2025年12月 4日 (木)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati「Standard Deviation」

高速展開のお洒落なピアノ・トリオ・ジャズ・アルバム

<Jazz>

Alessandro Galati「Standard Deviation」
JAzZMUD / Digital Release /24bit 96kHz Flac , 3210 Kbps, RAR/ZIP :1.16 GB / 2025.5.25

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Alessandro Galati(p, mixing, editing)
Ares Tavolazzi(b)
Bernardo Guerra(ds)

Rcorded by Andrea Pellegrini at Larione 10 Studio (FI), 2024.
Mixed and mastered by Alessandro Galati at Church St. Studio (FI), 2025.

371324610_7740460213w   このアレッサンドロ・ガラティ(→)のピアノ・トリオ・アルバム「Standard Deviation」は、2025年5月JAzZMUDレーベルからリリースされたアルバムである。実はこのアルバムはデジタル・リリースで、知らないまま来てしまって、ちょっと遅れて最近聴いた為、今の紹介となった。昨年寺島レコードから、ここでも取り上げた三枚のアルバム『plays Standards』(TYR-1121,1122,1123、2024)に続くモノで、あれは、おそらく寺島靖国からの注文もあったろうと推測するのだが、バラード調の哀愁感ある作品が多く、イタリアン・リリシズムと言う世界でもあったが、又そうでなくとも比較的聴く者にとって優しい演奏の曲が盛られていたように思う。
 そして、今回のこのアルバムは、トリオとしてのメンバーは同一のAres Tavolazzi(b, 下左)、Bernardo Guerra(ds, 下右)といったところで、完全な続編であるが、聴いてみて解るとおり明らかに異なった"Deviation"という世界が聴けるので楽しい作品だ。

 これも推測だが、ガラティはあの一連の"「Plays Standards」作品群"は、私は聴いた当時から、彼はおそらく寺島靖国の要望を理解して、自己の世界をかなり押さえているように感じていたが、やっぱりそうかと、こちらの続編の演奏には、ガラティばかりでなく、トリオ・メンバーが面白いように活躍している。おやおやここで欲求不満を解消しているのかとも思うのである。もともとガラティの発展系のスタイルが、単にスタンダードをおとなしく演奏していること自体不自然であったのだ。したがってクラシック・ジャズのスタンダード曲とジャズメンが見せたオリジナル曲をも取り入れて、その流れと演奏に融合を図ったりして、ガラティの築き上げてきたジャズ感覚を、共演のリズム隊と共に溌剌とお互い自己の味も披露しての展開が素晴らしい。是非CDやLPでもリリースして欲しいところである。

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(Tracklist)

1. Bernie Miller: Bernie’s Tune
2. Bill Evans: Funkallero
3. Juan Tizol: Caravan
4. Miles Davis: Freddie Freeloader
5. Kenny Dorham: Blue Bossa
6. Richard Rodgers: Falling in Love with Love
7. Frank Churchill: Someday My Prince Will Come
8. Jerome Kern: In Love in Vain
9. Clifford Brown: Joy Spring
10. Sonny Rollins: Oleo

 いっやーーとにかく楽しい。所謂ジャズメンのオリジナル曲が多くを占めていてなんか新鮮だ。スタンダードは当然のメロディが顔を出すが、ガラティ独自の解釈が結構展開するし、そしてドラムスは"開放感"そのものを感ずる演奏で、ベースもなかなか"粋"で楽しませる。従ってスタンダード演奏というところから発展しての個性豊かな魅力的なジャズアルバムとして仕上がっている。

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 とにかく、あの3作のスタンダード演奏もあれだけ続くと、ちょっと退屈になつたバラード調の演奏から解放され、ミッド・テンポからハイテンポでのインプロを交えての展開が快適で・・・ガラティのトリオのリズム隊を尊重してのエンジニアとしてのミックス作業も効果を発揮。
 M1. "Bernie’s Tune"から、ドラムス、ベースが溌溂としていて、快調なピアノを支えるというよりむしろ迫ってくるのが楽しい。
 続くBill EvansのM2."Funkallero"は、ぐっと味わい深いブルース調で、これは珍味。
 そしてM3."Caravan"が、冒頭からガラティのフェイク編曲メロディーがルバート奏法で快調に展開、後半のベース・ソロは全く別曲に聴こえて、そこにガラティがピアノで原曲に呼び戻すところが面白い。それでも一筋縄に行かない編曲だ。
 Miles DavisのM4."Freddie Freeloader"は、ベースのリズムが効いて、ジャズのスマートさが目立つ。
 M5."Blue Bossa"は、なかなか洒落てます。
 M6."Falling in Love with Love"これはなんと驚きの三者の高速バトル。ジャズの楽しさだ。
 M7. "Someday My Prince Will Come" は、ちょっと優しく軽いタッチのムーディーなピアノにベースが交互にメロディを演ずる。その一致感覚が心地よい。
 M8. "In Love in Vain" この曲もガラティは軽く跳ねるようなタッチでメロディを、そしてアドリブに流れ、引き継いでベースもアドリブを。
 最後のSonny RollinsのM10."Oleo"も、高速展開であっという間に納めてしまうというお洒落な締め。

