CLASSIC

2017年1月 1日 (日)

謹賀新年 2017 =アラベラ・美歩・シュタインバッハー Arabella Miho Steinbacher 「Fantasies・・・・」

明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

                     2017年 元旦

Tr

 (今年の初聴きアルバム)
  惚れ惚れする緊張感と美しさ、そして懐かしの心をくすぐる

<Classic,  Violin Concerto >
Arabella Miho Steinbacher 「Fantasies, Rhapsodies and Daydreams」
PENTATONE / GERM / PTC 5816 536 / 2016

Fantasiesrd

Recorded at Salle Yakov Kreizberg of the Auditorium Rainnier III, Monte-Carlo in October 2014
(演奏)
アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン;1716 年ストラディヴァリウス「ブース」(日本音楽財団貸与))
ローレンス・フォスター(指揮)、モンテ・カルロ・フィルハーモニー管弦楽団

(曲目)
(1)ワックスマン:カルメン幻想曲(11'41")
(2)サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン Op.20(9'01")
(3)ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり(14'40")
(4)サン=サーンス:ハバネラ Op.83(11'06")
(5)サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28(9'51")
(6)マスネ:タイスの瞑想曲(5'57")
(7)ラヴェル:ツィガーヌ(10'52")



 名曲のヴァイオリン・コンチェルト集である。ヴァイオリニストは女性で、今や世界的な評価を勝ち取るに至った日本人の血の入ったドイツ人アラベラ・シュタインバッハー、オーケストラはモナコ公国のモンテ・カルロ・フィルハーモニー管弦楽団である。

927_690x465 アラベラ・美歩・シュタインバッハーArabella Miho Steinbacher (1981年11月14日- )は、諸々の紹介を見ると以下のようなところ・・・・・
 ドイツ女流のヴァイオリニスト。ミュンヘンでドイツ人の父親と日本人の母親との間に生まれた。3歳でバイオリンを始め、9歳でミュンヘン音楽大学にてアナ・チュマチェンコに学んだ。ドロシー・ディレイやイヴリー・ギトリスにも師事した。2000年にハノーファーで開催されたヨーゼフ・ヨアヒム・ヴァイオリン・コンクールで入賞、翌年にはバイエルン州より奨学金を授与された。
 ゲルギエフ、マゼール、パッパーノ、シャイーといった数多くの巨匠指揮者たち、世界を代表するオーケストラとの共演を次々と成功させ、今やドイツ音楽界を担う地位を確立している。繊細さと力強さをあわせもつ演奏で、バッハから近現代作品までレパートリーは広い。
・・・と、知ることが出来る。

 このアルバムでの私の個人的な一つの注目点は、冒頭から登場するワックスマンFranz Waxman(1906-1967)のM1.「カルメン幻想曲」だ。この幻想曲」は、サラサーテのものが有名だが、この映画音楽で名を馳せたワックスマンのものもジョルジュ・ビゼー作曲のオペラ『カルメン』に登場するメロディを用いて、ヴァイオリンの名演技を示し聴かすべくを目的とする作品で、なかなか魅力的。私は幼少の頃から「カルメン」はなんとなく聴かされてきて非常に懐かしさが回顧される曲で有り、それがヴァイオリン協奏曲手法で、ときに懐かしのメロディーの登場にほろっとしてしまう。それが見事にシュタインバッハによってメロディーが歌いあげられるが如く演じきられている。
 その他、「ツィゴイネルワイゼン」、「揚げひばり」、「タイスの瞑想曲」等と名曲がズラーっと並んで登場。M6.「タイスの瞑想曲」にはうっとりとしてしまい楽しめるそのものの一枚だ。
 そして彼女のヴァイオリン演奏の技量と音質とを知りたいならM7.ラヴェルの「ツィガーヌTzigane」(10'52")ですね。この曲にはヴァイオリンのソロ演奏の要素も多く、又各種演奏技術を要するところが要求される。しかし繊細な技術が見事に演じられていて素晴らしい。

  このアルバムは、なかなか力が入っていて、SACDハイブリット盤であり、サラウンド録音も同時に聴ける。このタイプは歓迎ですね。
 今年のオープニングは名曲クラシックで・・・・そして今年一年もジャズやロックに、感動がありますよう願ってのスタートであります。

       ------------------------------------

<今年の予感>
     昨年から、CD全盛期を迎える前のLPの再生の比率が高くなってきたのが気になります。
     今年はLPの購入に・・・と言うことになって行くのだろうか・・・・・

  (懐かしの機器 DENON Turntable DP-80 及び MICRO Dynamic Balance Tonearm MA-505L
      
そしてDENON Pre-Amplifiyer PRA2000 が健在なのです)

Pc301852trw
            *               *
Pc301834trw

(視聴) Arabella Steinbacher ”Méditation from "Thais"”

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2016年9月11日 (日)

繊細にして好音質盤が聴きたくなる「秋」の到来

ヘンデル「ハープ協奏曲」

 昼間はまだ暑いとは言え、夜になると秋の到来も感ずる今日この頃。なんとなくそんな夜には繊細にして好録音の音が聴きたくなる。私はそんな時には、もう何十年繰り返して聴いているアルバムがある。

<classic>
G.F.Händel 「KONZERT FÜR HARFE UND ORCHESTER ハープ協奏曲」
Deutsche SchallPlattan / 徳間ジャパン / 32TC-38 / 1985

Photo
ユッタ・ツォフJutta Zoff :ハープ
ハインツ・レーグナーHeinz Rögner : 指揮
シュターツカペレ・ドレスデンSächsische Staatskapelle Dresden」

 1973年7月11-14日 ドレスデン・ルカ教会 録音

 LPからCD時代になって、その当時かってのLP好録音盤がぞくぞくCDで発売されたことがあった。このCD盤もそんなときの一枚である。

Haendel ヘンデルのハープ協奏曲は、音楽史上最初のハープ協奏曲といわれている。もともとはオルガン協奏曲第6番変ロ長調から生まれてたものだが、現在はハープ協奏曲として知られているもの。
 ハープの調べは非常にエレガントと言って良いだろうか、典雅な響きが魅力的で気持ちを安らげてくれるので私は好きだ。気持ち的には真夏向きでは無いが、ふと静かな秋を感じた時には、まことにおあつらえ向きなのである。

