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2025年2月25日 (火)

恒例の「ジャズ批評」2024 ベスト・アルバム

51ltrpljbul 「2024 ジャズ・オーディオ・ディスク大賞」= 雑誌「ジャズ批評」244号 

 今年も楽しませてもらっている「年間ベスト・アルバム」の番付表である。そもそも音楽と言うのは好みが分かれる世界であるので、こうした番付をするのはそれなりに意味があるのかないのか、それでも順位の上のもので仮に聴いてなかったものがあれば、聴いてみたくなるのが人間の哀しき性(さが)で、そんなことで毎年面白く見ているのである。

 

「インストゥメンタル部門」 ・・・ 相変わらずの茶番が露呈

518sqnppkl_ac__20250225181501  今年も上位は1、2、3位を金、銀、銅賞と言う判定で、以下39位まで並んでいる。
 後藤啓太氏によって、「オーディオディスク大賞」の意味を説明していてこれは結構。いろいろな見方はあると思うが、何か決めないとおさまらない。音質重視で音質とは「生々しさ」「音の明瞭さ」「楽器同士の音の分離」と言ってますね。

 金賞はAlessandro Galati「Plays Standards」(⇢) 
                  (まあ私も納得)
 銀賞 Roberto Olzer 「Aurora」
 銅賞 Mateusz Palka Trio 「Melodie. The Magic Mountain」

(問題点)
 10人の選考委員投票集計で、選考委員長の後藤誠一氏は金銀銅賞に満足のご様子。おやおやあなたはこの選考投票方法の異常が相変わらず解ってないようで、これでは茶番と言われてしまう。つまり投票集計母数が、ものにより10人と9人と違うじゃないですか、寺島氏はアルバム関係者と言う事で、自分のレーベルものは0点(正しく言えば空欄にすべき)。それを投票10人に入れて比較して順位を付けているのが非科学的と言っているのです。以前も指摘しているのですが、よわった事です(笑)。
 つまり4位の寺島レコード盤は9人の集計、その上の3位(銅賞)は10人の集計です。4位は9人、3位は10人と多いのですよ。寺島氏はこの自己の4位盤に評価点を入れられないとして0点。仮に入れるとしたら最高点は10点なので、少なくとも自分で評価している盤だから5点は入れるでしょう、そうしたら上の3位になってしまうのですよ。オリンピックもそうですが金銀銅は注目されますが、残念ながら4位は忘れ去られることもあります。そんなに3位と4位は違うのです。それをこんなズサンな集計で行っているところが茶番なんです(小学生でも解ります)。

 実際、この寺島氏個人は納得しても、順位を決めるとなると集計に科学性が必要です。この寺島氏をどう扱うかは統計科学的でなければなりません。このように0点なら、その評価と意味を明記しなければなりませんね。又更に基本的に10人という少人数では、選考委員の一人一人の選定の影響も重大になりすぎますね。

 

「ヴォーカル部門」 ・・・ 評価の違いに驚きつつも

  しかし、ジャズ・ヴォーカルは、なんで女性ばっかりなんでしょうかね。アルバムのリリースも圧倒的に女性ものばかりですね。昔はシナトラなど人気でしたがね。
20240307_a1w_20250225171801  さてそれはさておき、今回の選考結果は全く私とは別物でした。それだけヴォーカルものはその声・質・歌の表現・ムードなどに大きく影響され、好みが分かれることも大きな原因かと思いますね。

 金賞 : 「Midnight Sun」Moon with T.Yamamoto 
                      (⇢)
 銀賞 : 「Dreams Lost and Found」Halie Loren
 銅賞 : 「For All We Know」Adonis Rose Trio & Gabrielle Cavassa



  まあ、結果はそれなりに良いのかとも思いますが、私とは大分異なるので、参考までに私の2024年ベストものを挙げることにします。(評価は聴いた時のものです、後からは若干変わりましたが、それを言うとキリが無いので)

  [私のベスト7]
🔳「Five Minutes」Inger Marie 178点(↓上段左)1008806237_20250225173301 
🔳「Shadow」Lizz Wright 180点(右⇢) = (最高点)
🔳「Sombras」Lauren Henderson  178点(↓上段中央)
🔳「Let'sWalk」Madeleine Peyroux 177点(↓上段右)
🔳「Round Midbight」Sandy Patton 178点(↓下段左)
🔳「Almost in Your Arms」Claire Martin 178点(↓下段中央)
🔳「Impressions of Evans」Ellen Andersson 177点(↓下段右)

 (このように上位は混戦、実は「THE ESSENTIAL」Melody Gardot も良かったが、アルバムとしてはベスト盤に入るのでここに挙げませんでした)

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 「Five Minutes」           「Sombras」              「Let's Walk」

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「Round Midnight」     「Almost Your Arms」   「Impressions of E.」

 私の評価盤が「ジャズ批評」の金銀銅賞が一つも絡んでいないのが寂しいが、私の好みも入った評価ですからこんなところでした。最高点はLizz Wright「Shadow」(私の金賞)でした。Madeleine Peyroux、Claire Martinも良かったんですがね(もう少し良い点をあげとけば良かったと反省)。 

 まあ、アルバムの評価は聴き手の好みが大きいので、そんな意味を理解して楽しんで見たいものです。

(試聴)
Alessandro Galati

*
MOON with Tsuyoshi Yamamoto

*
Lizz Wright

 

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2025年2月22日 (土)

