CLASSIC

2023年10月19日 (木)

秋の夜長は「ショパン夜想曲」 (Jan Liieski, Koji Oikawa, Maurizio Pollini & Vladimir Ashkenazy)

<Classic>

演奏者の違いを楽しむ ??・・・フレデリック・ショパン 「夜想曲」

  秋になっても、今年もまだまだコロナ感染症から卒業したわけでもなく、諸々の行事の再開はあっても、まだまだ自粛ムードがただよっていてなんとなくちょっと寂しい夜になる。そんな秋の夜長には、毎年のことではあるが、その美しさの中にどこか憂いもあっての人気曲「ショパンの夜想曲」を聴きながら過ごすのが一番良いのでは・・・そこで今夜はよく聴いているアルバムを紹介する。

①    ヤン・リシエツキ 「夜想曲全集」 MQA-CD(88.2kHz/24bit)
       Jan Lisiecki  「Frederic Chopin COMPLETE NOCTURNES」
       Deutsche Grammophon, Universal Classics / JPN  / UCCG45019/20 / 2021

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録音: 2020年10月 ベルリン

(ディスク: 1)
1 3つの夜想曲 作品9 第1番 変ロ短調 (第1番)
2 3つの夜想曲 作品9 第2番 変ホ長調 (第2番)
3 3つの夜想曲 作品9 第3番 ロ長調 (第3番)
4 3つの夜想曲 作品15 第1番 ヘ長調 (第4番)
5 3つの夜想曲 作品15 第2番 嬰ヘ長調 (第5番)
6 3つの夜想曲 作品15 第3番 ト短調 (第6番)
7 2つの夜想曲 作品27 第1番 嬰ハ短調 (第7番)
8 2つの夜想曲 作品27 第2番 変ニ長調 (第8番)
9 2つの夜想曲 作品32 第1番 ロ長調 (第9番)
10 2つの夜想曲 作品32 第2番 変イ長調 (第10番)
11 2つの夜想曲 作品37 第1番 ト短調 (第11番)
12 2つの夜想曲 作品37 第2番 ト長調 (第12番)
(ディスク: 2)
1 2つの夜想曲 作品48 第1番 ハ短調 (第13番)
2 2つの夜想曲 作品48 第2番 嬰ヘ短調 (第14番)
3 2つの夜想曲 作品55 第1番 ヘ短調 (第15番)
4 2つの夜想曲 作品55 第2番 変ホ長調 (第16番)
5 2つの夜想曲 作品62 第1番 ロ長調 (第17番)
6 2つの夜想曲 作品62 第2番 ホ長調 (第18番)
7 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)
8 夜想曲 ハ短調 遺作 KK IVb/8 (第21番)
9 夜想曲 嬰ハ短調 遺作 KK IVa/16 (第20番)

 このところ一番聴いているのがこのアルバム。これはHi-Res88kHz/24bitのいろいろと話題が絶えないMQA-CDである。幸い私のオーディオ装置はMQA対応であるため、その高音質を楽しんでいる。とにもかくにも非公開の技術的部分を持ってのMQAで、その音質の良さから支持者は多いが、果たしてこれが純粋にオーディオ的に評価されるのかと疑問を投げかける勢力もあって、支持は2分してきたところである。しかし現在高音質をうたったSACDと比較して、廉価とそのデジタル・データの小ささから便利であることは間違いなく、又実際の聴き比べでも劣っていないため支持者とアンチ勢力の渦の中にある。

0407_janlisieckiw  さてこのアルバム、演奏者ヤン・リシエツキは、1995年、ポーランド人の両親のもとカナダで生まれた天才ピアニスト。13歳&14歳の時の音楽祭での演奏が、ポーランド国立ショパン協会からリリースされCDデビュー、15歳でドイツ・グラモフォンと契約し、17歳でショパン:練習曲集(全曲)をリリース。天才的ショパン弾きによる待望の夜想曲全曲録音(25歳)であった。
 21曲のショパンの夜想曲(ノクターン)は、20歳から晩年に至るまで作曲されたもので、その時々の人間的、芸術的深みがあって作風の変遷もあり人気を誇るショパンの代表作であり、演奏者の評価にも関心がもたれるところだ。
 今回取り上げた4人の演奏者のものの中でも、最も一曲一曲の演奏時間が長く、ルバートが最も効かせているように聴けた。強弱、緩急の表現に心を注いで若いなりきのリリシズムの追及にも力を注いだ演奏だ。このあたりの評価はプロフェッショナルにまかせるが、なかなか現代的ともいえる。

 

②   及川浩治 「ショパン ベスト」SACD (Stereo / Multi-ch)
  Koji Oikawa  「THE BEST OF CHOPIN」
      AVEX CLASSICS / JPN / AVCL-25097 / 2006

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 録音 : 2006年1月 兵庫県立芸術文化センター  

   このアルバムは、下のリストのように、夜想曲に限ってのものではなく、練習曲、円舞曲、ポロネーズ、前奏曲そして子守歌などが収められている。CDは、SACDハイブリッド盤で5Chサラウンドでも聴ける。
 アルバム自身の音質も良好であるので、彼の比較的硬さよりでない柔らかな音も澄んでいて気持ちが良い。今回取り上げた4枚のCDではやや現代的解釈が入った方に入るのかという程度のところで、ダイナミックさも極端なところが無く音の強弱、ルバートなども昔の演奏者よりは意識された感があるが、近頃の標準的かと思わせる演奏だ。

 及川浩治は1967年生まれで、これは40歳前後の作品となる。90年に20歳少々で第12回ショパン国際ピアノ・コンクールで最優秀演奏賞を受賞。95年にデビューリサイタルを行っている。又99年のショパン没後150年には、「ショパンの旅」というタイトルのコンサート・ツアーを行い大成功している。

Sddefaulttrw (Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ長調 作品9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9-2
3 練習曲 第3番 ホ長調 作品10-3 ≪別れの曲≫
4 練習曲 第4番 嬰ハ短調 作品10-4
5 練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5 ≪黒鍵≫
6 練習曲 第12番 ハ短調 作品10-12 ≪革命≫
7 ワルツ 第9番 変イ長調 作品69-1 ≪別れのワルツ≫
8 ワルツ 第1番 変ホ長調 作品18 ≪華麗なる大円舞曲≫
9 ワルツ 第6番 変ニ長調 作品64-1 ≪子犬のワルツ≫
10 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 (遺作)
11 幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
12 夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
13 ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40-1 ≪軍隊≫
14 前奏曲 第4番 ホ短調 作品28-4
15 前奏曲 第7番 イ長調 作品28-7
16 前奏曲 第8番 嬰ヘ短調 作品28-8
17 前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28-15 ≪雨だれ≫
18 前奏曲 第16番 変ロ短調 作品28-16
19 ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 ≪英雄≫
20 子守唄 変ニ長調 作品57

 

③   マウリツィオ・ポリーニ 「夜想曲集(第1-19番)」CD
      Maurizio Pollini 「CHOPIN NOCTEURNES」
      Deutshe Grammophon, Universal Music / Japan / UCCG9647/8 /  2005

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録音 : 2005年6月 ミュンヘン

(Mauriziopollinitrw Tracklist)
(Disc-1)
1-3  3つの夜想曲 作品9 (第1-3番)
4-6  3つの夜想曲 作品15 (第4-6番) 
7-8  2つの夜想曲 作品27 (第7-8番 )
9-10 2つの夜想曲 作品32 (第9-10番) 
(Disc-2)
11-12 2つの夜想曲 作品37 (第11-12番) 
13-14 2つの夜想曲 作品48 (第13-14番) 
15-16 2つの夜想曲 作品55 (第15-16番) 
17-18 2つの夜想曲 作品62 (第17-18番) 
19 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)

