女性ヴォーカル(Senior)

2016年8月25日 (木)

カロ・ジョゼCaro Josée 「Turning Point」

ムーディーな洒落たジャズを~これもベテランの味

   <Jazz>
    Caro Josée「Turning Point」
    Skip Records / Germ /LC10482 / 2012

Turning_point

Produced by Martin Scheffler, Andreas Paulsen & Caro Josee .
Recorded 2011 in Bendestorf and Hamburg, Germany.

Jazzaudio5 カロ・ジョゼCaro Josée、日本でそれ程馴染みのある歌手では無いが、ドイツのベテラン・ジャズ・シンガーだ。1958年生まれだから現在57歳というところか。
 このアルバム、もともと寺島靖国の『for Jazz Audio Fans Only vol.5』(TERASHIMA RECORDS / TYR-1031 / 2012 →)に、アルバム冒頭の曲”La Terrazza”が取りあげられ注目されたと言って良いだろう。

51_2 彼女のアルバムは、調べるとライブものを除いて過去に9枚あるが(末尾参照)、現在我々の手に入るのは2枚のアルバムぐらいしかなく、近作は、 『Summer Ease』(SkipRecords / GER / SKP9129 / 2016 →)である。しかし話題性からは、この2012年の『Turning Point』が勝るので、ここに取りあげたと言うところ。

 もう30年以上前の1978年にドイツの音楽の祭典ECHOの前身にあたるGerman Record Prizeにおいてナショナル・ポップ・アーティストを獲得したという話(当時20歳)があるので、ドイツでは長く愛されてきたシンガーなんだろうと推測される。
 このアルバムは彼女の取り巻きの総力を挙げてというところか、バック演奏陣が多彩で、ドイツの名門放送局バンドの「NDR ビッグバンド」のトランペッターReiner Winterschladenの名前も見える。

(MEMBERs)
Caro Josée- Vocals
Reiner Winterschladen - Trumpet
Manusch weiss - Guitar
Enzo Weiss - Rhythm Guitar
Martin Scheffler - Guitars
Thomas Biller - Double Bass
Julien Kravetz - Drums
Robbie Smith - Drums, Percussion
Andreas Paulsen - Piano
Jean Jacques Kravetz - Fender Rhodes
Pascal Kravetz - Organ
Zwetelina Haubold - Violin
Okko Becker & Alexander Hopf - String Arrangements;

 彼女のややハスキーな、そしてスモーキーに、更に年齢の割にはキュートなヴォイスによって、ムーディーに魅力たっぷりに唄われるアルバムである。
 やはりドイツだけあって録音もリアル。そんなところも寺島靖国に選ばれた一つの因子だと思うが、それにも増して彼女のヴォーカルはM1.は軽快なスタートであるが、その中にも女性らしいムードがあり、M2.になるとさすがベテラン、その歌い込みが見事な曲で、ストリングスをバックにピアノ、ギターの調べが効果を上げる中で、見事な大人のムードを盛り上げる。
 更にM3.では、ミュートを効かせたトランペットの登場で、彼女の唄は更に味付けがジャジーにしっとりとして、一層そのムードは深遠な世界に導く。
 M7.、M10.、M11.などスロー・ナンバーが良いですね。
 しかしM5.を聴くと、かっては結構ポップな曲をこなしていたのではと想像もする。ちょっと昔のアルバムも聴いてみたいところだ。

Caro20607grunw(Tracklist)
1.  La Terrazza
2.  Paris
3.  The Lawyer's Wife
4.  Night Time
5.  Bouillabaisse
6.  Mona Lisa Liut
7.  A Love Like This
8.  No Stars In My Sky
9.  SOS
10.  It's Impossible
11.  Mi Amor

(参考:Caro Josée  Discography )
1977 Caro & JCT Band It's Nothing But Higher Pinball Records (TELDEC)
1980 Caro Caro (WEA Records)
1983 Caro The Boy is Mine (WEA Records) (Europa)
1984 Caro The Boy is Mine (Rocshire Records/MCA-Universal) (USA)
1988 Caro Josy T. (Intercord) (Soundtrack zum Film)
1991 Caro Volcano (Virgin Records)
2005 Caro Eternity (Adhip Records/Moon Sound Records)
2012 Caro Josée Turning Point (Skip Records) *
2016 Caro Josée Summer Ease (Skip Records)

(視聴)Caro Josée ”It's Impossible”

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2016年7月13日 (水)

<美女狩りシリーズ>オーディオ・マニアを凌駕するリン・スタンレーLyn Stanley

オーディオ・マニアが愛する?女性ヴォーカル3枚
「Lost in ROMANCE」、「POTIONS」、「Interludes」

Lynstanley62 いっや~~、これは事件でした。ジャズ愛好家には結構オーディオ・マニアがいる。そして彼らはジャズ・ミュージックを聴いているのだか?、サウンドを聴いているのだか?、よくどっちか解らない事がある。まあ私はその気持ちが実はよく解るんですが、とにかくよい音でよい音楽をというのはやっぱり人間の欲求だろうから・・・。
 そんな中で登場したのがこのリン・スタンレーLyn Stanley(←)だ。なんとSACDは勿論、LPそれも45回転盤とくるから、マニアが喜ぶ仕立てである。それと同時に、ほんとにオーディオ関係で講釈を言っていた昔が懐かしくなりながらも・・・・このデジタル時代によくもまぁ懲りずに・・・・と、思うのである。

