Progressive ROCK

2018年11月 5日 (月)

キング・クリムゾンKing Crimson Live in Mexico「MELTDOWN」

8人バンド「ダブルカルテット・フォーメーション」でのパワーは圧巻
   ~2018ジャパン・ツアー記念盤~

<Progressive Rock>

King Crimson Live in Mexico「MELTDOWN」
WHD Entertainment / JPN / IEZP-122 / 2018

Kcw

Robert Fripp – Guitar
Jakko Jakszyk - Guitar, Vocals
Mel Collins - Saxes, Flute
Tony Levin - Basses, Stick, Backing Vocals
Pat Mastelotto - Acoustic And Electronic Percussion
Gavin Harrison - Acoustic And Electronic Percussion
Jeremy Stacey - Acoustic And Electronic Percussion, Keyboards
Bill Rieflin - Mellotron, Keyboards, Fairy Dusting

Cwhbowcueaayusmw 何回と終止符を打ったキング・クリムゾン、いつもロバート・フリップに騙されてきた我々は、多分気分転換だろうと、過去の経過から今回も見ていたのだが、案の定2014年ライブ活動を再開。同年6月に発表されたメンバー構成は、リーダーのフリップに、メル・コリンズ、トニー・レヴィン、ジャッコ・ジャクスジク、そして3人のドラマー、パット・マステロット、ギャヴィン・ハリソン、ビル・リーフリンという「トリプルドラム」編成の7人構成キング・クリムゾンで圧倒的パワーを見せつけた。そして同年9月9日よりアメリカにて17回公演のツアーを開始した。
 
 ついに日本にも2015年に12年ぶりに上陸、その高松サンポート公演が、2016年リリースの映像とオーディオ版の「ラディカルアクション~ライブインジャパン+モア」 としてお目見えした。
 しかし、2016年ビル・リーフリンが休養、代わりにジェレミー・ステイシーが加わる。彼はドラムスとキーボードを熟している。
 その後、2017年ビル・リーフリンが復帰、ステイシーはそのままで、なんと8人クリムゾン「ダブルカルテット・フォーメーション」となった。

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News01 この8人編成の2017年7月のメキシコ・シティ5公演を収めた映像・オーディオのブルーレイ・ディスクとメキシコ・シティ5公演で演奏された楽曲をCD3枚に収めたライブ・アルバムが、なんと立派な重量級パッケージで登場したのである(オマケにキング・クリムゾン・オリジナル・チケット・ホルダーが付いてきた→)。

 そしてこの延長上に「2018ジャパン・ツアー」が行われるが、その来日記念盤というニュアンスもある。(内容は↓クリック拡大)

List

 Blu-rayは”映像版”では、熱狂的ファンに迎えられた2017年北米ツアーのハイライトとして、ただでも加熱ぎみのメキシコ・シティ公演の熱気をそのまま収録。”オーディオ版”とともにサラウンド・サウンドで聴ける。クリムゾンはやはりこれだと、8人バンドの迫力を実感できる。今回はこれを観ると、エンジニアとしてアルバムを仕上げているビル・リーフリンは、ドラムスをステイシーに渡し、キーボードに専念している。

 また、メキシコ・シティ5公演マスターから制作されるライヴCDはフリップの総指揮の下とは言え、CD収録には、オーディエンスの騒音を如何にカットするか苦労したようだ。しかし『ラディカル・アクション』の音像をクリエートし好評であったデヴィッド・シングルトン以下ファミリー・チームが再度挑戦して仕上げている。

 とにかく、リアル・プログレッシヴ・ロック・バンドと言われるキング・クリムゾンが史上4度目となる決定的ラインナップを完成させたわけで、『ラディカル・アクション』以上にファンを唸らせるのである。

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 とにかく、中身は濃い。ジャッコ・ジャクスジクも、声の質にはもう一歩と言われてはいたが、もうこれで良いだろうとクリムゾン・ファンにも容認されて熱唱する。
 1960年代からのクリムゾンの歴史を辿る演奏曲目も、このバンドとしてのアレンジも加わって、十分納得して聴けるのである。フリップの言う”過去とは一線を画した演奏”は、なかなか強者の集まりで、お見事である。"Larks' Tongues In Aspicでは、ジェイミー・ミューアのパーカッションとまではゆかなくても、それなりの納得演奏。"特に"21st Century Shizoid Man"は、確実に一歩前進、昔の暴れ者メル・コリンズも紳士になっての奮戦、ギャビン・ハリソンのドラムスも感動もので、会場と一体になった演奏は楽しめる。何回観て聴いても飽きないクリムゾンだ。しかしやっぱり映像ものは説得力がある。

 今回の来日ライブを逃すと、おそらく50周年記念でのこの全開パワーには多分再びお目にかかれることはないだろうと思う状況にある。このアルバムと共にクリムゾを手中にしよう。

(評価)
□演奏    : ★★★★★
□録画・録音 : ★★★★★☆

(参考視聴) 

① 2015年 高松版 

② メキシコ版

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2018年11月 3日 (土)

ロジャー・ウォーターズの世界~ストラヴィンスキー「兵士の物語The Soldier's Tale」

これは彼の生き様からの教訓の物語か?
     ~クラシックに迫るプログレッシブ・ロッカーの道

<Classic>
Roger Waters
IGOR STRAVINSKY'S THE SOLDIER'S TALE (兵士の物語)

Sony Classical / EU / 19075872732 / 2018

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(演奏)
ロジャー・ウォーターズ(語り)
ブリッジハンプトン室内楽音楽祭の音楽家たち

   スティーヴン・ウィリアムソン(クラリネット)   
   ピーター・コルケイ(ファゴット)
   
デイヴィッド・クラウス(トランペット/コルネット)
   デミアン・オースティン(トロンボーン)
   コリン・ジェイコブソン(ヴァイオリン)
   ドナルド・パルマ(コントラバス)
   イアン・デイヴィッド・ローゼンバウム(パーカッション)