  マウリツィオ・ポリーニは1942年生まれであるからの60歳過ぎのノクターンの録音である(現在は81歳)。若干18歳で第6回ショパン国際コンクールで優勝という才能の持ち主である。やはり演奏は美しいですね、音楽の歴史の深いイタリアの芸術・文化からの結晶を感じます。感情の爆発の名演というのでないために意外にあっさりした印象を持つが、楽曲の本質を理解し感情的深さを見極めた誠実な演奏といった方がいいのかもしれない。そんな世界を十分堪能できるアルバムである。それぞれの曲の演奏時間も上の2枚のアルバムより若干短く中庸を得ていることが解る。

 

④ ヴラディミル・アシュケナージ 「夜想曲選集」CD
  Vladimir Ashkenazy「CHOPIN NOCTURNES」
      LONDON / Polidor / JPN /  POCL-5035 / 1993

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録音 : 1970-1983

Ashkenazytrw (Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ短調、Op.9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調、Op.9-2
3 夜想曲 第3番 ロ長調、Op.9-3
4 夜想曲 第4番 ヘ長調、Op.15-1
5 夜想曲 第5番 嬰ヘ長調、Op.15-2
6 夜想曲 第8番 変ニ長調、Op.27-2
7 夜想曲 第10番 変イ長調、Op.32-2
8 夜想曲 第13番 ハ短調、Op.48-1
9 夜想曲 第15番 ヘ短調、Op.55-1
10 夜想曲 第16番 変ホ長調、Op.55-2
11 夜想曲 第19番 ホ短調、Op.72-1
12 夜想曲 第20番 嬰ハ短調、遺作

 幅広いレパートリーを持っていて、日本では人気のピアニスト。1937年ソビエト生まれだが、エリザベート国際コンクールやチャイコフスキー・コンクールなどで優勝という経歴で、西側で演奏活動をするようになった。
 このアルバムは、彼が十数年かけて全てのショパン作品の録音が完成してのその中のノクターン集。今こうして聴いてみると、①のヤン・リシエツキとはかなりの違いがあることに気が付く。40-50年の変化というのは面白いですね、ここではアシュケナージは個人的特徴を出すのでなく、むしろ標準的な世界に優雅さと哀愁と優しさと華麗さを求めているように思う。基本的な演奏だ。

* *

 クラシックの中でも非常にポピュラーな「ショパンの夜想曲」に、丁度夜長の秋を迎えて聴くチャンスもあって焦点を当ててみたが、ちょっと座右にあるCDだけでも聴いてみると、その違いが明瞭で聴き応えある。ここに昔のLPも復活させてみると、これも又近頃のLPとの違いが楽しめそうだ。
 又、録音や再生方式の進歩などによって、音質の高度化もこうした作品で聴くのも楽しいことである。

(視聴)
Jan Lisiecki

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2023年1月17日 (火)

アントニオ・アルテーゼ Antonio ArteseTrio「Two Worlds」

なんとなく美意識のもとでのエレガントさのあるピアノ・トリオ

<Jazz, Classic>

Antonio Artese Trio「Two Worlds」
ABEAT FOR JAZZ / IMPORT / ABJZ248  /2022

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Antonio Artese - piano
Stefano Battaglia - doublebass
Alessandro Marzi - drums

Recorded at Il Cicaleto Studio, Arezzo, AR, Italy, March 16, 2022 by Francesco Ponticelli

  イタリアのベテラン・ピアニスト、アントニオ・アルテーゼ(1961年モリーゼ州テルモリ生まれ)のなんと初となるピアノトリオによるリーダーアルバム。
  本作は、ジャズとクラシック音楽の双方への愛着、フリースタイルの即興演奏と構成されたサウンド、更にイタリア文化とアメリカ文化をミクスチャーしたという彼の音楽の歴史の始まりから経験した世界を表現した作品という事で、どんな世界か聴きたくなったもの。

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 アントニオ・アルテーゼはピアニスト兼作曲家。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院でピアノの修業証書を取得し、イタリアのキエーティ大学で理論哲学を学び、その後ボローニャ大学で音楽学に移った。 又カリフォルニア大学サンタバーバラ校でピアノ演奏のDMAをも取得し、ジャズの世界に接近した。そして音楽学者であり作曲家兼編曲家である彼は、さまざまな音楽プロジェクトを主導するいくつかのアルバムを録音し、米国とヨーロッパの両方で幅広く演奏している。彼はイタリアの多くのフェスティバルの創設者兼芸術監督なんですね。

 一つ疑問はベースを担当しているステファノ・バターリア(下左)は、私の知る限りではイタリアのクラシックおよびジャズのピアニストと思ったのだが(同一人物か同姓同名か不明)その点未解決。そしてドラムスはアレッサンドロ・マルティ(下右)だ。

(Tracklist)

1. Two Worlds (Antonio Artese)
2. Julita (Antonio Artese)
3. Prelude (Antonio Artese)
4. Hymn (Antonio Artese)
5. Lila (Traditional Arr. Antonio Artese)
6. Icarus (Antonio Artese)
7. Niente (Antonio Artese)
8. Un Bel Dì (Giacomo Puccini Arr. Antonio Artese)
9. Voyage (Antonio Artese)

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 このピアノトリオのために作曲されたアントニオ・アルテーゼの7曲のオリジナル曲は、彼の目指すところはビル・エヴァンス・トリオのスタイルで、それに加えて北ヨーロッパのミニマリズムのムードにもインスパイアされていると語られている。
 この「Two Worlds」のアイデアは、2つの世界について、彼は「私が音楽の訓練を始めてから参加してきた世界です。ジャズとクラシック音楽への愛情、即興と作曲、イタリアの文化、そして私が長い間住んでいたアメリカ、特にカリフォルニアの文化です。このアルバムは、これらの明らかな二元論の和解と克服を表したい7つのオリジナル曲と2つのアレンジのコレクションです」と。

 彼の演奏は、美しいメロディー、重層的なハーモニー、繊細なリズムを、トリオとしての三者のものとして求め、M1."Two Worlds "は、さっそく美しいメロディーをベースと交互に演じながらも、ピアノ・トリオとしての自己の役割をかなり几帳面に演じている。
 M2."Julita"のゆったりとした展開は、まさにクラシック音楽の域を意識している。
 M5." Lila"は、トラデイッショナル(ウクライナの子守歌らしい)のようだが、ピアノの重低音から始まり、優しきピアノのメロディーが流れ、トリオの演ずるところもどこか郷愁的ムードを持っている。そして後半にはジャズ世界を忘れずピアノ、ベースの即興が色づけする。
 M6."Icarus"は、このアルバムの中では特異で、ジャズを意識した展開。スイングし、メロディーとリズムの競い合い。ベースと相互作用が見事で、ドラムスの役割を生かしている。
 M7." Niente" も、ドラムスのリードがかなり強い
   M8." Un Bel Dì "はプッチーニへの芸術へのオマージュということで、ここではかなり技巧を凝らしたベースとドラムスのブラッシの音をバックに、ピアノがゆったりと、しんみりと聴きなれたメロディーを聴かせる。

 全体にジャズジャズしていないところと、泥臭さが無いところは若干空しいところもあるが、こんな見事にまでクラシックの流れを尊重しつつのトリオとしてのリズムセクションとの関係を生かしたジャズの型はきちんと築いてゆこうとする真面目さというか、几帳面というか、・・・やっぱり先生のジャズって感じのアルバムでエレガントで嫌みが無い。そんなところで音楽的評価は専門的観点からみてのものを一度聞きたいと思っているところだ。
 録音は、ベース、ドラムスも対等にクリアに聴きとれ、トリオとしてのたたずまいをきちんと作り上げていて現代的。その線は良好と言える。

 

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    87/100

(視聴)

 

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2023年1月12日 (木)

トルド・グスタフセンTord Gustavsen ノルウェー少女合唱団 「Sitlle Grender」

純粋さ漲る少女合唱と・・・・
重量級から澄んだ透明な世界までを描くグスタフセンのピアノ

<Classic,  Jazz>

Det Norske Jentekor,Tord Gustavsen,Anne Karin Sundal-Ask
「stille grender」

2L-164-SABD, EAN13, 7041888525721, ISRC-code,NOMPP2007010-150
Release date:November 2020, Recording date:February 2020