サンタナの近況 - Santana「 ONENESS TOUR 2024」

カルロス・サンタナは意識消失発作(2022)、転倒骨折(2025) そして回復ライブへ

<Rock>

Santana 「COUNTING CROWS - ONENESS TOUR」
- SYRACUSE 2024 -
(DVD)COLOUR NTSC Approx / Uxbridge 2285 / 2024

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Empower Federal Credit Union Amphitheater at Lakeview, Syracuse, NY, USA 24th July 2024 

Carlos Santana - lead guitar, vocals, percussion / Benny Rietveld - bass / Karl Perazzo - percussion,  vocals / Andy Vargas - vocals, percussion / Tommy Anthony - rhythm guitar, vocals / David K. Mathews - keyboards / Paoli Mejias - percussion / Cindy Blackman Santana - drums / Ray Greene - vocals, percussion, trombone

Carlossantana20247jpeg   昨年のサンタナのライブ映像を見ながら喜寿を迎えたカルロス・サンタナの近況をちょっと見てみよう。  

 とにかく彼は2年前の2022年7月5日にアメリカ・ミシガン州クラークストンで開催されたコンサート中にステージ上で倒れ、熱中症と脱水症状が原因だったと報道され驚いたのだが、32度以上の暑さの中で、サンタナは「飲食を忘れて脱水状態に陥り、倒れた」と説明した。しかしそのため直後のペンシルベニア州での予定された公演は延期となった。
 そんなところで実際のところはどうなのかと心配していたところであるが、昨年(2024年)には1月から2月、および5月、更に9月から11月には、ラスベガスのハウス・オブ・ブルースで「An Intimate Evening with Santana: Greatest Hits Live」と題したレジデンシー公演を実施しました。さらに、それとは別に6月から9月にかけては「Oneness Tour 2024」(↓左)として北米各地でツアーを行い、7月24日にはニューヨーク州シラキュースでの公演も行われた。
 一方、4月3日には、彼の音楽キャリアを追ったドキュメンタリー映画『カルロス:ザ・サンタナ・ジャーニー』がデジタル配信され、ファンや音楽愛好家の間で話題となった。
 そんなことのなんやらで、彼は健在ぶりを昨年は披露していたので、そんな状況を見てみようとこのライブDVDを入手して鑑賞しているのである。

 そして今年2025年になって、1月3日のニュースでは、なんとカルロスの転倒・骨折の話が入ってきた。彼はカウアイ島の別荘で散歩に出かけ、激しく転倒し、左手の小指を骨折した」との報告があり、「彼は指にピンを差し込まなければならなかった。残念ながら、彼は約6週間ギターを弾くことが出来ない。医者は彼が完全に回復すると言っている」との話。この為、「1月22日から開催されるレジデンシー・ショーの次の実行を延期した」との事。

 しかし現在サンタナのツアーの予定は発表されていて、4月16日にカリフォルニア州ハイランドのサンマニュエルにあるYaamava' Resort & Casinoで始まることになっている(↓右)。いずれにしてもまだまだトラブルを乗り越えて頑張っているようだ。

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 さてここに取り上げた映像アルバムだが、これは所謂ブートですが、その割には良く出来ている映像物だ。取り敢えず最新といっいい昨年のステージをフル体験できる。それは「2024年7月24日シラキュース公演」のオーディエンス・ショットもの。近年のSANTANAはラスベガスで行ったように、コンサート・レジデンシー(移動を繰り返すツアーでなく、1ヶ所の会場で何公演も重ねる興行スタイル)タイプでの"Greatest Hits Live"が主力になっている。しかし、夏には“Oneness Tour 2024”も実施していて、この「シラキュース公演」は、そのツアー公演の一幕である「北米#2」(7月18日ー30日:北米#2(10公演))の5公演目にあたるコンサートだった。

(Tracklist)
1. Opening Movie 2. Soul Sacrifice 3. Jin-Go-Lo-Ba 4. Evil Ways / Do It Again 5. Black Magic Woman 6. Gypsy Queen 7. Oye Como Va 8. Everybody's Everything 9. Bass Solo 10. Samba Pa Ti 11. The Game Of Love 12. She's Not There 13. Spill The Wine 14. Papa Was A Rollin' Stone 15. In-A-Gadda-Da-Vida 16. Hope You're Feeling Better 17. (Da Le) Yaleo 18. Put Your Lights On 19. Corazon Espinado 20. Maria Maria 21. Foo Foo 22. Are You Ready 23. Drum Solo 24. Band Introduction 25. Smooth Carlos Santana

  プロショットでなく、オーディエンスものということで多くは期待しなかったのだが、なかなか良好な映像だ。観客が一切映らないステージ映像で恐らくはステージ中央を真正面に見据える中距離ショット。そしてステージ中央のカルロスをド真ん中に据えつつ、ほぼ同じ高さで見やすい。クローズ・アップも効いていてギターを弾く指の動きも明瞭。すぐ後ろに女房のCindy Blackman Santana がドラムスを演じている。撮影者はかなりサンタナの音楽には通じているようで、演奏中もカメラ移動が演奏のポイントをかなりうまくカヴァーしている。音質も屋外スタイルの為、音はこもらず比較的良好。
  この"Oneness Tour 2024"は、内容は上記のとおり、あの華々しかった70年代クラシックス『サンタナ』(3曲)、『天の守護神』(4曲)と原点回帰をしてみせて、『SUPERNATURAL』(ヒットの"Maria Maria"そして"Smooth"などの5曲)、『SHAMAN』(2曲)の再ブレイク時代を濃縮還元し、各人のソロもたっぷりと盛られている。さらに特徴の注目は「"She's Not There"からカバー・メドレー」だが、去年から組み込んで演奏されるようになったようだが面白い。

