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2025年1月28日 (火)

デヴィット・キルモア David Gilmour 「MADISON SQUARE GARDEN 2024」

相変わらずのアメリカン・ミュージック・ショー化

<Progressive Rock, Popular>

David Gilmour 「MADISON SQUARE GARDEN 2024」
Madison Aquare Garden, New York, NY, USA 10th November 2024
DVD / Amity 795 / COLOUR NTSC Approx.164min / 2024

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 これは、デヴィット・ギルモアの昨年末のMadison Square Gardenのライブ映像版。

 歴代60年代ロックのミュージシャンも、なんと80歳前後という歳を迎えている。そんな中でもかって3大プログレッシブ・ロック・グループと言われたキング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエスは、それぞれ様々なスタイルではあるが、現在も第一線にあるというのは驚きである。それには、彼らがロックというジャンルにおいても、当時プログレッシブ(進歩する、前進する)と言われた因子をはらみつつ、リスナーの心を捉えてきたということに尽きると思うが、今日の活動を見ても第一線にそれなりの力を発揮している事には驚きと言っていいのだろう。

 さてそのピンク・フロイドだが、結成当時からのロジャー・ウォーターズ(↓上)は、今年82歳になるが、現在はソロ・アーティストとして'23年までも大々的世界ツアー(『「THIS IS NOT A DRILL 」ツアー』)を敢行し、ピンク・フロイド時代の彼の曲やソロ時代になつての曲を展開して反戦・反核のアジテーションをも行って社会的・音楽的話題を残してる。そしてその上にアルバム『The Dark Side of The Moon Redux』をリリース、若き50年前から今の姿を見直している。又ニック・メイスン(↓下)も81歳で、2023年から今年にかけて新グループを結成し『 saucerful of secrets tour 』を展開、懐かしのピンク・フロイドの原点に近いアルバムからの曲群で好評を得ている。

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Roger Waters「This is not a Drill Tour」
  

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Nick Mason「saucerful of secrets tour」


 一方メンバーの少々若いデヴィット・ギルモアは今年79歳になるところだが、昨年ソロアルバム『LUCK AND STRANGE(邂逅)』リリースし、その後のローマ・ロンドン・北米ツアー『LUCK AND STRANGE Tour』を行った。それがここで取り上げたこのブートで映像盤である。 私から見ると三者ともかってのピンク・フロイド時代の曲も多くを演じているが、全く印象の違う世界を醸し出しているのが面白い。まあ、それだけ個性があるということにもなって、それはそれ悪いことではない。

 ギルモアの昨年9月上旬ローマから始まったツアーのファイナルとなる北米ツアーの11月10日のニューヨークは Madison Square Gardenに於けるライブの全記録だ。残念ながらプロショットではない。しかしマルチ・カメラ仕様となるハイクオリティー・オーディエンス映像にて2時間44分にわたりフル収録している。これはWEB上にアップされた映像を元に、海外ファンの複数のアングル映像を最新機器を用いてマルチ化しプロショットに近いモノに仕上げたもので、アリーナ至近距離からのカメラやステージ全体を体感できるスタンド席カメラ、さらに他にも多彩なアングルを納めている。そしておまけにイメージ映像も挿入されており、黒猫や時計、太陽など、曲のイメージに沿った映像が差し込まれ、時には参加メンバーの写真やギルモアのオフショットまで登場する結構凝った編集だ。音声パートもバラバラの映像からの音源をバランス調整も施し違和感なくライブ全編を再現している。まあオーディエンスによる映像モノとしてはなかなか上出来の部類に属するものだ。

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David Gilmour 「LUCK AND STRANGE Tour」

(LUCK AND STRANGE Tour-Tracklist)
(Disc 1) : 1. Guy Pratt Intro 2. 5 A.M. 3. Black Cat 4. Luck And Strange 5. Speak To Me 6. Breathe 7. Time 8. Breathe (reprise) 9. Fat Old Sun 10. Marooned 11. A Single Spark 12. Wish You Were Here 13. Band Introductions 14. Vita Brevis 15. Between Two Points 16. High Hopes
(Disc 2) : 1. Sorrow 2. The Piper's Call 3. A Great Day For Freedom(『The Division Bell』) 4. In Any Tongue 5. Band Crew Introductions 6. The Great Gig In The Sky 7. A Boat Lies Waiting 8. MC 9. Coming Back To Life 10. MC (dedicated to Polly Samson) 11. Dark and Velvet Nights 12. Sings 13. Scattered 14.Comfortably Numb
-Bonus Footage- 15. Luck and Strange

 内容は上記の通りで、古き良き時代のピンク・フロイドの『狂気』を中心とした曲群に、ロジャー・ウォーターズの脱退後のギルモア主導型の時代の曲を交えて、今回の彼のソロ・アルバム『邂逅』から全曲披露している。所謂、1950年代ロック・ミュージックはエレクトリック・ギターのサウンドが一つのポピュラー界にインパクトを与えた重要な因子であって、プレスリーから始まってビートルズもエレキを抱えて若者にアッピールした。1960年代になっての3大プログレ・バンドもそのギター・サウンドはロック・ミュージックの中心サウンドは変わりなく、キーボードが加わって特殊な世界をも構築した。そんなところで、ピンク・フロイドに於いてもシド・バレットのバンド離脱後のウォーターズの構想に乗ってのギルモア加入、そしてギルモア・ギター・サウンドは大きな役割を果たした。