 もちろん私はこれほどのモノには発掘力は無くて、オーディオ・マニアの友人から仕入れたアルバムが”狂”ではなくて”今日”のお話。

 まあ”美女狩り”と言っても、このポートレイトが今日話題の彼女。しかしこれは相当手の入った写真。年齢は問わずにいたほうが良さそうだ。

 アルバムは一挙に以下の3枚。2013年、2014年、2015年リリース。

Lost_in_rom<Jazz>

(1stアルバム)
Lyn Stanley
「LOST IN ROMANCE」
A.T.MUSIC / US / ATMSA3101 / 2015

From_the_50s_pot<Jazz>

(2ndアルバム)
Lyn Stanley
「FROM THE 50'S POTIONS」

A.T.MUSIC / US / ATMSA3103 / 2015

               
                 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

      <Jazz>
             (3rdアルバム)
      Lyn Stanley 「Interludes」
       A.T.MUSIC / US / ATMSA3104 / 2015

Interludes

(Tracklist)
1.How Long Has This Been Going On?
2.Just One of Those Things
3.Black Velvet
4.More Than You Know
5.Boulevard of Broken Dreams
6.Whole Lotta Love
7.Last Tango In Paris
8.Don’t Explain
9.Nice’n Easy
10.The Island
11.It’s Crazy
12.In A Sentimental Mood
13.I Was A Little Too Lonely
14.I’m A Fool To Want You

Lynunderstars_websmall どうですか、如何にもクラシック・ジャズ・ジャケに仕上げていますね。この辺りから狙いは解りますね。唄うリン・スタンレーは、まさに大人のフィメール・ジャズ・ヴォーカリストですね。そして過去の誰でも知ってるポピュラーなスタンダード・ナンバーを歌い上げる。その声の質は簡単に言うと宝塚の男役そのものですね。低音にヴォリューム感があって高音部は伸びますが、澄んで清楚というタイプではなく、ちょっとマイルドに若干故意に作り上げているパターン。

 彼女はワシントン州タマコ生まれ、年齢不詳。デューク・エリントン、ジュディー・ガーランドを敬愛しているといことからも推して知るべしというところ。
 ミシガン州立大学博士課程でマスメディアを学び米国有名企業で働き、宣伝広告、マーケティングなどの指導をしてきたという。社交ダンサーも交通事故を克服してナショナルチャンピオンとなっているらしい。

 2010年にピアニストの大御所ポール・スミスと出逢い、ヴォーカリストとしての訓練の後、’13年1stアルバム「LOST IN ROMANCE」リリースに至る。好評の為’14年には、2ndアルバム「FROM THE 50'S POSTIONS」をリリースして、1950年代を意識してのジャズ・ヴォーカルを展開し、これはその50年代と同じにアナログ・テープを用いて録音。ハイレゾダウンロードDSD音源、SA-CD、45回転LP、2トラ38㎝オープン・テープなどのオーディオを十分に意識し、自己レーベルでのリリースで、ハイエンドオーディオ愛好家に支持されるに至った。
 これまでの2枚とこの3rdアルバムのバックの演奏は特に際立った特徴は無い。まあ素直な演奏というか、現代的ジャズというアプローチでなく、ヴォーカルものの伴奏というところか。やはり録音は非常に素直で癖が無く音域が広い。それぞれの楽器の特徴が究めて繊細に録音されていて好感が持てる。ここがオーディオ・マニアに捉えられるところだろう。

 こうしてオーディオをかなり意識してのアルバムの出現というのは、デジタル時代にアナログの良さを原点回帰している今日、タイムリーな攻めなのであろうと思うのである。

(視聴)

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2015年5月 9日 (土)

元気いっぱいシンディ・ローパーCyndi Lauper   ~ 牡丹の花 ~

春の花とも言えるシンディ・ローパー

 我が家の春というと、毎年楽しみなのは先ずはなんと言っても家の周りの木々の新緑なんですが、ただとにかく花粉症のひどい私は今年も、なかなか春を楽しむというところにゆかないでいました。(出来るだけ薬は飲まないようにしてますが、ここにきてようやく落ち着きつつあります)

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P5031716w2_3 しかし植物に弱い私といえども即解るのは牡丹の花ですね。これはやっぱり春を実感させてもらえるものの一つです。私の家の周りには、長野県でも牡丹の寺として有名になっている高遠の遠照寺から、縁あって3本の牡丹(鉢に入っている15-20センチぐらいのもの)を頂いて私の家の周りに植えてあるのですが、それが育って、今年も立派に花を咲かせてくれました。

