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2025年5月27日 (火)

ジョー・ロヴァーノ & マルチン・ヴォシレフスキ JOE LOVANO & MARCIN WASILEWSKI TRIO 「Homage」

叙情的流れの上にインタープレイと即興の展開の楽しさ

<Jazz>

JOE LOVANO & MARCIN WASILEWSKI TRIO 「Homage」
ECM ,  Universal Music / JPN / UCCE1215 / 2025

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Joe Lovano ジョー・ロヴァーノ (tenor saxophone except 6) (tarogato on 2, 3) (gong on 2, 3, 6)
Marcin Wasilewski マルチン・ヴォシレフスキ (piano except 4, 6)
Slawomir Kurkiewicz スワヴォミール・クルキエヴィチ (double bass except 4, 6)
Michal Miskiewicz ミハウ・ミシキエヴィチ (drums except 4, 6)

Manfred Eicher : Producer, Mixing Engineer
Maureen Sickler : Recording Engineer
Michel Hinreiner : Mixing Engineer 

録音:2023年11月18日ヴァン・ゲルダー・スタジオ(米ニュージャージー州イングルウッド・クリフス)

   米国のベテランのジャズ・サックス奏者、アルト・クラリネット奏者、フルート奏者、ドラマーであるジョー・ロヴァーノJoe Lovano(1952年12月29日 -  ↓左)が、我が注目のポーランドのピアノ・トリオであるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオ(クルキエヴィチ(b)とミキシエヴィチ(d)↓右)との共演で、ECMにて『Arctic Riff』(2020)に続く2作目が登場した。

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 このアルバムは、2023年晩秋のヴィレッジ・ヴァンガードにてスタジオ・セッションで録音されたものである。私は、もともと管モノはあまり聴かないのだが、マルチン・ボシレフスキのピアノとの繋がりとなると、なにはともあれ聴くことになったといっていいものである。ただ前作『Arctic Riff』が、叙情的な流れにある曲と演奏が印象強いので文句なく聴きたいと思うところにあった。
 なお、ジョー・ロヴァーノは、ECMとの関係においては、「この作品は、マンフレートとレーベルの歴史に捧げられたものだ。僕はECMの録音を聴いて育ったんだ。ECMは僕が一緒に演奏したいと思ったモノだったし、僕に多くの方向性を与えてくれた音楽だった」と語っている。

(Tracklist)

1. ラヴ・イン・ザ・ガーデン Love In The Garden 04:11
2. ゴールデン・ホーン Golden Horn 10:18
3. オマージュ Homage 08:00
4. ギヴィング・サンクス Giving Thanks (solo tenor saxophone) 02:26
5. ディス・サイド - キャットヴィル This Catville 12: 04
6. プロジェクション Projection (solo gong) (maybe solo cymbal?) 02:01

  アルバムの10分を超えるM02., M05.の長編曲2曲とタイトル曲M03.等を始め、一曲以外ロヴァーノのオリジナル曲だ。ロヴァーノがテナー・サックスとタロガトー(ソプラノ・サックスと似ている)を使い分け、又さまざまな打楽器をも交えている。

 タイトル曲"Homage "は、2023年の「ECM祝賀会」のために、マンフレート・アイヒャーの80歳の誕生日を祝う為に作曲したもの。そこでは、アヴィシャイ・コーエン、ティグラン・ハマシアン、ナシート・ウェイツとのカルテットでこの曲を演奏した。そしてこのアルバムでは、過去から繋がりがあり、そのセンスと技量を認めているマルチン・ヴォシレフスキ・トリオとの共演にて、造り上げたもので、この曲を中心にこの2度目の共同挑戦において、特に冒険心が前作より一歩前進している。前作に息づいていた叙情的流れを基に、ロヴァーノはトリオとの共演を通じて、自由に流れるようなインタープレイと即興の展開とそのパッセージの流れの彩をさらに探求している。

 一方、ヴォシレフスキは、自己のトリオとロヴァーノとの関係では、「ジョーとは最初から意気投合していたんだ。それは自然なことだった。彼は、その瞬間に飛び込んで、聴いたものは何でも一緒に演奏するタイプのミュージシャンだ。何年にもわたって一緒にツアーをすることで、ステージの上でも外でも、このつながりはさらに強くなった。彼の気さくさと自発性によって、真の音楽的対話が実現したのだ」と、語っている。そこには彼らの希有の表現力と精神的な意味での共調性がこのセッションの価値を高めていて、とりわけ冒険的な精神を抵抗なく発揮している。
 