 このアルバムはなんと1973年録音であるがとにかく音が良い。ハープの響きは繊細さのある切れの良い音で広がる。ストリングスも繊細な高音、低音の響きで美しい。特徴はホール感の充実であり、非常に品がある。

 このレーベル「Deutsche SchallPlattan ドイツ・シャルプラッテン」は、旧東ドイツ時代に、唯一の国営レコード公団として1946年に設立されて以来、実に数多くのクラシックの名演を残してきた。このレーベルの振るっているのは、クラシックばかりでなくロック、ポップス、現代音楽と多岐に渡っている。
Dresden_lukaskirche_2 又名演、名録音で名高いのが、このアルバムの録音場であったドレスデンの「ルカ教会」ものである。この教会は住宅街の中に古びた外観のものであるが、1945年2月に連合国軍がおこなった無差別空爆(ドレスデン爆撃)で被爆、教会内部までも破壊されたが、戦後になって修復され、東ドイツで唯一の国営レコード会社であったドイツ・シャルプラッテンによって、レコーディング専用の施設として使われることになったというもの(現在も空爆による破壊で尖塔が無い)。
 ここは「名盤の聖地」と呼ばれ、最近オリジナル・アナログマスターの持つ音質を楽しむために、かっての録音ものをキングでハイレゾ配信も行った。
 とにかく天井も高く、技術陣によって響きも改良され、ここの地元の名門楽団シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)をはじめ、オペラから室内楽、歌曲まで数々の名録音を残している。

Juttazoff2_2 このハープ協奏曲も、この名門楽団もので有り、ハープ奏者は女性ユッタ・ツォフJutta Zoff で(←)、この楽団シュターツカペレ・ドレスデンの首席ハープ奏者である(1967年以降)。
 彼女は東ドイツを代表する存在で、ヨーロッパ各国に知られていた。
 幼いときはピアニスト、その後はサキソフォン奏者の経験もある。とにかく演奏はノーブルという表現がぴったりの品のあるものであった。

Hrogner 指揮はハインツ・レーグナーHeinz Rögner (1929-2001)で(→)、既に十数年前に亡くなっているが、彼はどちらかというと地味な指揮者であったが、ブルックナー、ワーグナー等の名演がある。1958年、ライプツィヒ放送交響楽団の首席指揮者、1962年、ベルリン国立歌劇場の常任指揮者、1973年、ベルリン放送交響楽団の首席指揮者。1983年4月から1992年3月には読売日本交響楽団の第5代常任指揮者。

 この「ヘンデルのハープ協奏曲」は、3楽章構成。
 第1楽章は、4分の4拍子。テンポは「アンダンテ アレグロ(歩くように快速で)」でリズムカルで快調。オーケストラは静かな時が多く、ハープの響きを堪能できる。
 第2楽章は、4分の3拍子。ラルゴの短調の緩徐楽章、哀愁感が見事。ハープの高音も美しい。
 第3楽章は、8分の3拍子。テンポはアレグロ・モデラート。かなりハープの弾きが最高潮に響く章。

61viubfhckl_2
 なお、参考までに、現在
『ハープ協奏曲 ツォフ・レーグナー&シュターツカペレ・ドレスデン』(KING / KICC3599)
というCD盤(→)が手に入るが、多分これはここで紹介した1985年リリースものと録音日も同一であり、確認はしてないが同一で、これが現在売られている盤だと思われる。なかなか長生きのもの。

収録曲
■ヘンデル/ハープ協奏曲変ロ長調作品4-6
  第Ⅰ楽章 アンダンテ・アレグロ
  第Ⅱ楽章 ラルゲット

  第Ⅲ楽章 アレグロ・モデラート
■ディッタースドルフ/ハープ協奏曲イ長調

  第Ⅰ楽章 第Ⅱ楽章 第Ⅲ楽章
■シャン・フランセー/ハープとオーケストラのための六楽章の詩的な遊戯
  第Ⅰ楽章 第Ⅱ楽章 
第Ⅲ楽章 第Ⅳ楽章 第Ⅴ楽章 第Ⅵ楽章

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年1月21日 (木)

ピーター・ビーツPeter Beetsが演ずるショパン:「CHOPIN MEETS THE BLUES」

驚きのショパン~ニュー・ヨーク・ジャズに変身・・・・・

 <Jazz>
    PETER BEETS 「CHOPIN MEETS THE BLUES」
     Criss Cross Jazz / Holland / Criss 1329 cd / 2010
Chopin2
 
Peter Beets(p), Joe Cohn(g), Reuben Rogers(b), Greg Hutchinson(ds)
Recorded at Systems Two Recording Studios, Brooklyn, N.Y. on November 9, 2009

 先日ここでオランダのジャズ・ヴォーカリストのフェイ・クラーセンFay Claassen を取り上げた。それは彼女のリタ・ライスをトリビュートした最近作アルバム『LIVE AT THE AMSTRDAM CONCERTGEBOUW』だったが、ここで、バックのピアノ演奏を務めたのが、やはりオランダ出身のピーター・ビーツPeter Beetsだ(ドラムレスのピアノ、ギター、ベースのトリオで)。なかなか流麗なピアノの演奏で興味が持てたが、彼は2010年にショパンを取り上げたアルバムをリリースしており、私は最近聴いたのでここで考察しておく。

Pb1 ショパン生誕200年に当たる2009年に、ピーター・ビーツは、このレコーディングの機会を得たというその録音モノ。
 とにかくショパンとなれば、多分ピアニストの殆どは尊敬の念を持ち合わせているだろう。そしてジャズ・ピアニストと言えども、殆どはクラシック・ピアノを学んでのジャズ世界での活躍であるがため、多くのピアニストの気持ち中には何処かにショパンが居るのではないかと思うのである。
 ピーター・ビーツは、オランダの本格的ジャズ・ピアニストで、1971年生まれで両親・兄弟全ての音楽一家として育っている。デン ・ ハーグ王立音楽院20 代前半学んでおりその後はニュー・ヨークを始め本格的ジャズ畑で修行している。

(tracklist)
1.Nocturne in Eb Major, Opus 9 #2
2.Nocture in F Minor, Opus 55 #1
3.Mazurka in A Minor, Opus 17 #4
4.Prelude in B Minor, Opus 28 #6
5.Prelude in E Minor, Opus 28 #4
6.Nocturne in B Major, Opus 9 #3
7.Waltz in C# Minor, Opus 64 #2
8.Nocturne in F Minor, Opus 55 #1 