Twl164

Det Norske Jentekor(ノルウェー少女合唱団) / Anne Karin Sundal-Ask, conductor
Tord Gustavsen, piano

Recorded at February 2020, Uranienborg Church, Norway
Disc 1 Hybrid SACD,MCH 5.1DSD,Stereo DSD , RedBook PCM: MQA CD
Disc 2 Pure Audio Blu-ray,2.0 LPCM 192/24, 5.1 DTS HDMA 192/24, 7.1.4 Auro-3D 96kHz, 7.1.4 Dolby Atmos 48kHz mShuttle: MQA + FLAC + MP3

 欧米文化において、クリスマス・ソングというのは一つの文化であって、ある一定のレベルに到達したヴォーカリストは、必ずその関係のアルバムをリリースする事が多い。一年のクリスマス行事を経て神聖な幕閉じ続く新しい年のスタートには、無くてはならない社会的宗教的文化であるからだ。従ってジャズの分野でもクリスマス・ソング・アルバムが多くお目見えするが、どうも日本文化の私にとってはしっくりしない事も多い。音楽であるからジャズも聖歌も讃美歌も同じと考えるのだろうか、いささか私には難しい問題である。

Ab6761610000e5eb04a4b4ecbf44fcf024a34671  さて今日ここに取り上げたアルバムには、そんな疑問もなく素直に聴き入ることが出来る為、このストリーミング時代を迎えて今や完璧にじっくりこの世界に入れる環境も整って、日本文化・欧米文化という事は関係なく、この新しい新年に敬虔な気持ちになれる。又更に私の好むノルウェーのトルド・グスタフセン(→)のピアノも堪能できるのであるからこの上ない。アルバム・リリースから2年以上経ったが、今にしてこの世界がHi-Res環境の良好なる音世界として身近になって、新年の一時を心新たに心安らぐ時間を持つのである。

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 アルバム・タイトルは「静かな集落(村)」と訳してよいのか、とにかくこの主役であるノルウェー少女合唱団の世界は、惚れ惚れする。上の写真のごとく、ほんとに幼い子供から小中学生ぐらい(?)で構成されていて、指導者であり指揮者であるアン・カリン・スンダル・アスクの描くところとトルド・グスタフセンのピアノに浸るのである。

(参考) 又、トルド・グスタフセンのピアノ・ソロ演奏は、別建てのアルバムとしてもリリースされている。彼の独特なる即興を交えてのトラデッショナル、フォークや聖歌などを聴かせてくれるのである。(下のDISC-2)

Twl164solo_20230111182601  <Classic,  Jazz>
 Tord Gudtavsen 「Stille Grender (solo piano)」
 Pure Audio Blu-ray, 2.0 LPCM 192/24, 5.1 DTS HDMA 192/24, 7.1.4 Auro-3D 96kHz, 7.1.4 Dolby Atmos 48kHz
 mShuttle: MQA + FLAC + MP3


(Tracklist)

DISC 1
01. Carol of the Bells  2:06
02. The Bells [solo piano] Tord Gustavsen 2:04
03. Det lyser i stille grender 2:49
04. Deilig er den himmel blå  Det Norske Jentekor,Anne Karin Sundal-Ask  3:05
05. Jul i svingen  Det Norske Jentekor,Anne Karin Sundal-Ask  2:17
06. Glade jul [Stille natt]  2:23
07. Joleklokker over jorda 3:45
08. Eg veit i himmerik ei borg  Det Norske Jentekor,Anne Karin Sundal-Ask  2:32
09. Jul, jul, strålande jul  4:03
10. Jeg er så glad hver julekveld   Det Norske Jentekor,Tord Gustavsen,Anne Karin Sundal-Ask,Janna Dons Strøm,Elida Angvik Hovdar,Agnes Onshus Grønn,Anna Elisabeth Giercksky Russnes,Amalie Eikenes Randen,Anne Magdalene Bru Rem   6:28
11. Nå tennes tusen julelys  3:31
12. Mitt hjerte alltid vanker  8:28
13. Folkefrelsar  Det Norske Jentekor,Tord Gustavsen,Anne Karin Sundal-Ask,Janna Dons Strøm,Elida Angvik Hovdar,Agnes Onshus Grønn  5:48
14. Ljoset nytt i natti rann [solo piano]  Tord Gustavsen  4:15
15. Deilig er Jorden  3:41


DISC 2
01. Ved myrke midnattstid [solo piano] Tord Gustavsen  6:04
02. Sjelenes pilgrimsgang [solo piano]  Tord Gustavsen  1:58
03. Ingen krok er mørk [solo piano]  Tord Gustavsen   2:56
04. Inkarnasjon I [solo piano]  Tord Gustavsen  2:36
05. Inkarnasjon II [solo piano] Tord Gustavsen  1:21
06. Inkarnasjon III [solo piano] Tord Gustavsen 3:14
07. Inkarnasjon IV [solo piano]  Tord Gustavsen 1:21
08. Til lave hytter [solo piano]  Tord Gustavsen  4:14
09. Klårt di krubba skina kan [solo piano] Tord Gustavsen 4:05
10. Inkarnasjon V [solo piano] Tord Gustavsen 3:14
11. Inkarnasjon VI [solo piano] Tord Gustavsen 4:28

 とにかく、幼い声まで聴きとれる合唱団が見事です。特にM5."Jul i svingen (スウィンゲンのクリスマス)"は、おそらくまだ日本でいえば小学校前の幼い少女たちの歌声のようだ。あどけなさの残ったかわいらしさと美しさだ。多くの曲は、中学生ぐらいまでの少女達だろうか、一緒に作り上げる世界が見事なのである。
 こんな世界がクリスマス聖歌・讃美歌としては貴重なんでしょうね。

2l164_recordingw  少女による合唱団は、その独自性に細心の注意を払っているといわれる指揮者であるアン・カリン・スンダル・アスク(→)が率いている。そしてそこにはピアノ演奏者グスタフセンとの密接性が旨く構築され、何とも言えない温かい音楽的関係の中で、合唱団同志自体にそして聴く我々に・・・語りかけてくれる。

 アン・カリン・スンダル・アスクAnne Karin Sundal-Ask は、2005年からノルウェー少女合唱団の芸術監督兼指揮者として働いていて、彼女はトロンハイムの音楽院とノルウェー音楽アカデミーで指揮者、フルート奏者、教師として教育を受けた。そして2017年から、彼女はノルウェー少女合唱団の全てにおける責任者となり、合唱団の指揮でいくつかの賞を受賞し、又合唱団を多くの国際コンクールでトップの地位に導いたと。更に彼女は、国際合唱コンクールの審査員も務めてきているとのこと。
 彼女は、特に質を意識し、目標志向で刺激的なリーダーであり、各団員個人が最高のパフォーマンスを発揮できるように、音楽の目標を歌手に伝える能力を備えていると説明されている。指揮者のイントネーション、サウンド、アンサンブル音楽への焦点はトレードマークになり、彼女は合唱団の音楽表現の開発に継続的に取り組んでいるようだ。

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 ピアニストのトルド・グスタフセンは、特にECMレーベルで実績がある。私は彼のピアノ・トリオにぞっこん惚れ込んでいるのだが、彼の描くところ北欧の自然からの影響と、学んだ心理学の世界とも密接に相乗的に音楽に反映され、それは日本人との感覚にも共通性があるのか支持者は多い。このアルバムでは、彼の役割は、様々なクリスマス・キャロルにイントロを付けたり、得意のジャズ風の伴奏を弾いたり、メリハリのあるアバンギャルドなリフを入れたり、あるいはかなり長いソロを披露したりと、様々な形で合唱と絡み、敬虔さと不思議さの世界を形作る。

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 最初の有名な曲M1."Carol of the Bells"では、低音の弦を使ってエレキ・ベースのようなエッジの効いた音のリフを披露して、少女達の密度の高いハーモニーに色づけする。続けてM2."The Bells"この曲のテーマを今度はソロでアレンジして聴かせるなど、単なる伴奏ピアノには終わっていない。
  又M14."Ljoset nytt i natti rann(昨日の夜、新たな光が)"のグスタフセンのソロはダイナミックで、展開も圧巻である。

