これを聴いてみて、やはりこのところウォーターズのライブ『This is not a Drill』(下左)や、彼の国連での発言(下中央)、又ドイツの反ユダヤ主義としての反発事件とそれに対抗しての歓迎キャンペーン(下右)など、相変わらず彼の歩むところ、問題が起きてはいるが、これこそ彼の歩んできた道であり、そのようなミュージシャンとしては異色の行動からの反発に対してもめげずに戦っている80歳を迎える男の生きざまには圧倒される。
Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」 Complete Live Broadcast HD BluRay Edition Live at O2 Arena, Prague, Czechia, 25th May 2023
NTSC Full HD 1920 x 1080p Linear PCM Stereo + Dolby 5.1 Surround Total Duration 171min.
members Roger Waters – Vocals, Guitar, Bass Gus Seyffert – Bass, Synth, Vocals Joey Waronker – Drums Dave Kilminster – Guitar Jonathan Wilson – Guitar and Vocals Jon Carin – Synth, Vocals, Guitar Shanay Johnson – Vocals Amanda Belair – Vocals Robert Walter – Keyboards Seamus Blake - Sax
2022の北米ツアーでスタートしたピンク・フロイドの頭脳と言われるロジャー・ウォーターズの「THIS IS NOT A DRILL」が今年の欧州ツアーが追加され、既に各地を回っているが、この5月チェコ・プラハでの公演がプロショット映像でLinear PCM Stereo + Dolby5.1SurroundのBlue-Ray版が手に入る。 これは全世界の劇場に生配信されたプラハ公演(上左)で、フルHDのプロショット映像の為圧巻である。 このツアーは、間もなく80歳になろうとしている彼の「farewell Live 別れのライブ(第1章?)」ということもあってか各地で盛り上がっている。相変わらず斬新な方法論を示すライブ会場、ステージは会場の中央に設置され、その上には全方向からみれるスクリーン、そして例のごとく豚が宙を舞い、その上に今回は羊も会場の頭上を旋回する。
そんな話題の多い欧州ツアーは現在も進行中であるが、ピンク・フロイドの黄金時代を象徴するクリエイティブなロジャー・ウォーターズが、一夜限りで、プラハにおけるライブを"初のフェアウェル・ツアー「This Is Not A Drill」"としとて世界中の映画館で一斉に披露した。そしてこのBlu-Ray映像版はそれが原点と思われる。いずれにしても圧巻のサラウンド・サウンドの効果も大きく見ごたえ十分だ。
(Tracklist) 01. Intro 02. Comfortably Numb 03. The Happiest Days of Our Lives 04. Another Brick in the Wall (Part 2) 05. Another Brick in the Wall (Part 3) 06. The Powers That Be 07. The Bravery Of Being Out of Range 08. The Bar 09. Have a Cigar 10. Wish You Were Here 11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) 12. Sheep 13. Intermission 14. In the Flesh 15. Run Like Hell 16. Stop 17. Déjà Vu 18. Is This the Life We Really Want? 19. Money 20. Us and Them 21. Any Colour You Like 22. Brain Damage 23. Eclipse 24. Two Suns in the Sunset 25. The Bar (Reprise) 26. Outside the Wall N
しかし公演前半のスタートM2."Comfortably Numb"のニューバージョンの素晴らしさは、ギター・レスの仕上げでギルモアへのあてつけとともに社会不安を描き、今回のツアー仲間の女性歌手Shanay Johnson(→)のソロの歌声の響き、それは印象的で会場をうならせたのである。 又M10. Wish You Were Here, M11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) でのピンク・フロイド結成当時とシド・バレットの思い出には彼の心情が歌い上げられる。今回のアルバム「アニマルズ」からはM12."Sheep"が取り上げられ弱き大衆の反乱を描く。
やはり後半に入ると「デストピアDystopia」に焦点は当てられ、発達した機械文明の、否定的・反人間的な側面が描き出され、典型例は反自由的な社会であり、隠れた独裁や横暴な官僚システムなどを批判し訴える。これを描く世界はM18. Is This the Life We Really Want? , M19. Money, M20. Us and Them で頂点に至る。そして最後には、M24. Two Suns in the Sunsetでは原爆の恐ろしさを描いて幕を閉じる。
Roger Waters 「The Lockdown Sessions」 Legacy Recordings / 2022