 従って、ピンク・フロイドの1970年代の大成功で、ギルモアのギター・サウンドを愛する者も多く今日まで来ていて、今回のアルバムそしてツアーによるライブはそれなりに大成功している。そしてアルバム『飛翔』と『邂逅』からのソロと、フロイド・ナンバーがちょうど半々づつというバランスの良い構成で、ちなみに『邂逅』からはやはりタイトル・ナンバーを含み計9曲を披露(ここには、娘と息子の二人も参加)。フロイド・ナンバーとしては、今回は定番ばかりでなく、70年代の「Breathe (In The Air)」や、90年代の彼の時代になってのアルバム『対』よりの「A Great Day For Freedom」「Marooned」などの4曲もセットインしているのが一応の注目点。加えてツアー・メンバーとして参加しているギルモアの娘ロマニー・ギルモアも、「Vita Brevis」「Between Two Points」でボーカルやハープを披露したりと、所謂、ロック・コンセプトの流れる社会派ウォーターズのライブのような緊迫感と世界の暗部に迫るソロ・ツアーとは違い、若干お祭り的ビック・ショーに終わらせている。そしてやはり観衆は昔のピンク・フロイドが聴きたいので、79年のウォーターズの自伝とアーティストの狂気を描いた『ザ・ウォール』からの「 Comfortably Numb」などが一番盛り上がっていて、今回のアルバムからの曲は静かに聴いている。

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 こうして、ギルモアのライブ・ステージを観ていても、やはり全盛期からもう数十年経ったピンク・フロイドの人気は衰えず、ギルモア・ギター・ファンは現在も健在だ。しかし華々しい中にアメリカ的ミュージック・ショー因子が強いのは、ギルモアのアルバムにおける曲作りに大きな役割を果たしている女房のポリー・サムソンの影響が大きい事は理解しているが(テーマは「老化と死」にあると言うが)、しかしやはりロック愛好家として若干空しくなったのは、歳はとったとはいえ、かってのロックの根底に流れる時代を見つめ、社会というものに対してのコンセプトを持って、そして問題意識を持ち、訴えて、そして大衆に主張してゆく事の価値感が薄れていることは残念である。かってウォーターズが描いたアルバム『狂気』の曲「Money」、『炎』の「Welcome To The Machine」で描いた恐ろしい現実、レコードの売り上げやソーシャルメディアでの成功を求める業界やのアーティストの欲望によって音楽の姿がしばしば変わる時代に警告を発していたが、ギルモアはむしろウォーターズに言わせると"お人好し的人間"であるだけに、なんとなくそんな世界に流されていないだろうかと・・・もう80歳になろうとしている人間に言うことでもないが、ちょっと頭によぎるものがあるのだ。

 

Fozzn84xsae7176  ウォーターズにおいては、むしろ偏屈とも言われる一貫している思想として、父親の戦死のトラウマと人生経験から流れる「いかなるものであれ、戦争で人が死ぬことは絶対悪」とすることに基ずくものから派生した「社会への批判と要求」は確固としているものがあり、そしてもともとピンク・フロイドというバンド自身が、シド・バレットの脱落後において、創造的才能creative GeniusとかBrain頭脳と言われるロジャー・ウォーターズが果たした役割により最盛期を創り上げてきた。その結果アルバムにはそのような核が存在していた。つまり60-70年代のロック・グループ・メンバーのロック・アルバムやロック・ショーと言うモノは、問題意識や形はいろいろであっても、そうしたものが存在していたのだ。そしてその結果、それが無いとどこか虚しさが感じてしまうところがあるのである。ジョン・レノンの居ないビートルズの寂しさを見てもわかる。やはりそうした根底にあるものの重要性は、特にロックにおいては、時代によって質の変化は当然しつつも、演ずる音楽を倍増するエネルギーとして大きく左右してきたし、これからもするであろう事は間違いない処と思う。

 今、かってのピンク・フロイドの三人が、それぞれの道で三人三様に活躍しているのを見ると、まあ、人間は多くの経験と歩んできた社会や人間関係によってそれぞれが個性ある人生を築いている訳で、今この三人でピンク・フロイドを再結成ということを期待しても、それにはあまりにも非現実的であると思うが、強力なプロデューサーによって、ただそのバチバチした対立と共存で各々の優れたところを凝集出来、アルバムが作られるなんて事があったとしたら、それはそれ恐ろしいロック・アルバムが作られるのではないかと、こうしたライブ・アルバムを見るにつけ、とんでもない幻想(?)を抱いてしまうというのは、シド・バレット時代からピンク・フロイドを愛してきた人間の哀しき性(さが)であるのだ。