 とにかく、聴きなれた曲M6."Glade jul (Stille natt)(きよしこの夜)"も含めてのクリスマスキャロル(私の知識レベルでは聖歌、讃美歌、クリスマスソングも含めている)、フォークソングなどの曲群で、ノルウェー少女合唱団とトルド・グスタフセンが見事な連携プレイを披露している。この緊密な優しくのどかで美しい歌声とピアノの透明感のある音との相互作用の中で、我々は表現を倍増させる即興演奏を介して静かな心の安らぎの世界からうっとりとした瞬間へと導かれるのだ。M12."Mitt hjerte alltid vanker (常に待ち望む心を)"M15."Deilig er jorden(この世はうるわし)"はそのさえたる出来だ。単なる聖歌でないこの世界は貴重であった。
  
 (「Disc-2」のグスタフセンのピアノ・ソロ集は、低音の響きの荘厳さから優しさ美しさに満ちたピアノの音の流れに満ちている。又次の機会に詳しく)

(評価)
□ 曲・合唱・演奏  90/100
□ 録音       90/100

(試聴)

*

 

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2021年10月 2日 (土)

小曽根真  ピアノ・ソロ「OZONE 60」

還暦の集大成 クラシックとジャズの二本立てで・・・

<Classic, Jazz>

MAKOTO OZONE 「OZONE 60」
MQA-flac Download / e-onkyo / 2021

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Makoto Ozone : piano

Image_20211002101901  このところジャンルを超えての活躍に注目のある小曽根真、ピアノ・ソロ・アルバムとして久々の登場。2021年3月に還暦を迎えるにあたり、クラシック・ホール「水戸芸術館 コンサートホールATM」にて、スタインウェイD型(自己持ち込み)とヤマハCFXという2台のグランドピアノを曲により弾き分け、4日間で収録。ジャズとクラシックの両分野で活躍する小曽根の魅力を2枚のディスクに分けて収録したもの。
 今回私の場合は、それをe-onkyoからハイレゾMQA-flacでダウン・ロードしての音源。ピアノ・ソロは音が重要な一つのポイントにもなる。

(Tracklist)

[ CD 1 - CLASSICS + IMPROMPTU ]
1ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調より第2楽章
Ravel: Piano Concerto in G Major, M. 83: 2. Adagio assai
2ディパーチャーDeparture
3モーツァルト:小さなジグ K.574 ト長調
Mozart: Eine kleine Gigue in G Major, K.574
4プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番「戦争ソナタ」 第3楽章 Op.83
Prokofiev: Piano Sonata No.7 in B-Flat Major, Op. 83: 3. Precipitato
5モシュコフスキ:20の小練習曲 第8番 Op.91-8 ロ短調
Moszkowski: 20 Petit Etudes, Op.91: No. 8 in B Minor: Moderato
6カンヴァセーションズ・ウィズ・マイセルフ~パート1
Conversations With Myself - Part 1
7カンヴァセーションズ・ウィズ・マイセルフ~パート2
Conversations With Myself - Part 2
8モシュコフスキ:20の小練習曲 第20番 Op.91-20 変ト長調
Moszkowski: 20 Petit Etudes, Op.91: No. 20 in G-Flat Major: Allegro Moderato

[ CD 2 - SONGS ]
09.ガッタ・ビー・ハッピーGotta Be Happy
10.ニード・トゥ・ウォークNeed To Walk
11.ザ・パズルThe Puzzle
12.リッスン...Listen...
13.ストラッティン・イン・キタノStruttin' In Kitano
14.オールウェイズ・トゥゲザーAlways Together
15.オベレクO’berek
16.フォー・サムワンFor Someone

Unnamed_20211002110101   CD-1のクラシック・サイド「CLASSICS+IMPROMPTU」では、モーツァルト、ラヴェル、プロコフィエフなどの曲を、即興演奏を織り交ぜて演奏。
 CD-2「SONGS」と題するジャズ・サイドでは、書き下ろしの新曲を中心に、アルバム初収録となる8曲で構成、合計16曲。

  2台のピアノ用に編曲したオリジナル曲「オベレク」や即興演奏「カンヴァセーションズ・ウィズ・マイセルフ~パート1、2」では、スタインウェイ+ヤマハで多重録音したものという。

  私的には断然「クラシック・サイド」が良かったですね。M1.M2は、静かな中に余韻ある優しいピアノの響きが、MQAの高音質で内省的であるが、心を安らぎに導いてくれて私好み。
 残念ながらモーツァルトは、あの躍動感はあるも、その中にある微妙などこか寂しげとか、憂いとかが全く感ぜず、どうも納得せず。
 N4.プロコエフは、彼のテクニックの披露。
   M6.の一つ一つの余韻を持って描く音の深さが見事。M7.は理解不能。
 モシュコフスキのM5、M8が又感動的、哀感のあるその美しさはこの上ない。

 彼の「ジャズ・サイド」は、どうも疑問が多かった。聴く人によって評価は高いのであるが、私的には、どうもついて行けない。M.15"O'berek"は、スリリングなアップテンポの演奏、ハイレベルな演奏技法は伝わってくるが・・・そこまで。
 とにかく救いは、M12."Listen...."と、M16."For Someone"があって、ほっとしている。様々な心象風景が描かれ、彼の心が伝わってくるような世界。

 小曽根の過去からの築き上げた世界の還暦に於ける総決算としてのピアノ・ソロ演奏。その世界が如何に多岐にわたっているかが実感できた。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□ 録音   :  88/100

(視聴)

 

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2021年6月18日 (金)

Brad Mehldau の試み == 「Suite: Aprill 2020」 「 VARIATIONS ON MERLANCHOLY THEME」

コロナ禍での世界観を描くソロとオーケストラとの競演と
対照的な二枚のアルバム

<Jazz>

Brad Mehldau 「Suite : April 2020」
Nonesuch / / Nonesuch 075597919288 / 2020

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Brad Mehldau : piano

  前作『ファインディング・ガブリエル』(2019)がグラミーを受賞し、現代のジャズ界においては、最先端を行く人気ピアニストであるブラッド・メルドーの新型コロナウィルスのパンデミック下の2020年にリリースされたアルバム。これはオランダで家族とともに自粛生活を送っていた彼は、ロック・ダウン中、自分が今体験していることをもとにコロナ禍の世界を捉えた12の楽曲を作りあげ、更にそれらに加え彼個人にとって思い入れのある3曲を、アムステルダムのスタジオでレコーディングしたもの。

 現在のジャズ・シーンでのNO.1ピアニストのオリジナル曲ソロ演奏ということで、否が応でも当然注目された。当初配信リリースと限定アナログ盤リリースであり、その後9月にCDと通常盤アナログは世界同時で発売という形をとったが、これら売り上げの一部がJazz Foundation of America’s COVID-19 Musician’s Emergency Fund基金へと寄付されている。

(Tracklist)
Abradmehlw3_20210618144001 1.I. waking up / I.
2.II. stepping outside / II.
3.III. keeping distance / III.
4.IV. stopping, listening: hearing / IV.
5.V. remembering before all this / V.
6.VI. uncertainty / VI.
7.VII. - the day moves by - / VII.
8.VIII. yearning / VIII.
9.IX. waiting / IX.
10.X. in the kitchen / X.
11.XI. family harmony / XI.
12.XII. lullaby / XII.
13.Don't Let It Bring You Down
14.New York State of Mind
15.Look for the Silver Lining