 しかし、このトリオはこのアルバムでは十二分に自己のセンスをオープンにしている。これでガラティ自身もこのところの"スタンダード演奏"も、ここで"ミュージシャン・オリジナル"を噛ませたことで、一段落といったところに落ち着いたのでは。昨年の三作では、ちょっとよそ行きのガラティで、、本人も欲求不満だったのではと思うところだったが、これで私自身も納得だ。

(評価)
□ 選曲・演奏 : 90/100
□   録音      : 90/100

(試聴)

 

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2025年11月28日 (金)

アーロン・パークス AARON PARKS 「By All Means」

アコースティック・ジャズ指向に回帰してのジャズの美しさと楽しさと感謝と

<Jazz>

AARON PARKS  「By All Means」
BLUE NOTE Records / Import / 7837202 / 2025

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アーロン・パークスAaron Parks (piano)
ベン・ソロモン Ben Solomon (tenor saxophone)
ベン・ストリートBen Street (bass)
ビリー・ハートBilly Hart (drums)

Aaronparks_220003_sq_byisaacnamias   アーロン・パークスAaron Parks(1983-, 米 →)のブルーノート3枚目となるアルバムがリリースされた。彼は、ここでも何回か取り上げてきた私の注目するピアニスト。編成は、2017年にリリースした『Find the Way』(ECM、2017年)で共演していたが、今回そのトリオと再びプレイしたいというアーロンの願いのプロジェクトのベン・ストリートBen Street (b, 1965-, 米 下左)、ビリー・ハートBilly Hart(ds, 1940-, 米 下中央)とのトリオ編成に加え、新進気鋭ベン・ソロモンBen Solomon (ts, 米 下右)を迎えた新たなカルテットによるものだ。

 そしてベン・ストリートとの共同プロデュースの形をとっていて、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴをきっかけに急速に実現したとのこと。もともとこのピアノ・トリオの美しさと収録曲はパークスの作曲されたモノだけに、美しさが期待される。ソロモンのtsは、パークスの言葉によると「"ここに管楽器を入れてみたいな”と思ったのは、私はコンピング(伴奏)が大好きだし、単に自分がバンドをリードしていくだけではなく、ピアノのサウンドがバンドの一部になっているように響くのも好きなんだ。」と言う事らしい。さてどんな役割を果たすかが注目される。

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  本作について、アーロン・パークスは「この作品が過去のアルバムと全く異なるものだとは思っていない。これはジャズの伝統、ブラック・アメリカン・ミュージックの伝統を愛するレコードで、それはノスタルジアや保護ではなく、その系譜や連続性の中で生きるということを意図しているんだ。アルバム・タイトルもそれを意味していて、それは大きな肯定であり、『パーティに参加しよう』という意思表示なんだよ。そして何よりも一緒に演奏すること、曲の中で互いに即興で演奏することの喜びがテーマとなっていて、ただ音楽を愛することについて表現しているんだ」と語っていると。

 これは、音楽の方向性として 直近作の『Little Big Ⅲ』などで見せたエレクトリック/融合志向からは一転して、今作は伝統的なアコースティック・ジャズ/ポスト・バップ志向ということで、パークス自身によれば、「ジャズ/ブラック・アメリカン・ミュージックの伝統の中で生きる」という事で、私自身も実はほっとしてこのアルバムに興味を持ったところである。

(Tracklist)

1.A Way
2.Parks Lope
3.For María José
4. Dense Phantasy
5.Anywhere Together
6. Little River
7. Raincoat


000000220002w  このアルバムは、結論的にはアーロン・パークス自身のルーツに回帰して、所謂ジャズの伝統のアメリカン・ミュージックの歴史と遺産に敬意を払いながら、「今」を生きるミュージシャンとして作り上げた静かで美しい作品ということになる。ピアノ・トリオに止まっていないで、今回はtsを加えてのカルテットであったが、これも体勢を評価しての彼の実験でもあったろう。私としては無理にtsを加える必要があったのかと言いたいが、そこにはミュージシャンの技巧や斬新さよりも、今様のスタイルを評価しての“演奏や即興の喜び”を聴く者の期待も優先して、その結果としてのスタイルだったと推測する。そして生まれたものは、音には柔らかさと暖かさと、未来希望思考が描かれている。

 M1."A Way" 自分を見つめるこのアルパムは、ちょっと内省的な傾向を持つが、このルバートを加味したバラードで幕を開ける。ハートの巧みなブラッシさばき、ストリートのベースは情景を描き、パークスの美的なピアノの質感がなんとなく親密な世界を築いている。そこに問題のソロモンのサックスだが、思いの外音色がトリオの思索的な流れに優しく乗って感情の表現に貢献している。
 