 その一本はもう頂いてから10年近くなりますので、なんと今年は一本の木から41ケの真っ赤な立派な花を付けたのは驚きでした。他は薄紫赤のもの、白いものの2本でこれも立派に育ちつつあります(↑)。

 こんな華々しさに逢うのはこの人でしょうね・・・・・・シンディ・ローパー。
 彼女は今年早々日本縦断ライブを展開して日本では圧倒的な「花」なんですね。     

 そこで何となくちょっと様子を見たくなって、2011年の映像ブート・アルバムに出会いそれを仕入れました。(↓)

<Rock , Jazz>

  Cyndi Lauper 「THE DEUCE OF HEART」
    NTSC / Jazzaldia - Spain 25th July 2011 / SB-DVD-135


Thedeuceofhearts シンディ・ローパーって、1953年ニューヨーク生まれってことですから、なんと既に60歳は超えているんですが、この映像は2011年ものなので59歳位のライブ映像。取り敢えずプロショットで内容は十分耐えられるもの。
 彼女は親日家といってよいと思う過去の日本での活躍は多くの人に支持を得ているが、特に2011年3月の東日本大震災の直後の日本でのライブ活動による世界への日本に対する支援や募金などのための活動は、忘れられないところだ。丁度その直後のスペインでのライブものがこのDVDである。

 彼女の音楽ジャンルはロックと言うことだと思うが、ジャズ分野でも評価があるし、”シンディ・ミュージック”と言った方がよいのかも・・・・。
 このブートには、2005年ものの映像も納められていてなかなか中身は濃い。内容は下のようなところである。

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P5041725w とにかく、60歳になろうとしていたこの2011年のSpainでのライブは、なんと雨天の野外であって、それもなんのその相変わらずのエネルギッシュなパフォーマンスには驚かされる。体型は結構それなりに中高年タイプになってで昔より太っているが、それでも会場を沸かせるステージをバンド・メンバーとの連携も貫禄のスムーズさで、アクテイブに展開して喝采を浴びている。
 このライブは多分彼女の目下のスタジオ最近作になる「Memphis Blues」のリリース後の2011年7/25にスペインのSan Sebastianで開催されたJazzaldiaフェスにおけるステージもの。アルバムからのブルース・カヴァー曲が主だが、特に初期のヒット”All through the night”、”Girls just want tohave fun”、”Time after tme”が登場したり、映画「グーニーズ」の”The goonies'r'good enough”などのヒット曲も聴ける。

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 昨年来彼女は、デビュー・アルバム「She's So Unusual」の三十周年記念として全曲再現を試みたライブを展開した。今年一月の日本ライブもその一環だ。
 そして今年になってそれを収録した左のアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』をオフィシャルにリリースしている。特に日本盤はDVD付きでの発売である。とにかく元気ですね。
 このオリジナル盤は1983年発売したもので、世界で爆発的に売れたもの。翌年にはグラミー賞を受賞したアルバムであり、1980年代の売れたアルバムとしての代表格のものなのだ。
 こうした元気な彼女には、音楽の諸々のジャンルを超えた「花」があり、現在も活躍中であるところは嬉しくなるところである。

(視聴)  Jazzaldia 2011

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2015年3月18日 (水)

大人のジャズ・ヴォーカルなら・・・ルース・キャメロンRuth Cameron「Roadhouse」

        <My Photo Album 瞬光残像 = 南イタリア編>

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 南イタリアのマテーラMatera。岩山に築かれた洞窟住宅(Sassi)の町並み。とにかく歴史は旧石器時代までさかのぼると言われ、1993年世界文化遺産に認定されている。1950~60年には衛生上の理由などから住民は強制移住され廃墟となるも、その後歴史的価値が見直され、整備が進められ再び住居として機能している。そして今や観光地として多くの人を集めている。 私が訪れたのは12月だが、寒いという気温ではなく、多くの観光客で賑わっていた。     (photo 2014.12)

                        *    *    *    *

<Jazz>
             RUTH CAMERON 「Roadhouse」
            
Universal / EMARCY 549 100-2 / 2000
             Recorded on Oct.1999 at Capitol Studio Hollywood, CA.

Roadhause

 このところチャーリー・ヘイデンが、どうも私にとっては何時までも「心」に残ってしまうのであるが・・・と、言うところで私の彼に関係したもう一つの愛蔵盤の紹介。

Roadhausemem 究極の大人のフィメール・ジャズ・ヴォーカルもの。そして是非夜にしっとりと聴いて欲しい。そんな意味での極上品である~それがこのルース・キャメロンRuth Cameronのアルバムです。
 彼女のヴォーカルを支えるmembersは、左のとおり。まあBassのチャーリー・ヘイデンは亭主ですから当然として、彼女はチャーリーのカルテット・ウェストを支えて来たわけですから、PianoのAlan Broadbent、 Brad Mehldauなどを始めとして、それなりに豪勢なミュージシャンが登場します。

<Tracklist↓> (クリック拡大)