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 冒頭のM01." Love In The Garden"は、ヴォシレフスキの提案の曲のカヴァーだが、前作の流れを感じさせ、ロヴァーノのふくよかにしてソフトなトーンのテナー・サックスの響きは、けだるさや物憂さも見せながら、「哀愁の歌心」にしっかり根ざした耽美性を描く。そして耽美性では負けないヴォシレフスキのピアノが、情景の印象を更に増すが如く流れる。
 10分以上の長編曲M02." Golden Horn"では、ロヴァーノのソフトなテナー・サックスの響きはパワーが加わり、ヴォシレフスキのピアノは、ダイナミズムの溢れる弾奏を展開しアヴァンギャルドなスパイスを聴かせる。中盤にロヴァーノはマルチン・ボシレフスキ・トリオによる即興的な曲展開を促し、そしてトリオは、自由にこの曲のイメージを作り上げる即興の妙を演じて味わい深い。
   又一方のM05."This Catville"の長編曲では、様相が変わって冒頭からのサックスとドラムスのインタープレイが面白く、中・後盤ではヴォシレフスキのピアノが前衛性を発揮。  
 タイトル曲M03. "Homage" の冒険性とアヴァンギャルドな展開はスリリングさもあって、ここでは稀有な曲であるが、アルバムの多様性にも貢献している。
   M06." Projection"は、サックス、ピアノ、ベース無しでのロヴァーノのソロでの世界(打楽器による)で、彼の体のリズムだと言う。これでこのアルバムを締めくくる。

 このアルバムは録音がなかなか良い。特にサックスの音は、中心でありながらもあまり前面に出るでなく少し後退している位置で広く響くスタイルをとっていて聴くに抵抗ない。トリオもただ広がるのでなく中央よりでありながらホール感の中にいて聴きやすい。そして音質も良く、これはなかなかの録音として高評価したい。さすがアイヒャーの元でのミックスも見事である。

(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音     : 90/100
(試聴)

 *

 

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2025年5月22日 (木)

ペトロス・クランパニス Petros Klampanis Trio 「 Latent Info」

安らぎを持ちながら心に響いてくる現代ジャズ

<Jazz>

Petros Klampanis Trio 「Latent Info」
enja / Import / ENJ9864 / 2025

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Petros Klampanis: bass, electronics
Kristjan Randalu: piano
Ziv Ravitz: drums

   地中海に臨むギリシャのアテネとNYを拠点に置くベーシスト、ペトロス・クランパニスPetros Klampanisが2つの文化をベースに新生ピアノ・トリオを結成しての最新作。メンバーはエストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダルKristjan Randalu(2019に共作、下右)とイスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツZiv Ravitz(下左)というなかなか強力なミュージシャンによる作品。
 ジャズ界でのベーシストが造り上げる世界は、美しい世界観が溢れている場合がなんとなく過去に於いて多かった印象がある上に、私にとってはアルバム・リリース15年に及ぶキャリアのある彼のリーダー作は、今までの評価もあっておおいなる期待感がある。

Petros_klampanisw  ペトロス・クランパニス(→)は、ギリシャ出身のジャズ・ベーシスト、作曲家、編曲家、プロデューサーであり、現代ジャズ界で国際的に高い評価のあるアーティストだ。1981年、ギリシャのザキントス島に生まれ(現在44歳)、地中海とバルカンの民俗音楽に囲まれ、当初はアテネの工科大学に進学したが、音楽への情熱から中退、2005年にアムステルダム音楽院でコントラバスの演奏を学び始めました。その後、2008年にニューヨークのアーロン・コープランド音楽学校で正式な音楽教育を修了した。
 現在はニューヨークとアテネを拠点に活動し、ジャズ、クラシック、地中海・バルカンの民俗音楽、ポップスなど多様なジャンルを融合させた彼独自の音楽スタイルを展開。所謂ジャンルを超えた音楽的探求で、現代ジャズに新たな風を吹き込んでいる。彼の音楽は心に響く作品という評価があっている。

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(Tracklist)

1. Over the Calypso Deep (Petros Klampanis)
2. Latent Info (Petros Klampanis)
3. Stenahoria (Petros Klampanis)
4. Menerbes (Ziv Ravitz)
5. When I Know the Answer (Kristjan Randalu)
6. Falling Grace (Steve Swallow)
7. Day Breaks (Mikis Theodorakis)
8. Disoriented (Petros Klampanis)

 聴いてまず感ずることは、ベーシストのピアノ・トリオであるだけに、ベースの響きが一般のトリオものより位置が大きい。収録曲の構成は、上記のように、クランパニスのオリジナル4曲に加え、ランダ1曲、ラヴィッツ1曲を提供し、その他2曲だが、全てクランパニスが編曲を加えてこのアルバムの彼の描こうとしている世界に色づけしている。

 アルバム・タイトルは”潜在情報”と訳せば良いのか、このテーマは、“目に見えないまま、潜在的に隠れたまま、生活の喧騒の中でしばしば無視されたり気づかれずに残されたりするすべてのものに対する心からの賛辞”だというのである。このあたりからなかなか普段は考えてもみないところに思いを馳せる。まさにある意味哲学的世界すら思わせるが、曲はそんなに難しくなく優しく展開するので聴きやすい。

