stアルバムをリリースしている(Adam Bałdych & Baltic Gang「Imaginary Room」(ACT/ACT9532/2012))。
 彼のこのトラッディッショナルな世界はポーランドの民族音楽が基礎にあるのかそのあたりはよく知らないが、かなり好みも別れるところと思うが、一度は聴いておいて損は無い。
 ただ、さすがにヘルゲ・リエンの尖った角がなく、力みも無く、そして優雅にして繊細な演奏が聴き応えある。そしてここでは彼の持ち合わせている北欧の叙情性と前衛的なセンスが貢献しているのだろう。実はこれはヘルゲ・リエンに引きつられて購入したアルバム。いずれにしても彼のトリオの活動の一つの世界として位置づけて聴いたと言ったところだ。

 

(視聴)

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