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2025年6月26日 (木)

キカ・スプランガース Beiggja 「Morning」

オランダそしてノルウェーの美学が感じられる瞑想の世界

 <Contemporary Jazz>

Beiggja 「Morning」
HUBRO / IMPORT /  HUBROCD2671 / 2025

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Kika Sprangers – saxophone
Kjetil Mulelid – piano
Mats Eilertsen – double bass
Per Oddvar Johansen – drums

Recorded February 20 and 21 2024 by Per Oddvar Johansen in Sleaskjulet, Lommedalen
Mixed and mastered by Per Oddvar Johansen in Sleaskjulet, Lommedalen
Produced by Beiggja. Sleeve art by Aslak Gurholt

  ノルウェーのスーパーグループ「Beiggja」(日本語では「両方」という意味か。オランダの若き女性キカ・スプランガース(Sax ↓左)に、ノルウェーのケイティル・ムレリド(Piano ↓左から2人目)、マッツ・アイレットセン(Bass ↓左から3人目)、ペール・オッドヴァル・ヨハンセン(Drums ↓右)の3人を加えたカルテット)のデビュー・アルバムである。私にとっては、ピアノのムレリドとかベースのアイレットセンは既に愛聴してきた北欧ミュージシャンで一目も二目も置いているのであるが、そこでここにこのようなカルテットとしての登場は注目せざるを得ない。
 しかし実は更なる注目は、女流アルト・ソプラノ・サックス奏者のキカ・スプランガース(1994年生まれ)のノルウェーのトリオとの組み合わせだ。私は彼女に関しては、初めてといって良い状態だが、紹介では、彼女の音楽の核心を特徴づけるは深い静けさを捉えること、そして彼女の手法は、弱さと強さを融合させることと評されているようだ。その為今まで組む演奏グループが独自のパターンを貫いていて、更にインパクトのある芸術的選択をするという演奏が印象深いという。

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 そして昨年(2024年)の晩冬、このグループのメンバーのそれぞれの才能豊かで創造性の豊かな四人は、ヨハンセンの自宅があるロンメダーレンというところに集まった。そこは人里離れた深い雪に覆われた森の中にあり、そこのスタジオに二日間こもってセッションを行った。ここにはそれぞれが曲やアイデアを持ち寄ることにより、その結果素晴らしい出会いとなったのであった。彼らの探求的な演奏は見事な相互作用が構築されレコーディングに発展し、このアルバム『Morning』となったという。
 そしてこの夏には、このカルテットでノルウェーとオランダをツアーする予定にもなっていると言う事だ。

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(Tracklist)
1. Swims (Sprangers)
2. Morning (Johansen)
3. What If (Sprangers)
4. Love Story (Mulelid)
5. Tuvals (Eilertsen)
6. Encore (Mulelid)
7. Far (Sprangers)
8. Love Cycle (Johansen)
9. Swims II (Sprangers)

 このカルテットはアイラットセンとヨハンセンがオーケストラとの共演した事がスタートの経過であるようだが、4人のミュージシャンは、おそらく知る範囲での共感的なものがあってのこのセッションに至ったのだろうと推測する。そのためにお互い曲を提供しているが、その相互作用は自然であってしかもお互いに有益であり、このカルテットの自発的な創造性を互いの好奇心を持って推し進める事が出来たと言う事だろ。結果は同じテイクはなく、それぞれが独自の方向に進んで行ったのだとメンバーは言っている。

497430302_18505772257058710w  このアルバムはどちらかというと、私の好むところの瞑想的な世界で、非常に優しいメロディーの9曲を収録していて、集まった厳しい冬の季節を描いているのか、春のような明るい展望的でリズミカルなものでなく内省的な方向に流れる。ただ暗く沈鬱なというものでもなく、むしろ明るさの感ずる中での静かさというものは、むしろお互いの暖かな人間関係の充実感に繋がっているようにも感ずるところが魅力。
 
