Progressive ROCK

2023年10月 8日 (日)

ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」

50年の歴史を経て・・ここに帰ってきたモノは、深淵にして壮大な世界

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」
Cooking Vinyl / Import / SGB50CD / 2023

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Credits:
Roger Waters: Vocals, Bass on Any Colour, VSC3 / Gus Seyffert: Bass, Guitar, Percussion, Keys, Synth, Backing Vocals / Joey Waronker: Drums, Percussion / Jonathan Wilson: Guitars, Synth, Organ / Johnny Shepherd: Organ, Piano / Via Mardot: Theremin / Azniv Korkejian: Vocals / Gabe Noel: String,Arrangements, Strings, Sarangi / Jon Carin: Keyboards, Lap Steel, Synth, Organ / Robert Walter: Piano on Great Gig // Produced by Gus Seyffert and Roger Waters // Art Direction and Design: Sean Evans // Photography: Kate Izor


   ロック史に輝く名盤中の名盤、ピンク・フロイドの最高傑作と言われる『The Dark Side of the Moon 狂気』(1973)を、ロジャー・ウォーターズがオリジナル・レコーディングから50年、80歳を迎えるに人生の区切りに再解釈した壮大な世界をここに公開した。
 そもそもピンク・フロイドの歴史の中で、全曲をウォーターズが作詩して彼の出してきた基本的なコンセプトにメンバーが肉付けして音像を作り上げた最初のアルバムで、その流れは以降彼が在籍した最後のアルバム『Final Cut』(1983)の5作にまで続くことになった。このアルバムは当初"Eclipse"というタイトルで進行したが、謎めいたウォーターズのアイデアは人間の問題、社会の問題、個人的トラウマ、シド・バレットの狂気などを常にはらんでいて難解であると同時に聴くものの感性に訴える世界でもあった。

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 大学時代、ロック・ミュージツクを通じて夢を描いて結成したPink Floyd。それはニック・メイスン、リチャード・ライトと共に、ウォーターズは高校時代の友シド・バレツトを呼び込んでの4人バンドで、サイケデリックと言われた世界で花咲かせた。最大の難関は音楽的リーダーのシドの精神状態の悪化からの脱落であった。しかしウォーターズの執念は、ギタリスト・デヴット・ギルモアを呼び込んで更にプログレッシブな流れに重きをおいてバンド活動を続け、『Atom Heart Mother』(1970)にて一つの価値観を築き、遂に29歳のとき、Pink Floydとしてレコーディングした『The Dark Side of the Moon』は、彼の独特な人間の経験、時代の暗部、狂気への恐怖、などの彼の異常ともいえる常人の感覚を超えた世界を描くことにより圧倒的な支持を得たのだった。

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1. Speak to Me
2. Breathe
3. On the Run
4. Time
5. Great Gig in the Sky
6. Money
7. Us and Them
8. Any Colour You Like
9. Brain Damage
10. Eclipse

 このアルバムは「老いた男の記憶、それは全盛期の男の行動である」という冒頭の言葉から始まる。ご存じでしょうか、この"Speak to Me"では、なんとアルバム『Obuscured by Clouds雲の影』の曲"Free Four"の詩が登場しているではないか、驚きましたね、彼の繋がっているコンセプトの世界には。既にウォーターズは20歳代に老人への世界にまで想いを馳せていた。そして『The Dark Side of the Moon Redux』で、この50年に及ぶ経過を歩み、彼自身のトラウマ、歩んだ道、哲学、年齢という諸条件新たな視点を持って、彼自身のコンセプトで築いたオリジナルの創作物を見直し回顧し新展開を試みる。彼の近年の人生の重みを感ずるヴォーカルは、Pink Floyd時代から変わらない謎めいた表現で脚色しながら、彼の若き時代の歌詞に深遠さのあるコンセプトの拡大の味を加え、彼の哲学的風貌すら感ずる創作をここに結晶させたのである。

 制作にあたってWatersとGus Seyffertによるプロダクションは、壮大な深淵な宇宙的サウンドにウォーターズのの80歳の男としての心のつぶやきを乗せて、サイケデリックな味とプログレッシブな味とクラシックな味を乗せたオーケストレーション築き、かってのアルバムにはなかった世界を対比的に聴かせてくれる。

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 「オリジナルの『The Dark Side of the Moon』は、ある意味、人間の現状に対する年長者の嘆きのように感じられる。しかし、曲を作ったとき、Dave、Rick、Nick、そして私はとても若かった。だから、80歳の知恵が再解釈に何をもたらすかを考え始めたんだ。最初にGusとSeanに『The Dark Side of the Moon』の再レコーディングの話をしたとき、みんな私が狂っていると思った。でも、考えれば考えるほど、『肝心なのはそこじゃないよね』と思ったんだ。半世紀の時を超えて手を取り合い、堂々とオリジナルと並べることが出来る作品に仕上がったことを、私は非常に誇りに思っている」とRoger Watersは語る。

Pinkfloydrogerwatersnickmasondarjsideoft  そしてこのアルバム・リリースの試みは又してもPink Floydメンバーのデヴィット・ギルモアの猛反対という憂き目にあった。これは若き当初のこのアルバムのコンセプトの世界に存在していなかったギルモアであったことを露骨に暴露した。哀しいことに、これは真の作者にしか解らない半世紀の経過を経た人生が如何に人間の重きを築いているかが理解出来ないのである。もっともこれはアメリカ商業主義の独占欲の強いギルモアの女房のポリー・サムソンの仕業なのかもしれないが。
 しかし一方、Pink Floydのニック・メイスンはリリースに大賛成した。そこが学生時代の男の夢をバンド結成という一つの手法の下で、互いに共に築いてきた人格を持っている事の違いであった。ウォーターズはかっての『The Dark Side of the Moon』にとって代わろうなどとは全く考えておらず、勿論否定しているどころか、むしろ若き時代の結晶として評価していることが今回の「Redux」の発想に繋がっているのだ。メイスンは、あれから半世紀経過した人生の作り上げたものを確実に表現したことを理解し、更に音楽的完成度についても感動し後押ししてくれたのである。それによってウォーターズはリリースを決意したのであった。

 今や、人生の総決算に入っているウォーターズにとっては、パレスチナ支持イスラエル批判、戦争の無意味さの国連発言、彼の作品やライブの意味が理解できない反ユダヤ主義やナチス礼賛のという濡れ衣に対する反発など、常に政治思想が取り巻いているが、その中でも何につけても父親の死にまつわるトラウマを背負っての戦争否定につながる活動・運動はいまだに続いている。そんな中で、むしろ若き時代を礼賛し、そして年老いた現在の存在を確認しているのだと思う。ここまで来ると、このアルバムの評価はいろいろと言う世界を超越しているのである。

(評価)
□ 企画・演奏・歌   95/100
□ 録音        90/100

(試聴)

*

 

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2023年7月23日 (日)

ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

50有余年、ロックと共に戦ってきた男の心のアルバム

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

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(この動物(犬)の目の中に、あのジャケのプリズムが光を分散している=クリック拡大してみると解る。にくい演出です)

   ロジャー・ウォーターズがロック界きっての名作『狂気 The Dark Side of The Moon』(1973)のオマージュ作品を温めていたが、その公開に踏み切った。この10月にリリースされる。

Rwrockdownsw  コロナ・パンデミックにてすべてが抑制された中での先ごろの話題のロックダウン・セッションThe Lockdown Sessions』(2022 →)としてリリースされたアルバムに納められた曲を、それぞれの過去の曲からアコースティックな雰囲気への削ぎ落とされた曲として録音した時、アルバム『狂気』のリリース50周年が間近に迫っていた。このアルバムは、オリジナル作品へのオマージュとしてだけでなく、アルバム全体の政治的、感情的なメッセージに再び取り組むためにも、同様のリワークの適切な候補になる可能性があると思いついたのだという。