 冒頭、幼い女子の声らしきが聞かれ、ちょっと驚くM1."Over the Calypso Deep"は、ベースが響くリズムにバックに静かに広大さを描くエレクトロニクスを配しての美しいピアノの響きで、Calypsoとなるとギリシャ神話に登場する海の女神ということで、海のその偉大さや神聖さへ畏敬なのか、この曲がアルバムのテーマの象徴として登場している。続く曲にもこの流れは続き、ラヴィッツの曲M4."Menerbes "においても、まったく違和感なく、どこか敬虔な気持ちを誘導する世界が続く。更にランダのM5. "When I Know the Answer"では広がる展望が見えてくるようだ。
 M6. "Falling Grace"ここに来て、ベースとドラムスのデュオで進行、ベースの響きのバックにシンバル音が響きクランパニスの聴かせどころだろう。
 M7. "Day Breaks" この曲は、トリオにAndreas Polyzogopoulosのトランペツトが加わってガラッと印象が変わるも、静かに深遠なる世界を描くところはこのアルバムの一つのまとめ方なのかもしれない。
 M8. "Disoriented" どこか優しく締めくくる。

 全編45分ぐらいに纏められていて、聴いていくとあっいう間に終わってしまう印象だ。三者共に控えめな演奏での共演でありながら物事の観察の奥深さを感じさせ、暗さのない世界を描きつつ敬虔な気持ちを抱かせる見事なアルバムだ。一日を精一杯過ごし、一人になったときに耳を傾けると、安らぎを持ちながら心に響いてくるものが感じられるアルバムである。

(評価)
□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   88/100

(視聴)



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2025年5月17日 (土)

ラファ・アセベス Rafa Aceves Trio 「Emeki」

繊細に優しさの中で描くジャズのエレガンスが満ちて

<Jazz>

Rafa Aceves Trio 「Emeki」
Errabal Jazz / Import / GHER17002 /2025

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Rafa Aceves (p)
Marcelo Escrich (b)
Hilario Rodeiro (ds)

 私にとっては初物だ。このアルバムはスペインの注目のピアニスト、ラファ・アセベスRafa Acevesが、ベアサインのスタジオ「ポトコPottoko」でマルセロ・エスクリッヒ(b)とヒラリオ・ロデイロ(ds)とのピアノトリオによる演奏のデビュー作品。
 ◆ラファ・アセベス(↓左)は、スペイン・ビルバオ出身のジャズ・ピアニストで、1992年からプロとしての活動して30年以上のキャリア。独学で音楽を学び、後にバスク地方の音楽高等教育機関Musikeneでジャズ・ピアノ演奏を専攻し、学位を取得している。彼は作曲家、編曲家、セッションミュージシャンとしても活躍し、映画やテレビ、ドキュメンタリーの音楽制作にも携わっているようだ。このアルバムは純粋なジャズの美学と即興性を追求し、自分自身のアイデンティティの表現を探求した正統派ピアノトリオ作品と評価がある。
 ◆マルセロ・エスクリッヒ(↓中央)は、アルゼンチン生まれで、ギターを習得してロック、ダンスミュージツクを演じ、スペインに来てコントラバスでジャズに傾倒、ナバラの高等音楽院、公立大学で学位、修士号取得。現在ナバラ音楽院の臨時教授で教育者としても活躍。人気のあるミュージシャンの一人であり、様々なプロジェクトでのコラボレーションに多作なキャリアがある。
 ◆ヒラリオ・ロデイロ(↓右)は、スペイン北西のガリシアの作曲家、プロデューサー、ドラマーである。現在いろいろなプロジェクトに参加していて業績を積んでいる。BBKアワードの最優秀アルバム賞(R.S. Faktor)、バルセロナ・ジャズ・コンサート賞(Citric)、音楽アカデミー賞(ママ・カブラ賞)などの受賞した経歴がある。

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(Tracklist)

1 Whisper Note (Beni Golson)
2 Blue In Green  (Bill Evans)
3 In Love In Vain    (Jerome Kern)
4 Over the Rainbow  (Harold Arien)
5 Marian        (Rafa Aceves)
6 Dolphin Dance    (Habie Hancock)
7 Never Let Me Go  (Jay Livingston)
8 La Tarara      (Federico Garcia Lorca)

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 まず聴いてみてとにかく静かな快感ですね、気持ちは落ち着き、これぞジヤズのエレガンスの世界だと感じ取れる。アセベス自身のオリジナル曲はM5." Marian"だけだが、これは妹へのオマージュの作品のようで、そこに至る経過は不明だが、これな何と優しさあふれたメロディーの美しい曲と演奏なのである。
 このアルバムの説明には、「純粋なジャズのエレガンスで瞬間を再現する以外に何の技巧もない、誠実なアルバム」とか「自分自身のアイデンティティの探求を中心に展開する作品」そして「確固たる前提と、即興による再現不可能な瞬間との出会いの提案を備えた、繊細なアルバム」とあるが、まさにその通りで私にはそれ以上にいろいろと語る術(すべ)がない。
 冒頭のアメリカのサックス奏者、作曲家、アレンジャーのBeni GolsonのM1."Whisper not "は、トリオの演奏技量を示しているような編曲・演奏でご挨拶代わりに訴えてくる。続くビル・エヴァンスとマイルスのアルバム『Kind of Blue』のM2."Blue in Green"の登場には驚くが、フォーンものなしでの世界に何ら疑問なくピアノトリオとして演じているのが面白い。
 ここでちょっとパターンの変わったM3."In Love In Vain"も難なく即興性を熟している。
 M4."Over the Rainbow"は、一層ジャズ・ルバート演奏が楽しめる。ロディロのブラジも効果的。そして美しいM5.に続いてM6." Dolphin Dance"は、誠実なハンコックだ。M7."Never Let Me Go"こんな繊細にして安定感の中の美なんですね。そして締めのM8."La Tarara"は、完璧なオーソドックスなピアノ・トリオだ。