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 バンド・メンバーも大きな変化なく、なんと言ってもカルロスの現女房のCindy Blackman Santanaがドラムスで"Soul Sacrifice"やソロで頑張っているのも印象的。このツアーのライブは彼の総決算的雰囲気もあり、今年も続けて行うというしっかり予定が出来てきているので、それなりに充実度が高く内容も落としてはいないので奮闘を期待したい。
 ただそうは言っても、カルロス自身は歩き方もちょっとおぼつかなくて、ステージ中央に椅子を置いて、2/3以上は座った状態で演奏している。従って演奏の活力低下はなんとなく感ずるのだ。そしてこれだと転倒も有りうるなぁーーと、思うところが見えている。今回の転倒事故も幸いに回復の様子であるが、なかなか春からのツアーも大変だろうと、期待はしつつ彼の頑張りに敬服し応援したいところだ。まあCindy Blackmanもついているので、安心してみて居よう。
(尚、下に参考画像を付けましたが、今回のこの映像物はYouTubeにて公開されています)

(評価)
□ 演奏          87/100
□ 画像・音質 75/100

(視聴)



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2025年2月17日 (月)

ホリー・コール Holly Cole 「DARK MOON」

懐かしき歌に、優しさに溢れた世界が展開する

<Jazz>

Holly Cole 「DARK MOON」
Universal music / Import / 0246557815 / 2025

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Holly Cole:Vocals, Producer
Aaron Davis :Piano
George Koller :Bass
David DiRenzo :Drums
Howard Levy: Harmonica
Johnny Johnson : Saxophone
Kevin Rreit : Guitar 
Michael Davidson : Vibraphone,Marimba

Engineer: Jeff Wolpert

1715869709273w  カナダ出身の歌姫、ホリー・コール(Holly Cole、1963年11月25日 - )の日本では久々の7年ぶりとなるニュー・アルバム の登場である。改めてみると、これは彼女の13枚目のスタジオ・アルバムで、年齢も60歳を越えているわけで、もうベテランそのものだと感慨深い処でもある。従って長年彼女のライヴ・パフォーマンスを支えてきたパートナー達も多い中でそれに加えて、新たなミュージシャン勢の力も取り入れての、相変わらず彼女独自のスタイルをもってして作り上げた作品だ。

 この新作について、ホリーは次のように語っている「このアルバムには、即興の精神を取り入れたいという強い思いがありました。また、それと同時に、私の音楽のサウンドの本質は、アレンジにあると考えています。今回は事前のリハーサルを殆ど行わずにスタジオに入ったため、スタジオにいる間、どの曲も私達にとっては途轍もなく新鮮に感じられました。私が一緒に演奏するミュージシャン達は皆、曲のアレンジに大いに貢献してくれています。それぞれ一人一人に光が当たる瞬間の音を聞きたいと私は思い、皆で演奏しながらアレンジの大部分がまとまっていきました。このアルバムが完成した時に聞こえてくるのは、その曲のどこが好きなのかを私達が発見する瞬間であり、それこそが私にとって本質的な部分なのです」と、確かに彼女自身にとっても久々のアルバム造りで、それだけ思い入れもありそうだ。まあ我々も還暦祝いのつもりで聴くのも良いかもしれない。

A1crmldfnel_ac_slw  なお日本盤は、2021年のライヴ・アルバム『モントリオール(Live)』(→)(2019年モントリオール国際ジャズ・フェスティバル40周年記念で、デヴィッド・ピッチ(B)とアーロン・デイヴィス(P)と共に、オリジナル・メンバーでホリー・コール・トリオを再結成しモントリオールにあるキャバレー〈ライオン・ドール〉で行なった特別なコンサートを収録)に、2011年のグレン・グールド・スタジオで収録されたジョニー・ナッシュのヒット曲"I can see crearly now"と、1995年のモントリオール公演で録音されたお馴染み"Calling you"の2曲のライヴ音源を追加したスペシャル・ボーナス・ライヴ・ディスクをカップリングしたCD2枚組のデラックス・エディションとして発売されている。

(Tracklist)

1 Steppin' Out with My Baby
2 Where Flamingoes Fly
3 Moon River
4 No Moon at All
5 Message to Michael
6 The Exciting Life
7 Dark Moon
8 Comin' Back to Me
9 Kiss Me Quick
10 Walk Away Renee
11 Johnny Guitar

 ホリー・コールは、カナダの名誉あるジュノー賞(カナダ版のグラミー賞に相当)を2度受賞し、同じく2度受賞したジェミニ賞(カナダ映画テレビ・アカデミーが主催する賞)、また、日本ゴールド・ディスク大賞も2度受賞した他、モントリオール・ジャズ・フェスティバルからは名誉あるエラ・フィッツジェラルド賞も授与され、また2014年には、クイーンズ大学から名誉博士号を授与されている。そんな経歴を感じつつ、このアルバムを半分お祝い気分で聴くのも楽しいところだ。