362115349_807288040768w  ウォーターズはこのところの協力者と話し合いリリースに向けて製作にかかることにしたもの。それは彼が言うように、明らかにかけがえのないオリジナルの代替品でなく、それは79歳の男性が29歳の目に映り描いた世界から50年経た今日のその間を振り返り、ウォーターズのトラウマと言うべき幼少時に戦死した父親との対峙であり、私の詩を引用するために、「私たちは最善を尽くし、彼の信頼を保ちました、私たちの父は私たちを誇りに思っていたでしょう」と言う世界である。

 こうした作品のリリースにはD.ギルモアは例のごとく反対したが(もう彼の独占欲はいいかげんにしてほしい)、ピンク・フロイドのスタート時からのメンバーのニック・メイスンは、むしろ当時からの制作目的、心情を知っているがゆえに、その内容に大きな評価をして、ウォーターズ主導であった『狂気』(曲は10曲中8曲にウォーターズがクレジットされており、歌詞は全て彼の当時の心情で書かれている)の半世紀の経った現在の世界をオーバータブして描いたアルバムのリリースに賛同した。このことはリリースに大きな力になったのだ。

 そしてこの10月CD、LP、ストリーム等でリリースされるが、ここに来て現在その中の曲"Money"のみが公開された。(↓)


 これを聴いてみて、やはりこのところウォーターズのライブ『This is not a Drill』(下左)や、彼の国連での発言(下中央)、又ドイツの反ユダヤ主義としての反発事件とそれに対抗しての歓迎キャンペーン(下右)など、相変わらず彼の歩むところ、問題が起きてはいるが、これこそ彼の歩んできた道であり、そのようなミュージシャンとしては異色の行動からの反発に対してもめげずに戦っている80歳を迎える男の生きざまには圧倒される。

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 ロック界においては、いろいろな老け方があるが、レナード・コーエンのような"老紳士の味わい"を前面に出しての世界も素晴らしいが、ウォーターズのように今も「Resist CAPITALISM」、「Resist WAR」、「Resist FASCISM」を掲げて戦い抜いている姿も、これ又人それぞれの道であり、評価に値するところだ。
 10月のニュー・アルバムの内容におそらく彼の80歳男の心情が見えてくると思われるが、これは過去の名作『狂気』とは全く別の観点で描くところのモノであって、ニック・メイスンも共感した時代を見つめてきたロック活動家の姿をここに味わいたいと思うのである。

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2023年6月23日 (金)

ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」

デストピアを描き、反戦・原爆廃止・人権擁護を訴える"フェアウェル・コンサート"

<Progressive Rock>

Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」
Complete Live Broadcast HD BluRay Edition
Live at O2 Arena, Prague, Czechia, 25th May 2023

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NTSC Full HD 1920 x 1080p Linear PCM Stereo + Dolby 5.1 Surround Total Duration 171min.

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Roger Waters – Vocals, Guitar, Bass
Gus Seyffert – Bass, Synth, Vocals
Joey Waronker – Drums
Dave Kilminster – Guitar
Jonathan Wilson – Guitar and Vocals
Jon Carin – Synth, Vocals, Guitar
Shanay Johnson – Vocals
Amanda Belair – Vocals
Robert Walter – Keyboards
Seamus Blake - Sax

 2022の北米ツアーでスタートしたピンク・フロイドの頭脳と言われるロジャー・ウォーターズの「THIS IS NOT A DRILL」が今年の欧州ツアーが追加され、既に各地を回っているが、この5月チェコ・プラハでの公演がプロショット映像でLinear PCM Stereo + Dolby5.1SurroundのBlue-Ray版が手に入る。
 これは全世界の劇場に生配信されたプラハ公演(上左)で、フルHDのプロショット映像の為圧巻である。
 このツアーは、間もなく80歳になろうとしている彼の「farewell Live 別れのライブ(第1章?)」ということもあってか各地で盛り上がっている。相変わらず斬新な方法論を示すライブ会場、ステージは会場の中央に設置され、その上には全方向からみれるスクリーン、そして例のごとく豚が宙を舞い、その上に今回は羊も会場の頭上を旋回する。

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 このライブは相変わらずの彼の政治思想の色づけが見られる為、ドイツでは騒動が起きた。まずドイツ・フランクフルトで「反ユダヤ主義」の疑いで公演がキャンセルされた。これは彼のイスラエル批判に端を発しているが、世界各地で長年にわたって行ってきた「人権を擁護する活動の一環」であって、エリック・クラプトン等の擁護する署名活動の展開があったり、ウォーターズ自身も「ロジャー・ウォーターズを非難している当局者はイスラエルの違法で不当な政策を批判する行為と反ユダヤ主義を混同するという危険な動きに加わっていることになる」と批判し、訴訟を起こし勝訴している。

Wall1w  更に行われた「ベルリン公演」が物議を醸している。そのことに関してはウォーターズは自分を「黙らせたい」ための「中傷」だとして声明を発表している。彼はベルリン公演でナチスを彷彿とさせる衣装が登場したことから警察の捜査を受けていることが明らかになっている。ベルリン公演ではロジャー・ウォーターズが第二次世界大戦を連想させるような服を着ていた上にホロコーストの犠牲者であるアンネ・フランクの名前もスクリーンに映し出されたことから物議を醸すこととなったのだ。しかし、彼のピンク・フロイド、そしてソロ活動の一連のアルバムにも見るとおり、彼の一貫した政治思想は個人の尊厳であってまずは、人間尊重の「反戦思想」である。

 ウォーターズは、「いかなるものであれ、戦争で人が死ぬことは絶対悪」であるという立場をとる。そしてそれに加え「弱きモノへの弾圧」に抵抗する。これも彼の父親の戦死の悲劇の事実が大きくのしかかっている。戦争のもたらす悲劇に比べたら「妥協による共存がはるかにマシである」ということ。彼が国連での発言に見るように西側、東側という立場でなく、ベルリンの壁崩壊時のゴルバチョフと約束したNATOの不拡大の約束を守らず、ウクライナを戦争に導くのではなくロシアと妥協させて戦争を防止しなかったバイデン大統領も「戦争犯罪者」であると糾弾する。

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 今回のライブにおいても反戦、イスラエル非難、反人権無視、原爆禁止などがテーマと上がってくるためにあらゆるところで物議を醸している。しかし、今回明白になったのは、ロジャー・ウォーターズを擁護するエリック・クラプトン、トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)、ニック・メイスン(ピンク・フロイド)ら多くの一連のミュージシャンによる、フランクフルト公演中止決定を覆すことを求める署名活動も行われ、「ミュージシャンの社会的主張」の存在意義が焦点になったが、法廷での否定は行われなかった。これは結果としてウォーターズ側が勝訴したことになっている。

 そんな話題の多い欧州ツアーは現在も進行中であるが、ピンク・フロイドの黄金時代を象徴するクリエイティブなロジャー・ウォーターズが、一夜限りで、プラハにおけるライブを"初のフェアウェル・ツアー「This Is Not A Drill」"としとて世界中の映画館で一斉に披露した。そしてこのBlu-Ray映像版はそれが原点と思われる。いずれにしても圧巻のサラウンド・サウンドの効果も大きく見ごたえ十分だ。

(Tracklist)
01. Intro 02. Comfortably Numb 03. The Happiest Days of Our Lives 04. Another Brick in the Wall (Part 2) 05. Another Brick in the Wall (Part 3) 06. The Powers That Be 07. The Bravery Of Being Out of Range 08. The Bar 09. Have a Cigar 10. Wish You Were Here 11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) 12. Sheep 13. Intermission 14. In the Flesh 15. Run Like Hell 16. Stop 17. Déjà Vu 18. Is This the Life We Really Want? 19. Money 20. Us and Them 21. Any Colour You Like 22. Brain Damage 23. Eclipse 24. Two Suns in the Sunset 25. The Bar (Reprise) 26. Outside the Wall N

 いずれにしても彼は反戦を主体とした政治思想をライブで展開することは彼の信条であり、面白いことに、このライブの冒頭に「ピンク・フロイドを愛すが、ロジャー・ウォーターズの政治思想が嫌なら、会場を出てバーにでも行って飲んでいてほしい」とアナウンスしている。

