アンナ・グレタ

2024年4月 6日 (土)

アンナ・グレタ Anna Greta「Star of Spring」

待望のACTからの2ndの登場・・・神秘的で感動的な世界

<Jazz>

Anna Greta「Star of Spring」
(CD) ACT MUSIC / Import / ACT 9748 / 2024

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Anna Gréta (piano, vocals, backing vocals, keys, organ),
Einar Scheving (drums & percussion),
Skúli Sverrisson (electric bass),
Þorleifur Gaukur Davíðsson(guitar and pedal steel),
Birgir Steinn Theodórsson(double bass),
Magnús Trygvason Eliassen(drums),
Sigurður Flosason(bass clarinet),
Albert Finnbogason(synthesizer)
Recorded at Sundlaugin Studio, Iceland during May 2023 and at Studio 1001 in Stockholm
during July - September 2023.

 前作2021 年のACTデビュー作『Nightjar in the Northern Sky』のアイスランド出身ジャズSSW、ピアニストのアンナ・グレタAnna Greta(下左)のアルバムは、久々の注目株としてここで一昨年前に取り上げたのだが、2年半の経過で待望の続編ともいえる2ndの登場で喜んでいるのである。
 最新北欧ジャズサウンドと神秘的でメランコリックな歌声に魅了されるアルバムだ。アイスランド出身のベテラン・ベーシスト・作曲家のスクーリ・スヴェリソン(下右 1966年生まれ、ルー・リード、デヴィッド・シルビアン、坂本龍一などとの共演)が今回もサポート。

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 アンナ・グレタは 2014 年からストックホルムに拠点を移しているが、生まれ故郷であるアイスランドの自然の風景の美しさと力強さからインスピレーションを得ている。2021 年の ACTデビューの前作は"鳥"にちなんでのアルバム・タイトルだったが、続編となる本作は、冬の終わりと春の到来を象徴する「春の星」とも呼ばれる"雪の輝き"という花をモチーフに選んだのだという。彼女は語るところ「春になると草原を覆い尽くし、緑から青へと変えていく姿にインスパイアされただけでなく、そうせざるを得ないから咲くという事実にもインスパイアされた」こんな意味深な言葉からも、彼女はアイスランドの美しさに留まっていない一つのコンセプトを持って曲を造り歌っていることが推測される。それは下に紹介する彼女の芸術作品からもうかがい知れるところである。

(Tracklist)

01 Her House 4:25
02 She Moves 2:23
03 Star Of Spring 3:05
04 Catching Shadows 3:47
05 Metamorphoses of the Moon 3:44
06 Spacetime 4:07
07 The Body Remembers 5:13
08 Mother Of Dreams 3:39
09 Imaginary Unit 3:27
10 Nowhere 3:53
11 Denouement 3:21

 全編美しさに魅了されるヴォーカルに満ちている

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  M1."彼女の家" 厳寒の地に春が訪れ、そこに単なる明るさでない厳しさの解放の複雑な気持ちが感じられる落ち着いた美しいヴォーカル。
  M2."彼女は移動" 開放された展開を描いているのか。
  タイトル曲のM3."春の星"は、何とも言えない独特のエレガントと言える世界、単なる明るさでなくそこには厳しいアイスランドのやや陰鬱な冬のイメージがあってのその雪の輝きの美しさの花の美を訴える。この後のM4.と共に、彼女自身のバックの高音のヴォーカルとハモって一層訴えを増す歌。
 M5."月の変身" 彼女の美しいピアノが中盤で神秘的情景を描く
 M6."時空" 珍しくちょっと陽気さが逆に気になる展開の曲。
 M7."肉体は覚えている" 60 年代から70 年代にかけてグリーンランドで起こった女性の強制出産管理をトピックにした暗部に切り込む。曲は美しいが哀しさが前に出ている。
 M8."夢の母" 郷愁の歌。
   M9."想像上の一人" 珍しいリズムカルな展開。
   M10."どこにもない" 感動的な美を神秘的に歌い上げる。後半の盛り上がりの意味を理解したい。
   N11."終局"でも、美しくしっとりと歌われるが決して明るいというものではない。自然の厳しさの中から生まれるものに深く思い入れているとしか思えない。メランコリックな中に未来を見据えた希望も感じられるところが救いである。

 とにかく彼女の素晴らしピアノ・テクニックの下、独特のヴォーカル・ラインは非常に神秘性をもって印象的に響いてくる。テーマが明るい世界ではないのであるが、なんとか美しさを求めているけなげな姿を想像させる。大自然と厳しさと美に人間性を求めて描く世界は非常に感動的で稀有な世界である。ジャズ因子はしっかり感じられる中での彼女の独特な音楽が感じられる。スカンジナビア・ジャズとしても重要なお勧めアルバムだ。

(参考)アンナ・グレタの芸術 =  「絵画」

 アンナ・グレタの話「私はいつも視覚芸術に興味を持っていましたが、私たちの多くが以前よりも少し時間を持っていることに気づいたCOVID中に自分自身を描き始めました。絵を描くことは私にとってです。自由な表現、手放しの方法、そして境界のない創造の方法。」
左から 「ブラックレイン」「すべての人の心の内側」「暗闇に唄う」(クリック拡大)

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(評価)
□ 曲・歌  88/100
□ 録音   88/100