 このアルバムはセルフプロデュースアルバムで、制作と演奏を支援するために集めたバンドには、長年の仲間のアーロン・デイヴィス(ピアノ 下左)、ジョージ・コラー(ベース 下中央)、ダビデ・ディレンゾ(ドラム 下右)や、ジョン・ジョンソン(サックス)が加わっている。それに加えて、ギターのケヴィン・ブライト、グラミー賞を2度受賞しているハーモニカのハワード・レヴィ、そしてグッド・ラブリーズの素晴らしいハーモニーなど、これがなかなか味のあるところが聴き取れる。彼らは、彼女の期待する「アンサンブル演奏」を見事に演じている。

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 オープニングM1." Steppin' Out with My Baby"は、トニー・ベネットが歌っていた曲、低音の貫禄のヴォイスで、リズミカルにお洒落にスタート、おお来たなっという処だ。
M2." Where Flamingoes Fly"ギル・エヴァンスの曲。ピアノと歌がなんとなくアメリカのよき時代ムードが気持ちいい。
M3." Moon River" どう捻るかと思ったら、優しいピアノと歌にアレンジの工夫が入るが、意外に素直に力まず正面から取り込んでいて、かえって不思議。
M4." No Moon at All"ハーモニカと彼女の歌の競演が新鮮。
M5." Message to Michael" ギター・サウンドと優しさのヴォーカルで歌い上げたところが光る。
M6." The Exciting Life" サックスと彼女の歌が、ぐっと夜のムードに聴こえてくる。ホリーの味だ。
M7." Dark Moon" 注目のタイトル曲だが、女性コーラスがバックに入って、ギターと共に、これも優しさあふれた歌。
M8. "Comin' Back to Me" '60年代のジェファーソン・エアプレインによるフォークソング。
M9. "Kiss Me Quick" プレスリーの時代を思い出す。
M10. "Walk Away Renee"古いロックで、哀しく優しく・・・。
M11." Johnny Guitar" ビクター・ヤングでしたね、優しさと情感溢れた歌のジャニー・ギターに満足。中盤のギター・ソロもイメージを生かしたアレンジとインプロ・メロディーがいい。

 いっやーーなかなかゃ60年代頃のミュージカルやロック、そしてカントリー分野のアメリカン・ミュージックの味のある処を、スモーキーな歌声で優しく美しく歌い上げていてくれて、今回は彼女の特異性はどう迫ってくるかと、恐る恐る聴いたのだが、まったく違った予想外のアルバムでむしろ驚いた。アルバム・タイトルが「Dark Moon」だが、決して暗くなく優しさに溢れた世界が築かれていて、彼女のアルバムとしては、これはある意味最右翼に置かれそうだ。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌 :   90/100
□ 録音      :   87/100

(試聴)



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2025年2月12日 (水)

ヴァレリー・グラシェール Valerie GRASCHAIRE - Pierre BROUANT「Third Stream」

ピアノとのデュオで圧巻の本格的ヴォーカル
曲"Estate"と" I'm a fool to want you "でアルバムの頂点に

<Jazz>

Valerie Graschaire & Pirre Brouant「Third Stream」
TREBIMMUSIC / Import / TREBMUS067 / 2025

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Valérie Graschaire (voice)
Pierre Brouant (piano)
*Guests :
Stéphane Belmondo (trumpet #4,9)
Manu Codja (guitar #6)

Recorded by Mathieu Pelletier
at the DOWNTOWN STUDIOS studio
IN STRASBOURG ON SEPTEMBER 4 AND 5, 2023

Mastering Engineer: Stefano Amerio
Mixing Engineer: Stefano Amerio

Valeriegraschaireunew   プロ歴25年以上になるフランスの実力派歌手ヴァレリー・グラシェールValerie Graschaire のヴォーカルがじっくりと聴けるピアノ(ピエール・ブローアンPierre Brouant)とのデュオ作品。なんと私にとっては彼女は初物だが、フランス国内で高く評価されていると。このアルバムでは、スタンダードナンバーを中心に、なかなか本格的な音楽的アプローチと歌唱を披露していて注目されている。

 このデュオのヴァレリー ・クラシェールとピエール・ブローアンは約10年前に出会い、 それ以来、一緒にプレーしている。この長いコラボレーションは、二人の間にまれな激しさの音楽的相互関係を生み出したと。彼らのレパートリーでデュエットとして働くことを決めたとき セロニアス・モンクの曲を、彼らは最初にシングルに演奏するつもりだった。それにもかかわらず、これに対する観客からの反応 パフォーマンスとそれを行うことで得た喜びの両方が、音楽配信会社やプロデューサーの注目となった。彼女はすぐにこのプロジェクトからアルバムを作ることの関連性を彼らに納得させたようだ。

 ヴァレリー・クラシェールは、デュオからビッグバンドまで多彩なプロジェクトで活躍し、フランスのトップジャズミュージシャンと共に5枚のアルバムをリリースしているようだ。また、近年2020年にはアルバム『Wrap It Up』を発表し、2024年4月にはアメリカ・シンシナティで開催された「April in Paris」というイベントで、フィル・デグレグ・トリオPhil DeGreg Trioと共演している。更に教育者としても、2000年からナンシーのミュージック・アカデミー・インターナショナル(Music Academy International) でジャズボーカルの指導を行い、後進の育成にも力を注いでいる。