 メルドーは、「世界中の誰もが経験したであろうことを捉えた音楽的スナップショットで、多くの人々が共通して、また新たに体験し、感じたことをピアノで描こうとした」と言っている。家族とともにNYから離れた地オランダで自粛生活を送っていた中での作品。このコロナウイルス禍に加え、2020年5月のジョージ・フロイドさんの白人警察官による殺害事件からの Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)運動で揺れる米国社会を見つめつつの彼の心が描かれていた作品。聴いてみて、しかしここまで彼の真摯な心の作品に浸れるとは思わなかったもの。
 M1."waking up"どこか優しい雰囲気でスタート。
 M3."keeping distance"は、不自然な形での離れた二人の理不尽な経験とか、M4." stopping, listening: hearing"は、コロナウイルス禍に加え新しい困難が発見された状況など描いたものとして評価された曲。
 M5."remembering before all this"は、今は数ヶ月前は遠い昔に思える困難に向かわざるを得ない状況と、M6."uncertainty"はそんな中での不安を表現。
 などなど・・・メルドーの心の表現なのであろう。実はやや内向的な世界ではあるが、全編に漂う人間としての誠実にして真摯な心での人間愛をここに聴けるとは思わなかった。それだけ驚きのアルバムだ。
 M13.、M14.、M15.の三曲は彼の人生を回顧するに、心に与えてくれた感謝の曲として演じられている。
 彼は、こんな不自然な世界であるが、一方家族に囲まれての時間が多く取れたこの時を大切にといった感謝も忘れては居ない。
 いずれにせよ、実際にこのコロナ禍での彼のフランスやドイツでのソロ・ライブも非常に優しいライブとなっている(参考:ドイツ・ライブ「MOERS 2021」)

(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音   78/100

           *      *      *      *

<Jazz, Classic>

Brad Mehldau, Orpheus Chamber Orchestra
「VARIATIONS ON MERLANCHOLY THEME」
Nonesuch Records / / Nonesuch 075597916508 / 2021

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Brad Mehldau : piano
Orpheus Chamber Orchestra

Produced by Adam Abeshouse
Recorded,mixed,and mastered by Adam Abeshouse
Music composed by Brad Mehldau,published by Werther Musi (BMI)
Design and Illustration by Lawrence Azerrad

  ブラッド・メルドーのコロナ禍において上の『SUITE: APRIL2020』を昨年リリースした彼だが、それに続いての今年意欲作の登場だ。それもなんとジャズとクラシックの新たな融合を試みる。オルフェウス室内管弦楽団とのコラボレーション作品となるもので、”メランコリー”を主題として、クラシックの構成にジャズのハーモニーを導入したという代物。これもメルドーの探求心の一つとして知るべきものとして位置づけた。
 この曲は、ブラッド・メルドーがロシア出身のピアニスト、キリル・ゲルシュタインのために作曲したものと紹介されていて、本作ではオルフェウス室内管弦楽団とともに、オーケストラ・ヴァージョンを新たにレコーディングしたもの。アルバムには、主題(テーマ/Theme)と11の変奏曲(ヴァリエーション/variation)、カデンツァと後奏曲(ポストリュード/postlude)が収録されている他、”アンコール“として、「Variations X」と「Variation Y」の2曲も追加されている。

(Tracklist)
2058w 1.Theme
2.Variation 1
3.Variation 2
4.Variation 3
5.Variation 4
6.Variation 5
7.Variation 6
8.Variation 7
9.Variation 8
10.Variation 9
11.Variation 10
12.Variation 11
13.Cadenza
14.Postlude
15.Encore: Variations ""X"" & ""Y""

  メルドーとオルフェウス室内管弦楽団は、この作品でアメリカ、ヨーロッパ、そしてロシアをツアーし、2013年にはカーネギー・ホールでも演奏してきたんですね、そのあたり詳細は知らなかったが、この作品について彼は「もしブラームスが憂鬱な気分で目が覚めたらと考えてみたんだ」と語っているようだ。所謂このブラームスとメランコリーな世界というものが、どこから来たモノか解らないが、究極は単にそれに終わらない激しさも終末部では演じていて、そのあたりにももっと理解度を高めないと評価に難しい。
 どちらかというとクラシックものに聴けるし、ジャズとしてはちょっと私の感覚にはないものだ。序盤からのメランコリーというところだが、後半にはかなり高揚感もあってそれなりの仕上がりではあると思うが、クラシックとしてもちょっと中途半端な感覚になって、どうも私自身には大きなインパクトは無かった。メルドー・ファンがどのように理解しているか、むしろ知りたいところだ。

(評価)
□ 曲・演奏  80/100
□ 録音    80/100

(視聴)

*

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2021年5月26日 (水)

石上真由子 Mayuko Ishigami 「Janáćek : Violin Sonata」

スリリングにして優雅のメリハリが聴ける

<Classic>

Mayuko Ishigami 「Janáćek : Violin Sonata」
NIPPON COLUMBIA / JPN / COCQ-85448 / 2019

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Mayumo Ishigami 石上真由子: violin
Miho Funahashi 船橋美穂: piano

 久々にクラシックの話題だが、この石上真由子のヴァイオリン演奏モノは、実は最新号の季刊「Audio Accessory」2021 SUMMER 181号にて紹介された「クラシック界の若手がすごい !」という企画で「日本コロンビアのOpus One」と言う2019年に設立されたクラシック・レーベルのサンプラーCDで知ったモノだ。この日本コロンビアの企画は、アーティストとしては20歳代中心に若き才能の発掘を目指し、デビューさせるというもので、2019年からスタートして今年で三年目となる。2019年はこの石上真由子他五名、2020年は三名、2021年は一名と計九名がデビューした。
 今回この「Audio Accessory」誌では、この9名がCDで紹介されていて、先ず私が目に付けたのが、このヴァイオリニストの石上真由子であった。
  彼女は医科大学卒業し医師免許を獲得しつつ、一方このヴァイオリニストとして活躍しているとう異色のミュージシャン。とにかく聴いてみるとうなづくところにあるのだ。

11161010_5fb2501250a4e (Tracklist)

1.ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ I.Con moto
2.ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ II.Ballada.Con moto
3.ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ III.Allegretto
4.ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ IV.Adagio
5.ラヴェル:ハバネラ形式のヴォカリーズ
6.ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34,No.14
7.幸田延:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調

 私が注目したのは、想像に難くないと思われるが、実はこのCD、なかなかハイレベルの録音盤なんである。ヴァイオリン・ソナタものとして、相対するピアノの響き、そしてヴァイオリンの占める位置の関係が素晴らしい。埼玉県の富士見市民文化会館にて2018年にて録音されたモノで、会場のオーディエンスの音は全くなく、ホール感も適度で音質もよく評価に値するものだ。
 そして彼女のヴァイオリンの響きは、これがなかなかのもので、ヤナーチェクのM4."ヴァイオリン・ソナタⅣ.Adagio"のスリリングが響きは圧巻である。それに反して高音部の優しさと広がりはこれも素晴らしい。実はこの曲を「Audio Accessory」誌のサンプラーで聴いて、アルバムを手にするに至ったわけだ。
 一方、M5."ラヴェル:ハバネラ形式のヴォカリーズ" にて聴けるように、高音部の優しい響きはこれまた見事、更にそれはM6."ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34,No.14" においても言えることで、ここでは更に中音部のソフト感もいい。

186522380_158611866269012_35571374477452  私がクラシック・ヴァイオリンの演奏評価をするのはおこがましいので、それはそれとして、ただ言えることは聴く方にその曲の描こうとしているイメージを植え付けてくれるに長けた才能だけで、OKとしておきたいのである。

(石上真由子紹介)
 1991年生まれ今年30歳、京都府京都市出身のヴァイオリン奏者。5歳からヴァイオリンを始め、8歳でローマ国際音楽祭に招待。高校2年時には日本音楽コンクール第2位、聴衆賞および E・ナカミチ賞を受賞。異色にも京都府立医科大学卒業し、医師免許を取得。ルーマニア国際音楽コンクール弦楽部門第1位など国内外のコンクールで上位入賞を続け、以降もソロの他長岡京室内アンサンブル、アンサンブル九条山のメンバーとしても活躍している。東響、京都市響、ブラショフ国立響など国内外のオーケストラとの共演や欧州各地での演奏会のほか、『名曲リサイタル』『題名のない音楽会』などの出演も多い。そしてこの日本コロンビアのクラシックの未来を担う新人のためのレーベル「Opus One」の第一回の2019年にこのアルバムをリリースした。