 さて、このアルバムはカルテット、そしてその前半を聴いてまずは驚くのは、むしろクラシック・ニューヨーク・ジャズと言って良いのか?、即興演奏を交えてのショパンのメロディは何処に?と思うくらいまさにジャズなのだ。基本的にはスウィング・ジャズで、所謂ビバップ・スタイル。とにかく解っていて良く聴かないとショパンのメロディーが見えてこないままに終わってしまうが、そのメロディーを思い出して聴くと、これが面白いように音の流れを操るピーター・ビーツの世界が見えてくる。
 そしてピアノのメロディーだけでなく、ギターが更に即興を奏でてくるので彼らのオリジナル曲を聴いている気分にもなる。又ベース・ソロもオリジナル・ショパン・メロディーでなく、むしろピーター・ビーツの即興部分を更に発展するように聴かせてくれていて、とにかく面白い世界に連れて行ってくれる。
 それでも”Nocturne in B Major, Opus 9 #3 ”、あたりでは、誰にでも解るようにショパン・メロディーを聴かせていて、やっぱりショパンなんだと思わせるところも憎いところ。

 まあ、ショパンを聴こうと思ってはいけない。このメンバーのジャズ・カルテットを聴くと言った姿勢で納得が得られるというところ。

(視聴)”Waltz in C# Minor, Opus 64 #2 ”アルバム・バージョンとは異なる演奏

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年1月14日 (木)

新春には・・・ヴィヴァルディVivaldi 「協奏曲集・”和声と創意への試み”Op.8~”四季”」

新春はポピュラーなクラシックで・・・・・・

 新春向けの音楽と言えば、クラシックと言ってももうポピュラーに近い誰もが知っているヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi 1678-1741)の協奏曲集 《和声と創意への競演(試み)》 (Concerti a 4 e 5 "Il cimento dell'armonia e dell'inventione"Op.8) 作品8だ。その内、ヴァイオリン協奏曲集「四季」が最も親しまれているのだが、それは協奏曲第1番から第4番までの「春」「夏」「秋」「冬」に付けられた総称である。 そして最も新春向けは第一番の「春」ですね。

Imusici そしてヴィヴァルディの「四季」と言えば、日本では圧倒的に知られているのはイタリアのイ・ムジチ合奏団ものですね。(現在人気のアルバム ↓)

  I MUSICI 「ANTONIO VIVALDI < LE QUATRO STAGOONI 四季」 >
 Violin : Pina Carmirelli
  Recorded  Switzerland / 1982
  PHILIPS / West Germany / 410 001-2

 
 しかしこのヴィヴァルディの活躍したバロック・ミュージックの創始期においては、多分このイ・ムジチのヴァイオリン協奏曲の音(調べ)ではなく、楽器も現代楽器と異なり、古楽器と言われているものが使われていて、この時代の研究者にしてみると、もっと色々な意味でその時代に迫りたくなるもののようだ。

  そんな意味で、この新春にここに取り上げるのは、私がイ・ムジチと平行して良く聴いてきたもので、オリジナル楽器による自身のオーケストラであるエンシェント室内管弦楽団を結成して正統的な演奏を目指したホグウッドのアルバムがある。それは私自身もその世界に魅力を感じて、十数年前に好録音で定評のあるオワゾリールL'OISEU-LYREものとして購入し聴いてきたものだ。

<Classic>
   ヴィヴァルディ 協奏曲集「”和声と創意への競演」
Vivardi: IL CIMENTO DELL' ARMONIA E DELL'INVENTIONE, Op,8
  ボグウッド指揮/エンシェント室内管弦楽団
    L'OISEAU-LYRE / POCL-4168/9  /  1997

Hogwood_2
 <Recording > Location: KINGSWAY HALL, London
                      Dates: Novmber & December 1982


Hogwod_image   このアルバムの指揮者でありこの管弦楽団の創始者のホグウッドChristopher Jarvis Haley Hogwood(1941-2014)(→)は、イギリスの古楽関係の学者であり、又チェンバロ奏者でもあった。彼は1967年、「ロンドン古学コンソート」を設立して、中世・ルネサンスそしてバロック音楽の研究・紹介に頑張った。
 このアルバムは、そんなホグウッドの古楽演奏の一環として録音されたものだ。そんな意味でも興味のあるだった。

 さてこれは2枚組にして、この協奏曲集「”和声と創意への競演」の協奏曲第一番から第十二番まで全曲収録されている。このあたりもホグウッドものらしく、人気の第一番「春」ホ長調、第二番「夏」ト短調、第三番「秋」ヘ長調、第四番「冬」ヘ短調の四つの協奏曲のみに止まっていない。そんなところが研究者らしく、又彼のバロック音楽への入れ込みが感じられるところである。

 
このアルバムのレーベル「L'OISEAU-LYRE オワゾリール」というのは、イギリスにおける古楽復興に非常に重要な役割を果たしたレーベルだ。オーストラリア出身の女性が1932年にパリで興した出版社のレコード部門として1939年にスタートしたものという。(レーベルの名前に使われたオワゾリールとは、オーストラリアの琴鳥のフランス語表記)
 1953年からはイギリス・デッカの協力でアルバム制作を実施、1973年からはデッカ傘下の古楽専門のレーベルとなった。そしてその録音が秀逸で、バロックものであればこのレーベルなら間違いないと私はず~と信じてきている。

Hogwood3 内容は左のとおりだが、ヴァイオリン独奏者Soloistは六人仕立てだ。そして通奏低音はホグウッド自身が、ハープシコード、チェンバー・オルガンを奏し、その他にバロック・ギター、アーチリュート、テオルボが奏でる。
 もともとヴィヴァルディの「四季」という協奏曲は、当時とすれば彼のメロディの作り方や転調の仕方など、やや変則的な手法で作られた曲集の一環になるようだが、音楽学者で無くただ聴いて納得するだけの我々にとっては共感できればそれで良い。彼の協奏曲集の中では、それでもこの「四季」辺りは音楽的常識的な拘束された中での作品であったようだ。
 そんな歴史的雰囲気が如何に現代人の我々に響いてくるかを研究し尽くしてのホグウッドの演奏と言うことになる。