Recorded at The Bridgehampton Presbyterian Church, December 11-12,2014

Rogerwaterslive720x480

 ここで先日取りあげた~このロジャー・ウーターズのクラシック・アルバムを聴くに、何故どうして今このストラヴィンスキーなのかと・・・・疑問はなかなか晴れるわけで無いのだが、しかし逆にそれであるから、いろいろと思い巡らしての面白い機会を持てたというところである。
 彼とクラシック・アルバムと言えば、難産の結果生まれた2005年のフランス革命を描いたリアル・オペラ「サ・イラ~希望あれ」がすぐ思い出すところである。そこにはウォーターズの意識というものが必ず存在していた訳で、たまたまこの「兵士の物語Soldier's Tale」の作曲家が、ロシアのストラヴィンスキーIgor Stravinsky(1882-1971)と来れば、まずはある意味での過激性のある問題の意識をどうしても持たざるを得ない。彼は20世紀クラシック界において、そこに大きな変革期を演じたその一人であるからだ。
 そしてしかもその彼の異色作と言われる「兵士の物語」であるからこそ、そこにウォーターズの意志を感ずると同時探りたくもなるのである。

 さてこのクラシック曲は3人のナレーション(語り、兵士、悪魔)と小オーケストラ(7人の器楽奏者)によって演奏される舞台作品で、1918年、第一次世界大戦直後の疲弊した社会環境の下で生み出された作品。ウォーターズの祖父は第一次世界大戦で戦死しており(また父親は第二次世界大戦、イタリア戦線・アンツィオの激戦で戦死)、そのことがこの作品を録音するきっかけになっているとの事とは言え、果たしてそれだけなのかと、単純に捕らえられないウォーターズのこと、一歩掘り下げてみたくなるのである。

79280004429d2dcf_2 そもそもこの「兵士の物語」は、ストラヴィンスキーがロシア革命後の政策下で資産没収により困窮し、その困難を打破するために仕事を展開した。かといって戦争直後の疲弊した状況下では大規模な作品の上演はまずもってあり得ない状況だった。そこで少人数の巡業劇団クラスで上演できるような作品を考えたことにこの曲は生まれることになったらしい。原作を民俗学者・アレクサンドル・アファナーシェフの編纂によるロシア民話集に求め、スイスの小説家・ラミュに脚本の執筆を依頼し、ストラヴィンスキーが曲を構成したと言う経過。

 [そしてその内容]は、ロシア民話の実は教訓をその実とした物語で、兵士ジョゼフが休暇をとってかって幸せであった故郷の母の下に婚約者に会いに行く。そこに悪魔が表れ彼の背にあったヴァイオリン(心)とお金やなんでも手に入るという本の交換をしてしまう。金持ちになった兵士は故郷に帰るも、たった3日間というのが騙され3年の経過があり、婚約者は結婚し夫と子供も居る。故郷では彼を相手にしない。彼は怒りヴァイオリンを悪魔から取り返し、その音色で王室の娘の病気を治して結婚し幸せになる。そこで兵士は昔の故郷の幸せも懐かしくなり結婚した姫と二人で、国境を越え故郷に向かうも又悪魔の仕業により、越えた瞬間に再び悪魔のヴァイオリンにより破綻する。

 (コラール)
   今持っているものに、昔持っていたものを足し合そうとしてはいけない
   今の自分と昔の自分、両方持つ権利は無いのだ
   全て持つ事は出来ない
   禁じられている
   選ぶことを学べ

   一つ幸せなことがあればぜんぶ幸せ
   二つの幸せはなかったのと同じ

You must not seek to add
To what you have, what you once had;
You have no right to share
What you are with what you were.

No one can have it all,
That is forbidden.
You must learn to choose between.

One happy thing is every happy thing:
Two, is as if they had never been.
 

673576878 さて、このような人間の生き方を教訓として歌いあげるこの「兵士の物語」は、ウォーターズの手による改変が成されているようだが、そこまで私は深めていない(私の手にあるアルバムは輸入盤で、当然ナレーションの英語の内容は記されているが、私にとって十分に訳せるものではない。日本盤には和訳があるのだろうか)。

 いずれにせよ、語り手、兵士、悪魔の3人をウォーターズが一人でナレーションしているその業には真迫感が有りお見事で脱帽だ。彼にはいまやそうした世界にも深める事を試み、そしてこの曲の教訓までも訴えているところが恐ろしい。
 目下の「US+THEM Tour」の延長による延長の成功も、今や彼はピンク・フロイドの頭脳として作ってきた時代評価の強者として、更に昇華して存在している。ここにはAnti-Warとしての共通点は見いだされるが・・・・。

 しかし、彼のロッカーとしての人生は、才能と努力によってその道による成功をもたらし財産家となってはいるが、少年期の父不在の不幸、戦争のもたらした人間的不幸を反省しきれない世情の不信感、これは一向に晴らすことは出来ないでいる。そして果たして家族的幸せも獲得できているのだろうか、それは度重なる離婚劇は彼にとって何なのか、ここにはこの「兵士の物語」を彼が熱演する何かがありやしないだろうか。

 The Soldier's Tale is a Modern Fairytale and at the sametime an Anti-War piece

 このアルバムの録音は2014年。その時のメンバーによって翌2015年にブリッジハンプトン室内音楽祭(ニューヨーク州)で実演にもかけられている。 採算性は全く考えられないこうしたアルバムをリリースするウォーターズの生き様は益々目を離せない。

「THE SOLDIER'S TALE」
Part 1:
1. “The Soldiers March”
2. “Slogging Homeword”
3. “Airs by a Stream”
4. “As You Can Hear…”
5. “The Soldiers March (Reprise)”
6. “Eventually, Joseph Reaches his Home Village…”
7. “Pastorale”
8. “The Soldier, Disconsolate…”
9. “Pastorale (Reprise)”
10. “The Soldier, Slowly Coming Back to Himself…”
11. “Airs by a Stream (Reprise) - To Stretch Out on the Grass…”
12. “Hey Satan, You Bastard…”
13. “Airs by a Stream (2nd Reprise)”
14. “Now to be Gained Here…”
Part 2:
15. “The Soldiers March (2nd Reprise) - Down a Hot and Dusty Track…”
16. “He Doesn't Even Know Himself…”
17. “The Soldiers March (3rd Reprise) - Will he Take the Road to Home…”
18. “He doesn't have a Home Anymore…”
19. “The Royal March”
20. “So all was Arranged…”
21. “Later that Night…”
22. “The Little Concert - Light Floods the Eastern Sky…”
23. “The Soldier, with a Confident Air…”
24. “Three Dances - Tango, Pt. 1”
25. “Three Dances - Tango, Pt. 2”
26. “Three Dances - Waltz & Ragtime”
27. “So First a Tango…”
28. “The Devil's Dance”
29. “The Devil, Confused…”
30. “The Little Chorale”
31. “The Devil Recovers Some of his Wits”
32. “The Devil's Song - All Right! You'll be Safe at Home…”
33. “Hm, a Fair Warning…”
34. “Grand Chorale (Part 1)”
35. “Spring, Summer, Autumn…”
36. “Grand Chorale (Part 2)”
37. “Steady Now…”
38. “Grand Chorale (Part 3)”
39. “Steady, Just Smell the Flowers…”
40. “Grand Chorale (Part 4)”
41. “Now I have Everything…”
42. “Grand Chorale (Part 5)”
43. “The Princess, all Excited…”
44. “Grand Chorale (Part 6)”
45. “And so, Off They Go…”
46. “Triumphal March of the Devil”

(視聴)

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2018年10月26日 (金)

ノ-サウンドNosoundのニュー・アルバム「ALLOW YOURSELF」

ロック色が後退してのエレクトリックなサウンドは・・・?