 とにかくクラシックとは異なったジャズだからこそのその優しさの中の誠実性、安定感、純粋性、即興性などを感じ取って聴く、ちょっと私のスペインの印象とは全く異なった世界を印象付けられたアルバムだった。選曲もジャズの名曲をしっかりカヴァーして、即興の妙も織り込んで自分の世界を構築している。こうなると2ndアルバムに期待してしまう。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 :    90/100
□   録音       :    87/100

(試聴)

 

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2025年5月12日 (月)

ビル・エヴァンス BILL EVANS 「FURTHER AHEAD - Live in Fland 1964-1969」

またしてもゼヴ・フェルドマンの発掘モノの公式リリース

<Jazz>

BILL EVANS 「FURTHER AHEAD - Live in Fland 1964-1969」
Universal Music /JPN / UCCJ-3054/5 / 2025

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◇Bill Evans(p), Chuck Israels(b), Larry Bunker (ds) 1964
◇Bill Evans(p), Niels-Henning Ørsted Pedersen(b), Alan Dawson(ds)
 Lee Konitz(as on B3) 1965
◇Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Marty Morell (ds) 1969

1200x680_nsbill_evansw  ジャズピアニストの巨匠ビル・エヴァンス(William John Evans、1929年8月16日 - 1980年9月15日 →)による未発表の演奏を集めた新作『Live in Finland (1964-1969)』が、2021年にResonanceから発掘事業が引き継がれたElemental Musicから180gの限定2枚組LP、そして2CD(直輸入盤仕様)として発売された。このところ毎年の行事のように未発表音源の公式リリースでファンを喜ばせているわけだが、歴史的な貴重なレコーディングを集めたりしてCDとして発売するレーベル Resonance のプロデューサー のゼヴ・フェルドマンがビル・エヴァンス・エステートの協力を得てプロデュースしたものである。

 この『Further Ahead』は、60年代のエバンスの"スカンジナビア・ツアー"中に録音された曲群だ。「1964年のヘルシンキ公演」(ベーシストのチャック・イスラエルスとドラマーのラリー・バンカーを含むトリオと共演)、「1965年のヘルシンキ公演」(ベーシストのニールス・ヘニング・オーステッド・ペダーセンとドラマーのアラン・ドーソンがサポート、スペシャル・ゲストのリー・コニッツ(as)をゲストに迎えた)、そして「1969年のタンペレ公演」(ベーシストのエディ・ゴメスとドラマーのマーティ・モレルとの最も長く活動しているトリオ)で、フィンランドで行われた3種のライヴ音源をコンパイルされていて彼の力の絶頂期を聴くことがことができる。
 そしてアルバム・ブックレットには、エヴァンス研究家として評価の高いマーク・マイヤーズによるライナーノーツと、長年のトリオ・メイトであったベーシストのエディ・ゴメス(下左)、ドラマーのマーティ・モレル(下右)らによるインタビューやコメントをも収録して充実。

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(Track List)

Track List
Disc 1
01. HOW MY HEART SINGS   04:29
02. COME RAIN OR COME SHINE  04:55
03. NARDIS     05:31
04. AUTUMN LEAVES    05:13    
05. FIVE                      02:43
06. DE TOUR AHEAD     05:53
07. COME RAIN OR COME SHINE 05:32
08. MY MELANCHOLY BABY          08:20

Disc 2
01. VERY EARLY                 05:26
02. WHO CAN I TURN TO?  05:52
03. 'ROUND MIDNIGHT       07:08
04. GLORIA'S STEP             05:20
05. TURN OUT THE STARS   05:09
06. AUTUMN LEAVES           05:40
07. QUIET NOW                  05:56
08. EMILY                           05:54
09. NARDIS                       10:34

(CD1:1-5)
BILL EVANS piano, CHUCK ISRAELS bass, LARRY BUNKER drums.
Recorded live in Helsinki, Finland, August 13, 1964.
(CD1: 6-8)
BILL EVANS piano, NIELS-HENNING ØRSTED PEDERSEN bass, ALAN DAWSON drums, LEE KONITZ alto sax (on B3 only).
Helsinki Jazz Festival, Helsinki, Finland, November 1, 1965.
(CD2)
BILL EVANS piano, EDDIE GOMEZ bass, MARTY MORELL drums.
University of Tampere, Tampere, Finland, October 28, 1969.

Produced for Release by ZEV FELDMAN.
Executive Producers: JORDI SOLEY and CARLOS AGUSTIN CALEMBERT.
Associate Producers: MARTIN ARIAS GOLDESTEIN and ZAK SHELBY-SZYSZKO.
Originally produced and recorded by the Finnish Broadcasting Company YLE.