(評価)
□ 演奏 :  88/100
□ 録音 :  88/100

(視聴)

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2021年1月20日 (水)

カティア・ブニアティシヴィリ Khatia Buniatishvili 「LABYRINTH」

タイトルどうりの異常ともいえる静から迷宮へと誘う演奏
・・・・久々の名盤である

<Classic,  classical music >

Khatia Buniatishvili 「LABYRINTH」
Sony Classical / Germ / 19439795772 / 2020

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Khatia buniatishvili(p)
Gvantsa Buniatishvili(p track 5,13)
arr. Khatia Buniatishvili track 1,5,8,11

Recording: Paris, Philharmonie, La Grande Salle Pierre Boulez,
June 16–20, 2020

 どちらかという奔放な解釈でありながら繊細な表現に秀でていることで知られる今や注目のピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリの新作。なんとクラシックから映画音楽と現代音楽にまでの幅広い分野の曲がセレクトされていて多彩そのもの作品集。(彼女については、詳細は既にここで取上げているので、そちらを参照)
 そしてタイトルが「Labyrinth 迷宮」ですから、これまた聴き手を惑わす世界かとおそるおそる聴くことになった。しかしアルバム自身は彼女のお気に入り曲を集めたものであり、多くの人に聴いてもらうべく多彩であり気軽に聴ける世界と銘打っている。
 彼女の言う「迷宮」とは、「運命・宿命と創造」、「難局と放免(悪魔祓い)」ウンヌンが・・・これを聴くことによって理解できるかどうか。

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(Tracklist)

1.Ennio Morricone:Deborah’s Theme( from the film Once Upon a Time in America
2.Erik Satie:Gnopédie No. 1
3.Frédéric Copin:Prélude in E minor op. 28/4
4.György Ligeti: Arc-en-ciel No. 5 from Études pour piano – Book I
5.Johann Sebastian Bach:Badinerie(from Orchestral Suite No. 2 in B minor BWV 1067 for piano four hands with Gvantsa Buniatishvili
6 Johann Sebastian Bach:Air on the G String 5:19 from Orchestral Suite (Overture) No. 3 in D major BWV 1068
7.Sergi Rahmaninov(arr.Alan Richardson):Vocalise op. 34/14
8.Serge Gainsbourg:La Javanaise
9.Heitor Villa-Lobos:Valsa da dor
10.François Couperin:Les Barricades mystérieuses from Pièces de clavecin – Book II
11.Antonio Vivaldi/Johann Sebastian Bach:Sicilienne Largo from Bach’s Organ Concerto in D minor BWV 596 based on Vivaldi’s Concerto in D minor RV 565
12.Johannes Brahms:Intermezzo in A major op. 118/2
13:Arvo Pärtt:Pari intervallo for piano four hands
14.Phlip Glass(arr. Michael Riesman & Nico Muhly ):I’m Going to Make a Cake from the film The Hours
15.Domenico Scarlatti:Sonata in D minor K 32
16.Franz List:Consolation (Pensée poétique) in D-flat major S 172/3
17.John Cage:4:33
18. Alessandro Marcello/Johann Sebastian Bach:Adagio from Bach’s Keyboard Concerto in D minor BWV 974 based on Marcello’s Oboe Concerto in D minor

  とにかくとにかく上のように選曲がユニーク。クープラン、スカルラッティ、バッハなどのバロック期の作品からサティが登場し、モリコーネ、ペルト、ゲンスブールをはじめジョン・ケージまでの近現代作品まで網羅し、時代を超えて多彩な曲が登場してくる。

E0080798_2b  M1."Deborah’s Theme"はモリコーネだが、暗く沈んで静かに物思いの世界で始まり。M2."Gnopédie No. 1"サティは静かな世界に心安まる。そしてM3."Prélude in E minor op. 28/4"ショパンの超ゆったりの演奏で美しい世界にと、完全にこのアルバムの世界に弾き込まれてしまう。
 M4." Arc-en-ciel No. 5 from Études pour piano – Book "になって初めて強打鍵盤音が出現。
 バッハのM5."Badinerie", M6."Air on the G String"はほっとする安堵感あり、現実の世界に呼び戻される。M7."Vocalise op. 34/14"ラフマニノフは抒情性たっぷり。
 M9."Valsa da dor"は強弱のメリハリが素晴らしく、彼女の特徴を聴ける。弱の深い情感に心が惹かれる。
 M11."Sicilienne Largo from Bach’s Organ Concerto in D minor BWV 596"ビヴァルディ・バッハも美しい。M12."Intermezzo in A major op. 118/2"ブラームスは納得の美。
 M13."Pari intervallo for piano four hands"の「断続する平行」は、姉のGvantsa B.とのフォー・ハンド演奏。とにかく深遠に奥深さは出色。
 M14."I’m Going to Make a Cake from the film The Hours"の展開はまさに映画を見る世界。
 M15."Sonata in D minor K 32"スカルラッティのソナタ、M16."Consolation"リストの「慰め」は、このアルバムを聴いてよかったと心に染み入る名曲・名演奏。
 M17.はあの有名なジョン・ケージの"4分33秒"、全ての楽器の休章。これが登場するとは思わなかった。ここではかすかに聞こえる小鳥のさえずり。そして終曲M18."Adagio from Bach’s Keyboard Concerto in D minor BWV 974 "は締めくくりに相応しい美しいバッハのアダージョ。

 とにかく、久しぶりに素晴らしいアルバムを聴いたという気持ちで聴き終えることが出来る。カティア・ブニアティシヴィリも自分の好きな曲を演奏したと言うだけあって、情感の入れ方も素晴らしい。彼女の色に染められて、曲によってこんな哀感があったのかとも新しい発見がある。彼女のこうした面は初めてと言うことではないが、しかしこの世界は彼女がこれからも大切にしていく世界であろうと思うし、是非そうあって欲しいと願うのである。
 
(評価)
□ 選曲・演奏    95/100
□ 録音       88/100

(視聴)

 

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2021年1月 7日 (木)

EL&Pからブニアティシヴィリ、ブレンデル、プレヴィンの「展覧会の絵」

ムソルグスキーの前衛性からの世界は・・・・

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 ロシアの作曲家ムソルグスキー(Modest Petrovich Mussorgsky, 1839.3.21 - 1881.3.28)は、民族主義的な芸術音楽の創造をした作曲家集団「ロシア五人組」の一人だ。ロシアの史実や現実生活を題材とした歌劇や諷刺歌曲を書いた。歌劇『ボリス・ゴドゥノフ 』や管弦楽曲『禿山の一夜』、ピアノ組曲『展覧会の絵』などが代表作だ。

 ここで取上げる組曲『展覧会の絵』(1874年作曲、楽譜は10年後にリムスキー・コルサコフにより編集出版)は、19世紀ロシアの生んだ最も独創的なピアノ音楽とされている。絵画にちなび彼の世界で発展させた10の楽曲と、全曲の冒頭と曲間に変奏されながら挿入される「プロムナード」より構成された曲。ムソルグスキーならではの独創性が全曲に漲っていて、その音楽的前衛性によって現代においても過去の物にならない。フランス印象派をはじめ各方面に大きな影響を及ぼした。民主主義的な理想のために闘う前衛的なロシア・リアリズムが宿っている。

 そしてそれは現代に於いてロックからクラシックに至る世界で重宝がられているのだ。ここでこの新年に聴いた四枚のアルバムを紹介したい。

█ 「展覧会の絵」 ロック盤

<Rock>
(DVD 映像盤)
 EMERSON,LAKE & PALMAR 
「MONTREAL 1977 COLLECTORS' EDITION」
Olympic Stadium,Montreal, Quebec   PRO-SHOT

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 EL&Pはクラシック曲をロックにアレンジしたグループの代表格だが、このムソルグスキーの「展覧会の絵」やチャイコフスキーの「くるみ割り人形」、アルベルト・ヒナステラの「ピアノ協奏曲第1番」などだ。
 これはもともとこのコンセプトはエマーソンがEL&P結成以前に在籍していたザ・ナイスで行ってきたもの、それがEL&Pに引き継がれたいた。