<Alternative, Progressive Rock>
NOSOUND 「ALLOW YOURSELF」
Ksope / EU / KSCOPE 605 / 2018


Allowyourself

NOSOUND : Giancarlo Erra (vocals, instruments, programming), Marco Berni ( keyboards), Alessandro Luci (bass), Paolo Vigliarolo (guitars) and Ciro Lavarone (drums).

 イタリアはローマ出身のジャンカルロ・エラGiancarlo Erraをリーダーとしたロック・バンドNOSOUND。私の注目のバンドである。彼らのサウンドは、ポスト・ロック、ポスト・プログレッシブと言われるがとにかく多彩であり、アンビエントな色彩が印象深かったが、オルタナティブ・ロックでもあり、エレクトロニックとも言える面もあるバンドだ。

Nosound_band

 もともとこのバンドはあの英国Steven Wilsonのポーキュパイン・ツリーPorcupine Tree をおそらくイメージして作られたプログレッシブ・バンドであったと思うのだが、当初はエラのスタジオ・プロジェクトであった。そして2005年のデビュー・アルバム『Sol29』 (Kscopeから2010年再発)リリース。その後は、『Lightdark』(2008年)、『A Sense of Loss』(2009年)、『Afterthoughts』(2013年)、『Scintilla』 (2016年)と5枚のアルバムを5人バンドとしてリリースしていて(メンバーはドラムスが変わっている)、ここに6枚目のアルバムの登場である。

(Tracklist)
1.ego drip
2.shelter
3.don't you dare
4.my drug
5.miracle
6.this night
7.at peace
8.growing in me
9.saviour
10.weights
11.defy


 さて、今回のアルバムは転換期を迎えての作品と言える。それは賛否両論あろうかと思うが、ロックとしての醍醐味は薄れ、エレクトロニックな方向へ変換したものと言ってよい。しかし曲自身は過去のアルバムと非常に共通性があるが、サウンドが変わっている。ドラムスの響き、泣きギターという面は完全に後退。

43185825tr 全編エラGiancarlo Erra自身のヴォーカルで埋められており、エレクトロニック・サウンドを主体に流れる。従って前作にみたロックのダイナミックさと多彩さは失われているが、相変わらず曲の流れはどこか退廃的美しさがある。又独特なアンビエントな面も失っていないが、それは前作と同様に癒やし系ではない。そしてM6."this night"のように、後半に盛り上がる曲仕上げは、やはり非凡なミュージック心を感ずるところだ。
 描く世界はとどめなく深遠にして暗く、そこから訴える声には思わず息を止めて聴かざるを得ないところに追い込まれる。

 暗い印象は世の終末をイメージすると言えばそんなところだが、私の印象としては、過去の純粋なる少年期の悲哀を今にして社会に訴えている孤独な悲壮感の如くの様が感じられる。しかし一方そこにはネガテイブだけでなく、何処か人間的美意識の持てる郷愁的な世界も感じられ魅力的だ。
 とにかく、ロック界がこうしたバンドが存続して発展を遂げているというプログレッシブな流れはなんとも貴重である。

 今回の転換がどう評価され受け止められるかはこれからの事であろうが、私自身の個人評価は、ロック・バンド色を充実させた前作『Scintilla』に軍配を挙げる。しかしこのアルバムも決して否定するのでなく、こうしてシンセサイザー、ストリング・マシーンを駆使してのエレクトロニックなサウンドを生かして、人間の退廃的暗さにも焦点を当て描く様は、ロックの芸術的発展的ミュージックとして大いに今後も注目したいのである。

(評価)
曲・演奏: ★★★★☆
録音  : ★★★★☆
     
(My Image Photo)

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Sony ILCE-7M3, FE 4/24-105 G OSS,  PL

(視聴)

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2018年10月10日 (水)

リバーサイドのニュー・アルバムRiverside「WASTELAND」

美しさと哀しさと・・・そして不安感と(しかし光明が)

<Progressive Metal Rock>

Riverside「WASTELAND」

INSIDEOUT/ Euro / 19075871852 / 2018

Wastelandw

Waste7and_01w_2Riverside
     Mariusdz Duda : Vocal, Guitar, Bass
     Piotr Kozieradzki : drums
     Michał Łapaj : Keyboards


 久しぶりにロック話。ちょっとサボっていて気恥ずかしい感じだ。しかし期待のRiversideだからと・・・気合いが入る。
 しかし今やロックは低調の極みと言っても・・・。社会現象とロックの道に乖離が起きているのだろうか?。若きエネルギーは?、問題意識は?。現代に於いて、60年代からの社会現象としてのロックの道との相違は何なのか・・・・。

  Riverside、前作『Love, Fear and the Time Machine』以来の3年ぶりの7thアルバム。今作にかける期待は大きい。それは前作が彼らの方向転換を意味するのか、私にとっては不完全燃焼だったからだ。
 このバンドはポーランドが生んだ世界に誇るプログレ・バンドである。あの悲劇を繰り返したポーランドの歴史の中から、現代に彼らが何を得ることが出来たのか、そこに期待を裏切る矛盾を感じ取ってしまった彼らの進むべき道はこれから何処に向かうのか、それは問題意識を持ったバンドが常に問われる道なのである。
 しかも結束のメンバーの一人であったギタリストのPiotr Grudzinskiが、2016年2月前作リリース直後に40歳で急死する悲劇がバンドを襲う。それから2年、なんとここに残った3人が、深い悲しみと解散の危機を乗り越えてのアルバム・リリースとなったのである。