(評価)
□ 曲・演奏      :   88/100
□   画像・録音 : 80/100

(参考視聴)

 *

 

 

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2025年1月23日 (木)

ジョ-・ハロップ Jo Harrop 「The Path of A Tear」

中低音域に魅力のあるソフトなヴォーカルが魅力

<Jazz>

Jo Harrop 「The Path of A Tear」
Lateralize Records / Import /  LR020 /2024

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Jo Harrop: Vocals
Anthony Wilson: Guitar
Jim Cox: Rhodes piano, Hammond B-3 Organ
David Piltch: Bass
Larry Klein: Bass
Victor Indrizzo: Drums

Tracking and Mixing Engineer – Adam “Atom” Greenspan
Producer – Larry Klein
Mastering - Bernie Grundman

464345489_183657372w  英国ダーラム生まれの女性ジャズ・シンガー、SSWのジョー・ハロップJo Harrop(→)のアルバム、私にとっては初物である。2018年に設立されたレーベル、ラテラライズ(Lateralize Recordsは、新進気鋭のアーティストや定評のあるアーティストの為に設立され、アーティストのクリエイティブな側面に協力)からリリースした彼女の5枚目(下記参照)。2023年9月にロサンゼルスのヴィレッジ・スタジオで録音され、評価の高いラリー・クラインLarry Klein(ジョニ・ミッチェル、マドレーヌ・ペイルー、ハービー・ハンコックなどのアルバム制作)(右下)がプロデュースした。そしてこのアルバムは、70年代半ばのソウルに想いを馳せて、ジャズの味わいを伴ってアメリカの文化や歴史を感じさせる作品との評価だ。

Maxresdefaultw_20250122105601  「ジョーは天賦の才能です」とラリー・クラインは説明していて、更に「彼女の歌と作詞作曲は、彼女の心から直接来ています。このような正直さが、私が芸術において最も魅力的である理由です。初めて彼女の歌を聴いたとき、ジョーの歌声でそれを聞いた。カフカは"芸術は私たちの中にある凍った海の斧である"と言いました。私たちは皆、人間の状態を構成する自分自身の要素に麻痺し、芸術における誠実さは私たちを心と再び結びつけます。このアルバムでは、曲やジョーの声に込められた正直さにつながり続けること、つまり本能的な場所から仕事をすることが、私たちを導いてくれたのです」と紹介している。

 ジョー・ハロップは、ブリティッシュ・ジャズ界で最も個性的なSSWの一人と言われている。ニール・ダイアモンド、ロッド・スチュワート、グロリア・ゲイナーらのバック・シンガーとして活動した後、一本立ち。2020年にこのLateralize Revordsと契約以降着実なペースでジャズ・ヴォーカル・アルバムをリリース、今や看板ミュージシャン。最近、ニューヨークのDizzy's Club(Jazz at Lincoln Center)やサンフランシスコのThe SFJAZZ Centerなど、最も権威のある会場での一連のショーでアメリカデビューを果たした。

 Jo Harropには、以下のアルバム作品がある

Songs For The Late Hours(2019年)
Weathering The Storm(2020年)
The Heart Wants(2021年)
When Winter Turns To Spring(2022年)
The Path Of A Tear(2024年)

 そして本作のバック・バンドは、ラリー・クラインはベースもプレイ。その他、ダイアナ・クラールやマデリン・ペルーとの共演のアンソニー・ウィルソン(ギター, 下左)、多岐にわたるミュージシャンと幅広く関わっているヴィクター・インドリッツォ(ドラム, 下中央)、レナード・コーエンやB.B.キング、ジェイムス・テイラー、エルトン・ジョンなど、多くをバックアップしてきたジム・コックス(ピアノ、オルガン, 下右)らが参加している

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(Tracklist)

01.Beautiful Fools
02.Whisky or the Truth
03.A Love Like This
04.Traveling Light (レナード・コーエンのカバー)
05.The Path of a Tear
06.You'll never be Lonely in Soho
07.If it Wasn't for Bad (レオン・ラッセルのカバー)
08.Too Close to the Sun
09.Hurt
10.Goodbye (スティーヴ・アールのカバー)
11.Stay Here Tonight (ボーナストラック)

 女性ヴォーカルものは、曲の演奏・歌唱法なども重要だが、まずはその歌声の質に魅力を感ずるかどうかが大きく評価を左右する。そこは聴く者の好みという最も難しい問題点があるのだが、彼女の場合は、中低音域が勝負どころであることと、ややハスキーなところが注目点で、それが受け入れられないと、おそらく評価は低くなるかもしれない。つまり女性は高音域の美しさが魅力とされるところが一般的であって、このハロップの勝負どころと違うところが気になる。私の場合はソフトな彼女のヴォーカルをむしろ歓迎したところにあって、ここに取り上げた訳である。