Roadhause1ist

 これは完全に大人のヴォーカルです。しっとりとしかも丁寧にしっかりと歌い上げる。その声はやや太めのマイルドなところが心の安まる世界である。バックの演奏陣もこれ又夜の静かな落ち着いた世界を演出する。

 ルース・キャメロンは元々は北アメリカやヨーロッパにおける劇場俳優であったが、ジャズ・ベーシストのチャーリー・ヘイデンと結婚して、彼のマネージャー役となり、バンドのカルテット・ウェストを支えた。そして彼のレコーディングをプロデュースする役割をこなしていたようだ。その後、ヘイデンは彼女にシンガーとなることを勧め、1999年にこのアルバムの録音を行ったのだった(2000年リリース)。
 どうもその後は最近のアルバム「Sophisticated Ladies」(参照 :http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/charllie-haden-.html)に登場はしたが、彼女自身のアルバムはない。
 ヘイデンが亡くなってしまった現在、年齢的にも彼女のシンガーとしての活動も多分無いだろうと思うと、このアルバムは貴重盤である。

(試聴)

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2015年2月28日 (土)

今にしても心に響くアルバム~アイリーン・クラールIrene Kral「where is love?」

      <My Photo Album 瞬光残像 = 南イタリア編>

Dsc01270monowh

アルベロベッロAlberobelloの夜(5)
 白壁に円錐形の石積み屋根を載せたこの家屋は、16世紀から17世紀にかけて開拓のために集められた農民によって造られたものだという。現在は1996年に世界遺産として登録されて以来、可愛い住居群のため観光客に人気。住居や土産もの店として利用されている。私が訪れた12月は、丁度クリスマスとの関係で、若い人たちが夜にもかかわらず大勢散策していた。  (photo  2014.12)

               *    *    *    *

   <Jazz>

    IRENE KRAL「恋の行方 where is love ?」
    Choice / CHCD 71012 / 2001(Original 1975)
    Recorded at Wally Heider Studios,Los Angeles, December 1974

Whereislove
          IRENE KRAL (vocal)
          ALAN BROADBENT (piano)


 1975年のアルバムですが・・・今にしてこうしてCDにて音質もしっかり確保して聴けるというのは幸せなことです(若干音が割れるところはありますが・・・)。残念ながらこのアルバムはリリース当時(当然LP)は、私はリアル・タイムに接したわけでなく、今にして聴いているのです。それは多分この40年前に於いては、こうした世界のジャズ・バラードには関心が無かったと言ってよく、今のような心に感じて聴くことは出来なかったと思われるところですが・・・・・。

List 収録は左のような9曲。”When I look in Your Eyes”などはふと懐かしさを誘うが、その他そう有名どころの曲が並んでいるわけではないが、それがなんと郷愁感と安堵感とを呼び起こす。なんといっても良いのは変な技巧をこらさない自然な語りかけの心が感じられる歌い方は好感持てる源であろう。
 ”Kral”と言っても、今や時めく”Diana Krall”などがかなりの尊敬の念を抱いているらしい。近年はジャズ・ヴォーカルと言えば女性天国。しかもJazzy not Jazz路線がもてはやされているが、この1970年代の彼女の世界は、そんな現在のシンガーのお手本になっているようだ。
 

Bwirenewgirls
 このアイリーン・クラールは、1932年シカゴ生まれのアメリカン・ジャズ・シンガーだが、1978年悲運にも46歳で乳癌のため亡くなっている。このアルバムは結婚後の10年間のブランク後のカンバック・アルバムであったというが、非常に評価と支持を得たもの。この後、ピアニストのアラン・ブロードベントと最初で最後の来日をしているが、推測では自己の病態は知っての上のライブ活動であったようだ。しかしそんな悲劇的な様子は全く見せずに演じていたという。
  このアルバム、彼女のヴォーカルのバックはアラン・ブロードベントのピアノのみで、歌唱力そのものが問われる構成。そこに見事な歌声を披露している。

A_b_trio アラン・ブロードベントは、グラミー賞ピアニスト。ニュージーランド出身、米国バークレー音楽院で学んでの活動。過去の名作を一枚あげると・・・・

Alan Broadbent Trio 「Song of Home」 Atelier Sawano / AS013 / 2001
Alan Broadbent (piano), Andy Brown (bass), Frank Gibson jnr (drums) 
Recorded 1984
(tracklist)
1. What is this thing Called Love?
2. Solar
3. Song of Home
4. Oleo
5. Upper Manhattan Medical Group
6. Sophisticated Lady

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そして近年では・・・・・

「SOPHISTICATED LADIES」 EMARCY / UK / 2011
  チャーリー・ヘイデン・クァルテットのピアニストとして、メロディ・ガルドー、ダイアナ・クラールの登場するこのアルバムにて聴いたのを思い出す。

(参照)
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/charllie-haden-.html

(参考試聴) Irene Kral "when i look your eyes"
 

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2014年7月22日 (火)