Images_20230716123201    しかし公演前半のスタートM2."Comfortably Numb"のニューバージョンの素晴らしさは、ギター・レスの仕上げでギルモアへのあてつけとともに社会不安を描き、今回のツアー仲間の女性歌手Shanay Johnson(→)のソロの歌声の響き、それは印象的で会場をうならせたのである。
 又M10. Wish You Were Here, M11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) でのピンク・フロイド結成当時とシド・バレットの思い出には彼の心情が歌い上げられる。今回のアルバム「アニマルズ」からはM12."Sheep"が取り上げられ弱き大衆の反乱を描く。

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 やはり後半に入ると「デストピアDystopia」に焦点は当てられ、発達した機械文明の、否定的・反人間的な側面が描き出され、典型例は反自由的な社会であり、隠れた独裁や横暴な官僚システムなどを批判し訴える。これを描く世界はM18. Is This the Life We Really Want? , M19. Money, M20. Us and Them で頂点に至る。そして最後には、M24. Two Suns in the Sunsetでは原爆の恐ろしさを描いて幕を閉じる。

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 ウォーターズの人生においては、彼のトラウマは「人生一度も話が出来なかった戦死した父親」であって、しかも祖父も同様であったことからの全て「反戦」が基調となって発展している。もう80歳になろうとしている今回の彼の「Farewell Concert」においても一貫してその線は崩れていないし訴え続けている。又"The Bar"の新曲も披露している。

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         (ツアー・メンバー)

 相変わらず、ウォーターズ・ツアー・メンバー(上)のDave Kilminster (Guitar)、Jonathan Wilson (Guitar and Vocals)そしてJon Carin (Synth, Vocals, Guitar)の演奏技術の高さはお見事と言いたい。見ごたえのあるライブだ。

(評価)
□ 曲・演奏・舞台装置 90/100
□ 録音・映像     90/100
(視聴)

*

 

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2022年12月12日 (月)

ロジャー・ウォータース Roger Waters 「The Lockdown Sessions」

コロナ禍にてミュージシャンがリモート集合しての演奏で録音
  (新アルバム・・ストリーミング・サービス・リリース)

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Lockdown Sessions」
Legacy Recordings / 2022

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ROGER WATERS : Vocals,  Guitar,  Piano
"US+THEM Tour"and"This is Not A Drill Tour"Members
Dave Kilminster (g)、Jon Carin (key, g)、Jonathan Wilson (g, vo)、Joey Waronker (d)、Gus Seyffert (b, g)、Robert Walter (org)、Ian Richie (ts)、Bo Koster (Ham)、Lucius(Jess Wolfe, Holly Laessic - vo)、Shanay Johnson (vo)、Amanda Belair (vo)

2022 The copyright in this sound recording is owned by Roger Waters Music Overseas Limited, under exclusive licence to Legacy Recordings, a division of Sony Music Entertainment

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 ピンク・フロイドの"The Creative Genius(創造的才能)"を自負するロジャー・ウォーターズが、ここにストリーミング・サービスにて新アルバムをリリースした。
 このコロナ禍で予定した「This is Not A Drill」ツアーが延期を繰り返していて、ようやく今年北米で実現したところだが(反響が大きく2023年欧州ツアーが追加された)、このロックダウン中2020年から2021年に、彼がツアー・メンバーと連絡を取りつつ、自宅からリモートでつないで新アレンジにて演奏し歌いあった曲がYouTubeで公開していたのであるが、それをここにアルバムとしてリリースした。そして先日紹介した今回の「This is Not A Drill」ツアーのオープニングで公開した曲"Comfartably Numb 2022"のニューバージョンを追加している。
 これは身近にはe-onkyoでは、Hi-Res 音質(flac 48kHz/24bit)でダウンロード出来る為、手に入れたものだ。

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(Tracklist)

1 Mother
2 Two Suns In the Sunset
3 Vera
4 The Gunner's Dream
5 The Bravery of Being Out of Range
6 Comfortably Numb 2022

 ロジャー・ウォーターズはこのようにコメントしている。
 " 僕たちの『US+THEMツアー』は3年に渡って終わった…どのギグでも、ショウの本編を"コンフォタブリー・ナム"で締めくくった後でアンコールをやった。アンコール曲にはいつも"マザー"だ。ツアーの終盤に僕はこう思うようになった、“アンコールを全曲集めたら興味深いアルバムができそうだな”.....そしたらロックダウンになってしまった!、“アンコール”プロジェクトはもう諦めるしかないかと思った時もあったけど…とにかく、この作品集ができた。この最後には"コンフォタブリー・ナム2022"を付け加えた。この愛の輪を締めくくる感嘆符の適切な置き所だと思ってね"

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 もうじき80歳になろうとする彼が精力的な活動をしている。ロックダウン中もツアー・メンバーと連絡を取り合い、リモートによって集まって、それぞれが自分の居場所にて曲を演奏していたのだが、YouTubeでの公開が意外に好評で、ウォーターズはアコーステック・ギターを中心に、時にはピアノも演じてしっとりと歌った曲群だ。

 M1.,  M3., M6.はアルバム「THE WALL」(1979)から、アルバム「THE FINAL CUT」(1983)からはM2., M4.、彼のソロ・アルバム「AMUSED TO DEATH」(1992)から M5.と、相変わらず戦争、社会不安に焦点があり反核を訴える曲が多い。(ウクライナ戦争に関しては、ウクライナ・ゼレンスキー大統領夫人及びプーチン大統領本人に公開書簡を送って話題になった)

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 今回のツアーにおける演奏曲も締めくくりに、問題曲M2." Two Suns In the Sunset"が取り上げられており、彼が一貫して訴えてきた反戦、そして反核の思想はぶれていない。ここでは、夕陽に映える2つの太陽、"風防ガラスが溶けるとともに、僕の涙も蒸発してゆく、後には炭しか残らない・・・灰とダイヤモンド、敵と友人 結局僕らはみな同じなのだ"と、歌い上げ40年間訴え続けている。
 それと関係して余談であるが、私は今回この曲を聴くに付け、彼の大々的ツアー・ライブでは披露していないピンク・フロイドとは別物であるが、映画サウンド・トラック・アルバム「WHEN THE WIND BLOOWS 風が吹くとき」(1986)にある彼の作曲し当時の彼のTHE BLEEDING HEART BANDと演奏した"THE RUSSIAN MISSILE"から"FOLDED FLAGS"までの10曲の中から、歌詞にも意味のある"TOWERS OF FAITH"そして"FOLDED FLAGS"などを、どこかで演奏してほしいと思っているのだが・・・。

 ここでは、M1."Mother"は意味の違う曲だが、これは人気曲で単純にライブのアンコールで彼がソロでよく歌う曲であって、今回も最も早期に披露した。

 いずれにしても、こうして老体にむち打って歌唱の力は落ちたとは言え、訴えを中心に演奏活動も頑張っている彼の姿を見るにつけ、このアルバムにも喝采をしたいと思うのである。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□ 録音    90/100

(視聴)
"Two suns in the sunset"

*

 

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2022年11月25日 (金)

ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「Comfortably Numb 2022」

ウォーターズの意地の回答
「Comfortably Numb」ニュー・バージョンの登場
暗さと不安と不吉を描く感動の曲に・・・・

<progressive Rock>

Roger Waters 「Comfortably Numb 2022」

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 ロジャー・ウォーターズRoger Waters(1943年生まれ、79歳)は、1979年のピンク・フロイド時代のアルバム『ザ・ウォールTHE WALL』(1979)中の人気曲「Comfortably Numb」の新しいバージョンをリリースした。タイトルは2022年のものとして「Comfortably Numb 2022」となり、アップデートは、オリジナルよりもかなり暗く、描くところ不安と不吉なムードが漂っている。
 これは目下の彼の"別れのショー"としての北米ツアー「This Is Not a Drill」(人気の為、2023年には引き続きヨーロッパでのツアーが3月17日からポルトガルのリスボンで始まり、続いて14か国で40回のショーが追加企画されいている)のオープニングの為に書かれた曲で、話題になっているもの。それをシングルとしてリリースした。(YouTubeにて公開中 ↓)