Pierrebrouant2w  一方、共演者のピアニストのピエール・ブローアンは、1984年生まれ(フランスのナンシー)の新鋭で脂がのってきたところ、幼い頃からピアノへの情熱を育み、1990年代ナンシー国立音楽院でクラシックピアノで名を馳せ、2003年にパリ音楽院に入学し、デュプロム・ド・フォーメーション・シュペリウールのコンクール・オブ・ザ・イヤーで金メダルを獲得。当初はクラシックのソリストとして活躍、ヨーロッパとアメリカでお気に入りのレパートリー(特にドビュッシー、ラヴェル、ショパン、ラフマニノフ)でコンサートを行った。その後、彼の直感と即興演奏の能力に従って、彼は自然にジャズに傾倒し、一方ギターで視野を広げた。2020年代に入ると、作曲家となりながら、アレンジなど活動する。現在はピアノとギターでソロ活動とデュオからビッグバンドまで幅広く活動中。

 両者の長いコラボ関係の結果生まれたアルバムとして聴くと、これ又うなずくところがある、なかなか芸術性豊かな希有なアルバムとして捉えている。

 

(Tracklist)

1 In the small hours of the morning 00:05:52
2 Moon river 00:04:33
3 But beautiful 00:06:22
4 I just don't know what to do with myself (feat. Stéphane Belmondo) 00:06:46
5 When it rains 00:05:22
6 Strange meeting (feat. Manu Codja) 00:06:52
7 Over the rainbow 00:03:57
8 My foolish heart 00:04:47
9 Something in the rain (feat. Stéphane Belmondo) 00:04:49
10 Estate 00:05:52
11 I'm a fool to want you 00:03:44
12 Resignation 00:04:54

  女性ヴォーカルとピアノのデュオのスタイルで、彼女の高音から低音まで広く歌い込む歌唱がジックリと聴ける。そして曲によってトランペットとギターが入る(3曲のみ)というパターン。

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 M1. "In the small hours of the morning" は、しっとりとした説得力あるヴォーカルでスタート、ピアノもバックをカヴァーというより、共演という自己の世界を描きこんでなかなか味な展開をみせて、後半には美しい情景を彼女のスキャツトを交えて描かれる。
 M2."Moon river " 聴き慣れた曲で、彼女の曲の味を大切に歌い込む特徴が明確になる。後半には編曲メロディーも披露して単純に聴き慣れたスタイルでは終わらない。
 M4." I just don't know what to do with myself "バート・バカラックの曲のようだが、クラシック調のピアノに低音での歌唱でしっとり歌い、それをカヴァーするようにトランペットが優しくサポート。中盤から次第に盛り上がり彼女の高音によるスローでの歌い込みが展開し圧巻。
 M6.”Strange meeting”にはジャズ・ギターが登場、落ち着いた彼女の歌が聴かせるがギターとピアノとの共演もなかなか聴きどころ
 M7."7 Over the rainbow "も前奏が短いが凝っている。歌はメロディーを生かして歌い上げるも、ピアノの間奏は全くの新アレンジでつなげる展開で新鮮。簡単には終わらないクラシック様世界。
 M8."My foolish heart" 途中から、おおこの曲だと解る展開、それほどピアノの編曲が別のオリジナル曲に聴こえる。やはり歌い込みは恐しいほどだ。
 M9."Something in the rain" ソフトなトランペットとピアノの共演が美しく、ヴォーカルは情景を歌い上げる。
   M10."Estate" この曲が私の注目曲、イタリアの夏の恨み節だ。まず語りから入る、そしておもむろに旋律メロディーを歌い込む。華やかで盛り上がる夏の出来事への"反省と後悔と悔しさ"と入り乱れた感情がお見事、ここまで歌い込むのは類を見ない。
 M11." I'm a fool to want you "は、シナトラやチェット・ベイカーの歌って愛されている曲だが、なんとここでは、M10を更に深入りするが如く歌われるのだ。ここに来てこのアルバムの頂点を迎える。
  そしてM12." Resignation "ブラッド・メルドーの曲でしたっけ。あきらめなのか、"私はあなたの考える全てではない"と。そしてスキャットが見事に響く。

 結論的には、即興と編曲が優れていて、「語り、スキャットを交えたヴォーカル」と「即興のメロディーをぶつけるピアノ」との戦いとサポートと共鳴が、新天地を開拓している。ジャズ・ヴォーカルという範疇に納まらない歌い込みとピアノのクラシック調の展開が印象的。彼女の声の質や熱唱は必ずしも私の好みと一致するわけではないが、2人の共演による描かれる詩的世界の充実度は高く、じっくりと味わえる高度な音楽を造り上げているまさに芸術作品と評価した。

(評価)
□ 演奏・編曲・歌 :    93/100
□   録音      :    90/100
(試聴)

*

 

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2025年2月 7日 (金)

[回顧シリーズ] サンタナ SANTANA 「Tanglewood 1970」

貴重な70年ライブをブルーレイ改善映像で楽しめる

<Rock, Latin Rock>

SANTANA 「Tanglewood 1970」 Definitive Edition
Live in Tanglewood, Lenox, MA, USA August 18th 1970
76min. Pro-shot (LNBRD-044)
  
           ⇓  ⇓ (こちら)                                                                  

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                                                                              (↑)以前の改善盤
Carlos Santana - guitar
Gregg Rolie - keyboads, lead vocal
David Brown - bass
Jose Areas - conga, timbales
Mike Carabello - congas
Michael Shrieve - drums