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 曲調は、ジャジーであると同時にソウルの雰囲気で、アメリカ文化の味を絶妙に描いての包容力あるスモーキーな声が流れる。
 曲目は上のリストのように、レナード・コーエンのM04."Traveling Light"、スティーヴ・アールのM10."Goodbye"、エルトン・ジョン&レオン・ラッセルのM07"If it Wasn't for Bad"の3曲がカヴァー曲。ぐっと落ち着いた静かで真正面からのアプローチだ。
 残る8曲は、彼女のオレジナル曲だが、どうもこのアルバムは、前作『The Heart Wants』のテーマが"愛と人生"という希望に満ちていたとすると、今回は哀愁の"愛の痛み"がテーマのようだ。
 
 M01."Beautiful Fools" ソウルフルで深みのある低音の生きたヴォーカルがゆったりと迫ってくる。バックのギター、オルガンが美しくサポート。この物語の始まりが歌い上げられる。
 M05."The Path of a Tear"  哀しく歌い上げるようなギターの調べをバックに、頬に流れる涙の道の哀愁ある歌を聴かせる。どこでもある愛の浮き沈みの物語だが、M02."Whisky or the Truth"M06."You'll never be Lonely in Soho"に聴かれるように、決してネガティブや孤独だけで終わっておらず、どんな場面でも彼女の声は美しくマイルドな聴き心地の良さを醸し出している。
 そしてM10."Goodbye "の穏やかな終焉を描き、M11."Stay Here Tonight"の現実を展望に結び付けてアルバムを閉めている。

 彼女の声はややハスキーでありながら美しい優しい聴き心地の良い世界を醸し出している。傷ついたことを歌っているときでさえその印象は変えないのも一つの世界観だろう。テーマは女性ものに多いありきたりの感もあるが、かっての先輩ミュージシャンへの心と感謝の感じられるところと合わせて自分の現実を歌い上げたなかなか良質盤と言いたい。

(評価)
□ 曲・歌   88/100
□ 録音    88/100
(試聴)

 *

 

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2025年1月18日 (土)

アリ・ホーニグ Ari Hoenig Trio 「 Tea For Three」

異色の革新的メロディック・ドラマーのリーダー・ピアノ・トリオ作品

<Contemporary Jazz>

Ari Hoenig Trio 「 Tea For Three」
Fresh Sound New Talent / Import / FSNT691 / 2024

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Ari Hoenig (drums,vocals only on #11)
Gadi Lehavi (piano)
Ben Tiberio (bass)

Recorded at Big Orange Sheep Studios, Brooklyn, New York, on July 28, 2023

1900x1900000000w_20250113191201   まさに現代ジャズの最前線で活躍を続けるNYの人気ドラマー、アリ・ホーニグ(→)のリダー・アルバム。2021年録音『Golden Treasures』(FSNT 637)に引き続きイスラエルの新鋭ピアニストGadi Lehavi(P.  下左)とBen Tiberio(B.下右)と組んだトリオによる2023年録音作品だ。
 アリ・ホーニグによるコメントでは、「同じメンバーで2枚続けて録音するのは初めてだ。 その理由は聴いていただければわかると思う。 このグループは成長し続け、一緒に演奏するたびに新しい音楽の道を提供してくれる。 ガディ・レハヴィとベン・ティベリオの創造性、音楽性、友情に感謝したい」と、彼の現代的なコンテンポラリー世界の心をくすぐるのだろう。

 アリ・ホーニグは、1973年生まれのアメリカ・フィラデルフィア出身のジャズドラマー。音楽一家に育ち、父親は指揮者でクラシック歌手、母親はバイオリニスト兼ピアニストという環境で、幼少期から音楽に親しんできたた。6歳でバイオリンとピアノを始め、12歳でドラムに転向し、14歳の頃には地元のクラブで演奏経験を積む。大学では音楽を専攻し、ノース・テキサス大学やウィリアム・パターソン大学で学ぶ。その後、ニューヨークに拠点を移し、マイク・スターン、リチャード・ボナ、パット・マルティーノなどの著名なミュージシャンと共演を重ね、ニューヨークのジャズシーンで頭角を現した。初リ-ダ-作は、1999年の『Time Travels』で14枚のCDを録音、作曲、制作。
  彼のドラムスの演奏スタイルは、異色の革新的メロディックな表現が特徴的で、ドラムスティック、マレット、さらには手や肘などを使用してドラムのピッチを変更するユニークな能力での独自の技術が魅力的て、メロディーまでも演じてしまう。また、複雑なリズムで、高度なコンビネーションを展開して、なんと言っても感情を描くプレイで聴衆を魅了する。ニューヨーク大学とニューヨークのニュースクールで現在も教鞭をもとっている。

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(Tracklist)

1. Condemnation (Hoenig-Schwartz-Bart) 6:28
2. Hold Up A Minute (Ari Hoenig) 6:56
3. Nominor (Ari Hoenig) 6:17
4. Alone (Ari Hoenig) 4:26
5. You Stepped Out of A Dream (Brown-Kahn) 5:45
6. Theo’s Groove (Ari Hoenig) 7:08
7. Irish Golem (Ari Hoenig) 6:09
8. Tea for Two (Youmans-Caesar) 5:56
9. Fatti Mi Me (Ari Hoenig) 4:13
10. Work Song (Adderley-Brown) 4:32
11. For Tracy (Ari Hoenig) 2:58