グロリア・エステファンGloria Estefan : 「THE STANDARDS」

ラテン円熟歌姫のジャズ・スタンダード

<Jazz>
            GLORIA ESTEFAN 「THE STANDARDS」
            Crescent Moon Records    8876 546064 2 ,  2013

Thestandards

 あのラテン・ロックのサンタナがリリースしたラテンの祭典みたいなアルバム「CORAZÓN」はまさに華々しかったですね。あのアルバムに登場するグロリア・エステファンGloria Estefan(参照 :http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/santana-corazn-.html)は、やっぱり聴き応えあった。彼女のラテン調のどちらかというとジャズと言うよりはダンス・ポップ・ミュージックは、世界的に名を轟かせてきたところだ。既にベテラン歌手の彼女が昨年ジャズ・スタンダードを歌ってのアルバムをリリースしていたことを遅まきながら知って、ここに聴いているというところなんです。

Thestandardslist
 登場するは、左のように13曲。いつもの踊って歌い上げるというパターンではなく、結構渋めに控えめに・・・と言ったところ。その為このアルバムでは、中低音を生かして、そしてややハスキーに、更に大人っぽさというか、円熟味を充分に披露して説得力ある唄が聴かれる。そうは言っても、やっぱりラテンっぽい節回しが登場したりして面白いスタンダード集。

 
 そしてここに登場する曲には自らが英語の歌詞を付けた”The day you say you love me”のようなものもあるが、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、フランス語と登場して、いやはやなかなか達者です。
 ゲストは演奏陣に加えて、曲”Sonrie”ではイタリアの歌姫ラウラ・バウジーニとデュエットも披露。
 かなりこのジャズ・スタンダードへの挑戦は、かねてからの志があって、充分その時を期しての製作であったようだ。それだけ円熟歌唱が充分感じられる出來なのである。
  このアルバムでは、バックを支える演奏陣も充実していてオーケストラも入る。彼女の音楽人生の一つの形と言っても良いものと思う。
 

 Dean Parks : Guitar
  Chuck Berghofer : Bass
  Gregg Field : Drums
  Shelly Berg : Piano
  Emilio Estefan : Alto, Tenor Sax
 etc.
  Miami Symphonic Studio Orchestra

 

Gloriaestefan2697


 グロリア・エステファンはReal Name は、Gloria Maria Fajardo で、1957年9月生まれ、従って今年56歳といことになる。キューバ生まれで、キューバ革命の時に家族とともに米国のフロリダ(マイアミ)へ移住したという経歴が有り、英語、スペイン語、フランス語などに通じている。それは苦労してマイアミ大学に入学して心理学、フランス語を学び学問の道にも身を寄せた結果のようだ。
 そこで音楽バンドを演じていた夫のエミリオ・エステファンと出会って、音楽への道へと歩むことになったらしい。
 とにかく米国とは言え、マイアミというのはキューバ人が主体の地であり、キューバ・ミュージックの拠点。
 そして1980年代に、夫のマイアミ・ラテン・ロックのバンド「マイアミ・サウンド・マシーン」でリード・ヴォーカルを努め、世界的に知られる存在になった。
 既に7度のグラミー賞受賞し、世界で1億枚のセールスを記録しているとか、その実績は凄い。

 
 

(視聴)

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2014年2月 1日 (土)

ジューン・テイバーJune Trabor : 「Quercus」

ベテランの初聴きシリーズ第一弾

<Jazz, Trad, Folk> June Taber 「Quercus」
                             ECM records,  ECM 2276,  2013
              Recorded Live March 2006

Quercus

June Tabor (vo)
Iain Ballamy (saxophones)
Huw Warren (piano)

  時々、その手のファンにとってはもう予てからの愛聴盤を積み重ねているような女性ヴォーカル盤に、私は初めてお目にかかるという奥深さの無い体を露呈するわけですが・・・・・。このベテラン歌手ジューン・テイバーJune Tabor(1947-)のアルバムにここに来て初めて私は接したのである。
 彼女は”ブリティッシュ・フォーク・トラッド”界での1970年代からアルバムをリリースしているベテラン女性シンガー。数多い彼女の過去のアルバムは全く知らない私ですが、ECMから昨年リリースされてこうしてジャズ系の流れから巡り巡って我が愛する友人から私にも到達したと言うことになったのです。

1.Lassie Lie Near Me
2.Come Away Death
3.As I Roved Out
4.The Lads In Their Hundreds
5.Teares
6.Near But Far Away
7.Brigg Fair
8.Who Wants The Evening Rose
9.This Is Always
10.A Tale From History (The Shooting)
11.All I Ask Of You