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 上のリストにあるように、なかなか演じている曲は魅力的で、良き掘り出し物感がある。
 ライブ記録ものであり、まず「1964年ヘルシンキ」は、スタートと同時に拍手音を聞くが、それが雑音ぽい響きで、いやはやこの音だと今回のアルバムはサウンド的にはかなり難があろうことを予測させる。案の定1964年のM01"HOW MY HEART SINGS"  如何にもダイナミック・レンジの狭い音でちょっとがっかり、今までにリリースされてきた発掘シリーズの中では音は貧弱な方だ。まあこの曲3者の音の分離は良くて歴史的音源を知るという意味での価値は十分、ただ愛聴盤という音でない。高音を伸ばし音質改善にはそれなりに苦労があったのだろうと推測はするがあくまでもその程度だ。
 私的にはM04."AUTUMN LEAVES "M05."FIVE "は、かなりの速攻型であるが、バンカーの手さばきの良さと共に、エヴァンスのピアノは意外に叙情型でうなずきながら聴いた次第である。続いて「1965年もの」に入るが、M06." DE TOUR AHEAD"の若きペデルセンの意外にぐっと落ち着いたベース音に、ピアノの流れもバラード調になっての演奏がお気に入りだが、 M08."MY MELANCHOLY BABY "のサックス音、ドラムス・ソロを聴いてみても、やや録音の質は、音にこちらの1965年の方が幅が出ている
 又" AUTUMN LEAVES "も2つ聴けるが、1964年より1969年の方は、トリオ結成1年経過があってのもの、どこか更に手慣れた演奏を感ずる。
 いずれにしても3つのコンサート、3つのトリオが聴けて、この5年間の進化がエヴァンス流のトリオの考え方にそってにじみ出て聴けるところが意味あるところだ。
 「1969年のタンペレでのコンサート」は、エディ・ゴメスとマーティ・モレルの最も長く続いたエヴァンスのトリオらしく、エヴァンスの創造性が生きている。ゴメスは、直感的にエヴァンスの鼓動に共鳴する様は手慣れているし、M02."WHO CAN I TURN TO?"のように、本人の演奏の楽しみが伝わってくるのが良い。モレルのドラミングは歯切れがよくスリリングで、特にアップテンポの推進力は見事。ここでは聴き応えのあるのはM09."Nardis"で、エヴァンスの叙情的なイントロから始まり、それを引き継いでのゴメスの流れも実に呼応していて本来のメロディーに入っていくところが感動だ。モレルのドラミングはダイレクトにアクティブなソロで迫りながら、エヴァンスが演じやすい世界に橋渡しを提供している感があってそんな良好な繋がりが聴き取れる。とにかく落ち着いた安定感の中の秘めた創造的な意欲性が良いですね、さすがです。

 60年代のエヴァンスものは、公式リリースでないブートでもいろいろと過去に沢山出てくるのだが、録音などいまいちであって、いろいろと難があるのが残念である。そうした中でもフェルドマンの発掘努力と音質などの改善努力をしてのこうしたリリースは過去においても評価のあるところだが、今回も音質にはいまいちの処もあるものの当時のものとしてはやむを得ないところとして、楽しませてもらった意味で歓迎すべき代物であった。

(評価)
□ 演奏   88/100
□ 録音   75/100

(試聴)

"Nardis" 1969

 

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2025年5月 7日 (水)

「ピンク・フロイド伝説-LIVE AT POMPEII」 5回目のお披露目 Pink Floyd「AT POMPEII ‐ MCMLXXII」

究極の最終形は・・・期待に耐えうるか

<Progressive Rock>

PINK FLOYD AT POMPEII-MCMLXXII
(BLue-Ray)  Sony Music / Jpn / SIXP-51 / 2025

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Music : Pink floyd
Recorded in the Roman Amphitheatre at Pompeii, 4-7 Oct. 1971

 1971年10月、イタリアのポンペイ遺跡で収録されたピンク・フロイド伝説のライヴ・パフォーマンスの映像版は、1972年9月2日に英国映画祭で初公開されたもので、プログレッシブ・ロック・バンドとして日本に定着することとなる大きな切っ掛けとなったものだ。それはどうした経過かは今となっては解らないが、1973年3月17日にNHK総合テレビ「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されたことによる。日本では英国ロックとしてビートルズは知られていたが、一つの重大分野でもあった所謂プログレ御三家のピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエスといったところまでは、今の時代のような情報はなかなか浸透するまでには時間がかかった。このNHKの映像には日本のロック・ファンへの大きな刺激をもたらした。こんなロックがあるのかという若きものにとっての関心は大きかった。それでもこの時は既にピンク・フロイドは過去に7枚のアルバムをリリースしていて(1970年アルバム『ATOM HEART MOTHER原子心母』で日本でもプログレッシブ・ロック・バンドとして定着していた)、私にとっては、1968年の『神秘』以来、リアル・タイムに聴いてきたバンドであるが、なんと現在でもロック界最高のセールスを示したアルバムであり彼らの頂点であった『The Dark Side of The Moon 狂気』の8枚目がリリースされる年であったのだ。それまで日本でピンク・フロイドは知る人ぞ知るバンドにはなってはいたが、それは少なくとも来日した「箱根アフロディーテ」(このポンペイの録画の2ヶ月前)のライブが大きかったと言える経過であった。