  曲はスプランガースが4曲提供して最も多い。やっぱり彼女の意思が最も強いのかもしれない。その冒頭M1." Swims "の曲から感ずることだが、彼女自身の曲でもあるせいかアルト・サックスの優しく広がるような幽玄な音色は、この世界をそのまま描いているように感じ、このアルバムの流れを造り上げている。管モノは敬遠しがちな私でもゆったりと聴ける。そしてそれをムレリドのピアノがサポートして、印象は瞑想的な世界に運んでくれるのだ。
 続くヨハンセンのぐっと引きつけられる美メロディーが光るバラードのタイトル曲M2."Morning"、ピアノ、サックスが美しい。
 ピアノ・ソロによる導入と静かにメロディーを流すM3."What If "
 そして最も4者のインプロの交錯がさえるM4."Love Story"、ここではサックスも珍しく挑戦的。ベースとピアノが面白いアイラットセンのM5."Tuvals"は、このアルバムでは異端。
 ここから再び瞑想の世界へと、ムレリドの物思いにふけるようなM6."Encore"だが、中盤の盛り上がりが異様。そしてスプランガースの空想的なM7."Far"が究極の瞑想の世界を呼び起こす。ヨハンセンのM8."Love Cycle"が深淵なところまで導き込み、このアルバムの訴えているところを見せる。

  オランダやノルウェーの美学がやはりしっかりと基礎にあってのジャズ世界を演じているアルバムで、北欧の風土に瞑想性の表現における技術的な創造性を探求していて評価に値する。お勧めだ。

(評価)
□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   88/100

(試聴)

 

(参考) キカ・スプランガーズKika Sprangers の紹介(ネットより)

★ オランダの女流サックス奏者・作曲家・バンドリーダーのキカ・スプランガース(ナイメーヘン1994年生)は、脆さと強さの絶妙なバランスを音楽の中で実現。その二つを融合させるというビジョンは、型破りな楽器編成への愛着と、シンフォニックなパッセージや重厚な静寂のための緊張感の曲線を通して音楽的に表現されています。彼女はオランダで長年、モダンジャズ界屈指の若手才能として認められ、自身のクインテットとラージアンサンブルの作曲家およびバンドリーダーとして数々の賞を受賞。2021年には新進作曲家としてロヒール・ファン・オッテルロー賞(メトロポール管弦楽団より)を受賞し、ユトレヒトのティボリフレデンブルクで2年間のレジデンス・プログラムを修了。この期間(オランダ舞台芸術基金の支援を受けています)で、キカは自身のラージアンサンブル、そしてギタリストのミッケル・プラウ、ピアニストのキット・ダウンズとのデュオで新曲をレコーディング。2人は2024年にDOXレコードよりアルバム『Du blomst』と『Mirage』をリリース。2024年末にはオランダのウィレム・ブロイカー賞を受賞し、アルバム『Large Ensemble (In)finity』をリリース。

★アントン・コービンのような優れたポートレート写真家、グリート・オプ・デン・ビークのような強烈なキャラクター作家、ノルウェーのサックス奏者メッテ・アンリエットのような映画アーティストからインスピレーションを受け、彼女のアイドルのように、彼女の音楽の核心を特徴づける深い静けさを捉えたいと考えている。彼女の手法は、弱さと強さを融合させることで、型破りなラインナップとインパクトのある芸術的選択の両方を好むという形で表現されている。みずみずしい交響曲のパッセージから、力強く意味のある静寂まで、何でも期待できる。彼女の最初の愛はジャズであり、アルヴォ・ペルトやラヴェルなどの20世紀の作曲家などの他の音楽的インスピレーションとともに、これらの影響は弦楽アンサンブルのピナレロとの仕事で聞くことができる。

★活動 : クインテット「Kika Sprangers Quintet」(ヴォーカル入り)更に「ニュー・クインテット」、「スプランガーズ・ラージ・アンサンブル」(オーケストラのアンサンブル)、「ピナレロ」(弦楽アンサンブル)の作曲、チェロ奏者のヨルク・ブリンクマンとピアニストのマーティン・フォンセとの共演。等

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2025年6月21日 (土)

ナンシー・ニューマン Nancy Newman 「DREAM」

人生経験の上での充実感のある説得力のヴォーカルで

<Jazz>

Nancy Newman 「DREAM」
 (CD) NANCY NEWMAN / IMPORT/ NN202401 / 2025 

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Nancy Newman - vocals
Jennifer Scott - piano
Rene Worst - bass
Buff Allen - drums
Bill Buckingham - synth

