キカ・スプランガース Beiggja 「Morning」
オランダそしてノルウェーの美学が感じられる瞑想の世界
<Contemporary Jazz>
Beiggja 「Morning」
HUBRO / IMPORT / HUBROCD2671 / 2025
Kika Sprangers – saxophone
Kjetil Mulelid – piano
Mats Eilertsen – double bass
Per Oddvar Johansen – drums
Recorded February 20 and 21 2024 by Per Oddvar Johansen in Sleaskjulet, Lommedalen
Mixed and mastered by Per Oddvar Johansen in Sleaskjulet, Lommedalen
Produced by Beiggja. Sleeve art by Aslak Gurholt
ノルウェーのスーパーグループ「Beiggja」(日本語では「両方」という意味か。オランダの若き女性キカ・スプランガース(Sax ↓左)に、ノルウェーのケイティル・ムレリド(Piano ↓左から2人目)、マッツ・アイレットセン(Bass ↓左から3人目)、ペール・オッドヴァル・ヨハンセン(Drums ↓右)の3人を加えたカルテット)のデビュー・アルバムである。私にとっては、ピアノのムレリドとかベースのアイレットセンは既に愛聴してきた北欧ミュージシャンで一目も二目も置いているのであるが、そこでここにこのようなカルテットとしての登場は注目せざるを得ない。
しかし実は更なる注目は、女流アルト・ソプラノ・サックス奏者のキカ・スプランガース(1994年生まれ)のノルウェーのトリオとの組み合わせだ。私は彼女に関しては、初めてといって良い状態だが、紹介では、彼女の音楽の核心を特徴づけるは深い静けさを捉えること、そして彼女の手法は、弱さと強さを融合させることと評されているようだ。その為今まで組む演奏グループが独自のパターンを貫いていて、更にインパクトのある芸術的選択をするという演奏が印象深いという。
そして昨年(2024年)の晩冬、このグループのメンバーのそれぞれの才能豊かで創造性の豊かな四人は、ヨハンセンの自宅があるロンメダーレンというところに集まった。そこは人里離れた深い雪に覆われた森の中にあり、そこのスタジオに二日間こもってセッションを行った。ここにはそれぞれが曲やアイデアを持ち寄ることにより、その結果素晴らしい出会いとなったのであった。彼らの探求的な演奏は見事な相互作用が構築されレコーディングに発展し、このアルバム『Morning』となったという。
そしてこの夏には、このカルテットでノルウェーとオランダをツアーする予定にもなっていると言う事だ。
(Tracklist)
1. Swims (Sprangers)
2. Morning (Johansen)
3. What If (Sprangers)
4. Love Story (Mulelid)
5. Tuvals (Eilertsen)
6. Encore (Mulelid)
7. Far (Sprangers)
8. Love Cycle (Johansen)
9. Swims II (Sprangers)
このカルテットはアイラットセンとヨハンセンがオーケストラとの共演した事がスタートの経過であるようだが、4人のミュージシャンは、おそらく知る範囲での共感的なものがあってのこのセッションに至ったのだろうと推測する。そのためにお互い曲を提供しているが、その相互作用は自然であってしかもお互いに有益であり、このカルテットの自発的な創造性を互いの好奇心を持って推し進める事が出来たと言う事だろ。結果は同じテイクはなく、それぞれが独自の方向に進んで行ったのだとメンバーは言っている。
このアルバムはどちらかというと、私の好むところの瞑想的な世界で、非常に優しいメロディーの9曲を収録していて、集まった厳しい冬の季節を描いているのか、春のような明るい展望的でリズミカルなものでなく内省的な方向に流れる。ただ暗く沈鬱なというものでもなく、むしろ明るさの感ずる中での静かさというものは、むしろお互いの暖かな人間関係の充実感に繋がっているようにも感ずるところが魅力。