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 いずれにしても、ある程度の年月が経つと必ずもち上がって来るのがこのポンペイ・ライブものだ。ライブものとはいっても観衆なしのポンペイ遺跡の“世界遺産”古代ローマ「円形闘技場」でのピンク・フロイドの無観客ライヴ・パフォーマンスものである。
 そしてこの映像版は勿論現在も世界的にも"人気ロック・ライブもの"として君臨している。そして又今年2025年に新盤の登場となったもので、少なくとも最初からは主に5回の手が加えられて、40年以上の経過を経てきたモノで、それは以下のような経過である。
   ① 1972年   60分もの Edinburgh Film Festival(映画祭)の公開映像版「Live at Pompeii」
   ② 1974年 80分もの 劇場公開版「Live at Pompeii」(+studio映像)
         1976年 初めてのパッケージ化 (ベーターマックス版「ピンク・フロイドの幻想」)
       1981年 広く一般パッケージ化 (Leser Disc版, VHS版)
   ③ 2003年   ニューバージョン化「Live at POMPEII - The Director's Cut」
   ④ 2016年 「The Early Years 1965-1972」収録「Live at Pompeii」5.1ch化
   ⑤ 2025年 「PINK FLOYD AT POMPEII MCMLXXII」( 2025リミックス)

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 ①は、モノラル録音盤であったが、②はアルバム『狂気』録音中のアビー・ロード・スタジオで撮影されたフッテージを追加して80分に拡大され劇場公開された。しかしなんと、前に触れたように、その前の年の1973年にNHK総合テレビで放映され、これは世界でも最も早い一般公開であり、それはこの最初の60分ものであったが、私にとってはなかなかそれまでは彼らの姿をじっくり見るという状況にもなく手段もなかったわけで、モノクロで興奮して見たのが懐かしい。彼らのヴェスヴィオ火山を四人で歩く姿が又印象的であった。そしてその後、誰もが自分の意思で見れるようになったのが1976年のビデオ・テープのベータマックス版、1980年代になって、VHS版とレーザーディスク版として市販されたことによる。そのLD版は今も持っている代物であり、私は①②もDVDに記録されたモノを持っていて、今も比較鑑賞できる。
 そして③2003年には、新盤として「Live at POMPEII - The Director's Cut」が発売された。これは更に手が加えられスタートのイントロ映像には人工衛星の打ち上げシーンなどが加えられ、又CGなどや火山爆発の被害映像などが加えられワイドスクリーン化してのモノだった。
 そして更に2016年には、ピンク・フロイドの箱物の記念版の「The Early Years 1965-1972」が発売され、そこに収録された「Live at Pompeii」のサウンドは、ジェイムズ・ガズリーによる5.1ch化が行われたものであった。私は取り敢えずここまででフロイドのポンペイものは完璧と思っていたのである。
 こうしてこのように一定の年が経過すると何度も何度も手が加えられ、このポンペイ・ライブの映像・サウンドモノはリリースされてきたところであるが、ここに来て何と主として五回目の改良版「POMPEI」が発売されたわけである。

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 今回の目玉は、まず基本は「MCMLXXII」というタイトルにあるように、これは「1972」という意味で、これはこの映像の初公開の年を示したもので、原点回帰したものだと言う事である。それは近年最も普及した2003年の「The Director's Cut」版は、いろいろと手を入れすぎた感があって、演奏映像の途中に別のイメージ映像が入ったりで、かえって手が込んだ割にはファンは納得しなかったところも多々あった。つまりオリジナルのライブそのものの映像に魅力に期待が大きいということであって、従って、今回は当初のオリジナルに戻って画像の4K化による改善を施し、サウンドはキング・クリムゾンもののサウンド・エンジニアで知られており、自らもロック・ミュージシャンとして活躍もするスティーヴン・ウィルソンの手によるリミックス(Dolby Atmos、5.1 Dolby TrueHD Surround [96k/24b]化)された"究極の「POMPEI」モノ"としてリリースされたのである。内容は以下の通りである。

2cdbd_packshotw ■2CD+BD収録曲
<CD1>
1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1
3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
4.神秘 A Saucerful of Secrets
5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days
6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun
7.マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs
8.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

<CD2>
1.ユージン、斧に気をつけろ Careful With that Axe, Eugene - Alternate Take
2.神秘 A Saucerful of Secrets - Unedited

<Blu-ray>
Feature Film
1. ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2. エコーズ (Part 1) Echoes Part 1
3. 走り回って On The Run (studio footage)
4. ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
5. 神秘 A Saucerful Of Secrets
6. アス・アンド・ゼム Us and Them (studio footage)
7. 吹けよ風、呼べよ嵐 One Of These Days
8. マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs
9. 狂人は心に Brain Damage (studio footage)
10. 太陽賛歌 Set The Controls For The Heart Of The Sun
11. エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