 「コロナ禍で予定されたツアーが中止となり(今年ようやく2年越しにスタートした)、そのパンデミック下に新しいショーのオープニングとして「Comfortably Numb」の新しいバージョンのデモを作成しました」とR.ウォーターズはニューリリースに関し述べ、「イ短調で、暗くするために一歩下がって、ソロなしでアレンジしました。アウトロのコードシーケンスを除いて、私たちの新しい歌手の1人であるシャネイ・ジョンソンShanay Johnsonによる話題になるほど美しい女性ボーカルソロがあります」と付け加えている。
 成程、彼らしい曲の展開で、現在の世界情勢が破滅に向かう事に対しての警告となっている。

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  ライブ・メンバーの10人のミュージシャンが「Comfortably Numb 2022」の作成に貢献し、ストリングス、パーカッション、ベース、ギターなどを提供し、ウォーターズ自身はトラックを共同プロデュースし、ボーカルも担当した(↑)。

Credits:
Produced by Roger Waters and Gus Seyffert
Roger Waters – Vocals
Gus Seyffert – Bass, Synth, Percussion, Vocals
Joey Waronker – Drums
Dave Kilminster – Vocals
Jonathan Wilson – Harmonium, Synth, Guitar and Vocals
Jon Carin – Synth, Vocals
Shanay Johnson – Vocals
Amanda Belair – Vocals
Robert Walter – Organ/Piano
Nigel Godrich – Strings, amp and backing vocals from Roger Waters ‘The Wall’ Sessions.
Video produced and directed by Sean Evans.

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 もともと1979年のアルバム『The Wall』は、ピンク・フロイドものといっても、中身はロジャー・ウォーターズの自伝にもとづいて彼主導で作成されもので、ロック・オペラとも言えるところもあっての人気アルバムだが、その中の人気曲「Another Brick In The Wall 」は当時、子供の教育問題を歌い上げ、しかも子供のコーラス入りという事で、ご本家英国では発売禁止にもなった話題アルバムだ。
 そしてその中の「Comfortably Numb」(作詞:Roger Waters, 作曲David Gilmour,Roger Waters)は、ピンク・フロイドの有名な曲の1つである。その歌詞は、肝炎に苦しんでいた時のR.ウォーターズがステージに上がる前に精神安定剤を注射された1977年の事件に触発されている。「それは私の人生で最長の2時間でした」と彼は後にローリングストーンに語った。「腕を上げることがほとんどできないときにショーをやろうとしている」といった状況だったようだ。

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 さて、このニュー・バージョンの注目点は、もともとこの曲の人気はR.ウォータースの語り利かすようなヴォーカルと不安なベース音、そしてD.ギルモアの現実の世界から離れる感覚へ誘うギター・ソロが大きな因子であった。そしてR.ウォーターズがピンク・フロイドから離れたあと、多くのファンの期待から「ライブ8」に際して一時的再結成した際の最後のメンバー4人によるショーの締めくくりにも演じられた貴重な曲でもある。
 しかし、その後のファンの期待があってもピンク・フロイドの再結成の夢も実現せず、R.ウォーターズからは彼自身のライブにてD.ギルモアを呼んで、この曲を演じさせたりなどしたが、D.ギルモア側のピンク・フロイド名義の企業的独占欲が強く、もう40年という経過を経ても再結成は実現できないで来た。
  しかもなんとここに来て、ピンク・フロイド再起の一つのターニング・ポイントとなった1977年のアルバム『ANIMALS』のリマスター版の発売に関して、英国ミュージック・ジャーナ・リストのマーク・ブレイクMark Blake(ピンク・フロイド研究に実績と評価がある)の書いたライナー・ノーツ(どうしてもR.ウォーターズの功績が浮き彫りになってしまう)をD.ギルモアが拒否して発売もままならない状況になるという不祥事が起きるなどして、R.ウォーターズは諸々に不信感を持ちそれが極限に達してしまった。

 そんな時に書かれたこの「Comfortable Numb 2022」は、R.ウォーターズの人気曲を使っての"無言の回答"である。人気のあったD.ギルモアのギター・パーツをすぱっと削除して、R.ウォーターズの得意の社会の不安、人間の不安を描ききった。しかもそこには全く異なったメロディーで美しい女性ヴォーカルを聴かせ、今回のツアーにおける冒頭の曲として登場させ、多くの喝采を得たのである。そして曲に対する多くの要望で、なんとここにシングル・リリースとなった。
 ここにて彼は完全にD.ギルモアを切ったのである。そしてそれが彼の「Farewell Tour」として演じられているのだ。

(評価)
□ 編曲・演奏 : 90/100
□   録音           : 87/100  

(LIVE視聴)

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2022年11月21日 (月)

ドリーム・シアター Dream Theater 「Rock in Rio 2022」

「A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD」ツアーの一環
「ロック・イン・リオ」に登場した貴重なライブ映像・・・

<Progressive Metal Rock>

Dream Theater 「Rock in Rio 2022」
(Blu-Ray)  Lost and Found /  LAF2917 /2022

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93 min. Linear PCM Stereo 16:9 Full HD NTSC
Brazil 2022 Blu-Ray Version

71ciaqpicalw  時には、ロックの話題も・・・と、いう事で、かってのプログレッシブ・ロックがほゞ全滅状態の中で、突如私の関心をとらえたのは、1990年代になってのドリーム・シアターでした。もう30年以上の歴史を刻んできたが、昨年久々のアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(SICP 31492-3/2021)(→)のリリースがあって、彼らも健在なりといったことが実感できた。しかしコロナ・ウィルスのパンデミックにより活動は抑えられてきた中だが、ようやく現在"「A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD」ツアー"行っており、今年の8月には、来日もした。そしてその後9月に、3年振りに行われたブラジルの「ロック・イン・リオ」の初日9月2日に出演したステージものが、フルHDの完璧なプロ・ショット収録された映像物が登場している。

(Tracklist)
Img_3725w2 01. INTRO
02. THE ALIEN 
03. 6:00

04. ENDLESS SACRIFICE
05. BRIDGES IN THE SKY
06. INVISIBLE MONSTER
07. THE COUNT OF TUSCANY
08. PULL ME UNDER
Live at Parque Olímpico, Rio de Janeiro, Brazil on 2nd September, 2022
09. THE MINISTRY OF LOST SOULS
Live at Tokio Marine Hall, São Paulo, Brazil on 31st August, 2022

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  今回は、やはりアルバム近作『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』からの曲である"THE ALIEN"、"INVISIBLE MONSTER"の2曲が骨格となり過去の人気曲演奏を披露している。
 映像を見ると、ヴォーカルのJames LaBrieは、更に体格は大きくなり顔は丸くなって30年の年輪を重ねてきたことが解るが、声は意外に一時さすがに無理っぽかったが、それより又復活してのハイトーンも伸びていて、十分こなしている。不思議に近年加わったドラムスのMike Manginiは別として、ギターのJohn Petrucci、キーボードのJordan Rudess、更にベースのJohn Myungはあまり歳をとったという感じでもない。そして相変わらずのアクティブな動きを見せながら立派に演奏している。