ROGER WATERS : Vocals, Guitar, Piano "US+THEM Tour"and"This is Not A Drill Tour"Members Dave Kilminster (g)、Jon Carin (key, g)、Jonathan Wilson (g, vo)、Joey Waronker (d)、Gus Seyffert (b, g)、Robert Walter (org)、Ian Richie (ts)、Bo Koster (Ham)、Lucius(Jess Wolfe, Holly Laessic - vo)、Shanay Johnson (vo)、Amanda Belair (vo)
2022 The copyright in this sound recording is owned by Roger Waters Music Overseas Limited, under exclusive licence to Legacy Recordings, a division of Sony Music Entertainment
ピンク・フロイドの"The Creative Genius(創造的才能)"を自負するロジャー・ウォーターズが、ここにストリーミング・サービスにて新アルバムをリリースした。 このコロナ禍で予定した「This is Not A Drill」ツアーが延期を繰り返していて、ようやく今年北米で実現したところだが(反響が大きく2023年欧州ツアーが追加された)、このロックダウン中2020年から2021年に、彼がツアー・メンバーと連絡を取りつつ、自宅からリモートでつないで新アレンジにて演奏し歌いあった曲がYouTubeで公開していたのであるが、それをここにアルバムとしてリリースした。そして先日紹介した今回の「This is Not A Drill」ツアーのオープニングで公開した曲"Comfartably Numb 2022"のニューバージョンを追加している。 これは身近にはe-onkyoでは、Hi-Res 音質(flac 48kHz/24bit)でダウンロード出来る為、手に入れたものだ。
(Tracklist)
1 Mother 2 Two Suns In the Sunset 3 Vera 4 The Gunner's Dream 5 The Bravery of Being Out of Range 6 Comfortably Numb 2022
M1., M3., M6.はアルバム「THE WALL」(1979)から、アルバム「THE FINAL CUT」(1983)からはM2., M4.、彼のソロ・アルバム「AMUSED TO DEATH」(1992)から M5.と、相変わらず戦争、社会不安に焦点があり反核を訴える曲が多い。(ウクライナ戦争に関しては、ウクライナ・ゼレンスキー大統領夫人及びプーチン大統領本人に公開書簡を送って話題になった)
今回のツアーにおける演奏曲も締めくくりに、問題曲M2." Two Suns In the Sunset"が取り上げられており、彼が一貫して訴えてきた反戦、そして反核の思想はぶれていない。ここでは、夕陽に映える2つの太陽、"風防ガラスが溶けるとともに、僕の涙も蒸発してゆく、後には炭しか残らない・・・灰とダイヤモンド、敵と友人 結局僕らはみな同じなのだ"と、歌い上げ40年間訴え続けている。 それと関係して余談であるが、私は今回この曲を聴くに付け、彼の大々的ツアー・ライブでは披露していないピンク・フロイドとは別物であるが、映画サウンド・トラック・アルバム「WHEN THE WIND BLOOWS 風が吹くとき」(1986)にある彼の作曲し当時の彼のTHE BLEEDING HEART BANDと演奏した"THE RUSSIAN MISSILE"から"FOLDED FLAGS"までの10曲の中から、歌詞にも意味のある"TOWERS OF FAITH"そして"FOLDED FLAGS"などを、どこかで演奏してほしいと思っているのだが・・・。
ロジャー・ウォーターズRoger Waters(1943年生まれ、79歳)は、1979年のピンク・フロイド時代のアルバム『ザ・ウォールTHE WALL』(1979)中の人気曲「Comfortably Numb」の新しいバージョンをリリースした。タイトルは2022年のものとして「Comfortably Numb 2022」となり、アップデートは、オリジナルよりもかなり暗く、描くところ不安と不吉なムードが漂っている。 これは目下の彼の"別れのショー"としての北米ツアー「This Is Not a Drill」(人気の為、2023年には引き続きヨーロッパでのツアーが3月17日からポルトガルのリスボンで始まり、続いて14か国で40回のショーが追加企画されいている)のオープニングの為に書かれた曲で、話題になっているもの。それをシングルとしてリリースした。(YouTubeにて公開中 ↓)
Credits: Produced by Roger Waters and Gus Seyffert Roger Waters – Vocals Gus Seyffert – Bass, Synth, Percussion, Vocals Joey Waronker – Drums Dave Kilminster – Vocals Jonathan Wilson – Harmonium, Synth, Guitar and Vocals Jon Carin – Synth, Vocals Shanay Johnson – Vocals Amanda Belair – Vocals Robert Walter – Organ/Piano Nigel Godrich – Strings, amp and backing vocals from Roger Waters ‘The Wall’ Sessions. Video produced and directed by Sean Evans.