 これは1977年のオーケストラ共演ツアーのモントリオール公演のライブ映像版。かってライブアルバム『IN CONCERT』としてお目見えしたものだか、現在廃盤。そこで実際にショーどおりに再編集してのバージョンを加えての復刻版。
 とにかく「Pictures at an Exhition 展覧会の絵」が素晴らしい。ロックを過去のクラシックにプログレさせたという離れ業。しかもオーケストラを競演させるというエマーソンの野望の結晶。

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  EL&Pのバンド構成は、キーボード、ベース(ボーカル)、ドラムの、いわゆるキーボード・トリオである。所謂ロック・サウンドには、あの歪んだ破壊的パワーを出すギターは欠かせないものだが、このバンドの構成の場合はギター・サウンドはない。ときにベースのレイクがアコギを使う程度。そしてキーボード・プレイヤーはステージを自由に動き回れず、ロックにとって大きなインパクトとしてのパフォーマンスに制約が大きい。

 しかしキーボードのエマーソンは、ハモンド・オルガンでは攻撃的な音出しに成功し、モーグ・シンセサイザーの音色をうまく取り入れた。C-3とL-100という2台のハモンドオルガンを使い、L-100の出力にギター・アンプを使って破壊的なサウンドを出した。又アンプに近づけてノイズを出したり、鍵盤の間にナイフを突き立てて二つの鍵盤をオンにするエマーソン独特のパフォーマンスにより攻撃的・破壊的イメージ作りをした。さらに演奏面でも「PIANO CONCERTO No.1」にみるように、オーディエンスを虜にした。

 レイクもヴォーカルでの魅力も訴えたし(「C'EST LA VIE」)、パーマーとのドラムスも迫力演奏(「TANK」)。こうしてEL&Pは70年代末期に頂点に立った。しかしこの1977年のパフォーマンスがその後の彼ら自身に重圧となる。
 こんな衝撃は今のロック界では観られない。そんな意味でも貴重盤だ。

 

 

█ 「展覧会の絵」クラシック盤 (1)  ピアノ組曲版

<Classic>

Khatia Buniatishvili  「KaLEidoScope」
Sony Classical / EU / 2016

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Khatia Bunatishvili : piano

0d2926fc5f6c9861573b (Tracklist)

1. Modest Mussorgsky / PICTURES AT AN EXHIBITION
2. Maurice Ravel / LA VALSE
3. IGor Stravinsky / THREE MOVEMENTS FROM PETRUSHKA

   いまや売れっ子のピアニストKhatia Bunatishviliの異端のクラシック・アルバム。この新年の冒頭に当たり、彼女のメリハリのあるピアノ演奏を聴き込みました。
 このアルバムは、既にここで取上げているのでそちらへ (↓)
   (参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/khatia-buniatis.html

 

█ 「展覧会の絵」クラシック盤 (2)  ピアノ組曲版

<Classic>

ALPRED BRENDEL 「PICTURES AT AN EXHIBITION」
PHILIPS / JPN /PHCP-1157 / 

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Alfred Brendel : piano
Recorded on 1985

Alfredbrendelb2   もともとのこの「展覧会の絵」はこのピアノ版であるピアノ組曲であるのだが、それはムソルギスキーが、彼の友人の急進的建築家ヴィークトル・ハルトマンの遺作展から影響を受けて作曲されている。原題は《展覧会からの絵》という意のようで、ハルトマンの絵をそのまま音楽において描出した訳ではなく、あくまでそこからインスピレーションを受けて彼の世界から作られた楽曲という。

  そしてこのブレンデルの演ずるところは、ブニアティシブィリと違ってどちらかと言うと、優しさに溢れているという印象。何度となくよく聴いてきたアルバム。

 

 

█ 「展覧会の絵」クラシック盤 (3)  オーケストラ版

<Classic>

ANDRE PREVIN , Wiener Philharmoniker 
「PICTURES AT AN EXHIBITION」

PHLIPS / Germ. / 416 296-2 /

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Wiener Philharmoniker 
conducted by ANDRE PREVIN

Live Recording , Musikvereinssaal , Wien, 20&21/4/1985

Previn219x219  これはラヴェルによるオーケストラ版「展覧会の絵」を、アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏したアルバム。指揮者によってはこうしたオーケストラ版においては、原曲のピアノ組曲のロシア的世界に近づけるものと、あくまでもオーケストラ版としてのラヴェル的世界に広げる者と居るようだが、プレヴィンは特にどちらかにも偏らず、彼の世界で演じたようである。テーマが変わる間にプロムナードという散歩的繋ぎを挿入した組曲だが、そのプロムナードがそれぞれの状況や心理を描くに役立ったところをプレヴィンはかなり慎重に描いているような印象である。


█ 我々が受けるところとしては、オーケストラ版よりは、ピアノ版の方がスリリングな印象であり、その辺はこうして比べて聴いていると面白い。そこに更にEL&P版のようなロックで迫ってみると、これ又ムソルグスキーの世界が印象深くなってくるのである。

 ムソルグスキーに関して・・・・当時ロシアには、「移動派」という民主主義的な理想を求めての闘う前衛的なロシア・リアリズム美術の画家集団が存在していて、この運動を、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフといったロシアの歴史的作家たちは擁護したのだが、音楽界ではムソルグスキーのみ支持したというのだ。こんな貴族生活から大衆の世界に根を下ろした彼の心が前衛的な曲作りに向かわせたのか、興味ある「展覧会の絵」なのである。音楽というものもその時代の中で生きて存在しているところに価値はあるのだと思う次第だ。

(視聴)
EL&P

  

*

Khatia Buniatishvili

*

Alfred Brendel

 

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2021年1月 2日 (土)

2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」

今年は辛丑(かのとうし)年(牛)・・・・・「帰馬方牛」を願いつつ

「帰馬方牛」
戦争が終わって平和になることのたとえ。
または、二度と戦争をしないことのたとえ。
戦争のための馬や牛を野性にかえすという意味から。
(殷の紂王を討ち取った周の武王は、戦争で使った馬を崋山の南で放ち、牛を桃林の野に放って二度と戦争に用いないことを示した故事から)
出典 『書経』

 2019年は全世界「コロナ渦」にのまれ、影に隠れていた世界情勢、そして日本の情勢には、甚だ疑問の姿を感じざるを得ない。歪んだポピュリズム、ナショナリズムの台頭、戦後の平和を維持するリベラリズムに対しての新自由主義の負の部分の支配、人種問題。そして日本での安倍政権以来顕著となった政府の独裁化と道義崩壊、対近隣諸国との政策の危険性、原子力政策の危険性、国民無関心化の助長などなど、新年に当たって多くの問題を考えざるを得ない。

 「丑(牛)」にちなんで、Pink Floyd「原子心母 Atom Heart Mother」そしてMORGAUA QUARTET「原子心母の危機 Atom Heart Mother is on the edge」へと流れるのである
 それはウォーターズの"人間と社会への不安"から荒井英治の"音楽は現実から逃避してはならない"へとの流れである。

 

91pv5nyeiklw  █ <Progressive Rock> Pink Floyd
   「原子心母」 Atom Heart Mother
    Harvest / UK / SHVL-781 / 1970

 
 (Tracklist)

    1. Atom Heart Mother, 2.If, 3.Summer'68, 4.Fat Old Sun, 5.Alan's Psychedelic Breakfast 



1970年発表。
 全英チャート初登場1位、全米でも55位を記録するなど世界的にヒットして、ピンク・フロイドを世界的バンドとして押し上げられたアルバム。
 プログレッシブ・ロックというものを世界をはじめ日本でも認知させた。
 ここには、ペース・メーカーで生き延びている妊婦を見てのウォーターズの人間観から生まれた不思議なタイトル「原子心母」、ロックとクラシック更に現代音楽を融合させたロン・ギーシン。そして既にB面には、ウォーターズにまつわる人間や社会への不安が頭を上げ、それを美しく歌ったM2."If"が登場、これ以降彼の曲はその不安との葛藤が続くのである。M4."Fat Old Sun"はギルモアのギターによる音楽的追求が始まっている。
 アルバム『モア』以降、ギルモアを呼び込んでバンド造りに努力したウォーターズ。しかし四人の音楽感の違いから分裂直前であったが、この『原子心母』ヒットで彼らは嫌が上でもバンド活動を続け、その後の『おせっかい』、『狂気』と最高傑作に向かう。