 M1."Condemnation " ベースとドラムスで重厚にスタートして、前半から速攻でスピーディなピアノと三者がスリリングなバトルを演じて興味を誘導。
 M2."Hold Up A Minute "リズムカルなドラムスから展開のコンテンポラリーな世界。
 M3."Nominor "ぐっと落ち着いたベースが印象的にスータートし、次第にドラムスが曲を弾ませ、ピアノは美しく流れる。そしてM4."Alone "に至って、ゆったりと深く落ち着いた物思いの世界が印象的。
 M5."You Stepped Out of A Dream"M6."Theo’s Groove" は、彼らの超越したセンスと技能力の凝集した曲
 M7." Irish Golem " 美しくしっとり聴かせる。ピアノの美しい旋律と繊細なシンバルやブラシングの音、支えるベースが心に響く。
 M8."Tea for Two" アルバム・タイトルへ結びつく曲の登場、ここまでドラムスが激しくリズム変化すると彼らのオリジナル曲に聴こえるが、しっかりメロディは織り込んでいる。
 M10."Work Song " ドラムスのリズム取りが自在に変化し訴えてくる。
 M11."For Tracy " 驚きのホーニグのヴォーカルで、むしろ感謝を表したような曲。

 中身は、ホーニグのオジナル曲中心だが、スタンダードのM5."You Stepped Out of A Dream"、M8."Tea for Two"、M10."Work Song"などをカバーする。しかしこのカバーは、原曲の世界をはるかに超えてドラムスが躍動的な世界や情景をも描き、ピアノ、ベースと共に独特な世界に導いている。
 とにかくトリオ3人が互いに感ずる中に刺激し合いながらの強靭なリズム、スピード感溢れたスリリングな展開、緩急自在の流れの中で、自然発生型のインプロヴィゼイションが入り乱れるNY流コンテンポラリー・ピアノ・トリオ作品、まさに次世代を感じさせるところがお見事。

(評価)
□ 曲・編曲・演奏  90/100
□ 録音       87/100
(試聴) "condemnation"

 

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2025年1月12日 (日)

ヤコブ・カールソン Jacob Karlzon 「Winter Stories」

北欧の厳しく長い冬に生きる人間をクリスタル音で描くピアノ・ソロ作品

<Jazz, Classic>

Jacob Karlzon 「Winter Stories」
Warner / Import / 1008937701 / 2024

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Jacob Karlzon : piano

Jacob_karlzon_2014w  かってここで2011年のコンテンポラリー抒情派モード・ジャズとしてアルバム『THE BIG PICTURE』(STUM23011)を取り上げたスウェーデン出身のジャズ・ピアニスト/作曲家、ヤコブ・カールソン(1970年 - )(→)の2024年新作である。あのアルバムでは、カールソンはアコースティック・ピアノを中心に、エレクトリック・ピアノ、オルガン、プログラミングなどを使用したトリオ作品であった。それは彼はもともとジャズだけでなく、クラシックやスカンジナビアの伝統ミュージックやファンク、ドゥーム・メタルなど、さまざまな音楽スタイルを融合させ、彼自身の独創的なスタイルを生み出しているContemporary Jazzと言ってよいのだが、しかし今回は、ちょっと違って、彼が北欧の長く暗い冬から生まれた静かで内省的、叙情的な世界をクラシック調に描いたウインター・アルバム『WINTER STORIES』を完成。ソロ・ピアノ作品である。

 彼は1992年のデビュー以来、地元スウェーデンのジャンゴドール賞をはじめ、数々の国際的な賞賛を受けてきている。話題の文豪トルストイの玄孫である歌手ヴィクトリア・トルストイとのコラボ・アルバム『Moment of Now』(ACT/2013)や2022年のピアノ・トリオ・アルバム『Wanderlust』などジャンルの広い作品をリリースしてきた。そして今回は又新たなる世界観を感ずるJazzとClassicの統合されたアルバムの登場だ。

(Tracklist)

01.Evermore (Taylor Swift)
02.Winterballad (Jacob Karlzon)
03.The First Noel (Traditional)
04.God Rest Ye Merry Gentlemen (Traditional)
05.Gläns över sjö och strand (Shine Over Lakes and Shores) (Alice Tegnér)
06.A Child Is Born (Thad Jones)
07.Så mörk är natten i midvintertid (The Night Is Dark)( Carl Bertil Agnestig)
08.O Come, O Come, Emmanuel (Traditional)
09.Suantrai (Traditional)
10.När det lider mot jul (When Christmas Is Coming) ( Ruben Liljefors)
11.Bel Veter Due (Traditional)
12.Taladh Chriosta (Christ's Lullaby) (Traditional)
13.Silent Night (Franz Xaver Gruber)