 私の好みはこの中でも第四番「冬」が好きですね。これには理屈が無く自己で共感を持って聴ければ良いわけで、そんな世界を感ずる協奏曲集ですね。第一楽章の厳しき冬の情景、ヴァイオリン独奏の恐ろしさの表現が凄い。第二楽章は、打って変わって寒中の暖かさの家の中の安らぎ、この独奏のメロデイーは美しい(私が最も安堵を感ずるのは、外は雪が燦々と降る中に、暖かい家の中で静かに好きな音楽が聴ける時である)。
  又、この「四季」以外もこのアルバムは楽しめるのだが、第七・八番の第二楽章の美しさは特筆モノである。

 さて余談であるが、私のパソコン歴はNEC製PC-8001以来の長きに及ぶが、感動の1985年のPC8801mkII SRでは、グラフィック機能強化とサウンド機能では、ヤマハの音源チップYM2203が搭載され、FM音源3音+SSG3音のサウンド機能を新たに標準装備した。画像とサウンドの進歩が格段にあったわけだが、その時のデモにヴィヴァルディの「四季」が使われ、特にやはり雪の燦々と降る”冬”が進歩したグラフィックとサウンドが印象的だったことを思い出す。今や「Windows10」の時代になっての懐かしきパソコンにも想いを馳せるのである。
 

           *          *         *         *

(PC8801mkII SR=1985年)懐かしの愛機の回顧(デモ)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年11月25日 (水)

<時にはクラシック?> ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ「クロイツェル」「スプリング」

 ヴァイオリン・ソナタ の味わい
  ~そしてロック話も=デヴィッド・クロス、ダリル・ウェイ

 やっぱり初冬の臭いのする晩秋のせいでしょうかね、私は時にクラシックが聴きたくなるんですが、このところそんなムードなんです。
 そして好きなものの一つは”ヴァイオリン・ソナタ”なんですが、とにかくなんだかんだ言っても、このベェートーヴェンの2曲”クロイツェル”そして”スプリング(春)”には敵わないですね。これも先日の ジャズ・アルバムAdam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」 を聴いての流れなんです・・・・・    

   <Classic>
          MAEHASHI/ESCHENBACH 「Kreutzer & Spring」
          CBS/Sony / JPN / 32DC679 / 1986

Kreutzerspring2
  LUDWING VAN BEETHOVEN
   Sonata No.9 in A Major for Piano and Violin. Op.47
    Sonata No.5 in F Major for Piano and Violin. Op.24

    Teiko Maehashi : Violin
      Christoph Eschenbach : Piano

Beethoven  ヴァイオリン・ソナタというのは、ヴァイオリンとピアノによる二重奏の演奏形態でソナタ形式(3部分からなる楽曲形式、つまり提示部,展開部,再現部から成る)の楽曲のことを一般には言うので、ヴァイオリンと言えどもピアノも対等なかなり重要な位置を占める。むしろ古典的にはヴァイオリンの助奏付きピアノ・ソナタであって、ピアノのウェイトが高いのだが、特にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、彼自身がピアノ奏者だけあって、そのピアノの役割の重要さが大きい。ところがしかしこの「クロイツェル」はヴァイオリン奏者に捧げる意味もあったためか、ヴァイオリンがピアノと対等に協奏させたところに魅力がある(この曲はいろいろと曰くがあるが、フランスのヴァイオリニストのルドルフ・クロイツェルに捧げられたもので「クロイツェル」と呼ばれているもの)。

 こんな講釈はそれまでとして、やっぱり私の好みからはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの1から10番までの中で、この第9番イ長調作品47「Kreutzerクロイツェル」は最高なんです。それはやっぱりヴァイオリンが助奏役で無く、ピアノとバトルを展開するところが面白い。もともとヴァイオリンというのは美しい旋律を聴かせてくれるところが魅力の楽器だと思うのだが、弾きようによっては、それ以上のものがないと言うくらいにスリリングな展開と迫力のある楽器だと思う。そのあたりがこの曲では見え隠れするんですね。


Starless_s (ちょっとロック話)

KING CRIMSON
 実はそのヴァイオリンの迫力に気がついたのは、恥ずかしながら昔から聴いてきたクラシックと言うよりは、1960年代からのロックに魅せられた当初、あのプログレッシブ・ロックの雄:キング・クリムゾンKing Crimsonを聴くと、70年代にデヴィッド・クロスDevid Crossのヴァイオリンが入ると、ものすごくスリリングな音と展開になるんです。
  最近リリースされた彼とロバート・フリップによるアルバム「STARLESS STARLIGHT」 (VIVID SOUND / VSCD-4294 / 2015 ~これは当時と違ってかなりアンヴィエントな世界ですが)がまさしくそれを思い出させます。

CURVED AIR
Curvedaircondition 又ロックのついで話となれば、やっぱり1970年デビューのカーヴド・エアCurved Airを思い出しますね。ソーニャ・クリスティーナの魅力のヴォイスは勿論ですが、ダリル・ウェイDarryl Wayのヴァイオリンが忘れられない。彼らの1st「Airconditioning」の”Vivaldi”には度肝を抜かれ圧倒された。
 そうそうダリル・ウェイズウルフWolf「CANIS-LUPUS」もスリリングでした。
 そしてそして更に再結成されたカーヴド・エアの1974年の「Curved Air Live」の迫力。と、ロック話になってしまいそうであるので、なんとか元に話は戻すが・・・・・・。

Photo・・・・・・話は戻って
 ここに取り上げた前橋汀子とクリストフ・エッシェンバッハのベートーヴェン「クロイツェル」は、このアルバムのリリースされた1980年代の当時、CDとしては、なかでも録音が良かったために良く聴いた懐かしのアルバムなのである。今Amazonで探してみると、まだこのアルバム販売していますね、クラシックものはなかなか長生きです。

 これを聴いてみると解りますが、クラシック・ヴァイオリン・ソナタと言えどもなかなか熱い演奏に惹かれます。非常にダイナミックであると同時に、ヴァイオリンの美しさ、ピアノの美しさもきちっと備えていて良いと言うところですが、特にクラシックですから多くの演奏家のものに接することが出来ますが、特にこの前橋ものは熱いですね。