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 第一曲目がさっそくM2."ALIEN"で、強烈なビートから入るパワフルで壮大な世界を描く9分を超える曲で、あのドリーム・シアター独特のメロディーと超絶技巧が展開しての変調を繰り返しめくりめく繰り広げられる圧巻の仕上がりだ。人間が生存できる他の惑星の探査するため宇宙に飛び出す、それは人類がエイリアンになる事でもあるという発想に基づいている。
 このパターンが、惜しげもなく繰り広げられあっという間に90分が経過してしまう。ただ相変わらず旨いのは、M4."ENDLESS SACRIFICE"のような曲を挟んで、バラード調の説得力あるヴォーカルと心に染みこむメロディーで聴くものの心をとらえる。そして又変調を繰り返しヒートアップしていく展開が心憎いのだ。ギターの早弾きも健在。
 又、いかにもプログレっぽいスタートと中盤のメロディーのM5."BRIDGES IN THE SKY"(アルバム『a dramatic turn of events』(2011)から)では、プログレ・メタルの面目躍如。
   M6."INVISIBLE MONSTER"もどこか不思議な世界に誘う。
 そして最後が懐かしの"PULL ME UNDER"で締めくくっている。これを聴くと30年前の真夏の中野サンプラザ・ライブを思い出すところ。
 結論的には、歳を感じさせない圧巻の世界が健在と言っておこう。やっぱり彼らはライブが最高だ。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□ 画像・録音 85/100

(試聴) "THE ALIEN"

* "Endless Sacrifice"

 

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2022年9月20日 (火)

ピンク・フロイド Pink Floyd  「Animals 2018 Remix」

「ライナー・ノーツ騒動」経てようやく発売・・・・
5.1サラウンド・ミックス、ステレオ・ミックスHi-Res盤 など各種

<Progressive Rock>

Pink Floyd  「Animals 2018 Remix」
①Sony Music Japan / JPN /SICP-6480
②e-onkyo /Hi-Res flac  192kHz/24bit
③Blue-ray audio : 5.1 surround

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(BLUE-RAY AUDIO)
2018 Remix - Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA
2018 Remix - 5.1 Surround: 24-bit/96kHz Uncompressed, dts-HD MA
1977 Original Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA

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(Tracklist)

1.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part One)
2.Dogs 犬
3.Pigs 豚(Three Different Ones)
4.Sheep 羊
5.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part Two)

F78645b2368a27911afd2d24cw   ピンク・フロイドの第4期スタートとなったロジャー・ウォーターズ主導で制作された1977年発売のコンセプトアルバム『Animals』の2018年リミックス盤が、なんだかんだとすったもんだしてようやくリリースされた。ジェームス・ガスリーによってオリジナルマスターテープからのリミックスだが、特に最近「Pink Floyd権」を持つD.ギルモアとその一派(敢えて一派というのは、まさしくロジャー・ウォーターズがいみじくも歌ったアルバム『炎』の曲"Welcome To The Machinようこそマシーンへ"で批判した音楽産業の営利独占主義そのものになってしまっているギルモアの女房で実業家のpolly samson主導のアメリカ流商業主義の組織である)のマーク・ブレイクMark Blake(英国ミュージック・ジャーナリスト)がこのリミックス盤の為に書いたライナー・ノーツを拒否するというみっともない独占欲の抵抗で、遅れに遅れてここに日の目を見た。・・・これに関しては既に詳しくここ記したところである(参照:"2021.7.4「Pink floyd 「Animals」(5.1Surround)」リリースか")

  これも話題になったロジャー・ウォーターズの発想でバターシー発電所に豚が飛ぶ象徴的なアートワークも、ヒプノシスの元メンバーでもあったアートデザイナー、オーブリー・パウエルによって元画(↓参照)を生かして一新、上のように現代風に衣替え(初めて見たときは、これは現代調で良いと思ったが、比較してみると1977年のオリジナル・デザインの方が、やっぱりいいですね)。ここに 発売45周年、またバンドのデビュー55周年を迎えた2022年ついにピンク・フロイドの歴史的問題作が一新リリースとなったのである。

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 この『Animals』は、人間の世界を動物に置き換えながら社会問題を痛烈に批判したコンセプトのプログレッシブ・ヘビー・ロック・アルバム。
 又この1970年代半ばは、英国において特に社会不安高まった時代だった。ロック界はプログレッシブ・ロックの波が最高潮を迎え、その結果形骸化、AOR化という流れは否定できず、それに反応してのパンクの波の襲来は、イエス、キング・クリムゾンなどの巨星をも撃沈し、当然恐竜と化したピンクロフロイドにも向かった。確かにピンク・フロイドもアルバム『炎』の内向き傾向から方向性を失いつつあった中で、この刺激こそ眠っていたロジャー・ウォーターズの眼を覚ましたのである。そして彼は自身の目論見の為にはアルバム制作にマイナスの者の締め出しも行った。これはこのバンドの頂点への一歩であったと同時に、ある意味悲劇の始まりでもある。

 とにかくこの英国社会不安は、当時労働組合と労働党政府の間での断絶、ストライキの発生、経済不安は頂点に達し、スポーツでもサッカーは衝突の場となり、街にも暴力が増えパンクとスキンヘッドの連中により扇動された不安社会が動き、一方右翼の台頭は人種問題にまで発展していた。こんな時にウォーターズの世界観が動かないはずはない。そしてピンク・フロイドは宇宙的浮遊的快いサウンドから、ウォーターズは新しいサウンドの試みを展開し、ウォーターズの歌詞にも誘導され、ギルモアもそのキター・ワークはヘビーな展開を見せたのだ。ただ一人リック・ライトの色は消え、彼の協力も薄くなりクレジットから消えてしまっている。
 このフロイドの新時代が・・・彼らの歴史の中でも最高潮の4期の開幕となったのである。

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 こんな事態背景の中でのロック界、ピンク・フロイドは消滅に向かうだろうという見方がなされ、代わりにセックス・ピストルズのようなバンドに方向は向いていた。しかしこのアルバムの登場は、ミュージック評論家はこぞってネガティブ反応とフロイド・ミュージックの変化に批判を集中させたが、しかし事態はそれに反して、ピンク・フロイド熱は更に上昇し、各地でのライブは異常な熱気の中で成功をおさめ、パンクからの支持まで生まれ、ロック市場では圧倒的支持を得たのである。更にバンドには当時ウォーターズの要請でスノーウィ・ホワイトがサポート・ギタリストとして加わってツイン・ギターのスタイルでこれも好評だった。

 このアルバムの中身は長編"Dogs犬", "Pigs豚(Three differrent ones)" 、"sheep羊"3曲と、ウォーターズのソロ"Pigs on The Wing翼を持った豚 part1,part2"によって成り立っているが、一曲はウォーターズとギルモアの共作だが、その他は全てウォーターズの曲、そして作詞は全てウォーターズであり、"支配階級"(豚の社会構造連鎖の頂点に金と権力で太る存在)、"権力者"(ビジネスのボスたる犬)、"従順な羊"を描き社会の三構造に痛烈な批判をする(しかし、よく聴いてみると一般に言われるようなそんな単純でないところにウォーターズの意図は隠されている。社会の疎外と残酷さが暗くのしかかってくるし、羊の犬に対しての逆襲をも示唆している)、なんと冒頭と最後の曲"翼を持った豚"は、対照的に非常に優しい歌でウォーターズのロマンスの相手キャロライン・クリスティーに捧げているという芸達者だ。

 こうしてロック・ミュージックは、その時代の社会に根差したものとしての市民権の獲得に根拠を回復し、ピンク・フロイドはウォ-ターズ主導の社会派転換によって更に基盤は確実なものに築き上げられた。続く『The Wall』、『Final Cut』と他の追従を許さない世界の構築がなされるのだ。しかしこれが又ピンク・フロイドにとっての一つの悲劇ともなった。

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 今回は、当然私はリミックス盤として、「BLUE-RAY AUDIO」盤を手に入れたが、ここには「2018REMIX」の①5.1Surround 24bit/96kHz と、②Stereo 24bit/192KHz が収録されている。又e-onkyoからHi-Res192kHz/24bitもダウン・ロードして聴いているが、しかし今回のREMIXは、宣伝にあるほどの大きな変化はない。従って5.1Surroundがお勧めである。しかしこのSurroundも昔のもののような著名な音の分離はなく、比較的前面に音を集めていて聴きやすく作られている。そんな訳で、面白さという点では少々期待を裏切っていた。
 目下80歳を目の前にしているウォーターズは北米ツアー「This is not a Drill」を展開して、相変わらず社会問題としての訴えを続けている。そしてそこには今回はこのアルバムからの"Sheep"を演じているのだ。彼は過去のどのツアーにおいてもこの『Animals』からは必ず一曲は演じ、特に"Bigs"によるトランプ前米国大統領批判はインパクトを残している。