Live in Tanglewood, Lenox, MA, USA August 18th 1970

 いろいろとブート遊びをしていての、ロックの最も花の咲いた1970年代の回顧である。この映像版(上左 『Tranglewood 1970』(LNBRD-0044, Blu-ray DISK))は、70年8月18日、初期サンタナのライブ映像として有名なビル・グラハムが主催したTanglewood Festivalでのプロショット映像。かってはタイムコード付きの映像で昂奮しながら楽しんだことを思い出すが、その後タイムコード無の画質とサウンドが遥かに向上した映像の出現で更に喜んだのもついこの間のような気がするが、実際にはずいぶん前だが、それが上右『TANGLEWOOD 1970-improved version』(JPD-V1-115, DVD-R)である。
 そしてここに再びDefinitive Editionの登場で、それが今度はBlue-rayでのこのブート映像盤、これは、演奏部分の殆どはその画質向上してある映像を使って、古きタイムコード付き映像で曲間等を補完している。更にHD画質にリマスターして、オリジナル・サンタナを代表する映像の最強盤としてカラー画質も改善してつい最近ブルーレイにてリリースしてくれたもの。

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 そもそも私がサンタナに惚れ込んだのは、2ndアルバム『Abraxas/天の守護神』(1970)に収載された"Black Magic Woman / Gypsy Queen "であり、当時は映像モノなんて考えてもみなかったところだ。とにもかくにも69年ウッドストックでの彗星の如く現れたサンタナ・バンドの驚異の圧巻ステージにて、日本でもその筋では名前だけはなんとなく知られるところとなったが、そのために1stアルバム『Santana』(1969)がリリースされることになった。それによりあのライオンの顔(あの中に人間が何人居るか?)のアルバム・ジャケもインパクトがあり、ロック・ファンに知られるところとなったところだ。当時は所謂ラテン・ロックとして名前が広がったのだが、ジャジーなセンスの加味された"Soul Sacrifice"は、圧倒的な支持を得た。そして決定的なヒットで知れ渡ったのは2ndアルバム収載の"Black Magic Woman"である。


Vicp41459  ちょっと余談だが、こうしたラテン音楽は、日本においても根強い人気がある。もともと戦後洋楽ポピュラーとして日本で最もインパクトがあったのは、ペレス・プラード楽団だ。キューバのダンス音楽にジャズの要素を加えた「マンボ」という新しいジャンルを確立し、1950年代は世界的な大流行。特に1955年の "セレソ・ローサ(Cherry Pink and Apple Blossom White)"の流行は日本の音楽にまで影響をもたらす勢いであった(昭和の歌謡曲にも取り入れられた)。こうしたラテン音楽の因子が日本には根付いたところに、1960年代には、「セルジオメンデスとブラジル66」の出現で、ジャジーな味わいとラテン音楽の世界が広がり、更に1970年になると今度はロックの世界にラテンが聴き取れたのが「サンタナ」で、日本でも大いに湧いたわけだ。私もペレス・プラードからそんな流れに毒された(笑)人間の一人で、ラテン音楽の愛好家でもある。

Image_20250204213701  そんな経過であるので、1970年の『天の守護神』の当時のサンタナのライブ映像となると、もはや文句の付けるところがなく受け入れるのであり、こうして改良版は見過ごすことは出来ないのだ。そして私が虜になった曲"Black Magic Woman / Gypsy Queen"は、イギリスのバンド、フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)のピーター・グリーン(Peter Green)が1968年に作曲・リリースした楽曲だが、それをカバーし、世界的大ヒットし、サンタナの存在を決定付けた。それはサンタナが「Gypsy Queen」(ハンガリーのギタリストGábor Szabóによる1966年の楽曲)をメドレーとして組み込み、情熱的なラテン・ロック・アレンジに、特にカルロス・サンタナの洒落たギターソロに加えて、グレッグ・ローリー(Gregg Rolie)のボーカル、更にパーカッションのラテン・リズムがとにかく新鮮だっだ。

 

(Tracklist)

Intro
Batuka / Se a cabo
Black Magic Woman / Gypsy Queen
Oye como va
Incident at Neshabur
Toussaint L'Ouverture
Evil Ways
Hope You're Feeling Better
Treat
Savor
Jingo
Soul Sacrifice
Gumbo
Persuasion

  まあ、初期サンタナのライブ映像として、'69年のウッドストック映像、この'70年Tanglewood Festivalでのプロショット映像は、名ライブ映像として見て来ているのだが、今回のこれは、の1080PのHD画質にリマスターし、サンタナを代表する映像の最強盤だ。まあそうは言っても現在の多くのライブ映像物と比較したら、それはそれはお粗末だけれども、当時の実際の姿をじっくり見れるので嬉しくなるのである。

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(Areas, Santana)               (Santana)                 (Rolie)

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(Shreve)                     (Carabello, Santana)     (Brown, Areas, Carabello)


 そしてこの'70年8月と言えば、2nd『天の守護神』のリリース直前であるが、収録の「Se a cabo」「Black Magic Woman / Gypsy Queen」「Oye como va 」、「Incident at Neshabur」と言った2nd収録の新曲を圧巻の演奏で披露している。更にオープニングの銅鑼の連打の音から「Batuka」のフレーズでライブはスタート、これは3rdアルバム『Santana III』に収録のファンク・ロックだが、更に「Toussaint L'Ouverture」も3rdもので、ここに収録されている。従ってサンタナは、3rdぐらいまでの曲群は既に手持ちの曲としていたことが解る。'67年にはバンド名をサンタナにしていることからも、'69年のウッドストック出演時には、それまでにかなりの曲を熟してきていただろうと推測できる(以前にも紹介したアルバム『On The Road to Wood Stock』(Rokarola Records/250283-1,2/2011 )を参照)。