120413junetabor 
 ECM盤ですからおおよその想像はつくのだが、しかしこうしてアルバム全曲じっくりと聴いてみるとなかなか奥深さのある英国の歴史と文化を感じながら静寂に神聖な世界を見せられるような世界に入ってしまう。そして驚きはこれがライブ・アルバムと言うところだ。そして製作にはアイヒャーがどっぷり絡んでいるようで、それはそれ結構と言っておきたい。
 もともとフォークとトラッドとは”民族的な”とか”民謡”といったところからと言えば同じものになろうが、私から見れば若干意味合いを異にして、トラッドはまさに民族的なものの流れを継承したものとして受け入れられるが、フォークとはむしろその後の発展型としてロック時代にロックとは異なった一つのミュージック・スタイルとして評価している(フォーク・ロックなるジャンルもあるが、それはそれとして、アメリカにおけるヒッピー文化とフォークはどうしてもダブるんですね)。そんなところからは彼女はやっぱりトラッド系とみたい。

 さてこのアルバムはトラッド曲からスタートするが、展開はジャズなんですね。ヒュー・ウォーレンHuw Warrenのピアノが美しく、ECMのピアニストというと誰かが言ってましたけどほんとにKetil Bjørnstadが頭をよぎります。そしてIain Ballamyのサックスが又驚きのジェントル・ワールドなんです。そしてそれにジューン・テイバーのトラッド・ヴォーカルが流れて行くというパターン。しかし確かにこうなるとフォーク、トラッドという世界、更にはジャズいう世界をも超えた雲上の世界と言った方が良いのかも知れない。
 ”teares”はHuw Warrenの作のようで、この透明感あるピアノ・ソロが又いいですね。続く”Near But Far Away”は今度はサックスのIain Ballaykの曲で、冬の晴れた日に暖かい部屋の窓から広々とした雪原の美瑛の丘を眺めているような、又は暖かい季節であれば丘の上で寝そべって流れる雲をみているような感覚になる。
 こうして聴いているとこのアルバムは単にジューン・テイバーの唄ものと言うので無く、トリオ作品としてたまたま彼女はヴォーカルで参加していると言っていいのだろう。

 世の中には知らない世界が沢山あって、ふと知ったときの気持ちは何とも言えない快感である。このアルバムは、私の”ベテランものの初聴き”というところであって、知って良かったと思う一枚なのである。

(試聴)

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2012年7月11日 (水)

回顧は続く(音楽編-9-)・・・パティ・ページ Patti Page

アメリカ合衆国の資本主義の歪みの歴史の中からの歌手として・・・・・

Image003  回顧が続いてしまうが、ついにという感じでパティ・ページ Patti Page(本名 Clara Ann Fowler) を取り上げることになった(jazzを愛するブログ「JAZZYな生活」を拝見して、ここに思いを馳せることになった)。勿論彼女を語るには、1950年の大ヒット”テネシー・ワルツ”ということになるが、そこまでの物語が深刻であり又彼女の努力の結晶であり、最も私の関心の持たざるを得ないところである。
 既にこのブログでも取り上げてきたあのスタインベックの小説「怒りの葡萄 The Grapes of Wrath」の舞台であるオクラホマ洲の最も悲惨な資本主義の歪み(矛盾)の中の貧しい家に彼女は1927年に産まれたという。経済の流れの中の非人間的事実を告発したジョン・スタインベックのこの小説は、ジョン・フォードが映画化し(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/the-grapes-of-w.html)、又ロックではあのキャメルのアンディ・ラティマーが音楽の世界で取り上げている(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/camel-f6d2.html)。
 私の偏見では、世界の二大小説は、一つは下村湖人「次郎物語」、もう一つがこのスタインペックの「怒りの葡萄」であると言ってしまうのだ。

 話は余談になってしまったので、ここらでパティ・ページに戻るが、彼女の子供の時代に父は線路工夫、母と姉妹は綿摘みをして生計を立てていたという。非常に貧しい家庭であり、そして18歳には、オクラホマ洲のラジオ局の15分番組に歌手として出演するようになったとか。

 さて、彼女のもう一つの記録すべきポイントは一人の多重唱というアイデアで、多重録音で一人での4重唱を”with my eyes wide open l'm dreaming”という曲でやってのけたと言うことだ。この曲のヒットが彼女のプロとしての道を切り開いたポイントであったようだ。コニー・フランシスもこの手法をよく聴かせてくれたが、それより先んじて10年、パティ・ページはこれをもって、メアリー・フォードなどにも影響をもたらしたという。

Starbox_3  彼女のヒット曲集はこれまた多くある。

  左は「STAR BOX - PATTI PAGE」 Sony Music Direct 2003年リリースもの。歴史的曲群であるが、音はそれなりによい。そして広く多くの曲を収録している。ただし残念ながら”テネシー・ワルツ”などヒット当時のオリジナルでなく、1960年代になっての再録音もの。その為私なんかには、なにかちょっと違うぞという感じになってしまって、懐かしさは半減してしまう。
 そんなところであるが、私の棚をひっくり返しして探してみたら、もう何年か前に買った安いCD(1990年もの)が、オリジナルもので、慰めてくれるものがあった。それがこれだ(↓)。