Riverside2

 まずは印象は、リーダーのMariusz Dudaの描く曲が益々美しくなっていることだ。しかし冒頭M1."THE DAY AFTER"は、アカペラで唄われる悲劇の予感のテーマである。曲の終わりにかけて表現できないほどの暗い不安なテーマが流れる。ここにもともと彼らの持つ不安感と、現実に友を失った悲劇とどうしてもオーバーラップさせて聴くものを沈み込ませる。
List_2 M2."ACID RAIN"にその流れは繋がるが、彼らのヘビーなメタリックなサウンドが展開する。ここには彼らのかってのサウンドの復活がイメージ出来る。
 M3."VALE OF TEARS"もヘビーではあるが、ヴォーカルは美しく流れる。
 中盤から終盤に演じられるアコースティック・ギターをバックにポーランドらしい情緒あふれるな美旋律を取り入れた曲群には、悲哀と優しさと人間的な世界が描かれている。これぞ彼らが発展し獲得してきた一つの姿で有り、更に音楽的にもロック世界を超越して空気感が漂う深遠にも聴こえる普遍的なサウンドを大胆に取り入れたスタイルはプログレッシヴ・ロックの一つの姿として十分堪能できるアルバムに仕上がっている。

 しかしアルバム・タイトル曲M8"WASTELAND"は、"荒廃した地"と言う事だろうか、精神的にも文化的にも期待感が持てない世界を描こうとしているのか?。中盤でメタリックなサウンドが出現し次第にやや悲壮感が満ちるサウンドが展開する様が印象的だ。しかしかっての彼らの演ずる救いようのない暗さには至らない。そして終曲M9."THE NIGHT BEFORE"に繋がるのだが、そこには未来志向が覗いている。これが今のRiversideなのだろうか。

  かってのアルバムを思い起こすと、ヴォーカルのウェイトも多くなり、非常に聴きやすいアルバム造りに変わってきたというところは、前作からの流れも続いていると言ったところである(私的には若干不満も無いでは無い)。しかし「暗」から少しではあっても「光明」の感じられる結論に導くところは、彼らの今の状態が見えると同時に、上手い手法のアルバム製作であったと結論する。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(My Image Photo)
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Sony ILCE-7M3, FE 4/24-105 G OSS,  PL

(視聴)

 

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2018年9月18日 (火)

ロジャー・ウォーターズRoger Watersストラヴィンスキーに挑戦「The Soldier's Tale 兵士の物語- Narrated By Roger Waters」

ピンク・フロイドの頭脳が遂にストラヴィンスキーの世界に

 驚きのニュース!!、目下2年にわたる「US+THEM」ツアー中のあの元ピンク・フロイドの"The Creative Genius of Pink Floyd~ピンク・フロイドの創造的鬼才"と言われるロジャー・ウォーターズが、ロシアの異色作曲家ストラヴィンスキーの作品『The Soldier's Tale 兵士の物語』(1918年発表)を題材に、器楽演奏のナレーションを独自の構想で行うというクラシック・アルバムの発売ニュースがアナウンスされている。

<Classic>
Roger Waters
「The Soldier's Tale 兵士の物語- Narrated By Roger Waters」

Sony Classical / 19075872732 / 2018

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<演奏>
ロジャー・ウォーターズ(語り)
ブリッジハンプトン室内楽音楽祭の音楽家
 スティーヴン・ウィリアムソン(クラリネット)
 ピーター・コルケイ(ファゴット)
 デイヴィッド・クラウス(トランペット/コルネット)
 デミアン・オースティン(トロンボーン)
 コリン・ジェイコブソン(ヴァイオリン)
 ドナルド・パルマ(コントラバス)
 イアン・デイヴィッド・ローゼンバウム(パーカッション)

<録音>
2014年12月11日 12日 Bridgehampton Presbyterian Church

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 ストラヴィンスキー(イーゴリ・フョードウィッチ・ストラヴィンスキー1882-1971)と言えば「火の鳥」「春の祭典」などは聴いたことがあるが、この「兵士の物語」は全く知らない。第一次世界大戦の社会的・人間的疲弊の中での作品と言われ、考えて見るとロジャー・ウォーターズの祖父は第一次世界大戦で戦死、また父親は第二次世界大戦でイタリアのアンツィオの激戦で戦死している。従って父親とのコンタクトなく少年時代を過ごした彼には、常にこのトラウマが人生を左右してきた。彼のピンク・フロイド時代の作品に於いても後期(特にアルバム「狂気」以降、「THE WALL」、「THE FINAL CUT」には切々と訴えてくる)にはこの事実のトラウマとの闘いでもあった。とすれば彼の才能からすれば、このクラシック作品に挑戦するというのは、極めて自然な話なのかも知れない。

 中身は”読まれ、演じられ、踊られる”作品と紹介されるこの「兵士の物語」は、3人のナレーション(語り手、兵士、悪魔)と7人の器楽奏者によって演奏される舞台作品だそうだ。原作はフランス語だが、その英語版をもとにウォーターズ自身が改作。本来3人で演じられるものを声色やアクセントの変化をつけることで、ロジャーひとりで語りを担当したニュー・ヴァージョンと言う事だ。
 ロジャーのこうした挑戦は、ピンク・フロイド作品から全くのブレもなく一貫している。彼の戦争という社会悪にあらゆる側面から訴え続ける道には一つも陰りが無い。
 彼のフランス革命を題材にしたクラシック・オペラ作品『サ・イラ』(2005年) 以来のソニークラシカルからの作品近々リリースだ。

 取り敢えず早く聴いてみたい一枚である。

(参考視聴)

① Stravinsky "The Soldier's Tale "

*
② Roger Waters "The Fletcher Memorial Home"(from 「the final cut」)

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2018年7月14日 (土)

この春のキャメルCamelライブ映像版「CAMEL Kanagawa, Japan 5.20.2018」

まだまだラティマーは健闘しています

<Progressive Rock>

[DVD] Camel「CAMEL Kanagawa, Japan 5.20.2018」

1

Live at Club Citta', Kanagawa, Japan, May 20th 2018

Andrew Latimer – guitar, vocals, flute and recorder
Colin Bass – bass guitar, vocals
Denis Clement – drums, recorder
Peter Jones – keyboards, vocals

3 つい先日行われたキャメルの”「MOONMADNESS TOUR 2018」日本ライブ”の映像版。取り敢えずはオーディエンス・ショットのブートレグですから多くを期待してはいけない。まあそれでも昔からブートレグに親しんだ私としては、まあプロショットと言う訳にはいかないが、それなりに楽しんでいる。