 

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  <Classic> MORGAUA QUARTET
 「原子心母の危機」 Atom Heart Mother is on the edge
     日本コロンビア/ JPN / CD-COCQ85066 /2014


 

 


(Tracklist)
1. レッド(キング・クリムゾン) Red(King Crimson)
2. 原子心母(ピンク・フロイド) Atom Heart Mother(Pink Floyd)
3. 平和~堕落天使(キング・クリムゾン) Peace~Fallen Angel including Epitaph(King Crimson)
4. ザ・シネマ・ショウ~アイル・オヴ・プレンティ(ジェネシス) The Cinema Show~Aisle of Plenty(Genesis)
5. トリロジ-(エマーソン・レイク&パーマー) Trilogy(Emerson Lake and Palmer)
6. 危機(イエス) Close to the Edge(Yes)
    i) 着実な変革 ⅱ) 全体保持 ⅲ) 盛衰 iv) 人の四季 
7. ザ・ランド・オブ・ライジング・サン(キ-ス・エマ-ソン) The Land of Rising Sun(Kieth Emerson)

Arai0618 MORGAUA QUARTET
荒井英治(第1ヴォイオリン、東京フィル交響楽団ソロ・コンサートマスター)
戸澤哲夫(第2ヴォイオリン、東京シティ・フィル管弦楽団コンサートマスター)
小野富士(ヴィオラ、NHK 交響楽団次席奏者)
藤森亮一(チェロ、NHK 交響楽団首席奏者)

編曲:荒井英治
録音:2013年 9 月 30日、2014 年1月27日、2月7日、クレッセント・スタジオ

   プログレ至上主義者、ヴァイオリンの荒井英治による入魂のアレンジにより、クラシック・カルテットの演奏アルバム。宣伝文句は「この危機の時代に、新たな様相で転生するプログレ古典の名曲群」で、まさにそんな感じのアルバム。
 このモルゴーア・カルテットは、ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲を演奏するために結成されたカルテット。東大震災に衝撃を受けたキース・エマーソンが書き上げたピアノ小品の弦楽四重奏編曲に荒井英治(第1ヴァイオリン)は心を打たれた。震災に伴っての世紀の世界的人災「福島の危機」とピンク・フロイドの「原子心母」、そしてその同一線上にクリムゾン「レッド」、イエス「危機」を見ることで、このアルバム製作となったと。

「音楽は現実からの逃避になってはならない。逆に立ち向かうべきことを教えてくれるのではないか」 (荒井英治)

 

(視聴)

pink floyd "Atom Heart Mother"

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morgaua quartet "Atom Heart Mother is on the edge"

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morgaua quartet "atom heart mother"

 

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2020年7月 6日 (月)

ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「Concert in Hannover 2020」

オーケストラとの圧巻の協演による・・・
メルドーの欧州伝統クラシックへの挑戦 (歴史的貴重盤登場)

<Classic>

Brad Mehldau,piano
Clark Rundell, conductor NDR Radiophilharmonie
「Concert in Hannover 2020」
HEADLESS HAWK / HHCD-20703 / 2020

Hannover2020

Bm1  ここに来て、コロナ渦への心象のアルバム『Suite:April2020』、そして先般の聴く方はあまり気合いが入らなかったアルバム『Finding Gabriel』と違って、本格的ジャズ・アルバム『Round Again』と発売が続くフラッド・メルドー(→)だが、今年2020年の一月に、ドイツにてのメルドーの古典派からロマン派音楽のクラーク・ランデル指揮によるNDRラジオフィルハーモニーとの共演ライブの模様を収録した最新ライブ盤がコレクター相手にリリースされている。
 つまり今やジャズ・ピアニスト世界ナンバー1とまで言われるブラッド・メルドーの驚きのヨーロッパ伝統クラシック音楽への挑戦だ。考えてみれば、2年前にはアルバム『アフターバッハ』では、バッハ曲のクラシック演奏に加えて、それをイメージしての彼自身のオリジナル曲を展開したわけで、クラシック・ファンにも驚きを持って歓迎されたわけで、そんなことから、今回のドイツでのこんな企画もさもありなんと思うのである。
 このコレクター・アルバムは、音質も期待以上に良好で、メルドー・ファンにとっては彼を語るには是非必要で内緒に持っていたい貴重盤になりそうだ。

 

(Tracklist)

1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered Clavier, Book I), BWV 855 7:50
     「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲とフーガ 第10番 ホ短調」   BWV 855
2.Concerto For Piano And Orchestra 1st Movement      14:17
3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement     12:12
4.Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement      12:30
        プレリュードBの後のプレリュード 10の短調
       「フーガの技法」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX
        ヨハンセバスチャンバッハ/アントンヴェーベルン
       「音楽の捧げもの」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)

(Bonus Track) ライブ・アット・コンサートホール、ハノーファー、ドイツ 01/31/2020

5.West Coast Blues  /  Brad Mehldau Trio

Mehldau102_vvierspaltig_20200705162301

Rundell100w_20200705162301   やっぱりスタートは、バッハの楽曲「「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲とフーガ 第10番 ホ短調」」からで、クラークランデル(→)の指揮によるこのオーケストラ(NDR-Radiophilharmonie 右下)にメルドーのピアノが融合というか協演というか素晴らしい刺激的演奏が展開する。しかもこのアルバムはコレクターものではあるが、放送音源を収録しているもので、所謂オーディエンス録音モノとは異なり、プロ収録でクリアな迫力のある音が聴ける。
 パターンはピアノ協奏曲スタイルであって、この録音はオーケストラ自身のそれぞれの音の分離もよく、更にメルドーのピアノは中央にはっきりクリアーに聴ける録音となっていてファンにはたまらない。

Radiophilharmonie206w_20200706171201

 M3."Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement"は、素晴らしい勢いを描いて演奏され展開するが、管楽器群の高揚をメルドーのピアノがそれをきちっとまとめ上げるが如く響き渡り、それを受け手のストリングスの流れが美しい。普段のジャズの響きとは全く異なったメルドーのピアノ迫力の音に圧倒される。一部現代音楽的展開もみせるところが、なんとメルドーのピアノによってリードしてゆくところが快感。ちょっとショスタコーヴィッチを連想する演奏にびっくり。
   M4."Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement"は、ストリングスのうねりが納まると、ほぼソロのパターンでピアノがやや強めの打鍵音でゆったりしたテンポで響き次第に落ち着く中にホルンが新しい展開を、そして再びストリングスの美しい合奏とコントラバスのひびき、ハープの美音、それを受けてのメルドーの転がるようなピアノの響きを示しつつも次第に落ち着いたメロディーに繋がってゆく。
 こうゆうクラシック・スタイルの評価には何の術もない私であって、感想も至らないのだが、そこにみるメルドーのジャズにおける音との違いがくっきりとしてこれを一度はファンは聴いておくべき処だろう。
 
 なお、このアルバムには、ブラッド・メルドー・トリオが最近よく演奏する曲"West Coast Blues"がボーナス収録されている。こちらは録音はそう期待できないが、演奏の内容はそれなりに楽しい。

 2年前にリリースされた名作『アフター・バッハ』の成功により、クラシック畑からも絶賛を浴びたことで彼の多様なピアノ・スタイルは絶好調だ。今回、ドイツで行われたクラシック・ライブも彼にとっては更なる充実の一歩になることは間違いないところだ。

(評価)
□ 演奏 90/100 
□ 録音 85/100

(視聴)

 現在、このHannoverのライブ映像は、見当たらないので「アフターバッハ」を載せます

 

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