もともと1979年のアルバム『The Wall』は、ピンク・フロイドものといっても、中身はロジャー・ウォーターズの自伝にもとづいて彼主導で作成されもので、ロック・オペラとも言えるところもあっての人気アルバムだが、その中の人気曲「Another Brick In The Wall 」は当時、子供の教育問題を歌い上げ、しかも子供のコーラス入りという事で、ご本家英国では発売禁止にもなった話題アルバムだ。 そしてその中の「Comfortably Numb」(作詞:Roger Waters, 作曲David Gilmour,Roger Waters)は、ピンク・フロイドの有名な曲の1つである。その歌詞は、肝炎に苦しんでいた時のR.ウォーターズがステージに上がる前に精神安定剤を注射された1977年の事件に触発されている。「それは私の人生で最長の2時間でした」と彼は後にローリングストーンに語った。「腕を上げることがほとんどできないときにショーをやろうとしている」といった状況だったようだ。
「A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD」ツアーの一環 「ロック・イン・リオ」に登場した貴重なライブ映像・・・
<Progressive Metal Rock>
Dream Theater 「Rock in Rio 2022」 (Blu-Ray) Lost and Found / LAF2917 /2022
93 min. Linear PCM Stereo 16:9 Full HD NTSC Brazil 2022 Blu-Ray Version
時には、ロックの話題も・・・と、いう事で、かってのプログレッシブ・ロックがほゞ全滅状態の中で、突如私の関心をとらえたのは、1990年代になってのドリーム・シアターでした。もう30年以上の歴史を刻んできたが、昨年久々のアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(SICP 31492-3/2021)(→)のリリースがあって、彼らも健在なりといったことが実感できた。しかしコロナ・ウィルスのパンデミックにより活動は抑えられてきた中だが、ようやく現在"「A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD」ツアー"行っており、今年の8月には、来日もした。そしてその後9月に、3年振りに行われたブラジルの「ロック・イン・リオ」の初日9月2日に出演したステージものが、フルHDの完璧なプロ・ショット収録された映像物が登場している。
(Tracklist) 01. INTRO 02. THE ALIEN 03. 6:00 04. ENDLESS SACRIFICE 05. BRIDGES IN THE SKY 06. INVISIBLE MONSTER 07. THE COUNT OF TUSCANY 08. PULL ME UNDER Live at Parque Olímpico, Rio de Janeiro, Brazil on 2nd September, 2022 09. THE MINISTRY OF LOST SOULS Live at Tokio Marine Hall, São Paulo, Brazil on 31st August, 2022
今回は、やはりアルバム近作『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』からの曲である"THE ALIEN"、"INVISIBLE MONSTER"の2曲が骨格となり過去の人気曲演奏を披露している。 映像を見ると、ヴォーカルのJames LaBrieは、更に体格は大きくなり顔は丸くなって30年の年輪を重ねてきたことが解るが、声は意外に一時さすがに無理っぽかったが、それより又復活してのハイトーンも伸びていて、十分こなしている。不思議に近年加わったドラムスのMike Manginiは別として、ギターのJohn Petrucci、キーボードのJordan Rudess、更にベースのJohn Myungはあまり歳をとったという感じでもない。そして相変わらずのアクティブな動きを見せながら立派に演奏している。