 とにかく'76年リリースの4thアルバムの『MOONMADNESS 月夜のファンタジア』を完全再現しての”ジャパン・ツアー2018”より、5月20日の最終日公演の模様を納めている。会場は私はこのところ暫くご無沙汰のCLUB CITTA、幸いのことに映像はアンディ・ラティマーを完璧に納められる位置でのショットで、クローズ・アップも良好である。

 思い起こせば、キャメルと言うバンドは、アンディ・ラティマーの哀愁漂う泣きのギターとピーター・バーデンスの軽快で流麗なキーボード、アンディ・ウォードの多彩なドラムスといったところで、美しいメロディと共に適度なスリリングな緊張感のある演奏を聴かせてくれた。そしてプログレ華々しい70年代には、地道な人気を保持していた。
Moonmadness 1980年以降は次第にラティマー主導のバンドとなり、むしろ私個人はそれからのほうが好みに近いのだが、 『MOONMADNESS』(→)はそれ以前のあの彼らの初期のヒット作3rdアルバム『Snow Goose』1975)の直後で注目を浴びた作品だ。キャメルとしてはタイプの移行期の作品でもある。しかし今、こうして全曲ライブでの披露というのは、やっぱりキャメル・ファンが喜ぶからだろう。

(Set List)
(Set 1) : Moonmadness
1. Intro : Aristillus 2. Song Within A Song 3. Chord Change 4. Spirit Of The Water 5. Another Night 6. Air Born 7. Lunar Sea

(Set 2)
8. Mystic Dreams 9. Unevensong 10. Hymn To Her 11. Rose Of Sharon 12. Coming Of Age 13. Rajaz 14. Dingley Dell 15. Ice 16. Mother Road 17. Hopeless Anger 18. Long Goodbyes 19. Lady Fantasy

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 セット・リストを見て解るように、アルバム『MOONMADNESS』全曲披露のファースト・セットに続いて、セカンド・セットではクラシック・ヒット・ソングスを12曲を演じた。アンディ・ラティマーや盟友コリン・バス(Bass)をはじめとするこのところのキャメル復活メンバーは不変で、デニス・クレメント(drums)と盲目のプレイヤー・ピーター・ジョーンズ(keyboards, vocals)の 四人は息ぴったりである。
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 今や、「キャメル」と言うバンドの形をとってはいるが、実はスタート当初とは全く別のバンドで、むしろアンディ・ラティマーのソロプロジェクトみたいなものである。私としてはキャメルは、あの伝説のライブ「PRESSURE POINT」(1984)で終わっている。
 しかしその当時のラティマー主導のアルバム『Stationary Travellar』(1984)から、そしてそれ以降のアルバム『Dust and Dreams』(1992)はじめ『Harbour of Tears』 (1996)などの一連の作品は、初期キャメル以上に私は好きなのである。従って現在はこれで十分と言えば十分。

 アンディ・ラティマーが骨髄線維症で倒れ、骨髄移植という大変な医療を受け、この大病を克服して復活の現在、こうして日本に毎年のように来てのライブというのは夢みたいな話であり、大いに喜びたいというのが私の現在の心境だ。

(評価)
□演奏:     ★★★★☆
□映像・録音:   ★★★☆☆

(参考視聴)

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2017年12月26日 (火)

ドリーム・シアターDream Theater 映像盤 「LIVE AT BUDOKAN 2017」

あのプログレ不作期の華(25年前)を~今年の華に再現

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<Progressive Metal-Rock>
Dream Theater 「LIVE AT BUDOKAN 2017」
IMPORT/ IMP20170911DVD / 2017

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Live at Nippon Budokan, Tokyo, Japan 11th September 2017
PRO-SHOT COLOUR NTSC   LINEAR PCM STEREO    Approx.149min.

  Dream Theaterのジャパンツアー『IMAGES, WORDS & BEYOND 25th Anniversary Tour』が今年9月9日愛知(豊田市民文化会館)から14日東京(東京国際フォーラム)にかけて5会場にて開催。その9月11日は日本武道館でのライブだった。その模様を完全収録している。この来日は彼らの「ワールド・ツアー」の一環として行われたものだ。

Dreaamtheter_cdw 1992年に発表された彼らの2ndヒット・アルバム『Images And Words』(今にして聴いてみても完成度は高い→)が今年でリリース25周年を迎えた。それを記念して行われたもので、ライブはこの完全再現を含む2部構成、計3時間の演技。なにせ1992年当時はプログレの低迷期、このDream Theaterの出現には多大な期待を持ったものだった。とくにこの2ndアルバムのポップな"Pull me Under"が新加入したジェイムス・ラブリエのヴォーカルでヒットして日本でも人気最高峰に至った。そして来日ライブが中野サンプラザにて実現した。当然私も炎天下の夏に馳せ参じたのを懐かしく思い出すのである。とにかく彼らはプログレ御三家が潰れた後の光であって、全盛のメタル・サウンドも持ち合わせていての快進撃だった。

 そしてここに登場は、あれから25年後の彼らの今年の映像モノであり、ブートと言ってもオフィシャルに近いモノで、映像クオリティもプロショットにての良好のDVD2枚組みでのリリース、音声も圧縮の無いリニアPCMで収録もの。いやはやもうあれから25年になるのかと、自分の歳を数えつつ当時に想いを馳せながら見るのも感慨深い。ただメンバーの二人Kevin Moore(Key)とMike Portnoy(Drums)は既に変わっているわけで、このあたりはロック・バンドの難しさを感ずる一面でもある。

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 冒頭は、"The Dark Eternal Night"(アルバム『Systematic Chaos』(2007)から)だ。それ程支持があったわけでないこのアルバムの曲を持ってきた意味はよく解らないが、ヘヴィ・メタリックで変拍子で複雑である彼らの腕の見せ所みたいな曲で有り、オープニングから圧倒しようという企みか、ライブとしては一気に会場を唸らせて成功していると言っても良いのだろう。
 とにかく彼らのサウンドは、複雑怪奇なハイレベル演奏技術による強烈とも言えるアンサンブルの妙を変拍子の展開をみせながら、ジョン・ペトルーシ(Guitar)の低音が効いたヘヴィなギターリフで迫ってくるところが圧巻だ。しかも要所要所に美旋律も効かせたスロー・ナンバーでうっとりさせる技もあって聴く者をして魅了してしまうのだ。