 又「Soul Sacrifice 」にては、Jose Areas とMike Carabello のツイン・コンガが迫ってきて、その上にMicheal Shreveにおいては、彼のSANTANA初期のベスト・パフォーマンスと言わしめたドラム・プレイがじっくり楽しめる。それに対してCarlos Santana は、タバコを吸いながらのギター・プレイで余裕たっぷり。ただGregg Rolie のキーボードと歌はなかなか気合が入っていた。
 Gregg作の「Hope You're Feeling Better」のグルーブ・ロックは鳥肌モノのカッコ良さです。そしてグレッグのピアノがリードする「Treat」も、ジャージィでいいですね。カルロスとグレッグが交互に主役が変わってそれぞれのインプロ演奏が冴えていて聴き入ってしまう。
 
 いずれにしても当時のものとしてこれ以上の改善は無理だろうというレベルに映像・音は改良されている。
 有名なライブものであるので、好きな人は一枚は所有しても良いと思われるものだ。

1539_v9_bbw  < Carlos Santana 略歴> :  1947年生まれメキシコ出身。父の影響で5歳でヴァイオリン、8歳でギターを弾く。サンフランシスコに移住し、'66年に“サンタナ・ブルース・バンド”を結成。'67年に“サンタナ”としてデビュー。'69年伝説の“ウッドストック・フェス”に出演、無名ながら衝撃的なパフォーマンスで大観衆を魅了、一気に全米で人気獲得。デビュー・アルバム『サンタナ』が全米チャート4位、2ndアルバム『天の守護神』が全米チャート1位、シングル「ブラック・マジック・ウーマン」が全米チャート4位と大ヒット、初期代表作となる。その後多くのアルバム活動。30年後の'99年のアルバム『スーパーナチュラル』は、様々なアーティストとのコラボで、特大ブレイク。サンタナ初の全米No1ヒット・シングル「スムーズ」はビルボード12週連続1位、アルバムも12週連続1位という驚異的な成功。続くシングル「マリア・マリア」も10週連続1位を記録。2枚のシングルで全米チャート1位を約半年間独占の歴史的快挙。2000年の第42回グラミー賞では、最高栄誉「最優秀アルバム賞」「最優秀楽曲賞」含む全9部門で受賞し、サンタナの第2黄金期。ローリング・ストーン誌が選ぶ「最も偉大なギタリスト100」(2003年度版)で15位に選出。これまで26枚のスタジオ・アルバム(サンタナ単独名義のみの作品)を発表。全世界で累計1億枚以上のセールスを記録。2022年にステージで倒れ心配されるも回復。現在も活躍中。

(評価)
□ 映像・録音  60/100 (当時のものとして80/100)
□ 演奏     95/100

(視聴)

* 

 

 

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2025年2月 2日 (日)

ニック・メイスン 「NICK' MASON'S SAUCERFUL SECRETS」-POMPEII 2023

ピンク・フロイド創設期からの物語

<Progressive Rock>

「NICK' MASON'S SAUCERFUL SECRETS」-POMPEII 2023
Live at Teatro Grande, Pompei, Italy 24th July 2023 
DVD, Amty 763 /  Multicam / COLOUR NTSC Approx.146min

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Nick Mason - drums, percussion / Guy Pratt - vocals, bass, guitars / Gary Kemp - vocals, guitars / Lee Harris - guitars, backing vocals / Dom Beken - keyboards, backing vocal

  ピンク・フロイド話も続きますが、久々のニック・メイスンNicholas Berkeley Mason(1944年1月27日 - )の話題だ。考えてみるとピンク・フロイドの創設メンバーで、彼は1965年のバンド結成以来(当時は建築学を学んでいた)、唯一の不変のメンバーであり、ロジャー・ウォーターズとは学友でいつの時代も仲は良い。そしてピンク・フロイドの各時代すべてのアルバムに登場する唯一のメンバーということになる。もともとドラマーが好みと言うわけでもなかったようで、バンド結成時にはメンバーの都合でドラムスの担当となったようだ。そういえば、ロジャー・ウォーターズもギタリストだったが、シド・バレットの関係でベースに落ち着いたようだ。まあ学生バンドはそんなところからスタートしているということだろう。

91eixnxbwl_ac_sl850w  そしてメイスンはピンク・フロイド時代もソロ・アルバムをリリースしているが、意外にセンスはジャジーな世界であった。1981年のソロ・アルバム『Nick Mason's Fictitious Sports 空想感覚』(⇢)なんかは、典型的なコンテンポラリー・ジャズ・ロック・アルバムで、ジャズでも異色のピアニストのカーラ・ブレイと共演していて、意外や意外の感がある。しかし当時親友のロジャー・ウォーターズからは、既にドラマーとしては旬も過ぎたと、アルバム『THE WALL』では、セカンド・ドラマーとして扱われている。それはリック・ライトも同様であった。
 しかし、ウォーターズがピンク・フロイドから去ることになって、そのピンク・フロイドの名をなんとしても欲しかったデヴィット・ギルモアから誘われて、ピンク・フロイドを続けることになり、ライトもその後復帰したわけである。