(評価)
Remix効果  :   80/100
Surround効果 :  70/100

(参考試聴)

*

*

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2022年8月 6日 (土)

ピンク・フロイド Pink Floyd 「HEY HEY RISE UP」

ウクライナ支援のために・・・・

<Progressive Rock>

(CD Single) Pink Floyd 「HEY HEY RISE UP」
Sony Music Japan international / JPN / SICP6479 / 2022

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Pink Floyd (David Gilmour, Nick Mason, G.Pratt, N.Sawhney)
Andriy Khlyvnyuk (Boombox)

(Tracklist)
01. Hey Hey Rise Up
02. A Great Day for Freedom 2022

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 ピンク・フロイドが、ウクライナの人々を支援するための新曲「HEY HEY RISE UP」が限定CDシングルで発売。収益はウクライナ人道支援募金へ寄付されるとのことだ。7インチは日本のみClear Vinyl仕様となっているらしい。

Subbuzz159816477w   事の始まりは、ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアは、息子のチャーリーと結婚しているウクライナ人アーティストのヤニナ・ペダンから、2015年に知ったウクライナの歌手アンドリー・クリヴニュクAndriy Khlyvnyuk(ウクライナのロック・グループBoomboxのメンバー →)のインスタグラムの投稿を見せられ、ロシア・ウクライナ戦争でウクライナを支援する何かを録音するよう促された。そこで彼はニック・メイソンに連絡を取り活動を提案したことによるようだ。
 ピンク・フロイドはもうここ数年間活動しておらず、ギルモア自身もはバンドが再結成しないと何度か言っていた。しかし、この戦争に対して身内の中からも訴えが出てきたことから、腰を上げたようだ(再結成と行っても相変わらずロジャー・ウォータースとの関係はない)。このインスタグラムの投稿内容は、A.クリヴニュクのウクラエル軍に所属してのウクライナ国歌をキエフのソフィア広場で、聖ソフィア大聖堂の鐘楼を背景にして歌うパフォーマンスを動画で撮影したものだった。

 今回のこのCDシングルには、一曲の新曲M1. "Hey Hey Rise Up"が収録されている。そしてこの曲にはA.クリヴニュクのインスタグラムの投稿から、キーウのソフィア広場で歌う彼の声を使用。彼の歌う「ああ、草原の赤きガマズミよ(英題:Oh, The Red Viburnum In The Meadow)」が使われている。従って彼とD.ギルモアらは一緒に録音していない。この曲は第1次世界大戦中に書かれたもので、ウクライナの抗議のフォーク・ソングであって、同国がロシアから侵攻されてからウクライナの人々を鼓舞すべく世界各地で歌われてきたもの。そしてピンク・フロイドのこの曲のタイトルは、この曲の歌詞「さあ、立ち上がろう、勝利の喜びを(HEY HEY RISE UP and rejoice)」からきているものである。
  この曲のアートは、キューバ人芸術家のヨサン・レオン(Yosan Leon)の描いたウクライナの国花ヒマワリの絵が使われている。

  ニック・メイスンは立場上、呼ばれただけで曲の作成にどんな役割をしているかは全く不明だが、A.クリヴニュクの如何にもウクライナらしい国の曲が高らかに歌い上げられ、それを支えるべくギルモアの泣きのギターが入るパターンだ。悪くない。
 D.ギルモアとA.クリヴニュクの関係というと、2015年のロンドンで行われたベラルーシ人民の支援コンサートで一緒になるはずが実らなかった事件がそもそもスタートらしい。

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 もともと今回のCDシングル・リリースの件は、D.ギルモアの身内にたまたまウクライナ人がいて、ウクライナ支援という戦争に対しての反応のようであるが、不思議に思うのは、かって彼はピンク・フロイドの「創造的才能」と言われるR.ウォーターズの反戦運動、そして戦争に導かれる社会的・政治的問題、それらに対するコンセプト・アルバム作成には、D.ギルモア自身は"ミュージック至上主義"で、そのような曲作りや演奏にはリック・ライトと共に反対してきた経過があるが、今にしてこうした反応は、いかなるものかと疑問が湧いてくる。

000000038566_k63sw ウクライナ支援は決して悪いこととは思わないが、そこにある根本的な民族的、社会的問題に相対してゆかねばどこか形だけのものに見えてきてしまう。R.ウォーターズがアルバム『ANIMALS』から『THE WALL』『THE FINAL CUT』で訴えてきた事、そして彼はバンド内での協力が得られなくなり孤立し脱退することになった。そしてそれ以後のギルモア主導のピンク・フロイドとは何であったのかと、今更にして疑問も残る事ではある。最後のアルバム『The Endless River』で終わっていた方がD.ギルモアらしかったと言えるような気がする。

 又D.ギルモアは「R.ライトが死亡してのピンク・フロイドはあり得ない」と、ピンク・フロイドを終わらせた。しかし、今回このシングルをリリースしたことに関しては、かってのライトのいたころの曲をつけて辻褄(つじつま)を合わせている。そして更に今回発売にようやく至ったアルバム『ANIMALS』リマスター版に対しても、その時代の背景、政策に至る経過のライナー・ノーツをつけるのを反対したりと、R.ウォーターズにしてみれば納得できないことなんだろうとも想像できる。

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 R.ウォーターズは、D.ギルモアは結構お人好しなんだと言い、アルバム『The Final Cut』制作においても彼一人協力してくれたと感謝している。そしてR.ウォーターズの過去の大々的なライブにも顔出し出演を誘ってきた。しかし人間関係はそれを取り巻く人々によってゆがめられて行ってしまう事も多い。今のピンク・フロイド・サイドは商業的営利主義が旺盛で(特にギルモアの作品の歌詞を殆ど書いている出版業界から始まった商業感覚の旺盛な米国人の女房のポリー・サムソンPolly Samsonの影響が大きいようだ)、そんなことで、R.ウォーターズの反発も大きい。そしてその波に乗らざるを得なくなっているD.ギルモアも、被害者なのかもしれない。R.ウォーターズがかって曲"Welcome To The Machine"で訴えた現実がここにもあるようだ。
 
(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□ 録音    85/100
(視聴)

 

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2022年7月23日 (土)

ロジャー・ウォータース Roger Waters 大規模ツアー「This Is Not a Drill」開始

ピンク・フロイドのCREATIVE GENIUS(創造的才能)の
面目躍如の世界 
 --  初めての別れのツアーの開始 -- (その1)
           

<Progressive Rock>
Roger Waters :「This Is Not a Drill」- 2022Tour

 ロジャー・ウォーターズがこの7月6日、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのPPGペインツ・アリーナで公演を行ない、4年ぶりの北米ツアー「This Is Not a Drill」が幕を開けた。

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 もうじき80歳を迎える彼にとって、おそらく最後の大規模ツアーであろうと見られているが、今年いっぱい北米中心に行われる。そんなことの為か、会場でのスタートに当たってのアナウンスが会場スクリーンに映し出されるテキストと共に流れる。いやはや彼独特の皮肉も込められたアナウンスだ。

 If You're one of those " I Love Pink Floyd, but I can't stand Roger's Politics " people, You might do well to fuck off the bar right now.
    (あなたが「ピンク・フロイドは大好きだけど、ロジャーの政治に耐えられない」人の一人なら、今すぐバーにファックオフするのが良いかもしれません)

 これには、冒頭からファンも度肝を抜かれつつ熱狂的な拍手とロジャーの期待道理のブーイングすらも寄せられた。彼のメッセージが大々的なショーでの歓声となんと嘲笑でも満たされるのは一つのマジックでもあり、又ロジャーの総決算的心の開示でもある。こんなところがロジャーにしかないロックの歴史に残してきた世界でもあり、又それが彼に対しての狂信的なファンを生んで来た所以である。