Patti Page~ Champion Selecction Series
Della Inc. PF-3506  ,  1990

Championselection_3   これは日本での企画ものである。しかし内容は見事1950年からの初リリース当時のオリジナルを収録している。(当時定価1200円)
 その為なんと12曲収録中5曲はモノラルである。しかし単にSP、LPなどからの移植ものでなく、音質は現代物とはゆかないが、ノイズはなく、それなりに結構楽しませてくれるものとして仕上げてある。

List1 収録曲は、左のように、”テネシー・ワルツtennessee waltz”から始まって、私の好きな”涙のワルツ i want to your wedding ”(①から⑤まではモノラル)、そして”ふるえて眠れ hush, hush, sweet charlotte”も収録(これはステレオ版)。まあ喜ばせてくれる選曲だ。特に1950年のナンバー1ヒットは、この”テネシー・ワルツ”で、戦後の日本の文化革命的ポピュラー・ミュージックといって過言でない。
List2 ”ラブレター”、”酒とバラの日々”、”この世の果てまで”もいいですね。いやはやこうした廉価版でも頑張っているのがあったんでした。  このCDは、現在手に入るかどうかは疑問ですが、まあいろいろと探してみれば、これに勝るものも必ずあるのだろうと思っている。

 パティ・ページの歌声は、我々に当時(戦後10年)何か希望を与えてくれたのは事実であった。

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2011年11月27日 (日)

秋の夜長の回顧シリーズ(6): ペギー・リー Peggy Lee

女性ジャズ・ヴォーカルの一つの原点

Peggybest 「Peggy Lee / Greatest Hits」 Not Now Music NOT2CD284 ,  2009

 もう秋も深まって、初冬の時期となってきたが・・・なんとなく師走の忙しさも感ずるこの頃だ。
 しかし、この夜長にはなんとなく回顧もいいもの。そこでこの「回顧シリーズ」では今回はペギー・リーに焦点を当ててみた。

2  私にとっては、何だかんだと言っても彼女の唄はあの映画「大砂塵」のテーマでビクター・ヤングが作曲した”ジャニー・ギターJohnny Guitar”(1954年)ということになる。歳がばれるが、まだ感受性豊かな少年時代に聴いたこの曲と歌は、1950年のペレス・プラードの”セレソローサ”から4年後となるが、これも日本では一世を風靡した。まさに当時の言葉で言うと洋楽の素晴らしさだった。又、このムードには子供ながらに痺れたものだ。

 私にとってはそんな接点のペギー・リーであるも、実は彼女のジャズ・ヴォーカリストとしての活動は、その十数年前の1940年には始まっていたわけで、あのベニー・グッドマンにスカウトされたというところから、表舞台での活躍が始まったというとところなのであろう。生まれは1920年というから20歳頃からの活動だ。彼女の歴史はこのグッドマン楽団のギタリスト、ディブ・バーバーとの結婚から、ソロに転向して、更に磨きをかけていく。

Greatesthit  ここに紹介したベスト盤には特にヒットした曲25曲(左)が詰め込まれ、更に評判の良かったアルバム二枚も納められており、彼女を十分他の能出来る代物。(デジタル・リマスターされ十分聴くに堪えうる)
 現在もう数え切れないほどの女性ジャズ・ヴォーカリストが、ジャズ界にいるが、やはりこのペギー・リーの歌った曲をコピーして歌いアルバムに納めることが多い。それには彼女の世界が一つの原点になっていることは、誰もが認めるところであろう。

 まずは、今でも多く歌われる’58年にヒットした”fever”からスタートする、そして続くMr.wonderful”などを聴くと、ここには女性ヴォーカルのお手本的唄が聴けるし、なつかしの”manana”などを聴くと歴史的音楽の楽しさを味わえる。
 ”wating for the train to come in”などは、なんとなくかったるさのヴォーカルも聴かせる技量には恐れ入る。
 もちろん”johnny guitar”は登場するし、私の好きな”bye ye blackbirds”で、このベスト選曲は締められている。

 いずれにしても、現在のジャズ・ヴォーカルの原点を聴く気持ちで聴けるところに、このアルバムは貴重である。

Themanilove さて、ここには、1957年のキャピトルから出されたアルバム「The Man I Love」(左)の全12曲が納められ、いやはや如何にも良き時代の優雅なムードを感じさせてもらえる。
 ストリングスもバックに入って、男女の愛をスローなバラードに乗せた曲を、楽しませた好評盤。
 こうしてCDでのリマスター盤は大歓迎である。

Blackcoffee  そしてもう一枚のアルバム「Black Coffee」 、これは1953年、1956年にデッカからリリースされたもの。特にアルバム・タイトル曲の”Black Coffee”は、現代ジャズ・ヴォーカリストのお手本中のお手本。当時ここまで歌い込めたのには感心せざるを得ない。

 何時も言うのだが、私はベスト盤は否定者で、アルバムというのはトータルに聴くところにその心が感じ取れると思っているのだが、この時代のペギー・リーにおいては、むしろベスト盤の価値はそう否定できるところでなく、まあそのまま楽しめばいいのだろうと思う。
 しかしそこにおいても、ここに納められたアルバム「Black Coffee」は今の時代にも色あせずに、この夜長の時間帯に楽しめるところは20世紀の名ヴォーカリストとして数本の指に入るといわれるペギー・リーは、これからも聴かれてゆくところにあるのだと思う。