 上のリストのように、このアルバムはM13."Silent Night "やブルガリアの M11."Bel Veter Due "、そして聴き慣れたM03."The First Noel"など、冬やクリスマス・シーズンを頭に描く曲やトラディショナルの曲が登場するが、「このアルバムでは、よくあるクリスマス・アルバムではなく、より冬という季節を全面に出した感じでバランスを取りたかったんだ」と彼は本作について語っているようだ。つまり 所謂クリスマス・アルバムという感覚でなく、カールソンの冬の厳しさの世界を、単に暗いものとして描くのでなく、そこに人間的なプラス思考の生き様を描いているオリジナルM02."Winterballad"を登場させ、さらにちょっと意外や意外のテイラー・スウィフトのちょっと哀しいバラード のカヴァーなど、冬を描いたり冬を想わせる曲によって「北欧の厳しさの中の人間的な冬」を描きたかったということなんだろうと想像する。

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 そしてなんと言っても彼の特徴である独創的なスタイルでのContemporaryな曲仕上げでなく、極めて素直な自然主義的世界をむしろクラシックの演奏で構築していることだ。本作でカールソンは自身の世界観を持つ中でスタンウェイDグランド・ピアノを駆使してスカンジナビアの冬の厳しい寒さを見事に表現し、そのクラシック調の演奏で真摯な姿でアプローチをして、厳しき中でたくましく暮らす人間の寂しさや夢、瞑想、喜びなどに満ちたこの人間の感情の流れの冬を自然界の季節感を持って描いている。
 M7.は、スウェーデンの作曲家カール・ベルティル・アグネスティグの"The Night Is Dark (Så mörk är natten i midvintertid)"。カールソン曰く、この曲はクリスマスと長い冬の季節の始まりを記念する聖ルチア祭に演奏される伝統的なスタンダード曲であるという。これによって冬という季節を全面に出した感じでバランスを取ったと言う彼の目論見は成功している。つまり私の推しとして冒頭のテイラー・スウィフトのM01."Evermore"が良いですね、これからスタートして、最後はM13."Silent Night"(きよしこの夜)でまとめ上げるところがにくいというところ。

(評価)
□ 選曲・演奏    90/100
□ 録音       88/100

(試聴)

 

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2025年1月 8日 (水)

ミンモ・カンパナーレ Mimmo Campanale Trio 「#Collaborations One」

優雅、叙情性をもって回顧と感謝の心を演ずる

<Jazz>

Mimmo Campanale Trio 「#Collaborations One」
ABEAT FOR JAZZ / Import / ABJZ277 / 2024

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Mimmo Campanale - drums
Domenico Cartago - pano
Camillo Pace - double bass

Recorded, mixed and mastered at Mast Studio, Bari Italy, on January 4, 2024 by Massimo Stano

306007130_6225787w   イタリア、プーリャ州出身の偉大なドラマーと言われるミンモ・カンパナーレ(1963-)が、やはりイタリアの新鋭ドメニコ ・カルタゴのピアノと実力派カミロ・ペースのベースとで組んでのユーロ・ピアノ・トリオ作品。
 そして演ずる曲群は、ニコ・ストゥファーノからヴィト・ディ・モドゥーニョ、マウリツィオ・クインタヴァッレそしてグイド・ディ・レオーネ、故ダヴィデ・サントルソラまで、カンパナーレ自身が過去にトリオなどを組んで共演したイタリアのミュージシャン達の作品から集められたものだという。従ってそこには、それぞれの曲に何らかの思入れがあっての事で、このアルバム全体が彼の回顧と同時に感謝の気持ちも込められての演奏になっているようだ。そしてその結果、優雅さ、叙情性の溢れた作品が生まれることになった。

 ミンモ・カンパナーレMimmo Campanale(1963- ↗)は、プーリャに生まれ、独学でジャズとポップミュージックの分野で数多くの経験を積み、1984年以降、好みの分野はジャズに落ち着いた。そして1985年シャゼリー・グループ結成(アルバム2枚)、1986年マリオ・ロッシーニ・トリオ、1987年マウリツィオ・クインタヴァッレと共にトリオ(アルバム5枚)。更に2000年コン・アルマ・トリオ(アルバム2枚)。その後ソウル/ファンクグループ「ディロッタ・ス・キューバ」、LmGカルテットなどを経て、更に2枚のアルバム作成。又多くのミュージシャンと共演し、一方ポップミュージック交響楽団とも共演。彼は「DrumStory」を作成、100年にわたるドラムを1つの長いソロに収めるという業績もある。
Cartagohomew  ドメニコ・カルタゴDomenico Cartago (1981- →)は、トラーニ出身の新鋭ピアニスト、作曲家、編曲家 。
独学の一歩から、12歳で巨匠ダヴィデ・サントルソラの下でジャズピアノを学ぶ。2010年にバーリ音楽院を「ジャズ音楽」で優等で卒業し、2013年には巨匠アントニオ・ザンブリーニにピアノを学び、「ジャズピアノのスペシャリストディグリー」を取得。一方、音楽院での研究と同時に、彼は Ba.Si を含む数多くのセミナーに参加、国際的ピアニストと共に学んだ。その後多くの国際的アーティストと共演し、2015年初リーダー・トリオ・アルバム『Skylark』をリリース。その後『Chromos』(2017)、『No Gravity』(2019)をリリースしている。