 前橋汀子は1943年生まれですから、現在は既に七十歳を超えてデビュー50周年も既に経過しているバイオリニスト。17歳にして当時のソ連サンクトペテルブルグ音楽院に留学している。2004年日本芸術院賞受賞、2007年エクソンモービル音楽賞受賞、2011年紫綬褒章受章。

 しかしいずれにしてもこれはクラシックのヴァイオリン・ソナタであって、この晩秋に突入している今にして、なかなかシーズンを感ずるには良い気分で聴いているのである。
 なお、このアルバムは更に日本では一番愛されている第5番へ長調作品24「スプリング(春)」も収録されていて、まさに典型的なベートーヴェンものと言って良い物です。

(参考)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年1月21日 (水)

ヴァシリス・ツァブロプーロスVassilis Tsabropoulos のピアノ・ソロ・アルバム「The Promise」

    <My Photo Album 瞬光残像 = 南イタリア編>

Dsc01094monow2

南イタリア・シチリア島のアグリジェントAgrigentoにて=ユーノーの神殿Tempio di Giunone(紀元前470年建造のギリシャ遺跡)と現在の市街地の遠望
                                                          (Photo  2014.12)

            *    *    *    *

<Jazz,  Classic>

Vassilis Tsabropoulos 「The Promise」
UNIVERSAL MUSIC / JPN / UCCE-9266 / 2014  (ECM Records 2009)
Recorded January 2008 , at Athens

 

Thepromise
 前回にギリシャのヴァシリス・ツァブロプーロスを取り上げたので、ついでと言う訳でもないが、彼のクラシックからジャズに波及するピアノ・プレイの見事さを知る意味でも、このアルバムは是非と言うところで彼のピアノ・ソロ・アルバムを取り上げた。

Thepromiselist Tracklist は、左のような11曲。一曲のみ(7曲目)トラッドを彼の編曲で聴かせ、他の10曲はオリジナル。
 クラシックの世界で実績を積み上げた後に、ECMにジャズ・デビューしたツァブロプーロスは、ジャズの道において彼の過去のクラシックの経験の中から自己の表現したいものを納めるべく、ピアノ・ソロにて一枚のアルバムを作成したのだ。もちろんプロデュースは Manfred Eicher で、内容的にはかなり満足したものになったことは想像に難くない。

 この静かさと優しさとメロディーの美しさと、なんとなく郷愁を呼ぶ彼のピアノ演奏に浸れることの出来る素晴らしいアルバムだ。とにかくこの真摯な世界は気持ちが洗われる思いである。 現実の雑踏から離れた空間体験が出来るだけでも貴重そのもの。

Vassilis1_2 彼は1966年生まれだから今年50歳という円熟期に入るところだ。前回紹介のアルバム「Achirana」作成で、ベーシストのアリルド・アンデルセンによってECM盤作成にジャズ・トリオとして関わったのが、彼のピアノがジャズ畑を通じて世間に知られた大きなきっかけであったようだ。過去のクラシックや聖歌、賛歌への造詣がジャズにクラシックとの壁を乗り越えて一つの世界を構築しているところに頭が下がる。
 さてこの「Promise」がECMでは最も近作となるが、2013年に「You」というアルバムをリリースしているが、その内容は未確認。いずれにしても今後どんな形で我々に迫ってくれるか、そんなことを楽しみにしているところである。

(試聴)
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年9月29日 (月)

マリス・ヤンソンスによるショスタコーヴィチ「交響曲第10番」

マリス・ヤンソンスの執念的ショスタコ10番の録音

<Classic>

          MARISS JANSONS (Chief Conductor)
         ROYAL CONCERTGEBOUW ORCHESTRA AMSTERDAM

       
SHOSTAKOVICH  SYMPHONY No. 10 in minor,OP.93
                                     
  RCO RCO13001 ,2013
                  Recorded Live at Concertgbouw Amsterdam
                  on 29 january 1 and 4 February 2009
        SACD(Hybrid)  DSD multichannel surround 5.0

No10

  久々にクラシックの話題である。マーラー、ブルックナーなど比較的難解にして長大な交響曲に対してきているマリス・ヤンソンス(Mariss Ivars Georgs Jansons 1943-)であるが、彼にとってはマーラーと共にこのショスタコーヴィチは更に一層生涯をかけてのテーマであることは想像に難くない。既に過去にショスタコーヴィチ交響曲の全曲録音は成し遂げているが、更にこうして新録音にも意欲たっぷりである。

 
 (参照) ①http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/11-8bab.html
       ②http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-b798.html
      ③http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-b181.html

Dmitrishostakovich1
 私が惹かれるショスタコーヴィチの第10番こそ彼の真の姿の交響曲とも言えるのかも知れない。
 しかしこの交響曲の悲劇的発想により、共産国家に対しての反体制的発想とのジダーノフ批判を再び呼び起こした「第十論争」という物議をかもした問題作であった。
 しかしこの前作「第9番」が共産国建設礼賛を期待した国家的期待を裏切った作品であったことによる彼の立場の急落後、8年というブランクを開けての作品であったが、批判とは裏腹に、初めて彼の心を描いた作品としての評価も勝ち取ったものでもある。それはスターリンの死を見届けて一気に書き上げた作品として、スターリンと自己の対比を描ききったものとの解釈と、その悲観的な世界が何を意味しているかが、今でも批判と感動の交錯するショスタコーヴィチの重要な交響曲なのである。

 チェロとコントラバスによる序奏から始まる第一楽章、真寡の問われた「証言」によるとスターリンを描いていると言われる猛烈な勢いの弦楽合奏を展開する第二楽章、そして彼の名前を旋律にした暗示的な第三楽章、悲痛な序奏から彼の音名の連呼で終わる第四楽章。こうした内容に、個人の表現の自由を訴えた切実な声と理解されている。

 さてこの交響曲は、あのカラヤンも多くのショスタコーヴィチの交響曲の中で、この第10番のみを二度録音している(Dg Originals  4775909 , 1981年ベルリン・フィル)。その意味はどこにあるのかは想像によるしか無いが・・・・