66457801_10156143182241784w  カナダの経験豊富な実力派女性ヴォーカリスト、ナンシー・ニューマンの2024年録音作品。スタンダードナンバー、ポップスナンバー、オリジナル作品を織り交ぜながら、持ち前のソフトな歌声によるかなり丁寧な歌い回しで、好感度の高いヴォーカル作品。彼女のヴォーカル・アルバムは初めて聴くが、過去に2枚のアルバム(2012年に『Palace of the Moon』、『You Never Know』)がありこれは3作目。サンディエゴ州立大学でリハビリテーションカウンセリングの修士号を取得後、プロのカウンセラーとして勤務。その後、一時育児に専念した後、合唱からソロへと転向し、ブリティッシュ・コロンビア州立カレッジでジャズ・ボイスを学んだという経歴。ジャズボーカリスト兼ソングライターとして活躍して、グラミー賞ノミネート/ジュノー賞受賞者/ピアニスト/プロデューサーという今や中堅ミュージシャン。
 今作は夢をテーマにしたアルバムで、自身でプロデュース。オリジナル+夢に関連するジャズ・スタンダードのカバー集として作り上げられている。

(Tracklist)
1.Dream 4:23
2.Rainbow Connection 3:49
3.Journey Through Night 5:07
4.Over the Rainbow 4:58
5.Moonraker 3:30
6.Wrap Your Troubles in Dreams 4:21
7.Whistling Away the Dark 3:53
8.You Only Live Twice 3:50
9.Once In a Dream 3:54

  ジャズ・ヴォーカルに加え、カウンセラーとしての「夢」への深い理解が歌に反映されていると評価がある。彼女の経験とリンクした深みのあるジャズ・スタンダードやポップスにも及んで、気持ちよく聴かせるという実力派の歌が聴けるというのが特徴といっていいのだろう。一つの意識下の事柄を目的を持って歌い上げるといった処に深みを感ずる。

 M1. "Dream" (When You're Feeling Blue) ジョニー・マーサーのいい曲ですね。なかなか説得力のある声で、気持ちの暗い時に希望を誘う歌。
 M2. "Rainbow Connection" 物語的素直な歌が聴かれる。
 M3. "Journey Through Night " 夢の世界への旅を歌う、織り込まれるナンシーの即興のスキャットが盛り上げる。
 M4. "Over the Rainbow" 叙情的なナンシーのアカペラのイントロは、この希望の曲に引き込む。
   M5. "Moonraker" このボンドのテーマの登場は謎?。
   M6. "Wrap Your Troubles in Dreams" ヴォーカルとピアノの即興演奏がジャズの味を楽しむ。
   M7. "Whistling Away the Dark "まさに説得力の歌。
   M8. "You Only Live Twice" このボンドのテーマは夢に生きろと歌うのか。
   M9. "Once In a Dream "  夢の中の体験を生かすことを締めの曲で歌いスキャットする。

   ジャズ・ヴォーカルもいろいろな世界があるが、クラシックなスタンダードを特に現代風なアレンジや技巧を使うのでなく、むしろ素直に歌い上げて今にマッチングさせているところがいい。特にこのアルバムの「夢」をテーマにして人生に有意義に持って行こうとするところは意義深いと言って良いかも。

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(参考) <彼女の「夢」についてのカウンセラー、歌手としての話をここに紹介する・・>
「私の夢への興味は、実現を切望する意識的な希望に満ちた夢から、眠っている間に作り出す神秘的な潜在意識の夢まで広がっています。夢を見ることのどちらの側面も強力で、人生を大きく変えることができます。憧れの夢は希望を持って私たちを前進させ、睡眠状態で思い出した夢は創造的で治療的な才能に満ちています。
 意図的な希望と夢は、特に逆境に直面したときに、生存と幸福に不可欠です。私たちの夢の持続的な力は、私たちを目標に向かって推進し、最も困難な時期に意味と目的を見つけるのを助けます。
 しかし、眠りから覚める夢は私たちの意志の外にあります。無意識の状態から生まれたこれらの夢は、私たちの精神の表面下に横たわる問題や感情を照らし出します。夢のジャーナリングや夢の仕事を通じてそれらの意味を解き明かすことは、啓示と深い自己理解につながる可能性があります。
 どちらのタイプの夢も、リハビリテーションカウンセラーとして、ミュージシャンとして、そして私の個人的な生活において、私にとって不可欠なものでした。私は、自分自身や他人が希望の意識的な夢を特定し、強化するのを助けることに高い評価をしています。また、ゲシュタルトの夢分析とグループドリームワークを使用して、自分自身とクライアントである鮮やかな睡眠状態の夢のニュアンスと極性を探求しました。深い意味の層が夢や夢の断片に共鳴します。夢について知れば知るほど、創造的にも、直感的にも、精神的にも、無限の表現の源泉として、夢に不思議を感じます。」