Images2w_20250107170401  カミッロ・パーチェCamillo Pace(1978年- →)は、ターラント生まれのコントラバス奏者、作曲家、ソングライター。モノポリの「ニーノ・ロータ」音楽院で学び、バーリの「ニッコロ・ピッチーニ」音楽院では歴史音楽学を専攻し、ジャズ音楽の分野の大学院卒業レベルを終了。バロックからクラシック、そして民族音楽の研究に努め、アフリカ諸国、ケニア、南アフリカなどの研究を行い、「アフリカの伝統音楽」論文の貴重な成果を残している。そして様々な古典的なオーケストラとも共演。
 2007年には最初のアルバム『Introspezione d'un viaggio』を発売。そして彼の音楽キャリアは、ジャズからポップス、フォークの音楽まで、さまざまな形で活躍いる。なんとカンタウトーレとしても『Autoritratto』(2013)、『Credo nei racconti』(2017)とアルバムを発表している。

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1. Gilda (Vito Di Modugno)
2. Aria (Domenico Cartago)
3. Seven steps to your soul (Maurizio Quintavalle)
4. Saudade a Salice (Guido Di Leone)
5. 1980 (Domenico Campanale)
6. Parenthesis #2 (Davide Santorsola)
7. Forever (Nico Stufano)
8. Acustronica (Domenico Campanale)
9. Notte stellata (Camillo Pace)
10. … to be continued! (Domenico Campanale)

 とにかく、優しく、美しく、抒情性豊かな聴きやすい曲群が登場する。ドラマーのリーダー・アルバムでしあるが、彼のドラムスが中心と言う曲造りでなく、あくまでもピアノ・トリオのパターンで演奏している。それぞれの曲は長い傾向があって(6曲が5分以上)じっくり演奏型。

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  M1."Gilda"美しいピアノのメロディーでスタート、中。後半のトリオのジャジーなアンサンブルの盛り上がりが聴きどころ
  M2."Aria "これもゆったりと美しいピアノ、ベースが落ち着いた世界を描く
  M3." Seven steps to your soul "ベースのリードで弾むように軽快
  M4."Saudade a Salice "パリ出身ジャズの王道ギタリストのGuido Di Leone(1964-)の曲、優しく、しっとりと美しいピアノのメロディー、リズムカルなステシック音とベースの描く物語、このアルバムを表すような優美でフレンドリーな演奏
  M5."1980 "どこか不思議な世界に誘導されるピアノのメロデーとシンバルの響き、それを支えるベース。ぐっと深遠。
  M6."Parenthesis"ドラムスの繊細な音と初めてドラムス・ソロが登場して印象深く、不思議なユーロ・ジャズ。
  M7."Forever"トリオで描く静かな世界。M8." Acustronica "まさに音響光学。
  M9."Notte stellata"感謝の心が響く。これがこのアルバムの締めの曲なんだろうが、驚きは一転してのM10."… to be continued!" これは次のアルバム「#Collaborations Two」に続くアナウンスか?。

 なかなかイタリアらしい歌心と言うかメロディーを聴かせる曲が多く、全体に優美で気持ちよく聴ける世界だ。まさに真摯な姿が描かれていて彼の「感謝の気持ちを表したかった」という言葉どおりの気持ちの良いアルバム。そして聴き応え十分な評価が出来る作品集。

(評価)
□ 選曲・演奏 :   90/100
□   録音    :   88/100
(試聴)

 

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2025年1月 3日 (金)

<謹賀新年2025> ラース・ダニエルソン Lars Danielsson, V.Pohjola , J.Parricelli 「TRIO」

Dsc06506tr1fw    明けましておめでとうございます
    今年もよろしくお願いします

       
       新年早々ですので、昨年末リリースの新年向きのベスト
  と思われるアルバムを取り上げます

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フランス有数のワイナリーで録音された牧歌的世界

<Jazz>

Lars Danielsson, Verneri Pohjola , John Parricelli 「TRIO」
ACT MUSIC / Import / ACT8000  /2024

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Lars Danielsson (b)
Verneri Pohjola (tp)
John Parricelli (g)

Recorded at Château Palmer in Margaux-Cantenac, France, 30.05.2024 - 02.06.2024
Recorded by Arnoud Houpert Mixed by Bo Savik Mastered by Klaus Scheuermann and Bo Savik

 国際的に評価を勝ち取っているスウェーデンのベーシスト、チェロ奏者そして作曲家のラーシュ・ダニエルソン(1958-, 下左)と、フィンランドのトランペット奏者ヴェルネリ・ポホヨラ(1977-, 下中央)の北欧巨匠二人に加えてイギリスのギタリスト、ジョン・パリチェッリ(1957-,下右)によるピアノ、ドラムス無しの変則トリオ作。しかもACT とワイン醸造所のシャトー パルメ (ボルドー左岸にある) とのコラボレーションの第2弾で、今回は、シャトー パルメ自体が、レコーディング会場となっている。