Jansons1
 ここに紹介した盤の指揮者マリス・ヤンソンはショスタコーヴィチを演ずるにエネルギーを注いでいるラトビアの指揮者だ。彼は前にも触れたように、この盤の録音前にも「ショスタコーヴィチ全集」を出している。この全集の最初の録音は第7番で1988年、最後に録音されたのが第13番で2005年のもので、18年の作業であった(この全集の第10番は、1994年にフィラデルフィア管とセッション録音)。
 彼は、ショスタコーヴィチの理解者であったムラヴィンスキーで有名なレニングラード・フィルファーモニーの指揮者でもあったアルヴィド・ヤンソンスの子で、リガで生まれた。母親はユダヤ系で父親や兄弟をリガ・ゲットーで殺害された人だ。ショスタコーヴィチがソ連の反ユダヤ主義に批判的であったこと(交響曲第13番)からもマリス・ヤンソンのショスタコーヴィチへの理解を試みるところは当然想像できるところだ。そしてムラヴィンスキーの下で共同作業も経験してきている。
 現在は、レニングラード・フィル(現サンクトペテルブルグ・フィル)の指揮者から始まって国際的に広く招請を受け指揮をとっている。

Sym10 さてこのヤンソン指揮盤は、SACD盤でDSDマルチチャンネルによっての録音も素晴らしい。ハイレゾ・オーディオの時代になって、CDへの要求も厳しい昨今であるが、繊細な音の表現も良く臨場感に於いても最右翼である。
 私は旧来ムラヴィンスキー盤(←Victor VICC-40256、1976年録音)を愛聴してきたが、最近聴いたこのヤンソンには、演奏の緻密さとダイナミックスさが充実していて喝采を浴びせるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年6月10日 (火)

エドワール・フェルレEdouard Ferlet のジャズ・バッハの世界

フランス伝統のシャレた世界とは別物?

<Jazz>
          EDOUARD FERLET 「Think Bach」
          Rue Stendhal  MEL 666011 / France / 2012


Think_bach_2

Edouard Ferlet : Piano
                       Compositions

1.    Analecta   
2.    Dictame   
3.    A La Suite De Jean   
4.    Verso   
5.    Lisiere   
6.    Souffle Magnetique   
7.    Que Ma Tristesse Demeure   
8.    Lapsus   
9.    Diagonale   
10.    Replique

   噂のエドワール・フェルレのピアノ・ソロ・アルバムを遅まきながら聴いた。なにせ私がジャズ・ピアノに興味を持ったのは、やはりフランスのジャック・ルーシェによる「プレイ・バッハ」だった。あれはなんともう50年も前の話で、ここにきての”バッハのジャズ演奏って?今更”って気分でいたのだが・・・・なるほどアルバムを聴いてみると、なかなかこのバッハの世界への迫り方には又一つの世界がある事が解ったのだ。

 ”Compositions”とあるから、なになに単なるバッハには納まらない。つまりクラシック・バッハでなく、”模倣と創造との対立・矛盾する要素間の不断の緊張”と言うことのようなんですね。そう思って聴くとなるほと面白い。昔のジャック・ルーシェはシャレた世界でバッハをジャズで聴かせてくれた。そしてフェルレはその二番煎じでなく、彼の創造的センスでバッハを捕らえようとしたと言うことのようだ。

Ef1_2
 エドワール・フェルレと言うのは、フランスのベーシストがリーダーのジャズ・ピアノ・トリオの「ジャン-フリップ・ヴィレ・トリオJEAN-PHILIPPE VIRET Trio」のピアニスト。このあたりも私は未消化だが何せ現代トリオとしての名は高い。そのあたりから創造しても一筋縄ではゆきそうもないことは想像の付くところ。左の写真をみてもなかなかの面魂。
 彼は1971年のフランス生まれ、クラシックの勉強したがジャズに傾倒、1990年にはバークリー音楽院で作曲の勉強。つまりボストンに住んだ。
 1992年にはバークリーのベスト・ピアニストの賞を受けたとか。その後フランスにて活躍中。

 このアルバムの演奏だが、一つは単なるピアノ演奏に止まらす、このピアノをいろいろな手段で音を出す道具としてもいる。つまり打楽器的であったり、弦楽器のような音を出したりと、これらの手法は実は私はあまり好まない。邪道と言えば邪道、パーカッションが欲しかったらそれを用いれば良いのではないか?と思うのだが。しかし最近の流行でもあるといったところか。

 さてこのアルバムの肝心のバッハの曲はどうなったかというと、ちらっと思い当たるメロディーがきこえてくるが、どうもバッハでなくても良いのではないかと思うほど彼の創造の世界が主導だ。しかし何か不思議な魅力があるところが面白い。これは音楽の専門家というか学者というか、そのような人が聴くと何かがありそうだと言うことは私にも解る。
 結論的に、結構聴きくにつれて引き込まれるところがある快作とも言える。
  (追記) これを聴かせてくれた友人に感謝というところ

(視聴)

  

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2014年1月16日 (木)

リッチー・バイラークRichie Beirach とのお付き合い:(1)クラシックとジャズの世界

私にとっては奇遇のリッチー・バイラークであるのだが・・・・・・

Richie1
 今私の手元には約10枚のリッチー・バイラークのCDがあるのだが、彼の多くのリーダー作品の中に於いてみてもほんの何分の一というところ。しかしそんな彼の過去の作品を時に聴きたくなって聴くのである。そしてやっぱりそれはもう昔と言っていいECM時代のものに非常に惹かれると言うことになるのである。が・・・・・、そのECM時代の作品は実はリアル・タイムに聴いたわけでなく、私が彼に興味を持ったのは既にVenus時代になってのことであった。

 そんな中から今日ここで取り上げるのは「No Borders」というアルバム。これにはもともとクラシックのジャズ演奏に興味を持っていたがために知ることになったもの。そしてこれが私の彼の演奏を聴く初の接触と思ったのが・・・、なんと私はそれより8年も前の1994年に彼のライブ演奏の会場に実はいたのだった(このあたりのお話しはいずれに)。しかしその時の印象とはどうしてもこのアルバムは一致しなかった為、その流れに自分でも気づかずにいたという、変と言えば変な話なのである。

<Jazz> RICHIE BEIRACH TRIO 「No Borders」
              Venus Records,  TKCV-35305  ,  2002

Noborders 
  members
     Richie Beirach : piano
     George Mraz : bass
     Billy Hart : drums
     Gregor Huebner : violin

 