(評価)
□ 選曲・歌   88/100
□ 録音     88/100
(試聴)

 

 

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2025年6月16日 (月)

ステファン・パスボー Stefan Pasborg 「Dear Alex」

ステファン・パスボーが贈る、アレックス・リール追悼盤

<Jazz>

Stefan Pasborg 「Dear Alex」
Stunt Records / Import / STUCD25112 / 2025

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Stefan Pasborg (drums, percussion)
Fredrik Lundin (tenor sax)
Carsten Dahl (piano)

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 ヨーロッパのリジェンド・ドラマーであるアレックス・リール(スウェーデン,上左)の弟子として知られるステファン・パスボーStefan Pasborg(上右)が、師アレックス・リールの死に対して捧げたアルバム。実力派のフレズリク・ロンディン(Sax)と、カーステン・ダール(Piano)をフィーチャーしてのベースレスの変則トリオ作品だ。

  1940年9月13日生まれのアレックス・リールは2024年6月9日に亡くなった、満83歳だった。彼はデンマーク音楽史にて象徴的存在で、ジャズ黄金期における発展に不可欠なドラマー。彼は、ジャズ、ロック、実験音楽と広きに通じたドラマーとしてエネルギーに溢れ、世代を代表する才能として貴重そのものの存在であり、デンマーク音楽は当然だが国際的にもジャズを支える存在だった。70年以上にわたり、ビル・エヴァンス、ベン・ウェブスター、デクスター・ゴードン、マイケル・ブレッカー、ケニー・ドリューなど、世界を代表する偉大なジャズ・ミュージシャンたちと共演してきた。
 そしてステファン・パスボー(b.1974)にとっては特別な存在で、リールはパスボーの名付け親になり、3歳のパスボーにスネア・ドラムをプレゼントしたというエピソードも持つ深い関係で、50年にわたって音楽で、パスボーの人生にインスピレーションを与え続けてきた存在。
 その現れとして、二人のアルバムがある。『DRUM FACES』(STUM 222131, 2014,下左)、これはなかなかパワフルなアルバム。近年の『Univers Live 』(STUCD21012,2023, 下右)は、2009年から2019年のライブもので、味なジャズを堪能できる。

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 又、アレックス・リールAlex Rielの近年のアルバム『OUR SONGS』(2021)や私の注目ピアニストのカーステン・ダールCarsten Dahlの近作『Interpretations The Norway Sessions』(Storyville Records 1014363, 2024)はここで取り上げているので参照。
 
 パスボーは数ケ月前にアレックス・リールのお気に入りの曲リストを発見し感銘を受け、デンマークを代表するカーステン・ダール(下右)、フレズリク・ロンディン(下左)の2人のミュージシャンを招き、このアルバムのレコーディングが実現した。「ダニー・ボーイ」、「虹の彼方に」、「ムーン・リバー」、「星に願いを」といった名曲に加え、「In Another Way」では、リールの即興曲を再現しているところが注目点。アレックス・リールがデビュー作で使用したのと同じドラム・キット、1960年代の伝説的なグレッチ・ドラムを使用してパスボーがアレックス・リールへと贈る追悼作として完成したモノ。

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(Tracklist)

1.Danny Boy
2.Somewhere Over The Rainbow
3.Smile
4.Idaho
5.In Another Way
6.Den milde dag er lys og lang
7.Moon River
8.Moppin’ and Boppin’
9.Den Blå Anemone
10.When You Wich Upon A Star

 M1.2.3.4.と、ぐっとポピュラーな名曲を並べてスタートする。しかしそこはただでは収まらず、リールがデビュー・アルバムで披露した無伴奏ソロ即興「In A Way」の音源から幾つかのパッセージが使用され、そのリールの演奏のあとに自己のパスボーの即興を加えるという演奏などなかなか味なアイデアも演じられていて楽しいアルバムになっている。
 又サックス・ピアノ・ドラムスという異色トリオのエネルギッシュな展開と、逆に深遠なる世界も演じて興味をそそる世界を構築しているのが凄い。