 M3."For María José"(妻へ)、M4."Dence Phantasy"M6."Little River"(息子へ、子守歌として作られたとか)といったバラード曲のトラックは、ピアノの優しさ溢るる音とメロディーでParks の家族への感情を感謝の気持ちも込めて演じられ、温かさと優しさ、抒情性が強く感じられこのアルバムの良さを感じられるところ。

 一方、パークスが若き十代に作曲したM5."Anywhere Together"は、リズムセクションのエネルギッシュな活気性とそのスウィング感あふれる活力は、このアルバムでも両極の一方を担って楽しくしている。巧みなシンバルアクセントとダイナミミックなハートのドラムは、このアルバムの中でも印象的。
 ラスト曲M7."Raincoat"は、ちょっとリラックスして、ラテンっぽいリズムをストリートとハートが抑えた演奏で進行し、どことなく平和感のあるピアノとサックスで落ち着いた曲。

 音楽的には、ややスローなテンポで流れるバラード調。サックスが吹きまくるというので無く、落ち着いたサックスとピアノの対話的演奏などが主力で、“優しさ”と“感情の深み”をたたえるジャズだ。夜や深い思索の時間に“静けさと余韻”、"抒情"を楽しみたい時などにしっくりくるアルバムだと思う。 

(評価)
□ 曲、演奏 : 88/100
□ 録音   : 88/100

(試聴) "Dence Phantasy"

 

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2025年11月22日 (土)

フランチェスコ・マッチアンティ FRANCESCO MACCIANTI TRIO 「PLAYS STANDARDS」

優美さと優しさでの手慣れたトリオ演奏で抒情性も・・・

<Jazz>

Francesco Maccianti Trio 「Plays Standards」
terasima records / Jpn / TYR-1140 / 2025

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Francesco Maccianti (piano)
Ares Tavolazzi (bass)
Roberto Gatto (drums)

1200x680_img_9840w   先頃リリースの寺島靖国による「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6 」(TYR-1134,2025)で、先行紹介のあった私の好むところの'60年代のAhmad Jamalの演奏で有名な曲"Poinciana"を演ずるFrancesco Maccianti Trioのアルバムがリリースされた。
  フランチェスコ・マッチアンティ(→)は、1990年代より、アルバムを着実に発表してきて高い評価を得てきたイタリアのキャリア豊富なピアニストである。幼少期から本場イタリアでのクラシック音楽を学んだ上でのジャズへの関心が高まって、イタリアのジャズ教育機関のシエナ・ジャズなどの著明な音楽学校で研鑽を積んだという経過である。
 本盤は過去盤でも組んでいたベテランのアレス・タヴォラッツィ(b, 1948-, イタリア 下左)&ロベルト・ガット(ds, 1958-,イタリア 下中央)との経験豊富な実力者ピアノ・トリオによる、スタンダード群を奏した最新アルバム。なんとプロデュースはアレッサンドロ・ガラーティ、このあたりは寺島靖国の入れ知恵か(笑)。いずれにしてもピアノ・トリオ・ファンとしては、CDで持っていて聴きたくなるアルバムで、即手に入れた代物。

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(Tracklist)

01. No Moon At All
02. Blackbird
03. Time On My Hands
04. Passion Dance
05. Lawns
06. Cantabile
07. It's Easy To Remember
08. Poinciana
09. It Never Entered My Mind
10. The Old Country
11. Windows

 スタートのM01."No Moon At All"から、優しさのピアノ・トリオ演奏で嫌みが無く聴きやすい演奏を展開。今回プロデュース担当の私のお気に入りのアレッサンドロ・ガラティとはちょっと異なって、冒険性は少なく、端正できめ細やかな世界でいて、ノリのよさを持つつジャズのスウィング感もちゃんと演じていて、所謂老獪でむしろ我々に優しく聴かせてくれるというパターン。

  そして基本は、このようにスタンダード曲演奏に於いて、彼の場合あまり原曲を崩さず素直に演奏して、むしろ色をわずかに付けて我々に聴きやすく理解しやすく演じていることだ。もともとジャズ・プレイはむしろ演者の個性を表現する為の工夫をして、スタンダードなどは原曲をむしろ別物に仕上げると言うことが一般に行われるが、それと異なって原曲のイメージを壊さないように伝えてくれるところは、彼の"ある境地に達してのなせる技"なのでは、と思わせるところでもある。