第一曲目がさっそくM2."ALIEN"で、強烈なビートから入るパワフルで壮大な世界を描く9分を超える曲で、あのドリーム・シアター独特のメロディーと超絶技巧が展開しての変調を繰り返しめくりめく繰り広げられる圧巻の仕上がりだ。人間が生存できる他の惑星の探査するため宇宙に飛び出す、それは人類がエイリアンになる事でもあるという発想に基づいている。 このパターンが、惜しげもなく繰り広げられあっという間に90分が経過してしまう。ただ相変わらず旨いのは、M4."ENDLESS SACRIFICE"のような曲を挟んで、バラード調の説得力あるヴォーカルと心に染みこむメロディーで聴くものの心をとらえる。そして又変調を繰り返しヒートアップしていく展開が心憎いのだ。ギターの早弾きも健在。 又、いかにもプログレっぽいスタートと中盤のメロディーのM5."BRIDGES IN THE SKY"(アルバム『a dramatic turn of events』(2011)から)では、プログレ・メタルの面目躍如。 M6."INVISIBLE MONSTER"もどこか不思議な世界に誘う。 そして最後が懐かしの"PULL ME UNDER"で締めくくっている。これを聴くと30年前の真夏の中野サンプラザ・ライブを思い出すところ。 結論的には、歳を感じさせない圧巻の世界が健在と言っておこう。やっぱり彼らはライブが最高だ。
Pink Floyd 「Animals 2018 Remix」 ①Sony Music Japan / JPN /SICP-6480 ②e-onkyo /Hi-Res flac 192kHz/24bit ③Blue-ray audio : 5.1 surround
(BLUE-RAY AUDIO) 2018 Remix - Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA 2018 Remix - 5.1 Surround: 24-bit/96kHz Uncompressed, dts-HD MA 1977 Original Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA
(Tracklist)
1.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part One) 2.Dogs 犬 3.Pigs 豚(Three Different Ones) 4.Sheep 羊 5.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part Two)
ピンク・フロイドの第4期スタートとなったロジャー・ウォーターズ主導で制作された1977年発売のコンセプトアルバム『Animals』の2018年リミックス盤が、なんだかんだとすったもんだしてようやくリリースされた。ジェームス・ガスリーによってオリジナルマスターテープからのリミックスだが、特に最近「Pink Floyd権」を持つD.ギルモアとその一派(敢えて一派というのは、まさしくロジャー・ウォーターズがいみじくも歌ったアルバム『炎』の曲"Welcome To The Machinようこそマシーンへ"で批判した音楽産業の営利独占主義そのものになってしまっているギルモアの女房で実業家のpolly samson主導のアメリカ流商業主義の組織である)のマーク・ブレイクMark Blake(英国ミュージック・ジャーナリスト)がこのリミックス盤の為に書いたライナー・ノーツを拒否するというみっともない独占欲の抵抗で、遅れに遅れてここに日の目を見た。・・・これに関しては既に詳しくここ記したところである(参照:"2021.7.4「Pink floyd 「Animals」(5.1Surround)」リリースか")
このアルバムの中身は長編"Dogs犬", "Pigs豚(Three differrent ones)" 、"sheep羊"3曲と、ウォーターズのソロ"Pigs on The Wing翼を持った豚 part1,part2"によって成り立っているが、一曲はウォーターズとギルモアの共作だが、その他は全てウォーターズの曲、そして作詞は全てウォーターズであり、"支配階級"(豚の社会構造連鎖の頂点に金と権力で太る存在)、"権力者"(ビジネスのボスたる犬)、"従順な羊"を描き社会の三構造に痛烈な批判をする(しかし、よく聴いてみると一般に言われるようなそんな単純でないところにウォーターズの意図は隠されている。社会の疎外と残酷さが暗くのしかかってくるし、羊の犬に対しての逆襲をも示唆している)、なんと冒頭と最後の曲"翼を持った豚"は、対照的に非常に優しい歌でウォーターズのロマンスの相手キャロライン・クリスティーに捧げているという芸達者だ。