 M1."Danny Boy" 訴える豪快なサックスのサウンドでスタート。ちょっと管モノに弱い私には若干抵抗あり。
 M2."Somewhere Over The Rainbow" パーカッションから入るが、この曲もサックスがメロディーを奏で、ピアノ、ドムスが状況描写を美しく支える
 M3."Smile"ドラムスはやや劇的な流れを演じるが、ピアノはむしろ心理的深さを描く、この相性が非常に面白く、サックスは静かにメロディーを流して曲を展開。
 M4."Idaho" 次第に快活な曲展開となって、ドラムスの役割が大きくなる。サックスとピアノがシンクロして曲を高める
 M5."In Another Way" いよいよパスポーの技が盛り上がり、それは彼のソロでの静かな音でシンバル、トライアングル、タムタムの音を交えて深遠な環境を造り上げ、そこにかってのリ-ルの即興演奏を再現し、この曲を造り上げる
 M6."Den milde dag er lys og lang"前曲の深遠さに続いて、静かなスタートから中盤のピアノ、サックスのインプロを誘導し、ジャズのクルーヴィな盛り上がりを見せて最後は美しさも描きジャズの醍醐味を演ずる。このM5.からM6.の流れはこのアルバムでも聴き処だ
 M7."Moon River"ここでは比較的解りやすく安堵。中盤のサックスとピアノ掛け合いが面白く、後半には彼らのセンスによる即興によるメロディーの繋ぎが見事
 M8."Moppin’ and Boppin’"ドラムス・ソロからスタートして三者のエネルギーのぶつかり合いの盛り上がりが聴きどころ
 M9."Den Blå Anemone"の美しいピアノ響きがドラムス支えでほっと聴き惚れ、サツクスが中盤から加わるも流れはピアノの美メロディー
 M10."When You Wich Upon A Star"シンバルなどの響きが深遠な世界を描き、サックスが聴き慣れたメロディーを静かにうたう

 やはりパスポーの繊細にして豪快なドラムスそしてパーカッションが先導して曲を進める手順が主力だ。サックスは威勢が良くてちょっと出すぎの感もないではないが、丁寧でソフトタッチの曲もあって、これは一つのこの変則トリオの当然の流れなのかもしれない。サックス好きには文句なしだろう。そして私はもう少しダールの北欧流哀感のピアノのウエイトが欲しかったと思うのだが、これもこんなところなのかもと妥協して聴いたところだ。全体に変化も多くドラムスの楽しさも伝わって、出来の良いアルバムと評価したい。録音はトリオをしっかり掴んで高音質。

(評価)
□ 選曲・演奏 :   88 / 100
□   録音    :   90 / 100
(試聴)

*

 

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2025年6月11日 (水)

フリストス・イェロラツィティス Christos Yerolatsitis Trio 「Daydreaming」

変拍子の多用とギリシャ文化圏のフォークぽい叙情性とで描く

<Jazz>

Christos Yerolatsitis Trio 「Daydreaming」
(CD)PK Music / Import / PK202501 / 2025 

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Christos Yerolatsitis – Piano フリストス・イェロラツィティス
Grigoris Theodoridis – Double Bass グリゴリス・テオドリディス
Attila Gyárfás – Drums アッティラ・ジャールファーシュ
Special Guests:
David Lynch – Saxophone デヴィッド・リンチ
Michalis Tsiftsis – Guitar ミハリス・ツィフツィス

Recorded and Mixed by George Kariotis
Mastered by Christoph Stickel
Recorded at Sierra Studios (Athens, Greece)
Photography by Charis Ioannou
Produced by Christos Yerolatsitis
Executive producer: Petros Klampanis


   ユーロ・ピアノものとして私は初物であるギリシャ発新世代のジャズ・ピアノトリオもの。1989年生まれ、キプロス島出身のギリシャ系ピアニスト、フリストス・イェロラツィティスChristos Yerolatsitis がトリオを組んでの作品。曲によってサックス奏者とギタリストがゲストで参加する。"変拍子を多用するオリジナル曲は変化に富み、トルコ、バルカン域、ギリシャ文化圏に息づく音楽、舞踊曲、民衆歌謡の影響を感じる"と評されている。ちょっと聴き慣れない異国ムードたっぷりのフォーキーな美メロが聴かれ関心を持ったので取り上げる。

Avatars40jmrcyzdro8bwvnw  Christos Yerolatsitis (Χρίστος Γερολατσίτης /フリストス・イェロラツィティス)略歴:1989年生まれ、キプロス拠点のギリシャ系ピアニスト、オランダでジャズを学び、ハーグの音大(The Royal Conservatory of The Hague)で学士号を取り、アムステルダムの音大 (Conservatorium van Amsterdam)で修士課程を修める。オランダでの音楽活動の後はキプロスとギリシャを拠点とし、現在はラトビアの音楽アカデミーの幹部としての責務も担う。リーダーアルバムはエレクトリックピアノでのデュオ盤『Introducing Sonica』(2022)をリリース、アコースティックのピアノトリオ作は初めて。フォークロアなど、ジャズ以外のジャンルのアルバムにも参加している