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 又ベース、ドラムスはあまり自己主張せずに、美メロディーを支えるという姿が逆に美を感ずる。このトリオは互いの老獪な味を知り尽くして、三人による一つの姿を求めているトリオなのかと感じた。
 M03."Time On My Hands"は、まさに優美な演奏で、ここではベース・ソロがメロディーを演ずるがピアノとのバランスは絶妙だ。
 優しさ美しさではM05."Lawns"もなかなかの出来。
 私の注目のM08."Poinciana"は、ジャマルのいろいろなライブものを聴いているのであるが、そのラテン系の味というよりは、エレガントが増してのお上品さが入っての無難な仕上がりに徹した感がある。そして好感度は高い。 
 M10."The Old Country"は、なんと言っても、1985年のキース・ジャレットのライブ盤での好きな演奏を思い出すが、このマッチアンティの方はやっぱり優しく解りやすく聴かせてくれている。

 全体的には、この秋の静かな夜にほっと一日が終わってくつろいだ時の音楽として最高だと思うところ。又CDの音質は美しさも表現されていて良好だ。

(評価)

□ 選曲・編曲・演奏  88/100
□ 録音        88/100

(試聴)
まだ、このアルバムの紹介がアップされていないので・・・
参考までにこのトリオの演奏 ↓

 

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2025年11月16日 (日)

トーマス・エンコ Thomas Enhco 「Mozart Paradox 」

秋の夜長に、モーツァルトの鬼才ぶりを知る感動の一枚

<Classic, Jazz>

Thomas Enhco 「Mozart Paradox 」
Sony Music Labels / Import / SICJ-30178 / 2025

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Thomas Enhco (p)

82756821_2831588376862347w  12年前から注目しているト-マス・エンコがこの11月に来日公演がある。彼は1988年パリ生まれのクラシツク・ピアニストであり、私が知ったのはジャズ・アルバム『Jack & John』(EECD8802, 2013)であるが、トリオ演奏版だった。ここで取り上げたのは2013年ですから当時はまだ25歳ぐらいのまさに新進気鋭そのものであったが、その後も注目して来たのだが、今年はあの天才作曲家のモーツァルトに焦点を合わせたアルバムをリリースしたのだ。それも発売日ごろの今年の猛烈な酷暑には向いていなかったが、この秋の夜長になって無性に聴きたくなって聴いている次第である。
 どうも「もしモーツァルトが21世紀に甦ったら」という問いに回答した彼のソロ・ピアノによる回答でもあると言われているのだが、もともとクラシックとジャズの間を何の抵抗もなく往来して愉しませてくれる彼であるが、私はジャズの世界に興味を持ったのは、もうなんと60年も前の話になってしまうが、やはりフランスのジャック・ルーシェが、『Play Bach』シリーズでピアノ・トリオによってクラシック音楽のバッハを演じ、それを聴いて感動したのがジャズへの入り口だった。そしてそれ以降キース・ジャレット始め欧州系のピアノ・トリオを中心にジャズ愛好家として存在しているのだが、今でもクラシックをジャズ演奏してくれるものには興味がある。

 このトーマス・エンコは、これまでバッハ、シューマンやブラームスの世界を探求してきているが、最近はモーツァルトのソナタ、交響曲、弦楽四重奏、協奏曲、宗教音楽、オペラなど、クラシックでのさまざまなジャンルにおいてのモーツァルトが残した名曲をピアノ・ソロで自由自在に演奏して来ているようだ。つい三年前の2022年にダヴィッド・レスコの演出による「モーツァルト、ある特別な一日」でモーツァルト役を演じ、エンコが劇中で演奏した『レクイエム』の"ラクリモーサ"の即興演奏は大きな反響を呼んで、そんなことが今回のアルバムに通じてきたのかもしれない。いずれにしても、彼の有能なピアノの演奏で、こうしてモーツァルトの本質を聴かせてくれると思うと大歓迎なのである。。

(Tracklist)

1. 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より「序曲」
2. ナハトムジーク
3. ヴァイオリン・ソナタ ホ短調
4. アヴェ・ヴェルム・コルプス
5-6. ピアノ・ソナタ イ短調
7. 『レクイエム』より「キリエ」
8. 司祭たちのワルツ
9. ディソナンス・シンフォニー
10. 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より「お手をどうぞ」
11. 『レクイエム』より「ラクリモーサ」
12. クラリネット協奏曲

  しかし、ピアノ・トリオの響きが好きな私であるので、トリオで演奏して欲しかったと思いながら聴いてゆくと、なんとこのソロ演奏であることの素晴らしさを感ぜざるを得ないところに置かれてしまった。まさにソロであってこそのモーツァルトの世界が浮き彫りになってくるのである。