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 音楽はシャトー(ワイン生産の館)の独特の雰囲気をとらえ、レコーディング環境の静けさ、美しさ、親密さを反映していると言われているなんとも粋な企画なのだ。このコラボレーションは、当初「並外れたアーティストが並外れた場所に集まるときに起こる魔法を捉える」という驚きのビジョンを実現したというものらしい。
 そして「TRIO」と言うアルバム・タイトルがにくいですね、彼らはこれぞ3人の傑作だと言わんばかしの自信作ということでしょう。おそらく長く続いているダニエルソンとパリチェッリとの関係の上に成り立ったトリオと推測されるのだ。
 そして収録12曲、セッションの数日前に特別に書かれた6つのダニエルソンの作曲と、パリチェッリとポホヨラのそれぞれのトラック、3つのカバー、3人共作曲という構成である。
 

(Tracklist)

1 Le Calme au Château (Lars Danielsson)
2 Cattusella (Lars Danielsson)
3 Morgonpsalm (Lars Danielsson)
4 Playing with the Groove (Lars Danielsson)
5 Chanson D'Helene (Philippe Sarde)
6 L'Epoque (Lars Danielsson)
7 Gold in Them Hills (Ron Sexsmith)
8 Improvisado (Lars Danielsson, John Parricelli, Verneri Pohjola)
9 Mood Indigo (Duke Ellington, Barney Bigard, Irving Mills)
10 Étude Bleue (Lars Danielsson)
11 Lacour (John Parricelli)
12 Peu D'amour (Verneri Pohjola)

 いっやーー、これはなかなか得難い世界ですね、とにかく牧歌的と言える空間を見事に描いている。ワイン醸造所での演奏録音と言うのがにくいところで、それを知る為か一層自然環境や生態系が人間の健康そのものを育成してゆく世界が眼前に文句なく描かれているのである。
 M1."Le Calme au Château"は、ギターの響きに、ダニエルソンが描いた美しい旋律を独特な音色の物悲しいトランペットが美しく歌う。
   M2."Cattusella" ギターはラテンをイメージさせ、トランペットの抑制の効いた歌い上げが迫ってくる。そしてベースの音がひと際美しく響く。
 M3."Morgonpsalm" ここでも抑制のきいたトランペットがもの哀しく、ギターとベースの響きは美しい。
 M4."Playing with the Groove" 珍しい軽快な世界にトリオのインタープレイが見事。
 M5."Chanson D'Helene"チェロの響きに優しいギターそして控えめなトランペットが入り、悲しい雰囲気は美しく深く。
   M6." L'Epoque"抽象的で雰囲気のある曲。
   M7."Gold in Them Hills"カナダのシンガーソングライター、ロン・セクスミスの曲で、ポホヨラの自然豊かな優美な世界を描く演奏が楽しめる素晴らしいトラック。
   M9."Mood Indigo"デューク・エリントンとバーニー・ビガードの曲、アレンジがなかなか興味深くこのアルバムでは異質感、ちょっとここで気分一新の感。
   M10."Étude Bleue" ギターのオスティナート演奏に抑制のトランペットの語りが乗る。
   M11."Lacour"は、ジョン・パリチェッリのオリジナルだが、3者の絡み合うお互いの影響が美しさを増す。   

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   素晴らしいトリオ・アンサンブルが楽しめる作品だ。ワイン造りは芸術とも言われ、こうしてジャズ演奏と対面してゆく心は、フランスならではと言っていいのかも。そしてレコーディング場所であるフランスに因んで、このトリオは、ちゃんとその要素も盛り込んでいるところがニクイところ。M5."La Chanson d’Hélène"の作曲フィリップ・サルド(Philippe Sarde, 1948 – )はフランス、映画『すぎ去りし日の…』(1970年, 原題:Les choses de la vie)からの選曲ということだし、ジョン・パリチェッリ作曲のM11."Lacour"はフランスの作曲家・ピアニストのオリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908 – 1992)に強くインスパイアされているとか。

 もともと私自身は、表現は良くないがジャズのラッパものは敬遠しがちなのだが、ただミュートの効かしたトランペットは愛してきた。このトリオでのヴェルネリ・ポホヨラの抑制のきいた独特のトランペットはいかにも素晴らしい。そこには哀しみ・心の沈みと高揚といった感情を表現する個性的な音と抑揚には感動すらした。このトリオは、もともとダニエルソンの持つ牧歌的な美しさを、この特殊なトリオ編成によるところの素材の美しさをもって訴えてくるところが魅力だ。しかし、おそらく音楽的には多くの技巧を駆使しているのではと聴きとるのである。彼らは、とにかくミュートされ、力みのないリラックスした中に、それぞれの持つ演奏力を注ぎ込んで、究極のところ温かみのある世界を構築した素晴らしい作品だと思う。昨年の多くのジャズ・アルバムの中では、出色の心に響く世界を構築したものとして、新年冒頭に取り上げた。

(評価)
□ 曲・演奏 :    95/100
□   録音   :    90/100

(試聴)



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