 トリオを組む2人ともオランダで出会った。ギリシャ拠点のベーシスト、グリゴリス・テオドリディス(Γρηγόρη Θεοδωρίδη(下中央), 2023年にリーダーアルバム『Green of Silence』をリリース )と、ハンガリー出身のドラマーで、母国やイタリアなどで幅広く活躍中のアッティラ・ジャールファーシュ(Attila Gyárfás(下右))が加わっている。
 ゲストにはギリシャ拠点のサックス奏者(David Lynch )とギタリスト(Michalis Tsiftsis)を起用して、アテネのスタジオで録音。プロデューサーはイェロラツィティス自身であり、総合プロデューサーのクランパニスはレーベル創始者。

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(From left: Christos Yerolatsitis, Grigoris Theodoridis, Attila Gyarfas)

(Tracklist)

1. Cactus
2. Untold I     (feat.David Lynch)
3. Untold II    (feat.David Lynch)
4. Untold III   (feat.David Lynch)
5. Memories   (feat.David Lynch)
6. Aaron
7. Daydreaming    (feat.Michalis Tsiftsis)
8. Waltz For Persefoni
9. Xondes
10. The Encore     (Feat. Michalis Tsiftsis)

 全曲、リ-ダ-・イェロラツィティスの作曲。彼のパーソナルな体験を綴っていると言われる曲が抒情的で美しい。現代的なジャズというか、独特の変拍子のリズムが印象的で、これも知るよしもないがキプロス島に根付く地中海域のメロディーと想像するのだが、なかなか素朴なフォーキーなところがあって興味をそそる。やや物悲しさの感ずるところが又引きつけるポイント。「現代ジャズ」と「地中海ムード」の融合と言ったところか。

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 M1. "Cactus" ピアノの美旋律が川の流れのように止めなく流れる。 
   M2.~M4.は、3つのパートから成る組曲"Untold (I,II,III)"、これらは本アルバムの一つの核で、ゲスト参加のサックス奏者、デヴィッド・リンチを加えたカルテット仕立てで演ずる。組み立てはかなり入念な楽曲構成で彼らのコンテンポラリーの極みを聴かせる。スタートのM2."Untold I"の奇妙なメロディーは現代のジャズか、それともバルカン域の伝統音楽かと異様感を感じながら聴くことで始まり、M3."Untold II"はアルコ奏法によるベースで流れる深淵であり幽玄な曲。ピアノがひたすらに美しく。中盤からのサックスも優しく美しく。M4."Untold III"では、サックスが心の描写のごときメロディーを奏で、ピアノはひたすら短いリフを弾き続けるコンテンポラリーな意外性を演ずる。
 M5. "Memories" ガラッと変わって緊張感から解放された豊かさがあふれたサックスとピアノが楽しく、人生の回顧が始まる。
 M6. "Aaron"優雅で美しい曲でうっとり。
 M7. "Daydreaming"  優しい展開でベースが語り、トリオにMichalis Tsiftsisのギターが加わって異国情緒豊かなジャズ。M5.とM7.はイェロラツィティスが子供の頃にキプロス島で過ごした大切な家族の暖かさの思い出を題材にした曲だという。
 M8. "Waltz For Persefoni"では、ピアノ・ソロで高音が美しく響き、ベース・ソロと楽しませ、叙情的な世界が続く。
 M10. "The Encore"  ギターを加えてのギリシャの雰囲気づくりが感ずる。

 このアルバムはどうも2つのポイントがあるように感じた。一つは、も彼らの現実のコンテンポラリーなジヤズ世界を極める挑戦。もう一つはイエルラツィティスの人生への思い出や感謝を描くといった欧州の叙情派の世界と言うところの二つだ。その両者がこのアルバムの中で対位して、変拍子の多用や、聴き慣れない民族的なメロディーをかぶせての非常に描くところが広がっている。なかなか聴きこむと味が出てくる充実盤。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    87/100
(試聴)

 

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2025年6月 5日 (木)

キース・ジャレット Keith Jarrett 「New Vienna」

80歳記念盤はまさに円熟の境地・・・穏やかで美しい世界

<Jazz>

Keith Jarrett  「 New Vienna」
ECM2850 (CD/2LP) 
Universal Music / JPN / UCCE-1217 / 2025 (CD)