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   オープニングのM1."ドン・ジョヴァンニ"では、さっそくリズムのジャズ化とハーモニーにも工夫を加えて驚かせる
 そしてM3."ヴァイオリン・ソナタ ホ短調"M5." ピアノ・ソナタ イ短調"では、もう言葉に出ないほどの哀感の美しいピアノ旋律を聴かせる
   M10."お手をどうぞ"M11."ラクリモーサ"等を聴くに付け、彼自身の話に「3年前に舞台でモーツァルト役を演じ、彼になりきって演奏したことがきっかけになりました。"レクイエム"、"魔笛"、"ドン・ジョヴァンニ"など晩年の作品には成熟と悲しみ、そして無邪気さが共存している。それを即興で現代的に再解釈し、本質を守りつつ新しく自発的な表現に昇華したいと考えました」 とあるように、どこか無邪気な明るさがある反面、なんか深遠な人間的な世界がもの哀しく表現されているところが、見事と言いたい。

   そんなところが、モーツァルトの鬼才ぶりを彼の若さで感じつつ演じているところに一つの特徴があって、ピアノの響きにも転調などの楽しさと、一方哀しさの美しい響きが交錯してくるところが、このアルバムの素晴らしさなのかもしれない。特にやはりM11."ラクリモーサ"は素晴らしい。モーツァルトのジャズ演奏もいろいろと聴いては来たが、彼がピアノのソロ演奏での響きにもそれを表わし聴かせているところに非凡さを感ずるところである。

 秋の夜長に、一度は聴いて欲しいと思うピアノ・ソロ・ジャズ・アルバムであった。

(評価)
□ 編曲・即興・演奏   90/100 
□ 録音                      90/100

(試聴)

 

 

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2025年11月10日 (月)

松井秀太郎 SHUTARO MATSUI「FRAGMENTS」

トランペットの魅力にカルテット演奏の充実度も高い

<Contemporary Jazz>

SHUTARO MATSUI 「FRAGMENTS concert hall live 2025」
(CD)avexclassics / JPN / AVCL-84182 / 2025

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松井秀太郎 Shutaro Matsui (1,2,3,6,7: Trumpet, 4,5: Flugelhorn, 8: Piccolo Trumpet and Trumpet)
壷阪健登 Kento Tsubosaka(Piano)
小川晋平 Shimpei Ogawa(Bass)
きたいくにと Kunito Kitai(Drums)

LIVE Recording
1,4: 30 March 2025 at Sumitomolife Izumi Hall
2,3,5,6,8: 5 April 2025 at Suntory Hall Blue Rose
7: 28 March at Denki Bunka Kaikan (Nagoya) and
5 April 2025 at Suntory Hall Blue Rose

Shutaromatsuiw   このところにわかに話題をさらっている新進気鋭トランペット奏者の松井秀太郎(1999年生まれ、26歳 →)が、ライヴ・アルバム『FRAGMENTS - CONCERT HALL LIVE 2025』を10月22日に発表した。もともと管楽器奏者はあまり興味の無い私だが、あまりにも評判が良いので、とにかく聴いてみた次第である。
  そして演ずるはTrumpet, Flugelhorn,Piccolo Trumpetだ。その演奏能力も高く評価されている。そして更に曲は自らのオリジナルが主体とくるから評価も高い。

 このアルバムは今年の2月から4月にかけて開催されたツアー〈松井秀太郎 Concert Hall Live Tour 2025〉の模様を収めたもの。演奏メンバーも新カルテット(壷阪健登 (Piano 下左)、小川晋平 (Bass 下中央)、きたいくにと 下右)で、披露された曲は、松井の自作曲7曲と、サン=サーンス作曲"DANSE MACABRE"(2024年発表の前作『DANSE MACABRE』のアルバム・タイトル曲)の全8曲を収録している。

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 [注目の松井秀太郎]の紹介をネットで見ると・・・
 国立音楽大学ジャズ専修を首席で卒業。矢田部賞受賞。高校ではクラシックを専攻、日本モーツァルト青少年管弦楽団トランペット奏者として活動。大学入学を機にジャズ専修へ転向し小曽根真、エリック・ミヤシロ、奥村晶らに師事。在学中より自身のジャズコンサートや BLUE NOTE TOKYO ALL STAR JAZZ ORCHESTRA への参加等、本格的にプロ活動。
 自身のソロ公演の他、オーケストラやウインドオーケストラとのクラシックの協奏曲の共演やブラス・アンサンブルとのツアー、小曽根真No Name Horsesへの参加、米津玄師の楽曲やKing Gnuのツアー参加等、ジャンルを超えたマルチな才能で注目を集めている。
 また、テレビ朝日「題名のない音楽会」や MBS/TBS「情熱大陸」などメディアでも取り上げられ話題となっている。
 これまでに、一昨年からアルバム「STEPS OF THE BLUE」(2023年)、「DANSE MACABRE」(2024年)、「FRAGMENTS – CONCERT HALL LIVE 2025」(2025年10月)をリリース。

Discography2w 【収録曲】

01 FRAGMENTS[LIVE 2025]
02 TIGER MARCH[LIVE 2025]
03 SIGN[LIVE 2025]
04 LITTLE CRADLE SONG[LIVE 2025]
05 BEIJINHO[LIVE 2025]
06 COLOR PALETTE[LIVE 2025]
07 DANSE MACABRE[LIVE 2025]*
08 CATS' BATTLE[LIVE 2025]