まあ、いずれにしても私には彼に対する一つの入り口であったのでこのアルバムは印象深いのである。
 もともとクラシックをピアノを通じて学んだ彼が(1947年生まれで6歳より・クラシック・ピアノの練習。そしてその対象は古典から現代音楽まで、広くあらゆるものに対峙したようだ)、このようにクラシック音楽を素材にしてジャズ・トリオ演奏をすることは何も不思議なことではないが、私が長く付き合ってきたジャク・ルーシェの”プレイ・バッハ”シリーズとは全くの異なる世界であり、なるほどジャズを究めようとするとこうしたアプローチの仕方があるのだと、ただ唖然としたのも事実であった。

Noborderslist_3 
 このアルバムは左のように9曲。最後の”Steel Prayers-Ballad for 9/11 WTC”のみ彼のオリジナルで、この曲はあのアメリカを襲った悲しみのテロ事件、9.11への哀悼の曲である。それ以外は見て解るように、クラシック世界の大御所を総なめしている。
 しかしこのアルバムを聴いて解るとおり、トリオ・ジャズなのだ。あのクラシックの流れの一つとして聴こうと思うと大間違い。ここまで彼のジャズの世界は妥協を許していない。そしてなんとViolinも登場させるところに彼の彼なりの曲作りがある(Debussyの曲からの”Footprints in the snow”、この曲はリッチーのジャズ心の美学が迫ってくる)。
 そしてバッハの”Siciliano”、フェデリコ・モンペウの”Impressions Intimas”と流れていくのであるが、彼のピアノは硬質とは言え、美学が心に響いてくる。

 多分、リッチー・バイラークの曲を良く聴く人には解ると思うが、彼の抒情性に惹かれると同時に、彼の世界にはジャズとしての前衛性、革新性がどこかにあって、冒頭のシューマンの”Scenes from Childhood”の後半にみせる攻撃的トリオ演奏には驚かされる。

 しかし何と言っても彼にはECM時代のアルバム「Hubris」のような特に私が溺れてしまう抒情性豊かなピアノ・ソロ・アルバムがあり、又妥協性のなさからECMのアイヒャーとのけんか別れによって抹殺されてしまい、今となっては手に入らないプレミアもののアルバム「Elm」などと話題に事欠かない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月 3日 (金)

謹賀新年  ショスタコーヴィチ交響曲第11番<1905年>

2014年は・・・・明けましてお目出度うございます
                     と、言っていられるのだろうか?

Pb030279sqblog
                         (アルヴァレスの騎馬像 ~ Batalha / Portugal     2013.11)

~今年の元旦に聴いた曲~

 今年の元旦は、なんとなく襟を正した一日であった。そして先ずは聴いた曲はショスタコーヴィチ。まさにこれは”警鐘の曲”~考えてみれば久しぶりに聴くショスタコーヴィチの第11番<1905年>」 。私は今年こそは今までと違った警鐘を鳴らす年と思っているから・・・・・・。

 この曲は、あの1905年のペテルブルグに起きたロシア革命の発端となった「血の日曜日」を描いた交響曲として旧ソ連において1957年初演。ショスタコーヴィチの交響曲の中では、この前の第10番に比べると極めて解りやすく描写的表現も取り入れられていて私は長く親しんできた。しかし昨年はおそらく一度も聴かなかったのではと?、ふと思いつつ・・・・・・このところの日本や近隣諸国の流れの中に於いて新年のスタートにはふさわしい曲として聴くことになった。
 ロシアにおける悲劇のこの「血の日曜日」は、大いに日本と関係している。それは日露戦争のまっただ中で起きた事件であった。純朴な労働者達の20万人を超す誓願行進に軍隊の発砲が有り3000人以上の死傷者が出た事件である。

<classic> ショスタコーヴィチDmitry SHOSTAKOVICH
        
「交響曲 第11番作品103<1905年>」
          ELIAHU INBAL  WIENER SYMPHONIKER
             COLUMBIA  coco-70826
 

Sym111905

 (この交響曲の背景に迫る)
 大日本帝国とロシア帝国との日露戦争(1904.2~1905.9)はロシアにとっては国内的にも打撃は大きかった。日本軍に対する相次ぐ敗北とそれを含めた帝政に対する民衆の不満が増大、戦争状態は労働者への重圧を生み、インフレ状態の経済も停滞の一途をたどっていた。1905年1月9日日曜日にペテルブルグにおいて指導者には諸々の思惑があったとはいえ、ストライキを始め、20万人の皇宮に対して誓願行進が行われた。請願の内容は、労働者の法的保護、当時日本に対し完全に劣勢となっていた日露戦争の中止、憲法の制定、基本的人権の確立などで、戦争下の貧困の生活苦に更に搾取に苦しんでいた当時のロシア民衆の素朴な要求を訴えたものだった。
 当時のロシア民衆は、皇帝崇拝の観念をもっていて、皇帝の権力は王権神授であり又キリスト教(正教会)の守護者である信じていた。このため民衆は皇帝ニコライ2世への直訴によって何らかの改革が成されると信じていた。しかしこの大衆行動に対しての軍隊の発砲による血の海になったこの事件(血の日曜日)の結果、皇帝崇拝の幻想は打ち砕かれ、後にロシア第一革命と呼ばれた全国規模の反政府運動の引き金となったのだ。

No11xx こんな状況を描いたと言われるこの交響曲、レーニン賞を受賞することになるが、果たしてショスタコーヴィチは単純に”ロシア革命礼賛”に終始したのであろうか?、彼のそこに到る多くの作品をみるに決してそれだけに終わっていないとみるのが正しいと思う。かって真偽において問題となったソロモン・ヴォルコフ編「ショスタコーヴィッチの証言」(参照http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-b181.html)を見るにつけても、彼の人間的苦悩の表現との兼ね合い、スターリン批判と革命の犠牲となった同時代の人への鎮魂、そして人間論とともに常に社会の不安を感じている表現に注目すべきだ。