 こうして彼の総決算とも言える異色のステージがオープンする。
 それを物語るのが、冒頭の曲"Comfortly Numb"だが、これがなんと驚きの新編曲での展開だった。そこには、より暗く深く沈み込むアレンジによりバックスクリーンに描かれるは、荒廃した都市景観が描かれ、その風景を通り抜ける無表情・無感覚な人々の地上の崩壊の黙示録的な情景。こんな叙事詩的であり非常に暗示的な世界を描きつつスタートするのだ。そしてなんとこの曲の有名なギターソロを放棄し、非常に深遠にして重厚感ある音空間を広げるのだ。普通なら圧倒的なバンド演奏で迫ってのライブ・スタートとなるのだが、今回は見事に裏切り、深遠な響きと視覚と聴覚の霧のような霞んだ世界を作り出すことによって、それは群衆を一つの奥深い世界に誘い、神経を集中させる手法をとった。

 

 いままでの、ツアーに見られた彼の意識や信条、社会批判、反戦の世界を描くものとしての位置づけは更に濃密になっている。その上に最近繰り広げられた1977年のアルバム『ANIMALSアニマルズ』のデラックス・リイッシューに関して起きたロジャーとデヴィッド・ギルモアとの騒動、ここに書かれた貴重なアニマルズ誕生の秘話のマーク・ブレイクMark Blakeのライナーノーツにギルモアが反発したことを知ってのロジャーの不信感の爆発、その結果の一つがこのギルモアのギター・ソロを無視した曲の編曲がなされた一つの所以でもある。そして一方、曲というのは造りようによっては、どんな変化をもたらすか、そこに訴えるものは何か、そしてもたらす効果は何なのかをここに示したのである。1977年が2022年に通ずるというこのあたりがトリックの得意なロジャーのなせる業だ。

 ピンク・フロイドがアルバム『THE DARK SIDE OF THE MOON 狂気』『WISH YOU WERE HERE 炎』で、プログレッシブ・ロックの頂点に立ったときに、これらをAORとして否定する社会派ロック運動の一つであったパンク・ムーブントへの回答として、ロジャーが作り出したアルバム『ANIMALS』の世界観であったことの暴露は、あまりにもロジャーの偉業が大きすぎるために、ピンク・フロイドを名乗っているにも関わらず、影に隠れてしまうことを嫌ったギルモアの抵抗でもあった。この事のあまりの馬鹿馬鹿しさにロジャーおよびニック・メイスンはこのライナー・ノーツの掲載に関してはやむを得ないものとして折れて載せることを止めることを認めたわけだが、そんな「歴史的社会現象の中から生まれてくるロック・ミュージックの流れ」を現代の若者に伝えたいという作業は、「単なるミュージック」として捉えるギルモアの思惑で消えることになった。ロジャーにしてみれば、ロックのロックたる所以は音楽であると同時に訴えであることが重要と考えているためだ。これがこの9月リリース予定のリイッシュー・リマスター・アルバム『ANIMALS』騒動であった。

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 今回のライブでも、アルバム『ANIMALS』から曲"Sheep"を登場させている。前回の「US+THEM Tour」では曲"Big"、"Dog"を登場させ、トランプ批判を展開したが、今回もこのアルバムでの社会批判はロジャーにとっては後期ピンク・フロイド・ミュージックの魂でもあることによっている。これがあのアルバム『THE WALL』にもつながるのであるから。このあたりが、彼が"Creative Genius of Pink Floyd"(ピンク・フロイドの創造的才能)と言われる所以でもある。

 (参考)この「アニマルズ」の誕生の背景には、英国の産業競争、経済混乱、北アイルランド問題、人種問題・暴動などの時代があり、アルバム・コンセプトがロジャーにより造られ(1曲のみ共作で、残る4曲はロジャーによるもので、すべての歌詞もロジャー作だ)、「羊」が経済的優位に立つ専制的な「豚」とインテリに代表される権威主義的な「犬」に仕えるという動物を擬人化しての"悪循環に陥った人類・社会の描写とその問題と批判"に集中したものである。

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■Roger Waters, PPG Paints Arena, Pittsburgh, PA, July 6, 2022, Setlist
-Set 1-
1. Comfortably Numb
2. The Happiest Days of Our Lives
3. Another Brick in the Wall, Part 2
4. Another Brick in the Wall, Part 3
5. The Powers That Be
6. The Bravery of Being Out of Range
7. The Bar
8. Have a Cigar
9. Wish You Were Here
10. Shine On You Crazy Diamond(Parts VI-IX)
11. Sheep
-Set 2-
12. In the Flesh
13. Run Like Hell
14. Déjà Vu
15. Is This the Life We Really Want?
16. Money
17. Us and Them
18. Any Colour You Like
19. Brain Damage
20. Eclipse
21. Two Suns in the Sunset
22. The Bar(Reprise)
23. Outside the Wall

 今回は、ピンク・フロイド曲は当然だが、ロジャーのソロ・アルバムから5曲登場し、更に新曲"The Bar"が演じられている。バンド・メンバーは若干の変動はあるがギタリストのジョナサン・ウィルソンとデイヴ・キルミンスター、ギタリスト/ベーシストのガス・セイファート、キーボーディスト/ギタリストのジョン・キャリンあたりは常連で変わっていない。又このところ時々見られるロジャーのピアノの演奏が初めてツアー・ライブに登場した。

(Band members)
Roger Waters (b, g, piano, vo)
Dave Kilminster (g)
Jon Carin (key, g)
Jonathan Wilson (g, vo)
Joey Waronker (d)
Gus Seyffert (b, g)
Robert Walter (org)
Amanda Belair (vo)
Shanay Johnson (vo)
Seamus Blake (ts)

Remasteranimalsw  ちょうどこのツアーと期を一にして、2018年ジェームズ・ガスリーによるピンク・フロイド・アルバム『ANIMALS』の新しいミックスが完成し、当アルバム史上初の5.1サラウンド・サウンド・ミックスも登場する。パンデミック下であったことと、ロジャー・ウォーターズとデヴィッド・ギルモアの絶え間ない口論の間で(問題のライナー・ノーツを書いたピンク・フロイド研究で評価の高いマーク・ブレイクにしてみれば、内容の真実に対してのギルモアの拒否行動にはあきれると同時に空しかったようだ)、実際に発売までには時間がかかったが、ついにこの9月16日にさまざまなエディションで発売されることとなった。これも考えてみると奇遇である。

 今回のこのツアーは、ロジャーの"初めての別れのツアー"と言われている。彼が、祖父そして父親の戦死よりの孤独な幼少期から始まっての社会への疑惑、国家的教育の不信、世界の紛争、戦争、貧困、人種問題などなど社会に疑問の人生から生まれたロック・ミュージックに生きて、ここに80歳を迎えようとして、今なお訴えるロック魂を失われずいるのが不思議なくらいだが、ここに別れのツアーを開始したのだ。

(試聴)

 

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2022年4月 3日 (日)

ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「JACOB'S LADDER」

これはメルドーの自己の音楽世界の総決算か、
はたまた新たなスタートなのか

<Jazz, Rock, Fusion>

Brad Mehldau 「JACOB'S LADDER」
NONE SUCH / IMPORT / WPCR-18499 /  2022

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Brad Mehldau : piano,  synthesizer, organ, drums,  tambourine, voice
etc.