Composed by Shutaro Matsui except 7
Track 7(*印) composed by Camille Saint-Saëns
arranged by Shutaro Matsu

 スタートのアルバム・タイトル曲M01." FRAGMENTS"の冒頭からトランペット・ソロで朗々と演奏して評判通りの良い響きでグッと引き寄せられるが、続いてカルテットの残る三者が突如バーンと出てきて圧巻。10分に及ぶ演奏で、ピアノとベースのユニゾンも頼もしいし、後半のトラム・ソロもパンチが効いていて、こんな調子に若さの感じられる演奏が展開する。
 このカルテットは、小曽根真が後進の育成として展開しているメンバーで、「from OZONE till Dawn」というものらしいが、なるほど小曽根のセンスを引き継いで、ジャズにアプローチしてきた若いメンバーのパワーなんだと実感する。

 オリジナル曲であるので、過去の演奏者との比較は出来ないが、どこかコンテンポラリーな因子が作用していて新鮮であり、と言って難しさを感じさせずに聴いて乗っていけるところが、味なところだ。
 M03."SIGN"では早速ピアノ・プレイの前進的ハイテンポでのトランペットと対話的展開に現代性が感じられ、一方余韻の使い方も味があり、このカルテットの技量の高さを感じさせる。又M04." LITTLE CRADLE SONG"はぐっと落ち着いた世界を描き、トランペットの音が牧歌的な世界もあって聴かせるポイントを持っている。そしてピアノは、打音も美しくメロディー・ソロが又一層美麗な世界を与えてくれる。
 味付けに、M07."DANSE MACABRE"としてサンサーンスの曲が登場するところが、いかにもクラシック畑で鍛えたパワーを見せつける。

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 松井のトランペットは、その評価の術を持ってない私だが、その軽やかさと、圧倒するパワーと、クラシック調の調べと、非常に受け入れやすいところが、やはり技術的なその高さを推測させる。
 そして見事なのは壷阪健登のピアノだ。流麗さと共にパワーがあり、そして余韻の使い方も旨い。やっぱりクラシックでたたき上げてきた基礎がこうした世界に響くのだろう。
 そしてリズム・セッションの小川晋平 のベース、きたいくにとのドラムスも彼らなりきの世界を構築しようという意志が伝わってくるところが、かなりの実力者で、この松井のトランペットをものの見事に支えている。
 日本の音楽技能を持つ若者が、ジャズと言う世界を、自由に泳ぎ回ることが出来る技術とセンスを持って迫ろうとしていることに喝采を浴びせたくなった。
 トランペットと言うとマイルス・デイヴィスとなるが、彼のスタート時の静謐で構築的なアンサンブルを志向。柔らかな音色、抑えた表現のク-ル・ジャズとは別物で、彼の末期のコンテンポラリーな世界から初期に近い頃のモード・ジャズと言われる即興の展開などをミックスした両タイプに通ずるような印象がこのカルテットにはあり、しかもそれにクラシックをも感じさせる世界が現れるのが頼もしい。これからどう発展してゆくのか、まだまだ先は十分あるので日本のジャズ界にとっても楽しみな存在だ。

(評価)
□ 演奏・曲  :       88/100
□   録音    :       88/100

(試聴)

 

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2025年11月 6日 (木)

ケイコ・リー(李 敬子) Keiko Lee 「Sings Super Standards 3」

キャリアを生かした落ち着いた重厚さで深く訴えるところが見事

<Jazz>

Keiko Lee 「Sings Super Standards 3」
Sony Music Labels / JPN / SICJ-30179 / 2025

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  ケイコ・リー(V,  p)
  野力奏一(p)、岡沢章(b)、渡嘉敷祐一(d)
  高橋佑成(p)、吉田智(g)、岡部洋一(perc)

565199383_18548836921058w  日本のジャズ界をある意味牽引するヴォーカリスト ケイコ・リー(→)が今年10月末に、ソニーミュージックよりデビューして30周年と言う事のようだ。つまり年齢も還暦あたりと思うが、まさにベテランとなった。そしてその30周年記念アルバムと言う事のようだが、過去に好評だった「sings Super Standards」シリーズ第三弾ということで、第1作(↓左)の2002年から2作(↓右)が2012年、その後の13年ぶりの今年が第3作ということとなっての登場だ。
 今回は自己のオリジナル曲も交えて、名作にアプローチしている。これには長い間の仲間が共演しての作品となっているので、取り敢えず耳を傾けてみた次第である。
 リ-は在日韓国人三世での日本育ち(1965年生まれ)であって100%日本の文化で育った人だ。そしてデビューが1995年で自己のアルバムは20枚にも及ぼうとしているようだ。又スイングジャーナル 人気投票女性ヴォーカル部門で堂々9年連続の第1位に輝くジャズ・ヴォーカリストで、これから全国ライブが始まるという話になっている。