今回は、当然私はリミックス盤として、「BLUE-RAY AUDIO」盤を手に入れたが、ここには「2018REMIX」の①5.1Surround 24bit/96kHz と、②Stereo 24bit/192KHz が収録されている。又e-onkyoからHi-Res192kHz/24bitもダウン・ロードして聴いているが、しかし今回のREMIXは、宣伝にあるほどの大きな変化はない。従って5.1Surroundがお勧めである。しかしこのSurroundも昔のもののような著名な音の分離はなく、比較的前面に音を集めていて聴きやすく作られている。そんな訳で、面白さという点では少々期待を裏切っていた。 目下80歳を目の前にしているウォーターズは北米ツアー「This is not a Drill」を展開して、相変わらず社会問題としての訴えを続けている。そしてそこには今回はこのアルバムからの"Sheep"を演じているのだ。彼は過去のどのツアーにおいてもこの『Animals』からは必ず一曲は演じ、特に"Bigs"によるトランプ前米国大統領批判はインパクトを残している。
今回のこのCDシングルには、一曲の新曲M1. "Hey Hey Rise Up"が収録されている。そしてこの曲にはA.クリヴニュクのインスタグラムの投稿から、キーウのソフィア広場で歌う彼の声を使用。彼の歌う「ああ、草原の赤きガマズミよ(英題:Oh, The Red Viburnum In The Meadow)」が使われている。従って彼とD.ギルモアらは一緒に録音していない。この曲は第1次世界大戦中に書かれたもので、ウクライナの抗議のフォーク・ソングであって、同国がロシアから侵攻されてからウクライナの人々を鼓舞すべく世界各地で歌われてきたもの。そしてピンク・フロイドのこの曲のタイトルは、この曲の歌詞「さあ、立ち上がろう、勝利の喜びを(HEY HEY RISE UP and rejoice)」からきているものである。 この曲のアートは、キューバ人芸術家のヨサン・レオン(Yosan Leon)の描いたウクライナの国花ヒマワリの絵が使われている。
R.ウォーターズは、D.ギルモアは結構お人好しなんだと言い、アルバム『The Final Cut』制作においても彼一人協力してくれたと感謝している。そしてR.ウォーターズの過去の大々的なライブにも顔出し出演を誘ってきた。しかし人間関係はそれを取り巻く人々によってゆがめられて行ってしまう事も多い。今のピンク・フロイド・サイドは商業的営利主義が旺盛で(特にギルモアの作品の歌詞を殆ど書いている出版業界から始まった商業感覚の旺盛な米国人の女房のポリー・サムソンPolly Samsonの影響が大きいようだ)、そんなことで、R.ウォーターズの反発も大きい。そしてその波に乗らざるを得なくなっているD.ギルモアも、被害者なのかもしれない。R.ウォーターズがかって曲"Welcome To The Machine"で訴えた現実がここにもあるようだ。
If You're one of those " I Love Pink Floyd, but I can't stand Roger's Politics " people, You might do well to fuck off the bar right now. (あなたが「ピンク・フロイドは大好きだけど、ロジャーの政治に耐えられない」人の一人なら、今すぐバーにファックオフするのが良いかもしれません)
ピンク・フロイドがアルバム『THE DARK SIDE OF THE MOON 狂気』、『WISH YOU WERE HERE 炎』で、プログレッシブ・ロックの頂点に立ったときに、これらをAORとして否定する社会派ロック運動の一つであったパンク・ムーブントへの回答として、ロジャーが作り出したアルバム『ANIMALS』の世界観であったことの暴露は、あまりにもロジャーの偉業が大きすぎるために、ピンク・フロイドを名乗っているにも関わらず、影に隠れてしまうことを嫌ったギルモアの抵抗でもあった。この事のあまりの馬鹿馬鹿しさにロジャーおよびニック・メイスンはこのライナー・ノーツの掲載に関してはやむを得ないものとして折れて載せることを止めることを認めたわけだが、そんな「歴史的社会現象の中から生まれてくるロック・ミュージックの流れ」を現代の若者に伝えたいという作業は、「単なるミュージック」として捉えるギルモアの思惑で消えることになった。ロジャーにしてみれば、ロックのロックたる所以は音楽であると同時に訴えであることが重要と考えているためだ。これがこの9月リリース予定のリイッシュー・リマスター・アルバム『ANIMALS』騒動であった。
今回のライブでも、アルバム『ANIMALS』から曲"Sheep"を登場させている。前回の「US+THEM Tour」では曲"Big"、"Dog"を登場させ、トランプ批判を展開したが、今回もこのアルバムでの社会批判はロジャーにとっては後期ピンク・フロイド・ミュージックの魂でもあることによっている。これがあのアルバム『THE WALL』にもつながるのであるから。このあたりが、彼が"Creative Genius of Pink Floyd"(ピンク・フロイドの創造的才能)と言われる所以でもある。