 そしてその時代も去り、意外に静かだったメイスンも、親友ウォーターズのソロ・ライブには飛び入り参加したりと、彼は嫌われるという性格の無い人間ということが見て取れる、それだけ癖がないということか。そして ウォーターズのソロ世界ライブの成功や、ギルモアの同様な成功をみて、メイスンも初期のピンク・フロイド曲を演奏するトリビュートバンド「Nick Mason’s Saucerful of Secrets」を立ち上げて2018年より二人よりは若干スケールダウンした世界ツアー・ライブ活動を続けている。このバンドは、ドラマーのニック・メイソンとギタリストのリー・ハリスによって英国のサイケデリックロックバンドでスタートしたピンク・フロイドの初期の曲を演奏している。バンドには、ギターとボーカルにシュパンダウ・バレエ団のゲイリー・ケンプ、ベースとボーカルにピンク・フロイドの長年のコラボレーターであるガイ・プラット、キーボードにプロデューサーのドム・ベケンも参加。メイソンは、グループはトリビュートバンドではなく、時代の「精神を捉える」ことを望んでと述べている。


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(ニック・メイスン・バンドに飛び入り参加のロジャー・ウォーターズと)

 バンドデビューは2018年5月にロンドンの500席のクラブ、ディングウォールズ。その後、ハーフムーン、パットニーでの3つの小さなショー、2018年9月のヨーロッパツアー、2019年の北米ツアーが行われた。2019年4月18日、ロジャー・ウォーターズがニューヨーク・ビーコン・シアターに参加して「Set the Controls for the Heart of the Sun」を歌い、観客を驚かせた。
 その後COVID-19のパンデミックにより延期、彼らは2023年に本格的に再び活動し、短期間のユーロ・ツアーより7月24日イタリア、ポンペイでのライブを行った。それをこのブートDVDは、マルチカメラ仕様によるオーディエンス映像にて、トータル2時間26分にわたりフル収録したものである。。
 なんといっても、ボンペイといえばファンなら誰もが1971年10月の同地でのピンク・フロイドの公式ライブ映像を収録した記録映画が頭に浮かぶわけで、私もそれもあって、何年か前にとにもかくにも訪れてみた遺跡の地だ。あのライブは、NHKも初めてピンク・フロイドを公に日本に紹介したものであった(1973年3月17日「ヤングミュージックショー」)。
 このオーディエンス録画は、なかなか良く出来ていてマルチカメラも駆使されサウンドも良好でうまくマッチングしている。

(Tracklist)

Disc 1 :
1. Intro Part 1 2. Intro Part 2 3. Intro Part 3
(Set 1) 4. Pre-Show 5. One Of These Days 6. Nick Mason MC 7. Arnold Layne 8. Fearless 9. Obscured By Clouds 10. When You're In 11. Candy And A Currant Bun 12. Vegetable Man 13. Nick Mason MC 14. If 15. Atom Heart Mother 16. If (Reprise) 17. Guy Pratt MC 18. Remember A Day 19. Band Introduction 20. Set The Controls For The Heart Of The Sun
Disc 2 :
(Set 2)
1. Astronomy Domine 2. The Nile Song 3. Guy Pratt MC 4. Burning Bridges 5. Childhood's End 6. Lucifer Sam 7. Echoes 8. See Emily Play 9. A Saucerful Of Secrets 10. Bike 11. Outro 12. Ending 13. Nick's Honorary Citizenship Ceremony

 ピンク・フロイドにとっても記念のポンペイであり、この日はライブ前にポンペイ遺跡の凝った約9分のムービーを挿入しており、その映像からしっかり収録。そして円形劇場遺跡の会場に風が吹き抜けるSEが流れ、「吹けよ風、呼べよ嵐」のベース・リフが轟くという演出はなかなかファンにはたまらない演出。多彩なアングルの映像を最新機器で編集、目まぐるしいライティングによってムードを一気に盛り上げる。シド時代から70年代初期までのフロイドが映像美と共に蘇ってウォーターズやギルモアとはちょっと違った趣向。
 さて、メンバーは上記のおじさん達(笑)で、しかもオーディエンスにとってはリアル・タイムに経験する以前の曲で、雰囲気は若者にアッピールするロック・バンドというよりはやはり回顧バンドという感じは致し方ない。

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 しかし、選曲は思った以上に凝っていた。アルバム『Obscured By Clouds雲の影』(1972)から三曲が登場しているのに驚いた。このアルバムは異色監督シュローダーの映画のサウンド・トラック盤だが、彼らの映像と音楽の関係の自信の表れのような作品集だ。取り上げられている曲「Obscured By Clouds」は如何にも映画音楽的で、又「Childhood's End」はブルージーで意外に面白い。更に前半のショーでの注目は、ロジャー・ウォーターズの肝いりの曲「If」を取り上げていたことだ。この曲は、ウォーターズの社会や人間への不安のスタート曲であり、諸々の暗示が歌われていて、後期ピンク・フロイドの幕開けでもある。しかもその間に「Atom Heart Mother原子心母」を挟み込んで、なかなか味な展開を見せ、後半には、やはり私が意外と好きなアルバム『モア』からの「The Nile Song」を演じたり、一方欠かせない「Echoes」を聴かせている。なかなかウォーターズとは別の世界観での違ったメイスンの心と意志が見え隠れしているように思う。

 地味なニック・メイスンの活動もこうして表に出てきて、なかなか味わいがあって良かったと思いながら視聴したところである。今年も継続してこのライブは行われるようで、各地での成功を祈りたい。

(評価)
□ 選曲、演奏   88/100
□ 録音      85/100

(試聴)

" Atom Heart Mother", " If (Reprise)"

*

Roger Watersの飛び入りの様子↓ (2019.4.18)

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