Dsc_1946compw 今回の目玉”『Images And Words』完全再現”では、全曲75分の拡張バージョンで、"Pull Me Under"のラブリエの熱唱や、"Another Day"にはルーデス(Keyboards)、"Take The Time"にはペトルーシ(Guitar)のソロに近い演奏、更に"Metropolis Pt. 1"にはマンジーニ(Drums)の高速ビート・ソロも盛り込まれサービス満点。又"Wait For Sleep"のキーボードのしっとり聴かせるイントロ、それに続いての説得力あるヴォーカルはさすがである。マイアング(Bass)も全曲地味ではあるが相変わらず複雑にしてハイテンポのベースによるリズム作りも大いに貢献していた。

 更に、これでもかとアルバムA Change of Seasons』のからのアルバムでも25分近くの大曲"A Change of Seasons"完全再現も大サービスで、もはや懐かしの曲になっているところを現代風にアレンジもあって感動ものであった。しかし未だにこれだけのエネルギッシュな彼らの演奏は、やっぱりお見事と言って良いだろう。~いやはや、あれからもう25年なんですね。彼らももうベテラン組となった。


Dsc_0782compw(Tracklist)
Disc 1 
1. Intro: The Colonel
2. The Dark Eternal Night
3. The Bigger Picture
4. Hell's Kitchen
5. The Gift of Music
6. Our New World
7. Portrait of Tracy (Bass Solo)
8. As I Am (incl. Enter Sandman)
9. Breaking All Illusions

Dsc_0368compwImages and Words:
10. Intro: Happy New Year 1992
11. Pull Me Under
12. Another Day

 Disc 2
1. Take the Time
2. Surrounded
3. Metropolis Pt. 1: The Miracle and the Sleeper (incl. Drum Solo)
4. Under a Glass Moon
5. Wait for Sleep
6. Learning to Live

Dsc_2604compw7. A Change of Seasons:
I The Crimson Sunrise, II Innocence, III Carpe Diem, IV
The Darkest of Winters, V Another World, VI The Inevitable Summer, VII The Crimson Sunset

(参考)2017年ジャパン・ライブ
9/9(土) 愛知 豊田市民文化会館 大ホール
9/10(日) 広島文化学園HBGホール
9/11(月) 東京 日本武道館
9/13(水) 大阪国際会議場メインホール
9/14(木) 東京国際フォーラム ホールC

(視聴)

 

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2017年11月23日 (木)

現代ピンク・フロイドPink Floyd論 = 番外編-その1-

PINK FLOYD

「お祭り騒ぎ」と「総決起集会」 ~ デビュー50周年の話題

 ロックの歴史の中で日本人は最も”プログレッシブ・ロックの好きな民族”と言われているらしい(私もその構成員)。その中でも、このピンク・フロイドというロック・バンドの占める位置はまさに異常というか、怪奇というか・・・・70年代アルバムが未だにヒットチャートに登場しているところはキング・クリムゾン、イエス、E.L.P.、ジェネシスと言えどもあり得ない事実なのである。
 そのピンク・フロイドが今年はデビュー50周年と言うことで、又々騒ぎは大きくエスカレートしている。ロック・ミュージック界の低調の中では、唯一商業価値が間違いないと言うことで、ロンドンでは「ピンク・フロイド大回顧展」が開催された。このフロイドの『神秘』(1968)、そしてキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』(1969)以来は完全リアルタイムでロック・ファンあった私は、長いお付き合いにふと想いを馳せるのである。

Gilmour1Waters1_2

 まあ回顧は別として、今年もピンク・フロイド絡みでは、デヴィッド・ギルモアの「飛翔ライブ=ライブ・アット・ポンペイCD+DVD発売」、そしてロジャー・ウォーターズのニュー・アルバム『is this the life we really want?』と「UA+THEM ライブ」は、もはや何をさておいてもロック界のトップニュースになってしまっているのだった。

 さて、そんな中であの奇妙な意味の解らない2014年のアルバム『永遠』で幕を下ろしたかの感のあるピンク・フロイドだが、それがどうして益々ここにギルモアとウォーターズの価値感が高揚していることが、我々をして興味の渦に陥れるのである。

 まずギルモアは、結構なことに取り敢えずはギルモアらしいアルバム『飛翔』(Columbia/88875123262)をリリースして、ようやくピンク・フロイドという重責から逃れて自分を演じた。そしてその「飛翔ライブ」を欧州南北米ツアーを展開、その中でも欧州各国の遺跡や古城、宮殿などでの世界遺産公演を敢行したのであった。
 一方ウォーターズは、なんとロック・アルバムとしては25年ぶりに『is this the life we really want?」』をリリースし、同時に「UA+THEM ライブ」南北米ツアーを半年に渡って展開、更には来年早々引き続いてオーストラリア、欧州ツアーを行う。


■ デヴィッド・ギルモア『ライブ・アット・ポンペイ』 (Sony Music/SICP-31087)

Liveatpompeii こんな流れから出てきたギルモアのライブ版
 『ライブ・アット・ポンペイ』 (SonyMusic/SICP-31087)(→)
  もちろん彼の”「飛翔」ライブ”の一会場モノである。それもCDそしてDVDと映像絡みでリリースして、”ピンク・フロイドのその昔の無人ポンペイ遺跡円形闘技場の記念すべきライブ”の再現とばかりにアッピールしているのである。
 いやはや頼もしいと言えば頼もしい、しかし如何せんギルモア女房のジャーナリストのポリー・サムソンの商業主義の展開そのもので、ギルモアの意志はあるのかないのか、派手なライト・ショーが会場いっぱいに展開、なんとお祭り騒ぎに終わってしまっている。もともとアルバム『飛翔』も、”アダムとイヴの旅立ち”という如何にもコンセプトというか思想があるのか無いのか、むしろ無いところがギルモアらしい。まあ女房の作詩頼りに彼女の発想にまかせての気軽さだ(それが良いとの見方もあるが)。
 しかしそうは言っても、あのかってのピンク・フロイド時代の曲を織り交ぜてのギター・サウンドの魅力を引っさげての展開は、それはそれファンを酔わせてくれるのである。まさにギタリストの所謂「The Voice and Guitar of PINK FLOYD」なのである。
 しかし、ウォーターズの去ったピンク・フロイドを数十年引きずってきた男が、あの昔のピンク・フロイドの円形スクリーンそままで、ピンク・フロイドは俺だと言わなければならないところに、未だピンク・フロイド頼りの姿そのままで、ちょっと哀しくなってしまうのである。