曲はスプランガースが4曲提供して最も多い。やっぱり彼女の意思が最も強いのかもしれない。その冒頭M1." Swims "の曲から感ずることだが、彼女自身の曲でもあるせいかアルト・サックスの優しく広がるような幽玄な音色は、この世界をそのまま描いているように感じ、このアルバムの流れを造り上げている。管モノは敬遠しがちな私でもゆったりと聴ける。そしてそれをムレリドのピアノがサポートして、印象は瞑想的な世界に運んでくれるのだ。
続くヨハンセンのぐっと引きつけられる美メロディーが光るバラードのタイトル曲M2."Morning"、ピアノ、サックスが美しい。
ピアノ・ソロによる導入と静かにメロディーを流すM3."What If "。
そして最も4者のインプロの交錯がさえるM4."Love Story"、ここではサックスも珍しく挑戦的。ベースとピアノが面白いアイラットセンのM5."Tuvals"は、このアルバムでは異端。
ここから再び瞑想の世界へと、ムレリドの物思いにふけるようなM6."Encore"だが、中盤の盛り上がりが異様。そしてスプランガースの空想的なM7."Far"が究極の瞑想の世界を呼び起こす。ヨハンセンのM8."Love Cycle"が深淵なところまで導き込み、このアルバムの訴えているところを見せる。
オランダやノルウェーの美学がやはりしっかりと基礎にあってのジャズ世界を演じているアルバムで、北欧の風土に瞑想性の表現における技術的な創造性を探求していて評価に値する。お勧めだ。
(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)
(参考) キカ・スプランガーズKika Sprangers の紹介(ネットより)
★ オランダの女流サックス奏者・作曲家・バンドリーダーのキカ・スプランガース(ナイメーヘン1994年生)は、脆さと強さの絶妙なバランスを音楽の中で実現。その二つを融合させるというビジョンは、型破りな楽器編成への愛着と、シンフォニックなパッセージや重厚な静寂のための緊張感の曲線を通して音楽的に表現されています。彼女はオランダで長年、モダンジャズ界屈指の若手才能として認められ、自身のクインテットとラージアンサンブルの作曲家およびバンドリーダーとして数々の賞を受賞。2021年には新進作曲家としてロヒール・ファン・オッテルロー賞(メトロポール管弦楽団より)を受賞し、ユトレヒトのティボリフレデンブルクで2年間のレジデンス・プログラムを修了。この期間(オランダ舞台芸術基金の支援を受けています)で、キカは自身のラージアンサンブル、そしてギタリストのミッケル・プラウ、ピアニストのキット・ダウンズとのデュオで新曲をレコーディング。2人は2024年にDOXレコードよりアルバム『Du blomst』と『Mirage』をリリース。2024年末にはオランダのウィレム・ブロイカー賞を受賞し、アルバム『Large Ensemble (In)finity』をリリース。
★アントン・コービンのような優れたポートレート写真家、グリート・オプ・デン・ビークのような強烈なキャラクター作家、ノルウェーのサックス奏者メッテ・アンリエットのような映画アーティストからインスピレーションを受け、彼女のアイドルのように、彼女の音楽の核心を特徴づける深い静けさを捉えたいと考えている。彼女の手法は、弱さと強さを融合させることで、型破りなラインナップとインパクトのある芸術的選択の両方を好むという形で表現されている。みずみずしい交響曲のパッセージから、力強く意味のある静寂まで、何でも期待できる。彼女の最初の愛はジャズであり、アルヴォ・ペルトやラヴェルなどの20世紀の作曲家などの他の音楽的インスピレーションとともに、これらの影響は弦楽アンサンブルのピナレロとの仕事で聞くことができる。
★活動 : クインテット「Kika Sprangers Quintet」(ヴォーカル入り)更に「ニュー・クインテット」、「スプランガーズ・ラージ・アンサンブル」(オーケストラのアンサンブル)、「ピナレロ」(弦楽アンサンブル)の作曲、チェロ奏者のヨルク・ブリンクマンとピアニストのマーティン・フォンセとの共演。等




























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