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2011年9月15日 (木)

秋の夜長の回顧シリーズ(3) : ジュリー・ロンドンJulie London のスモーキー・ヴォイス

スモーキー・ヴォイスのはしり・・・・

 秋の夜長の一時を、昔の回顧に心を休ませている。そんな中で、もともと私はかってのLPそして現在のCDなどをトータルに聴いての感動に期待しているわけで、ベスト・アルバムという寄せ集めの否定者なんですが、しかし、この1950年代活躍したジュリー・ロンドンの場合のように、むしろベスト・アルバムのほうがよいという場合もある。そんな事情から、取り敢えずこのシリーズではベスト盤を中心にアプローチしているところだ。

Julibest 「THE VERY BEST OF JULIE LONDON」 CAPITOL 09463-12129-2-5 ,  2005

 
なんといっても、このベスト盤は、まずCD2枚組であって何と全50曲を納めている。更に重要なポイントはリマスターによる音の改善である。なにせ半世紀前という時代のものを蘇らせているのだ。
 又、当時はトータル・アルバムによるという作風の世界でなく、一曲一曲ベストを狙ったと言っていい時代であるので、ここに多くの曲を網羅してのベスト盤の意味は実は大きいのである。
 ジュリー・ロンドンは1926年生まれで、2000年に74歳で亡くなっている。最も歌手として華々しかったのは1950年代である。あの”cry me a river”の人気は凄かったようだ。いまでもこの曲では、彼女の名前が出てくるところである。

Julielondon1b    ところでこのジュリー・ロンドンというのは、出発は映画女優でありむしろ美貌を売り物にしていたのである。ところが結婚して引退し二児の母親となるも離婚となり、なんとその後は(20歳代後半に)歌手としてスタートしたという経過である。離婚後ジャズピアニストのボビー・トゥループとの関係が深まったことが重要な因子であったと言われている。とにかく世界は映画の最も人気のあった時代であって、この後再び映画の道も歩んで、その人気は絶大であった。アメリカという華やかな中から生まれた一つの夢のある世界であったと言っていいだろう。

Julielist1_2  Disc1の25曲は左の通りである。ざーと見ても最近の女性ジャズ・ヴォーカリストが取り上げている曲群がづらーと並んでいる。彼女がスタンダード・ナンバーを如何にこなしていたがよく解る。
 スタートのヒット曲”fly to the moon”は快調なテンポで歌い上げる。しかしそれにも増してここまで音を改善したリマスター技術陣に脱帽だ。
 彼女の代名詞の”cry me a river”が2曲目に登場する。静かなギターのバックで、ややハスキーな例のスモーキー・ヴォイス(smoky voice)でしっとりと歌い上げたところは、1955年当時には驚きで歓迎されたことは想像に難くない。最近でのダイアナ・クラールなどと比べて聴いてみると面白い。
 このアルバムの曲群では、バックにストリングス・オーケストラが流れたりするが、むしろそのバックの演奏が何となく古くさく感じ、彼女の歌声や節回しはむしろこの今においても決して古くさくないところが不思議である。Jazzyな歌い回しが好まれたのはこの時代の一つの象徴であろうが、そのパターンは実は今も変わっていない。
 ”misty”も私の好きな曲で、涙ものである。秋の夜長には最高だ。
 ”go slow”は今の時代に決して遅れをとっていない。
 ”Basin street blues”、”Blues in the night”の2曲などブルースものもなかなか味のあるヴォーカルだが、バックは如何にも古くさい。これがギターなどのシンプルなバックだったらゾッとするほど素晴らしいと思うのだが。

Julielist2  左は、Disc2の25曲リストである。
 彼女の唄は、しっとり哀愁タイプである。しかし決して暗くないところが支持を広く獲得したのではなかろうか。
 ”love letters”、”i left my heart in sanfrancisco”などは今も変わらずのお手本的ヴォーカルを聴かせる。
 懐かしの”day of wine & roses”は聴きどころ。
 先日話題にしたイリアーヌ・イリスの”light my fire”は、この昔のジュリーの唄もラテン・タッチものでなかなかいい。唄いがいのある曲なんでしょうね。
 ”heres that rainy day ”を聴くと、声の質、バツクのギターと全く現在の曲造りに遜色ない。
 ”i've got a crush on you”はお勧め曲、聴いてのお楽しみと言ったところ。
 最後は”ev'rytime we say goobye”締めくくる。全50曲を一夜に聴くと、ほんとにこの夜を有り難うと安堵に付けるのである。

 秋の夜長のベスト盤でも、実は片手に入るジュリー・ロンドンものを紹介した。彼女が1957年、映画「The Girl can't help (女はそれを我慢できない)」に出演し歌った”cry me a river”を私の好きな曲として挙げさせていただき、ここに書いたところである。

  
 

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