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(Tracklist)

① Blue Skies
      Words and Music by Irving Berlin Arranged by Soichi Noriki
② Light of Love
      Words by Donny Schwekendiek Music by Keiko Lee Arranged by Keiko Lee / Soichi Noriki / Akira Okazawa / Yuichi Togashiki
③ Love Me Tender
      Words and Music by Elvis Presley / Vesa Matson Arranged by Soichi Noriki
④ Gone Too Soon
  Words by Buz Kohan Music by Larry Grossman Arranged by Soichi Noriki
⑤ Body & Soul

  Words by Edward Heyman, Robert Sour and Frank Eyton Music by John Green Arranged by Yusei Takahashi
⑥ Bridges
      Words by Fernando Brant Music by Milton Nascimento Arranged by Keiko Lee / Satoshi Yoshida / Yoichi Okabe
⑦ New York City Serenade
      Words and Music by Burt Bacharach, Carole Bayer Sager, Christopher Cross & Peter Allen Arranged by Keiko Lee / Soichi Noriki / Akira Okazawa / Yuichi Togashiki
⑧ Lush Life
     Words and Music by Billy Strayhorn Arranged by Soichi Noriki
⑨ Calling You
     Words and Music by Bob Telson Arranged by Keiko Lee / Yusei Takahashi
⑩ Hey Jude
    Words and Music by John Lennon / Paul McCartney Arranged by Keiko Lee
⑪ The Rose
    Words & Music by Amanda McBroom Arranged by Keiko Lee

 ケイコ・リーは、ヴォーカルとピアノをこなすが、バンドメンバーは、長きに交流してきた野力奏一(p)、岡沢章(b)、渡嘉敷祐一(d)のトリオとの共演で、なかなか充実の演奏が展開されている。またその他、高橋佑成(p)、吉田智(gt)、岡部洋一(perc)と共演もあり色とりどりに作られたアルバムだ。

   いっやーーなかなか貫禄のパワーのある低音のハスキー・ヴォイス、アルバム・スタートをアカペラで始め、締めをアカペラで終わるという歌唱力を前面に出している。そして全11曲中、唯一のオリジナル曲M2."Light of Love"は、"愛に生き、愛を与えよう"というメッセージをしなやかに歌ったナンバーで、今回のアルバムの一つの流れの重要な曲として収録してあるようだ。そしてそれに続いてE.プレスリーのM3."Love Me Tender"が登場、大きな編曲なしでぐっと落ち着いて歌い上げる。
 M4."Gone Too Soon"は更にゆったりと静かな歌。 
 M5."Body & Soul"M6." Bridges"は、高橋ピアノ・トリオに変わり、これも又ゆったりとこころ静かな歌をしんみりと。M6.はギターとパーカッションのみで歌う。この流れは長年歌ってきた世界。
 M7."New York City Serenade"は、再び野力のピアノで、かっての若き頃の憧れのNYを希望に満ちた感覚を歌う。
 M8." Lush Life"は、野力ピアノとのデュオでしんみりと、実力のヴォーカル。
 M9."Calling You"は、カナダの実力派ホリー・コールの十八番の歌。 高橋佑成のシンセと共に見事に編曲してリ-の歌として歌い上げる力はさすが。
 M10." Hey Jude" メンバーでの合唱入りで歌う。このアルバム製作を祝っているようだ。
 M11."The Rose" 曲もさることながら歌詞の美しさでも有名なこの曲。展望のある力のある歌でしっかりと締めくくる。最後のアカペラが印象深い。

 なかなかキャリアの感じられる濃い演奏と歌、まだまだ彼女は声量もあり訴える力も大きい。ちゃらちゃらしたところがなく、重厚に静かに深く歌い込んで見事なアルバムとして仕上がっている。

(評価)
□ 選曲・編曲・歌  88/100
□ 録音       88/100

(試聴)

 

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2025年11月 1日 (土)

アルマ・ミチッチ、エリック・アレキサンダー ALMA MICIC with E.Alexander「LILAC WINE」

既に完成したヴォーカルで編曲にも力が入って自己の世界に導く

<Jazz>

ALMA MICIC with E.Alexander「LILAC WINE」
【HYBRID CD】 Venus Records / JPN / VHGD-10023 / 2025

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アルマ・ミチッチ Alma Micic (vocals)
エリック・アレキサンダー Eric Alexander (tenor & alto saxophones)
ラレ・ミチッチ Rale Micic (guitar)
ブランダン・マッキューン Brandon McCune (piano)
アレキサンダー・クラフィ Alexander Claffy (bass)
ジェイソン・ティーマン Jason Tiemann (drums)