(試聴)

 

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2022年1月30日 (日)

アンナ・グレタ Anna Gréta 「Nightjar in the Northern Sky」

北欧の自然と人間模様を描く神秘性を秘めた風のような歌声

<Jazz>

Anna Gréta 「Nightjar in the Northern Sky」
ACT Music / Germ. / ACT 944-2 / 2021

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Anna Gréta (p, keys, vo, backing vocals)
Skúli Sverrisson (b) exc #8
Einar Scheving (ds) exc #2, 3, 11
Hilmar Jensson (g) #2, 6, 7, 10, 12

Sigurður Flosason (sax) #3, 4
Magnús Trygvason Eliassen (ds) #2, 3
Johan Tengholm (b) #8
Ragnheiður Gröndal (backing vocals) #11

Produced by Anna Greta and Albert Finnbogason
Recorded at Sundlaugin Studio, Iceland on January 5-6th 2021; at Studio A,
Iceland during January 2021; and at Studio 1010 in Stockholm during March 2021
Engineered and mixed by Albert Finnbogason
Mastered by Hoffe Stannow at Cosmos Mastering, Stockholm

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 アイスランド出身のジャズ・シンガーでソングライターのアンナ・グレタAnna GrétaのACTからの初ソロ・アルバム(現在はスウェーデン在住)。私にとっては未体験のミュージシャンものであるが、ピアニストとしても演じており、「柔らかな風のような歌声と最新北欧ジャズサウンドが紡ぎ上げる、北欧の豊かな自然の温もりと神秘的な景色が広がる現在進行形のノルディック・フォーキー・ミュージック」とのことから是非聴いてみたいと入手したもの。
 彼女はアイスランドのレイキャビク近郊生まれ。父親のシグルズール・フロサソンSigurður Flosason はサックス・プレイヤーで(このアルバムでも2曲に参加)、その影響もあって幼いころからビル・エヴァンスとか、そうしたジャズ・アーティストに惹かれながら育ったとか。
 2014年にスウェーデンのストックホルム音楽大学に学ぶようになり、2015年にはアイスランド音楽賞でジャズの最優秀新人賞、2019年には権威あるモニカ・ゼッタールンド賞というものを受賞したり、2020年のノーベル賞授賞式に参加するなど、既に現在アイスランドとスウェーデンでは評価を勝ち得ているようだ。
 
(Tracklist)

Dsc02298w 01 Nightjar in the Northern Sky 4:49
02 Ray of Sun 4:43
03 Sleepless 4:34
04 The Tunnel 3:06
05 Blue Streams 4:26
06 Mountain 4:25
07 Falling Down 3:08
08 Like a River 3:17
09 Home 3:25
10 Waiting Never Ends 5:16
11 Guide the Way 3:04
12 Carry Me Across the Sky 4:06

All music and lyrics by Anna Greta,
except The Tunnel, based on a poem by Robert Creeley

  北欧の一流ジャズ・ミュージシャンをバックに自己のオリジナル曲でジャズ・ピアニストとして演じ、それに更に清楚感のある優しさと美しさのあるヴォーカルが心地よく載ってくる。とにかく北欧の神秘性ある大自然が眼前に浮かんでくる。
 曲はクラシックなトラッド風のフォーキーなところに、ジャズのエッセンスを優しく載せた感じで、気持ちよく清々しく聴ける。
 演奏は彼女のピアノによるトリオ編成が基本であるが、ピアノ・ソロ的な部分も有り、又ギター、サックスが数曲に色を添える。

 M1."Nightjar in the Northern Sky" 北国の空に舞う夜鷹を想っての神秘的世界を、静かなピアノトリオ演奏に乗って、優しくソフトで温もりの感ずるクリーン・ヴォイスで歌い開幕。
 M2."Ray of Sun "にはギターも入るが、ピアノ主導で雰囲気変わらない
 M3."Sleepless", M4."The Tunnel" にはサックスも色を添えるも、やはり静かな音色に止まりピアノの流れを損なわずムードの色に変化を付けている。M4.は、唯一彼女の曲で無いが、そのヴォーカルは夜の暗さを見事に描く。
 M5."Blue Streams", M6."Mountain "は、人生の表現として蒼い水の流れ、そして海、又山の如くの立つはだかる姿をしっとりと歌う。
 M7."Falling Down" の一人二重唱の歌は究極の美。
 M9." Home " は、この中では珍しく躍動感ある曲。世界を旅しても、この地が定まった地と・・・
 M10."Waiting Never Ends" 混迷の幻想からM11." Guide the Way"の展望への道
 M12."Carry Me Across the Sky " の静かに言い聞かせるようなしっとりとした優しさは締めくくりにピッタリの曲。

 

 北欧の大自然と人生をオーバーラップさせての全12曲と想うが、この曲がどうだのこうだのでなく、アルバムをトータルに流れを感じながら、この北欧の世界を聴き込んでゆくのが良いと思う。
 ジャジーというか、Jazzy not Jazzに近いパターンであるが、クラシカルで、フォーキーで詩情豊かな静謐さのある演奏と歌の世界、そこに人生の綾と大自然の神秘性を交錯させる。安らぎと不安感と緊張感、更に幻想と夢とを静かに描く出色のアルバム。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  90/100
□ 録音      85/100

(視聴)

 

 

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