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Keith Jarrett : piano
July 2016, Goldener Saal, Musikverein, Vienna 

(Tracklist)
Part I – Ⅸ (Keith Jarrett)
Somewhere Over The Rainbow (Harold Arlen, E.Y. Harburg)

Images_20250604184601  2025年5月8日にキース・ジャレットは80歳を迎えたことを記念して、2016年のヨーロッパ5都市ピアノソロツアーから、7月9日ウィーン楽友協会(Wiener Musikverein)・黄金の間で録音されアルバム『New Vienna』が、この5月30日にリリースされた。キースは、2016年の欧米8都市ピアノソロツアーの後、2017年2月15日ニューヨーク・カーネギーホールでのソロコンサートを最後に活動を休止し、その後の病気などで今はニュージャージー州の自宅で穏やかに暮らしていると言われている。


 キース・ジャレットは、私にとってはジャズの歴史でもある。かって1960年代、クラシック、ポピュラー、ロックが聴くミュージックの主流であった私が、フランスのジャック・ルーシェが「プレイ・バッハ」と称してピアノ・トリオでバツハの曲を演じたものに接して、ジャズの面白さと魅力を知らしめられ、その後はジャック・ルーシェのアルバムを聴き込む中で、一方キース・ジャレットに惚れ込み、私のジャズの歴史が始まったのであった。その後もジャズではデキシー・ランド・ジャズのビック・バンドものは全く受け入れなかったが、一方管ものもどちらかというと避けてきた。つまり好みはピアノ・トリオものを中心に現在に至っている。キースのピアノ・ソロの価値観は当時はそれほど感じなく、特に印象深いのは1970年代、Impulseからのリリースの『Death and The Flower(生と死の幻想)』(1974)には感動してのめり込んだ。あそこではマルチプレイヤーぶりも凄く、ピアノ、ソプラノサックス、OSIドラム、木管フルート、パーカッションなどのキースの多芸に圧倒もされるのだ。ロック界ではピンク・フロイドの頂点の『The Dark Side of The Moon』(1973)の後であり、キング・クリムゾン『Red』(1974)などプログレッシブ・ロツクの絶頂期、ジャズ界においても一つの挑戦が行われた時として、これらと全く別の流れではないと思っている。
 又ピアノ・ソロという世界ではあの有名な名作『The Kőln Concert』(1975)が登場した。しかし私はそれはそれとして当時はむしろ1976年のECMからの『Stairecase』に惚れ込み、音の良さにも感動して何枚かのLPを買ったのが懐かしい。今もそのLPで聴いている。当時日本ライブも行われ、参加出来てソロを会場で聴くことが出来たりと印象深い。
  1980年代にはECMからの『Chages』(1983),『Changeless』(1987)などがお気に入りだった。スタンダード・トリオが2000年に入ってまで続くんですね。その後はソロのリリースが多くなったんだが、キースとのリアルタイムの経過が実に懐かしいのである。

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 このようにキースは「私のジャズ愛好の歴史」そのものであって、いろいろと感慨深いのであるが、今回の2016年ソロツアーは、2月9日カーネギーホールに始まり、4月29日ロサンゼルス、5月2日サンフランシスコ、7月3日ブダペスト、6日ボルドー、9日ウィーン、12日ローマ、16日ミュンヘン。このツアーから『Budapest Concert』(ECM2700/01)、『Bordeaux Concert』(ECM2740)、『Munich 2016』(ECM2667/68)がすでにリリースされているので、ツアーから4作目のライヴ録音作品となる(なお、ウィーンでの「ライヴ録音もの」となると、1991年にウィーン国立歌劇場で録音された『Vienna Concert』(ECM1481)がリリースされているので、二作目という事になる)。そして 2016年までに、慢性疲労症候群後のキースのアプローチは、長編の自発的な構成から、より短く、個別の作品へと変化し、その為か確かにドラマチックさは少ないが、曲一つ一つにテーマが含蓄され味わい深くなっている。その姿が今彼の演奏から離れての日々を迎えることになった最後のソロ・ツアーを彼の80歳を祝いつつここに聴くと言うことであるのだ。