Recorded at Van Gelder Studio in New Jersey on April 19, 2025.
Engineered by Maureen Sickler
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Venus Hyper Magnum Sound Direct Mix

572001193_1023615w  アルマ・ミチッチの"ヘレン・メリル&クリフォード・ブラウンに捧ぐ!"と言うことでのヴォーカル・アルバムがVenus Recordから登場。彼女はセルビア出身でここ数年NYで活躍中で、昨年ここで取り上げたアルバム『You're My Thrill』(VHGD-10013,2024)で話題になった。知らなかったが、なんとヘレン・メリルってクロアチア出身なんですね、ということは元々は同じ国同士(旧ユーゴ)という関係だったという事だ。そんなことからおそらくミチッチにとっては、メリルは憧れのジャズ・ヴォーカリストという事なんだと思う。

 彼女に関しては、前記事(2024年11月10日)を見て欲しいが、今回はエリック・アレキサンダーとの共演が更に色濃くなってのTSとのクインテットとの共演( ジャズ界で有名なVan Gelder Studioにて録音)ということが話題という処か。その点は私はちょっと腰が引けるところだが、収録曲はヘレンも得意であったバラード系の曲が中心になっていて、その点は救いである。

(Tracklist)

1.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ You’d Be So Nice to Come Home To (Cole Porter) 5:11
2.ライラック・ワイン Lilac Wine (James Shelton) 4:35
3.オール・オブ・ミー All of Me (Marks/Simons) 4:34
4.カムズ・ラブ Comes Love (Stept/Brown/Tobias) 4:21
5.アイ・ハブント・ガット・エニシング・ベター・トゥー・ドゥ I Haven’t Got Anything Better To Do (Vance/Pockriss) 6:47
6.野生の息吹 Wild is the wind (Tiomkin/Washington) 5:25
7.ラバー・マン Lover man (Jimmy Davis) 4:18
8.夜も昼も Night and Day (Cole Porter) 4:06
9.ス・ワンダフル ’S Wonderful (George Gershwin / Ira Gershwin) 2:46
10.マスカレード・イズ・オーバー Masquerade is Over ( Wrubel / Magdison ) 4:27

  メリルの十八番であるCole Porterの有名曲M1."You’d Be So Nice to Come Home To"からスタート。この曲彼女の伴侶であるラレ・ミチッチのギターから始まって、時代の違いがそのまま現れ、そして歌はスキャットを使ったメリルとは異なった世界の曲を構築している。そしてエリック・アレキサンダーのサックスはおもむろに後半に登場して更にジャズ色を深め最後にアルマ・ミチッチの歌い上げるところで終わる。

 M2."Lilac Wine"は、アルバム・タイトル曲で、私の注目曲。多くが歌う曲だが、私はエリザベス女王のお気に入りのジョージア出身のKatie Meluaやアイルランド出身のImelda Mayなどのどちらかというとポピュラー系、ロック系の歌手の歌が印象深い。失恋曲であるだけに、しっとりと歌い上げるところが注目。彼女もギター・ムードとサックスの支えでなかなか旨く哀感たっぷりに仕上げている。

571197814_102361524790w  M3."All of Me "のジャジーなリズムカル展開は解るが、やはりM1.M2.では、おとなしかったTSがかなり前面に出てきて、ヴォーカル・アルバムといえども、演奏陣も対等に曲を演ずるのは悪いことでは無いが、ちょっとうるさい感じだ。
 M4."Comes Love "は、ギター、ベース、ドラムスがリズムをユニゾンで刻む楽しさでジャジーにヴォーカルと競う。
 M6."Wild is the wind" 静かなギターの導入で、しっとりと歌い上げて聴き入ってしまう。ピアノの響きも情感たっぷり。そして次第に情熱的な歌に変化、私はこのアルバムでは一押しだ。TSがあまり力まないのが良かったのかも。
 M9."’S Wonderful "フェイクを効かせて、かなり変化した曲仕上げ、そしてアップテンポでジャズの楽しみと言えばそうとも言えるが。
 M10."Masquerade is Over "前曲とガラッと変わってピアノのみの伴奏で静かに説得力ある歌。このあたりが私は楽しめる。

 まあ、ジャズに何を求めるかであるが、彼女ぐらいになるとしっとり歌い込む実力があって、澄んだ声と声量とでなんでもこなしそうだ。アップテンポの曲もあるが、それを生かしたバラード曲の対比が効果があり、その点が私にとっては良かった思うところだ。もともとTSはうるさいと感ずることが多い私であるので、今回もエリック・アレキサンダーとの共演自体、私は疑問であったのだが、まあ彼女にとっては恩人だからそれはそれとして聴いておこうと思うところ。そのあたりは好みとしてそれぞれが楽しめば良いことである。

(評価)
□ 編曲・歌・演奏 : 88/100
□ 録音        : 87/100
(試聴)

 

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