■ ロジャー・ウォーターズ『US + THEM ライブ』

Isthisthelife 一方ロジャー・ウォーターズは、70歳を過ぎた男にして、今日の混乱の時代が作らせたと誰もが信じて疑わないアルバム『is this the life we really want?」』(Sony Music/SICP-5425)(→)をリリースした。
 それはNigel Godrichとの名コンビで、”現代プログレッシブ・ロックはこれだ”と圧巻のサウンドを展開。”ロック=ギター・サウンド”の既成概念を超越したダイナミックなピンク・フロイドから昇華したサウンドには感動すらある。
 ”歪んだポピュリズムPopulism・ナショナリズムNationalismへの攻撃”と”新たな抵抗Resistのスタート”のコンセプトと相まって、ミュージック界に殴り込みをかけた。

 そして日本の評論家の反応も面白い。何時もよく解らない事を言っている立川直樹も絶賛せざるを得ないところに追い込まれ、ロックと言う面から見ればそれこそ本物である伊藤政則は”怒り”の姿に共感し、ロックをギタリストとしてしか見れない和久井光司にはこの進化は理解不能に、最近カンバックした市川哲史の冷静な評論では、あのアルバム『風の吹くとき』のコンセプトとオーバー・ラップさせながらも、”破壊寸前の国際情勢に徹頭徹尾対峙したアジテーション・アルバムに特化した”と74歳の男の生き様に感動している。

23722640_1604990236211442_499588949 そして「UA+THEM ライブ」では、
 今回のニュー・アルバムの曲と同時に、彼の自らのコンセプトで作り上げたピンク・フロイド・アルバム『狂気』、『ザ・ウォール』、『アニマルズ』を再現している。それは今様に新解釈を加えつつ、今まさに展開している世界情勢に照らし合わせての”抵抗の姿”の展開は、”US(我々)とTHEM(彼ら)の関係”に挑戦しているのである。
 米国大統領トランプの出現は、彼に火を付けてしまった。反トランプの歌に特化した『アニマルズ』からの"Bigs (Three Different Ones)"は、トランプをしてあの歌のシャレードと決めつける。又パレスチナ問題、米・メキシコ関係問題にみる「壁」問題は、何時になっても人間の姿としての「心の壁」を含めてその存在にメスを入れている、まさに『ザ・ウォール』だ。
 しかも『狂気』の"Us and Them"に見るが如く、彼のピンク・フロイド時代の問題意識は現在に於いても色褪せていないどころか、彼の意識の高さを今にして認識させられるのである。
 (これは余談だが・・・日本に於ける安倍総理の”あの人達は”発言(これこそ"THEM")にみる危険性をも感じ得ない世相にふと想いを馳せざるをえない)
Djjhcgmuqaa_cth_3 彼は、「The Creative Genius of PINK FLOYD」とのキャッチ・コピーそのものからの展開なのである。”戦後の反省からの理想社会”からほど遠くなって行くこの今の世界情勢に、自分の出来ることはこれが全てと、彼をしてライブでの訴えに奮い立たせている。もう止せば良いのにと言うことがはばかる”戦争のトラウマ”を背負った70歳男の抵抗だ。
*
*
*

(取り敢えずは結論)

デヴィッド・ギルモア   ピンク・フロイド 
           (フロイドをどうしても越えられないその姿)

ロジャー・ウォーターズ  ピンク・フロイド 
           (フロイドに止まれない宿命的進化)

 この関係が益々はっきりした今年の情勢だった。過去のピンク・フロイドに”イコールの中に生きるギルモア”、”イコールもあるが宿命的にそれ以上を求めざるを得ないウォーターズ”。
▶かってのピンク・フロイドに酔いたい→「イコールこそに満足のファン」
▶あのビンク・フロイドは今何をもたらすのかと期待する→「イコールから発展的世界を求めるファン」
 どちらにとっても愛するピンク・フロイドの現在形であることには変わりは無い。

▼そして並の規模を越えた両者のライブは、
ギルモアは・・・・・・”お祭り騒ぎ”、
ウォーターズは・・・”総決起集会”
        ・・・・という構図は明解になった今年でもあった。


 今ここに、二つのピンク・フロイドが体感できる。これは我々にとって、これ以上のものはないのだろう。

                                  (いずれ続編を・・・)

(視聴)

David Gilmour

                 *                         *

Roger Waters


*

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2017年8月26日 (土)

スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson のニュー・アルバム 「to the bone」

なんと意外や、ポップ色が前面に・・・・

<Progressive Rock>
Steven Wilson  「to the bone」
Caroline / EU / CAROL016BR / 2017


Tothebone

Blu-ray版(収録内容)
〇アルバム・ハイレゾ・ステレオ・ミックス音源(24-bit/96k)
〇アルバム・ハイレゾ・5.1サラウンド・サウンド・ミックス音源(24-bit/96k)
〇「Pariah」ミュージック・ビデオ
〇「Song of I」 ミュージック・ビデオ
〇「Ask Me Nicely」アルバム・レコーディングのドキュメンタリー映像(約85分) 


 現代プログレッシヴ・ロックシーンのナンバー1=スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson  (英国プログレ・バンドのポーキュパイン・ツリーのリーダー)が2年振りとなるソロ名義の5枚目(ソロは2008年に1st)のアルバム『トゥ・ザ・ボーンto the bone』をリリースした。2016年のアルバム『4 1/2』以来だ。

  なんと言っても彼は、あの大御所キング・クリムゾンからエマーソン・レイク・アンド・パーマー、イエス、ジェスロ・タル、XTC、ティアーズ・フォー・フィアーズ、 ロキシー・ミュージックなどのリイシューで最新ミックスを任されるエンジニアであって、それだけ自身の作品にもサウンドには拘っている。従って今回もそれを体感するために、ハイレゾ・サウンドそして5.1サラウンドにも拘ってのBlu-ray版を購入した。

Xyz

(Album"to the bone"Track list)
1. to the bone
2. nowhere now
3. pariah
4. the same asylum as before
5. refuge
6. permanating
7. blank tapes
8. people who eat darkness
9. song of i
10. detonation
11. song of unborn

Stevenwilson  オープニングM1.”to the bone”は意味深なサウンドだが、なかなか軽快にパーカッションがリード。しかもスティーヴンのヴォーカルも意外に軽い。しかし不思議に演奏の重厚感は伝わってくる。それでも今までのメタリックなサウンドは姿を消して、おやっと思うのだ。
 全く前知識なしで聴いたのだが、どうも今作はこんな風に紹介している事が解った。それは”スティーヴンが若い頃に好きだったピーター・ガブリエル『So』やトーク・トーク『Colour of Spring』、ティアーズ・フォー・フィアーズ『Seeds of Love』と言ったタイプのプログレッシブ・ポップ作品からインスピレーションを受けた作品”と言うことの様なのだ。