■Roger Waters, PPG Paints Arena, Pittsburgh, PA, July 6, 2022, Setlist -Set 1- 1. Comfortably Numb 2. The Happiest Days of Our Lives 3. Another Brick in the Wall, Part 2 4. Another Brick in the Wall, Part 3 5. The Powers That Be 6. The Bravery of Being Out of Range 7. The Bar 8. Have a Cigar 9. Wish You Were Here 10. Shine On You Crazy Diamond(Parts VI-IX) 11. Sheep -Set 2- 12. In the Flesh 13. Run Like Hell 14. Déjà Vu 15. Is This the Life We Really Want? 16. Money 17. Us and Them 18. Any Colour You Like 19. Brain Damage 20. Eclipse 21. Two Suns in the Sunset 22. The Bar(Reprise) 23. Outside the Wall
(Band members) Roger Waters (b, g, piano, vo) Dave Kilminster (g) Jon Carin (key, g) Jonathan Wilson (g, vo) Joey Waronker (d) Gus Seyffert (b, g) Robert Walter (org) Amanda Belair (vo) Shanay Johnson (vo) Seamus Blake (ts)
1.maybe as his skies are wide 2.Herr und Knecht 3.(Entr'acte) Glam Perfume 4.Cogs in Cogs, Pt. I: Dance 5.Cogs in Cogs, Pt. II: Song 6.Cogs in Cogs, Pt. III: Double Fugue 7.Tom Sawyer 8.Vou correndo te encontrar / Racecar 9.Jacob's Ladder, Pt. I: Liturgy 10.Jacob's Ladder, Pt. II: Song 11.Jacob's Ladder, Pt. III: Ladder 12.Heaven: I. All Once - II. Life Seeker - III. Wurm - IV. Epilogue: It Was a Dream but I Carry It Still
しかしM1."maybe as his skies are wide"の突然現れる美しい女性ヴォーカル、これは下手な技巧のない素人の女性の歌のようだが、こんな味はよくかってロックでもプログレの世界に登場したのを思い出す。アニー・ハスラムだって多くが惚れ込んだが、技巧と言うよりは素直な美しさだった。 M2."Herr und Knecht"を聴いてやっぱりロックなんだ。難しい変拍子のフュージョンぽい展開とシンセサイザーの技巧。 そして一転してクラシック調の登場のM3."(Entr'acte) Glam Perfume"、美しいピアノの調べだ。昔はこんな展開のプログレの曲の変化に痺れてしまったものだ。女性ヴォーカル、ハープの響き、ピンク・フロイドを想わせる笑い声のSE、メルドーのやりたかった一つの世界なんだろうなぁーーと。
メルドーが今回のアルバムで明瞭になったことの一つは、今でも忘れられないプログレの世界において、最も重要視しているのは演奏技術をベースに複雑かつ洗練された音楽性、変拍子やポリリズム、多彩なジャンルの入り乱れる複雑な楽曲といったところのようだ。そんなところからM4.,M5.,M6."Cogs in Cogs Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ"に出てきたGentle Giant(アルバム「The Power And The Glory」(下左))だ。ここに見えてきたものこそ彼の音楽性に大きな影響を与えているようだ。なんとこれはプログレの多様性の中でも、若干私が苦手としてきた世界だ。しかし音楽を極めているものとしては、どうしても通らなければならないと同時に魅力的なんだろう。なにせGentle Giantの世界には、民俗音楽、ジャズ、ソウル、クラシック音楽といった多種多彩な音楽的アプローチをしていて、むしろ後になって日本ではプログレ・ファンの間で話題だった。中世西洋音楽、バロック音楽、20世紀のクラシック音楽、室内楽といった数多くの音楽からの影響も指摘されているだけのものを演じていたわけだから。変拍子やポリリズム、多岐にわたるジャンルの入り乱れる複雑な楽曲を、アンサンブルの妙と、コーラスワークでのめくりめくる世界は好みと言うより奇々怪々であった。そのため、その音楽性は、ピンク・フロイドのような幻想的な音空間といった俗に言う「プログレっぽさ」とは別物であった。