  いっやーー、ブラッド・メルドーのなかなか大変なアルバムのリリースですね。待望の新作とは言っても果たしてこれを聴いたジャズ愛好家の反応はどうだったろうか。このところの彼の世界は私にはなかなかついて行けないところにあり、むしろライブでの彼の演奏は、オーディエンスのことを十分に理解してのことで、過去のヒットものを演じてくれたり、ビートルズやバッハを聴かしたりと、ライブもののブート・レグの方が親しかったりしているところにあった。

 そこで、そろそろ彼のピアノ・トリオものを期待していたのだが、なんと更に彼の世界はエスカレートして、昔のプログレッシブ・ロックの世界へもアプローチするという離れ技を演じたのである。そもそも彼はもともとプログレへの流れを持っていて、過去にピンク・フロイドのRoger Watersの曲"Hey You"などソロで演じたりと私自身は楽しんだのであるが、今回のアルバムはプログレシブ・ロックの持っていた複雑なリズムにアプローチしているのである。ロックの一つの重要な本質であった彼らの主張したコンセプト性や、音楽の自由な展開、マイルス・デイヴィスやウェザー・リポートなどのフュージョンへの展開の元となったロックの世界の多様性など、メルドー自身の基礎にも決して消えないプログレが存在していた事がここに表現されたのである。それはこのアルバム・タイトルは、私にとっても懐かしい知る人ぞ知るカナダのロック・バンドRUSHの演じた曲名から来ているからだ。

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1.maybe as his skies are wide
2.Herr und Knecht
3.(Entr'acte) Glam Perfume
4.Cogs in Cogs, Pt. I: Dance
5.Cogs in Cogs, Pt. II: Song
6.Cogs in Cogs, Pt. III: Double Fugue
7.Tom Sawyer
8.Vou correndo te encontrar / Racecar
9.Jacob's Ladder, Pt. I: Liturgy
10.Jacob's Ladder, Pt. II: Song
11.Jacob's Ladder, Pt. III: Ladder
12.Heaven: I. All Once - II. Life Seeker - III. Wurm - IV. Epilogue: It Was a Dream but I Carry It Still

 しかしM1."maybe as his skies are wide"の突然現れる美しい女性ヴォーカル、これは下手な技巧のない素人の女性の歌のようだが、こんな味はよくかってロックでもプログレの世界に登場したのを思い出す。アニー・ハスラムだって多くが惚れ込んだが、技巧と言うよりは素直な美しさだった。
 M2."Herr und Knecht"を聴いてやっぱりロックなんだ。難しい変拍子のフュージョンぽい展開とシンセサイザーの技巧。
 そして一転してクラシック調の登場のM3."(Entr'acte) Glam Perfume"、美しいピアノの調べだ。昔はこんな展開のプログレの曲の変化に痺れてしまったものだ。女性ヴォーカル、ハープの響き、ピンク・フロイドを想わせる笑い声のSE、メルドーのやりたかった一つの世界なんだろうなぁーーと。

 メルドーが今回のアルバムで明瞭になったことの一つは、今でも忘れられないプログレの世界において、最も重要視しているのは演奏技術をベースに複雑かつ洗練された音楽性、変拍子やポリリズム、多彩なジャンルの入り乱れる複雑な楽曲といったところのようだ。そんなところからM4.,M5.,M6."Cogs in Cogs Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ"に出てきたGentle Giant(アルバム「The Power And The Glory」(下左))だ。ここに見えてきたものこそ彼の音楽性に大きな影響を与えているようだ。なんとこれはプログレの多様性の中でも、若干私が苦手としてきた世界だ。しかし音楽を極めているものとしては、どうしても通らなければならないと同時に魅力的なんだろう。なにせGentle Giantの世界には、民俗音楽、ジャズ、ソウル、クラシック音楽といった多種多彩な音楽的アプローチをしていて、むしろ後になって日本ではプログレ・ファンの間で話題だった。中世西洋音楽、バロック音楽、20世紀のクラシック音楽、室内楽といった数多くの音楽からの影響も指摘されているだけのものを演じていたわけだから。変拍子やポリリズム、多岐にわたるジャンルの入り乱れる複雑な楽曲を、アンサンブルの妙と、コーラスワークでのめくりめくる世界は好みと言うより奇々怪々であった。そのため、その音楽性は、ピンク・フロイドのような幻想的な音空間といった俗に言う「プログレっぽさ」とは別物であった。

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 そして更にコンセプト重視、これはM7."Tom Sawyer、M10."Jacob's Ladder, Pt. II: Song"のRUSH(アルバム「Moving Picture」「Permanent Waves」(上中央))の登場、懐かしいですねぇーー、彼らには私は少々入れ込んだこともあって(79年の「Permanent Waves」は、ジャケ・アートも忘れられない)、特に哲学的と言って良い歌詞には悩みつつも忘れられないところにあった。音楽性というところでは、私がプログレ一押しのKing Crimson, Pink Floydらとは別世界だが、なんとなくとっつきやすいポップ性と、技巧性の高い演奏・複雑なリズムアレンジの混在がたまらないところだと言える。
  とにかくメルドーのこのアルバム・タイトルはRUSHの曲"Jacob's Ladder(ヤコブの梯子)"をそのまま持ってきたところにも入れ込みようが解る。私はこの曲よりはこのアルバムでは、"Different Strings(異なる糸)"が好きでしたが。 
 M9."Jacob's Ladder, Pt. I: Liturgy"は、なんと旧約聖書の朗読から始まり、敬虔な世界の展開。美しい女性ヴォーカル、今回のプログレとの関係をどう結びつけるのか・・これは単純には収まりそうもない。ただのロック回顧でない彼のアルバム作りを知らなければならないだろう。

 さらにそれならと思った通りであったのが、M12."Heaven: I. All Once - II. Life Seeker - III. Wurm - IV. Epilogue: It Was a Dream but I Carry It Still" のYESの登場だ。ここに取り上げられた3rdアルバム「The Yes Album」(上右)からは、スティーブ・ハウが加入したわけだが、曲自体は意外に単純なんだがアレンジに重きを持って、その曲の中心のフレーズを変奏してゆく過程で、次第に全員が原曲から遊離して、奇妙な複雑性のアンサンブルが現れるという変と言えば変なバンド集団、そこにブラッフォードの変拍子ドラムスが叩かれて圧巻となる。こんなところがメルドーに大きなインパクトがあったのかもしれない。

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 今回のアルバムは、おそらくジャズ・ファンには苦々しいものであったろうと私は推測する。しかし私のように60年代からプログレッシブ・ロックの世界にどっぷり浸かっていて、細々とジャズ世界を繋いでいたと言う人間にとっては、実に興味深いというかむしろ懐かしさに感動してしまった。私自身の最も痺れたプログレの分野とは若干異なっていたとはいえ、しかしこうして聴いてみると、その分野も捨てたものではなかったことがむしろ教えられた感がある。

 ただ、私が若干不満であったのは、プログレの大御所であるKing Crimsonのロックの激しさとメロトロンを駆使したクラシック的美世界、Pink Floydの追求したコンセプトのあるドラマチックな展開と音の創造の世界など、さらにはイタリアン・プログレッシブ・ロックの美旋律と物語性の世界などに触れていないところがプログレを演ずるには少々手落ちであったのかとも・・・、しかし、メルドーにとっては時代的にはそれより後での接触であろうし、興味は音楽技巧性から複雑なるリズム・アレンジなどにあったことに的をしぼったということであれば、これもありかと納得するところだ。いずれにせよ、これから彼を聴いてゆく中で一つのポイントを知ることができたと喜んでいるのである。

 結論的に、このアルバムでは、メルドーの曲の展開のドラマテイックなところと、美意識も十分表現されていて、彼の世界はそんなところは過去に築いてきたところの一つの表現として、プログレッシブ・ロックがあったことを語ってくれ、一つの総決算をしたともみえたことをむしろ評価したい。
 更に、ここで取り上げられている旧約聖書に関するテーマは、私には語れる術もなく、その世界は今後の展開でむしろ知りたいと思うところにありここでは言及を避ける。

 いずれにしても、今回の彼のこのアルバムは、彼のファンと称するジャズ一辺倒のファンがどこまで理解できるかは、私は期待していない。それはプログレッシブ・ロックの価値が評価できなければその価値が理解できないだろうと思うからだ(私自身も出来るとは言わない)。そんなところからか、現実にこのアルバムの感想や評価に未だあまり接しないのである。 しかし、ジャズ・ファンがこれが面白いと感ずれば、それは一歩プログレに浸かれる道でもあって、私としては期待してしまう。音楽的、哲学的、宗教的のあらゆるところにおいても、メルドーの次への発展が見物である。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□   録音    88/100

(視聴)

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