Concert
1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1
3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
4.神秘 A Saucerful of Secrets
5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days
6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun
7.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

Audio Specs:
2.0 Uncompressed LPCM Stereo [96k/24b]
5.1 Dolby TrueHD Surround [96k/24b]
Dolby Atmos [feature only]
Feature film run time: 1:24:58
Concert run time: 1:02:45

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 確かに無観客のライブものというのは、極めて当時のロック・ライブ映像としては珍しいモノだ。私は今は見慣れてしまって不思議に思わないのだが、初めて見たときは非常に異様に感じたものである。当初は撮影監督のエイドリアン・メイペンは、ピンク・フロイド・ミュージックの特異性から、絵画作品とピンク・フロイドの姿を融合することを考えたようであるが、ポンペイ遺跡を知ってこの情景との融合に思いを馳せたようだ。ロックというのは大観衆と共に盛り上がるものであるのが一般通念で、それを逆に無観衆という世界は、一般通念と異なるところに意味があり、このバンドの性格との一致性の試みは見事に成功した作品である。

 ピンク・フロイドが世界的にプログレッシブ・ロックとして浸透したのは1970年のアルバム『ATOM HEART MOTHER 原子心母』からであり、これは彼らがむしろ収拾の付かない曲としてあきらめていたものであり、更に又彼らは分裂の危機にもあった為、リーダーであったロジャー・ウォーターズが友人の実験音楽家のロン・ギーシン(その時、ウォーターズの力を借りてアルバム『Music from"THE BODY"』をリリースしている)に預けて、ギーシンがチェロ奏者、10人の管楽器奏者、20人の合唱団を起用してロック交響楽組曲を造り上げたもので、圧倒的支持を得た。更にこのアルバムでは、ギルモアのギターが曲"Fat old sun"で開花し、ウォーターズは、曲"If"で彼の"不安"を初めてオープンにして、以降のピンク・フロイドの方向性をスタートさせたモノだ。これからピンク・フロイドの一つの道が開け、このポンペイ・ライブは1971年のアルバム『Meddle おせっかい』の製作に関わった世界であり、「Careful With That Axe, Eugene」というシド・バレットと決別後の常連・歴史的曲から「エコーズ」「神秘」「吹けよ風、呼べよ嵐」といった極めて重要な曲がフィーチャーされ、円形闘技場の昼と夜両方の姿を捉えた神秘性のあるビジュアルは、かれらの日常から超越した演奏が作り出す幻想性をさらに強調している。そんなピンク・フロイドの重要な時期のライブがポンペイなのである。これが次のロジャー・ウォーターズ主導の始まりであった最高作品『The Dark Side of The Moon 狂気』(1973年)に繋がってゆくモノであった。

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   ロックというのは、時代を反映したミュージックでもあり、その時代を考察しないとその意義が十分に理解できない。ピンク・フロイドもこの時代から頂点に立った時代以降は、欧州社会は困惑の様相を示し、英国の経済の破綻はひどく、社会混乱も最悪の情勢を迎える。従つてピンク・フロイドを代表するプログレッシブ・ロックはパンク・ロックの台頭により否定され潰されてゆくのは自然の姿だつた。しかしプログレ界でただ一つ其れをものの見事に克服したのはピンク・フロイドでもあった。社会に目を向けずにロックは存在感はなく1977年アルバム『Animals』によって更なる存在価値を高め支持を拡大した経過(これが解らなかったのは当時の日本の音楽評論家で、"エコーズ"にピンク・フロイドの世界が留まって、発展の意味が解らないレベルだった事を知っておくべき。ロックは最高を続けるのでなく時代に相応して常に発展する宿命にある) が、これから以降のピンク・フロイドの歴史になるのであるが、それを知る意味でも、その前期のこの姿は一つの頂点として今でも貴重であり愛され続けているのである。

 こんな歴史的時期の表現でもあるライブものである「ポンペイ」はピンク・フロイド彼らを知る重要なものであり、人気も高い。したがって今回の最高と言われるサウンドと映像は貴重であるので、新しい発見のあると言うモノではなかったが、これはこれとして大きな意義あるモノとして捉えたわけである。

(評価)
□ 曲・演奏・作品の価値 : 90/100
□ 音質・映像の改善価値 : 90/100

(試聴)

 

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2025年5月 2日 (金)

イェスパー・サムセン 「Jasper Somesen Invites Anton Goudsmit Live!」

ギターとベースのデュオの描くジャズの新しい道が感じられる

<Jazz>

Jasper Somesen Invites Anton Goudsmit Live!
(CD)CHALLENGE RECORDS / Import / CR73592 / 2025

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Jasper Somsen - Double bass
Anton Goudsmit - Guitar

録音:2024年2月22日、Loburg(ヴァーヘニンゲン、オランダ)