そして更にコンセプト重視、これはM7."Tom Sawyer、M10."Jacob's Ladder, Pt. II: Song"のRUSH(アルバム「Moving Picture」「Permanent Waves」(上中央))の登場、懐かしいですねぇーー、彼らには私は少々入れ込んだこともあって(79年の「Permanent Waves」は、ジャケ・アートも忘れられない)、特に哲学的と言って良い歌詞には悩みつつも忘れられないところにあった。音楽性というところでは、私がプログレ一押しのKing Crimson, Pink Floydらとは別世界だが、なんとなくとっつきやすいポップ性と、技巧性の高い演奏・複雑なリズムアレンジの混在がたまらないところだと言える。 とにかくメルドーのこのアルバム・タイトルはRUSHの曲"Jacob's Ladder(ヤコブの梯子)"をそのまま持ってきたところにも入れ込みようが解る。私はこの曲よりはこのアルバムでは、"Different Strings(異なる糸)"が好きでしたが。 M9."Jacob's Ladder, Pt. I: Liturgy"は、なんと旧約聖書の朗読から始まり、敬虔な世界の展開。美しい女性ヴォーカル、今回のプログレとの関係をどう結びつけるのか・・これは単純には収まりそうもない。ただのロック回顧でない彼のアルバム作りを知らなければならないだろう。
さらにそれならと思った通りであったのが、M12."Heaven: I. All Once - II. Life Seeker - III. Wurm - IV. Epilogue: It Was a Dream but I Carry It Still" のYESの登場だ。ここに取り上げられた3rdアルバム「The Yes Album」(上右)からは、スティーブ・ハウが加入したわけだが、曲自体は意外に単純なんだがアレンジに重きを持って、その曲の中心のフレーズを変奏してゆく過程で、次第に全員が原曲から遊離して、奇妙な複雑性のアンサンブルが現れるという変と言えば変なバンド集団、そこにブラッフォードの変拍子ドラムスが叩かれて圧巻となる。こんなところがメルドーに大きなインパクトがあったのかもしれない。
HAKONE Aphrodite, Hakone, Japan 7th Augast 1971 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (65:51)1. The Circle Game (Buffy Sainte-Marie) 2. Soundcheck / Announcement 3. Atom Heart Mother 4. Soundcheck 5. Green Is The Colour 6. Careful With That Axe, Eugene 7. Soundcheck 8. Echoes
Disc 2 (43:55) 1. Soundcheck 2. Set The Controls For The Heart Of The Sun 3. A Saucerful Of Secrets 4. Soundcheck 5. Cymbaline
演奏内容は"原子心母"からスタートするが、オートバイの効果音は冒頭に配しているが、勿論アルバムのようにチェロ、ブラスバンド、コーラス隊はない。実は彼らのライブは殆どこのタイプだが、ギルモアのギターやウォーターズのベースとライトのキーボードの旋律の流れなどの演奏の味があって、このほうが私は好きなのである。そして続くは、美しいウォーターズの曲"Green is The Colour"、これはシド・バレットの抜けた後、ギルモアをなんとか売り出そうとウォーターズが彼に歌わせたモノである。そしてウォーターズの絶叫曲"ユージン"もしっかり披露している。又この年11月にリリースされた『おせっかい』の"エコーズ"も24分の演奏でほぼ完成されている。 その他も改めて聴くと後半の"神秘"の演奏も19分で迫力満点、しかも打ち上げられた花火の音も収録されている。最後は"シンバライン"で聴衆の拍手の音頭と共に演奏され括っているのも感動もの。
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