 M2.”nowhere now” を聴いても、プログレじゃなくポップそのものだ。

Ninet_tayeb_1w_2 しかし、そう思って聴いているとM3.” pariah” なんかは良い曲だ。イスラエルの女性シンガー、ニネット・テヤブNinet Tayeb(→)がボーカルとして参加していて、これがなかなかハスキー・ヴォイスでスティーヴンのどちらかというと美声に対比して面白く、なかなか味わい深い。後半バックの演奏も盛り上がりが壮大でこれは魅力曲。
 M4. ”the same asylum as before” では、ギター・ソロも、コーラス・ヴォーカルもと、とにかく聴く方はかしこまること無くイージーに聴ける。
 M5.”refuge”が彼らしい曲と言えそうな暗めで味わい深さがある。

 そしてそうこう聴いていると、今までのスティーヴン・ウィルソンのソロものとの比較では、圧倒的に異色で有り、う~~んどっかで聴いたムードだと思って見たら、そうです後半の数曲はなんとカナダのラッシュの何年も前の全盛期のタイプだなぁ~~。そう、そんなとところが今回のアルバム。今までの暗さもヘビーさもそれなりに見せるは見せるが、明らかにその世界でないのが今作だった。
 さ~~て、スティーヴン・ウィルソン・ファンはどう受け止めるのか・・・・??>肩すかし?そう言ったところでもない。曲の完成度の高さはやはり彼の成せる技。

(視聴)  ”pariah” SW with Ninet Tayeb

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2017年8月18日 (金)

ジョナサン・ウィルソンJonathan Wilsonのアルバム 「Fanfare」

不思議な多要素満杯のロック・アルバム

< Rock,  Pop,  Folk,Wold,&Country, Psychedelic>
Jonathan Wilson 「Fanfare」

Down Town / USA / 70373 / 2013

Fanfare

Songwriter : Jonathan Wilson
Produced and Recorded by Jonathan Wilson at Fivestarstudios in Los Angeles

 シンガー・ソングライターでプロデューサーとして知る人ぞ知るジョナサン・ウィルソンJonathan Wilson(1974年、ノースカロライナ生まれ) のアルバム。実は私は詳しいことは全く知らなかったが、これは彼の2ndアルバムだ。
 しかし、こうした不思議な充実ロック・アルバムがあることを知っただけでも収穫だ。
 何故、このアメリカン・ロックの世界に首を突っ込んだかと言うと、そうです今北米ロツク・ツアーを行っているロジャー・ウォーターズの「US+THEM Tour」の10人のメンバーの一人で、重要なヴォーカルとギターを演じているのがジョナサン・ウィルソン。しかも彼はウォーターズのニュー・アルバム『is this the life we really want? 』でも重要な役をしている。

Mi0003732431(Tracklist)
1. Fanfare
2. Dear Friend

3. Her hair is growing long
4. Love to love
5. Future Vision
6. Moses pain
7. Cecil Taylor
8. Illumination
9. Desert Trip
10. Fazon
11. New Mexico
12. Lovestrong
13. All the way down

  しかし彼の多能力というか、多芸というか、そんなところが如実に出ているアルバムだ。近年のロイ・ハーパーやドーズなど多くのアーティストのプロデューサーとしての実績も大きいだけあって、このアルバムは、ロックの多様性を全て詰め込んだような感想を持つのだ。しかし、ヘビー・メタルとかゴシック・メタル調は全くない。
 どうもよく解らないのがアルバム見開きの写真(↓)、このアルバムに私の持つ印象とは違う。それでも、ここに描かれるところは人間模様として、作者にとっては重要なのかも知れない。

Fanfare1

 M1. ”Fanfare” 思いの外、壮大な曲である。日本語で言う”ファンファーレ”だが、その意味するところは?。そしてなんとプログレっぽいではないかと思わせるに十分の曲。ピアノ、ストリングスも加味され、かっての70年代イタリアン・プログレをふと思い出したが、ジョナサンのヴォーカルもソフトで聴き応えあるし、彼のメロディーの持つところも美しく実感する。驚きは彼のマルチ・プレイヤーぶりだ。ここでは9種の楽器とヴォーカル担当している。そしてロックの多要素をふんだんに盛り込んだような曲。
 M2.” Dear Friend” キダーとヴォーカルでなかなか味な曲。描くは、宇宙感覚で見た人間模様か?、これも私に言わせると歌ものイタリアン・プログレだ。中盤から後半にかけてのギター・ソロは聴かせます。
 M3. Her hair is growing long 彼の6種の楽器とヴォーカルでの曲。オープニングには子供の声のSEも入って、アコーステック・ギターでゆったりと聴かせる。この曲のムードは一種独特のジョナサン世界。
 ここまでに明らかなのは、彼はやっぱりギタリストなんだなぁ~というところだ。しかし私には、Psychedelicというイメージはどうも感じられない。
 M4. ”Love to love” これぞオールド・ロックで明解な歌。M5.. ”Future Vision”は軽快ロック。M6..” Moses pain” は、まさしくフォーク・ロック、多分これが得意のパターンだろう。8. Illumination はヘビー・ロック。M9.”Desert Trip”、M12.” Lovestrong”は、美しいスロー・ロック・バラード、エレキの泣きソロも聴かせる。
 ヴォーカルは、70年代のピンク・フロイド流にも通ずるところ。

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(US+THEM tour)
          *
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          *
 グラハム・ナッシュ、デヴィッド・クロスビー、ジャクソン・ブラウン、パット・サンソンなどゲスト参加、又ロイ・ハーパーとの共作曲も。とにかくメタルの以外のロックの多要素を詰め込んでの芸達者ロック・アルバム。
 成る程、ロジャー・ウォーターズが彼のアルバムにギタリスト&ヴォーカルとして選ぶのも理解出来る。

 ついでに、このアルバムでジョナサン・ウィルソンの操る楽器群を紹介する(驚きのマルチ・プレイヤー)→Electric Guitar, Organ, Clavinet, Synthesizer, Drums, Bass, Piano, Fender Rhodes, Mellotron, Millennium bells, Hammond Organ, Vibes, Percussion, Acoustic 12 string Guitars, Piano

(視聴) ”Dear Friend” from 「Fanfare」

 

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