 ここでも取上げたエンリコ・ピエラヌンツィとの共演で(Enrico Pieranunzi& Jasper Somsen 『Voyage in Time』Challenge Records /CR73533 / 2022)、私も意識しているようになったオランダの名ベーシスト、イェスパー・サムセン(下左)が、今回はアムステルダムを拠点に活動するギタリスト兼作曲家のアントン・グーズミット(下右)を招待して行ったライヴ・レコーディング・アルバムである。
   このサムセンの主導で作られたアルバム『Voyage in Time』は、クラシックのニュアンスを旨く生かし、ピエラヌンツィのピアノと共に素晴らしいアルバムを造り上げていたので気になっていたのだが、ここにギターとのデュオということで、これまたいかなる世界を構築するのかと興味津々というところである。

 これは2024年2月にヴァーヘニンゲンのライヴ・カフェ&バー「Loburg」で行われたライヴ録音で、美しい音色、スリリングな展開、軽妙な気まぐれと抑制された静けさなどと表現される評価があり、期待を倍増させられた。

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 イェスパー・サムセン(1973-)は、オランダのコントラバス奏者、作曲家、プロデューサー。ジャズとクラシックの両方のコントラバス奏者としての資格がある。ジャズミュージシャンとして彼の関心と専門分野には、クラシック、ポップ、ワールド、映画音楽、演劇作品へのクロスオーバーも含まれていて、国際的なジャズシーンで活躍するミュージシャンたちと共演してきている。そしてChallenge Recordsのアーティストであり、有名なスタジオプロデューサーでもある。又ポルトガルのジャズとファドのボーカリスト、マリア・メンデスと共にオランダのEDISON AWARD 2020(ジャズ/ワールドミュージック)を受賞し、又過去に4回、アメリカングラミー賞とラテングラミー賞の両方にノミネートされた。アルバム、ビデオ、映画音楽のスコアは50以上。 アーネム(オランダ)のArtEZ芸術大学で教育者を務め、故郷のワーヘニンゲン文化都市財団のゼネラル・ディレクターを務めている。

 一方、ギタリストのアントン・グーズミット(1967-)は、自らのオリジナル曲ばかりでなく提示された音楽演奏でも評価が高く、非常に人気のあるプレーヤーである。2001年、NPSラジオから委嘱された彼の作曲シリーズを演奏するために、プロクトーンズPloctonesを結成し、非常に創造的で革新的なグループとして浮上し、グルーヴと即興を組み合わせ演奏する。また、ニュー・クール・コレクティブやエリック・ヴロイマンスのフギムンディ・トリオ(2008年と2010年のアメリカ・ツアー)でも国際的に演奏している。オランダのジャズシーンでの貢献と地位が認められ、2010年に憧れのボーイ・エドガー賞を受賞した。

   

(Tracklist)

1.Blue Anton 17 (A. Goudsmit/T. Monk)
2.Strange Meeting (B. Frisell)
3.Ernesto (A. Goudsmit)
4.Let’s Stay Together (A. Green/ W. Mitchell/A. Jackson)
5.Nuages (D. Reinhardt)
6.Bye-Ya (T. Monk)
7.Desberato (A. Goudsmit)

 アルバム・タイトルからして、これはサムセンの企画でのグーズミット招請によるデュオと思われるが、グーズミットの曲が3曲演じられており、又印象はやはり全体にギターによるリードが目立っていて、それが又インパクトのある攻めの演奏を極めて安定感のある世界にありながらスリリングな印象を与えるという不思議なところにあって極めて印象深い。
 又ベースの音が極めてソフトに心地よいのだが、ギターが鋭さを示す抑揚が見事でクリーンな音で迫ってくる。それもじっくりとした間とメロディーの関係が見事で、深くむ引き込むのが旨い。

 スタートがM1."Blue Anton 17"がブルース・ギターで、その音・ムードでまずは好き者を引っ張り込む。中盤のベースの主導メロディーが優しく演ずるも、ギターが刺激を加えるところが面白い。
 M2."Strange Meeting"でのギターのうねりには驚き。
 M3."Ernesto"は感情の渦巻きを両者の回転性のかかわりによっての表現が面白い。
 M5."Nuages" ここにまで手を伸ばし、宇宙感覚に誘導しこのアルバムの頂点に。
 M6."Bye-Ya"では、かれらの余裕の場と化して遊び心も感じさせる。
 M7.".Desberato "繊細にして、間を生かしての味に痺れる。

 やっぱりベーシストと言うのは、ピアニストとかギタリストを泳がせるのが旨いですね。メロディーを流してリードしているつもりが、なんとなくベーシストの術中にはまっているような展開にも誘導されつつも、次第に本性を発揮させられてしまう。そんな印象でギターが、冒頭のブルース味で聴く者を引っ張り込んで、一般的ジャズ・ギターからロック寄りの音も出して楽しませてくれつつ、モダン・ギター・ジャスの一つの方向も感じさせ、又いつの間にか彼らの術中に聴く我々もはまってしまって、ジャズとベースのデュオの世界の面白さも感じ取れるのだ。

(評価)
□ 曲・編曲・演奏  90/100
□ 録音       88/100

(試聴)

 

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