Dmitri1 彼の描くこの交響曲第11番の主題は第Ⅳ楽章にあるとみるべきだろう。これには多くの評論家もその点を指摘している。体制が如何に変わろうとも社会は動乱をはらんでいる。そしてそれへの”警鐘”であるとみるのは大きく外れた見解では無いと思う。時にこの交響曲完成の一年前1956年には、ソビエト軍によるハンガリーの自由化運動の鎮圧事件(ハンガリー動乱)が起きている。これにはロシア帝国専制国家の”血の日曜日”と現革命政府の流血鎮圧”ハンガリー動乱”行為の双方の「類似性」が彼の眼には写っていたに相違ない。常に帝国主義、革命政府と形態が変わろうとも専制政治や迫害といった”悪”は、彼の貫くテーマになっており、それは時代を超えて普遍的であることを知るべきだ(ローレル・E・ファーイ著「ショスタコーヴィチ~ある生涯」 (参考)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-b798.html)。そこに彼の作品の価値を知らねばならないのだろう。

 しかし、この交響曲の第Ⅰ楽章にみる凍てついた真冬の光景を描く導入部は素晴らしい。そして第Ⅱ楽章の惨劇の描写、第Ⅲ楽章の革命歌と葬送行進曲など、非常に解りやすく密度の高い曲が襲ってくる。

 新年早々今年はショスタコーヴィチで過ごしている私である。

 
(参考)  「日露戦争」
 この日露戦争は、19世紀末。日清戦争の結果、「眠れる獅子」と呼ばれた清帝国が実際には既にその力を持っていない事を知った列強は、帝国主義の原則に則って清を分割統治しようとした。これに対しての義和団の乱が発生、各国は対抗して清帝国領域内に派兵を行った。これには8ヶ国が関係し、日本もそのうちの1国であった。中でもロシアは満州に大軍を送り込み、乱の終了後もそのまま駐留する構えを見せた。撤兵を行わないロシアに対し、日本は異議交渉を進めたが、ロシア側は満州支配のみならず朝鮮半島北部へも進出を企てた。これは日本にとっても脅威で有り明治政府首脳は、開戦の決断に追いやられた。これはロシアとはげしく対立していた大英帝国と日本の同盟関係が出来上がっていた事も大きく影響した。
 
 
 しかし圧倒的優勢とみられたロシアのバルチック艦隊が日本海海戦において日本の連合艦隊により壊滅的敗退となった事は、ロシア帝国にとっては、ユーラシア大陸に於けるトルコ支配の試みにマイナスとなり、支配下にしたポーランド、フィンランドに反抗の勢いを生ませた結果にもなった。

(参考) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/11-8bab.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

Audio | CLASSIC | Progressive ROCK | アイオナ | アガ・ザリヤン | アデル | アヤ | アレクシス・コール | アレッサンドロ・ガラティ | アンジェイ・ワイダ | アンナ・マリア・ヨペク | アヴィシャイ・コーエン | イエス | イタリアン・プログレッシブ・ロック | イメルダ・メイ | イモージェン・ヒープ | イリアーヌ・イリアス | イーデン・アトウッド | ウィズイン・テンプテーション | ウォルター・ラング | エスビョルン・スヴェンソン | エミリー・クレア・バーロウ | エンリコ・ピエラヌンツィ | エヴァ・キャシディ | カレン・ソウサ | ガブレリア・アンダース | キャメル | キャロル・ウェルスマン | キング・クリムゾン | キース・ジャレット | クィダム | クレア・マーティン | ケイテイ・メルア | ケイト・リード | ケティル・ビヨルンスタ | コニー・フランシス | コリン・バロン | ゴンザロ・ルバルカバ | サスキア・ブルーイン | サラ・ブライトマン | サラ・マクラクラン | サンタナ | サン・ビービー・トリオ | ザーズ | シェリル・ベンティーン | シゼル・ストーム | シネイド・オコナー | ショスタコーヴィチ | シーネ・エイ | ジェフ・ベック | ジャック・ルーシェ | ジョバンニ・グイディ | ジョバンニ・ミラバッシ | ジョルジュ・パッチンスキー | スザンヌ・アビュール | スティーヴン・ウィルソン | スティーヴ・ドブロゴス | ステイシー・ケント | ステファン・オリヴァ | スノーウィ・ホワイト | スーザン・トボックマン | セリア | セルジオ・メンデス | ターヤ・トゥルネン | ダイアナ・クラール | ダイアナ・パントン | ダイアン・ハブカ | チャーリー・ヘイデン | ティエリー・ラング | ティングヴァル・トリオ | ディナ・ディローズ | デニース・ドナテッリ | デヴィット・ギルモア | デヴィル・ドール | トルド・グスタフセン | ドリーム・シアター | ナイトウィッシュ | ニコレッタ・セーケ | ニッキ・パロット | ノーサウンド | ハービー・ハンコック | パスカル・ラボーレ | パトリシア・バーバー | ヒラリー・コール | ピアノ・トリオ | ピンク・フロイド | フェイツ・ウォーニング | フランチェスカ・タンドイ | フレッド・ハーシュ | ブッゲ・ヴェッセルトフト | ブラッド・メルドー | ヘイリー・ロレン | ヘルゲ・リエン | ペレス・プラード | ホリー・コール | ポーキュパイン・ツリー | ポーランド・プログレッシブ・ロック | ポール・コゾフ | マティアス・アルゴットソン・トリオ | マデリン・ペルー | マリリオン | マルチン・ボシレフスキ | マーラー | ミシェル・ビスチェリア | メコン・デルタ | メッテ・ジュール | メラニー・デ・ビアシオ | メロディ・ガルドー | モニカ・ボーフォース | ユーロピアン・ジャズ | ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ | ヨーナ・トイヴァネン | ラドカ・トネフ | ラーシュ・ダニエルソン | ラーシュ・ヤンソン | リッチー・バイラーク | リリ・ヘイデン | リヴァーサイド | リーヴズ・アイズ | ルーマー | レシェック・モジュジェル | ロジャー・ウォーターズ | ロバート・ラカトシュ | ロベルト・オルサー | ローズマリー・クルーニー | 中西 繁 | 写真・カメラ | 北欧ジャズ | 問題書 | 回顧シリーズ(音楽編) | 女性ヴォーカル | 女性ヴォーカル(Senior) | 女性ヴォーカル(ジャズ2) | 女性ヴォーカル(ジャズ3) | 戦争映画の裏側の世界 | 手塚治虫 | 文化・芸術 | 映画・テレビ | 時代劇映画 | 波蘭(ポーランド)ジャズ | 相原求一朗 | 私の愛する画家 | 私の映画史 | 索引(女性ジャズヴォーカル) | 絵画 | 趣味 | 雑談 | 音楽 | JAZZ | POPULAR | ROCK