Keith3w  このアルバムでは9つの即興曲群が流れる。オープニングの"Part Ⅰ"は、冒頭の11分間の激しい嵐で、爽快であるが、かなり衝動的で、渦巻くような複雑な音の洪水だ。"Part Ⅱ"は、ぐっとスローに沈み込み暗い空の下の陰鬱な世界が流れる。"Part Ⅲ"は、低音が響き不穏・不吉な雰囲気を醸し出し、"Part Ⅳ"に入ると静かな穏やかな憧れの中で、春ののどけさをイメージさせ、美しい"Part Ⅴ"のセクションでは、有頂天の明るさは無く、やや暗めであるも、むしろ美しく、むしろ純粋な親しみのある、心を豊かにする世界のバラード。
 "Part VI"は抽象的世界というか、聴くものに静かに考えさせる因子の鍵盤の音、"Part VII"は更に静かな優しさの世界。まさに美しさは最高潮に達する。"Part VIII"は、ここでブルースの基本に戻り気持ちの良い躍動の展開となる。"Part IX"は、昔からみせるちょっとカントリーぽい味で気持ちを楽しくする、キースの独特な音の美しさを聴かせつつ、生活の快適なリズム感を描く。彼自身も晴れやかであったのか、例の唸り声は入らない。
 そして締めは、ある意味お決まりでもある"Somewhere Over The Rainbow"であるが、適度な哀愁感があって、なんと安定感のある平穏な世界であろうか、これぞ80歳の安らかさにふさわしい。

 幸いに録音の方は、24-ビツト、48kHzで聴いているが、超優秀というものではないが、標準的レベルのもので、会場のホール感や響きも手ごろで雰囲気も良く聴きやすい。煩い拍手などはカツトされていて気持ちがいい。又よくこうゆうものを今まで温存していたと不思議には思うほどの万人受けしやすい演奏の内容であって、ちょっと不思議でもあった。

 

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    88/100
(試聴)

 

 

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2025年6月 1日 (日)

エミル・ブランクヴィスト Emil Brandqvist Trio 「Poems for Travellers」

多彩なジャズ曲想とクラシック世界をも描く

<Jazz>

Emil Brandqvist Trio 「Poems for Travellers」
(CD)SKIP RECORDS / import / SKP 9166 / 2025

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Piano: Tuomas Antero Turunen
Drums: Emil Brandqvist
Bass: Max Thornberg

  私の注目トリオで、彼らの流れを追ってきたスウェーデンのドラマーのエミル・ブランクヴィストEmil Brandqvist(↓中央)率いるピアノトリオの2025年最新作。このアルバムは7枚目で、トリオのメンバーは変わってはいない。彼らは過去に必要に応じてゲストミュージシャンをフィーチャーすることがあったが、しかし、今回は、彼らは自分たちだけのトリオによる世界に集中するという今までと異なっていて自信の表れか。そしてオリジナル曲で迫ってきて、ブランクヴィストが主要な作曲家としてリードし(オリジナル9曲提供)、メンバーのフィンランドのピアニストTuomas Turunen(↓左 3曲)とスウェーデンのベーシストMax Thornberg(↓右 1曲)も作曲に貢献している。

(ここで過去に取り上げたアルバム)
Emil Brandqvist Trio 『FALLING CRYSTALS』(SKP 9135-2 / 2016) 
Emil Brandqvist Trio 『WITHIN A DREAM 』(SKP 9141-2 / 2018) 

Emil Brandqvist Trio 『SEASCAPES』(SKIP9128-2/2019)
Tuomas Turunen      『Ornaments of Time』(SKP 9139-2 / 2017) 

 

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 前作『Layers of Life』(Skip Records、2023年)は、トリオの国際的な魅力が盛り上がり、ドイツのジャズチャートで2位を確保し、又SNSの世界で5,000万回以上のストリーミングを記録した。これは"インストゥルメンタルジャズのジャンルでは非常に稀な記録であり、支持の高まり"と評価されていている。

 エミルブランクヴィストは、1981年生まれ40歳代後半を迎えいよいよ円熟してきたところである。スウェーデンの第2の都市ヨーテボリの出身。2012年にスウェーデンの長編映画『Bloody Boys』と『Vägen Hem』の映画音楽を担当。2013年にこのメンバーでトリオを結成し、2013年に弦楽四重奏も加えた『Breathe Out』でデビュー。以降、ジャズやクラシック・クロスオーヴァーの分野で人気を得ている。バンドリーダーとして、バックグラウンドで基礎を築き、共演ミュージシヤンの土台を整えるタイプのドラマー。そしてどちらかと言うと静かなプレーヤーであり、メロディックな世界を好み、ビートをタッチに変え、楽器を繊細なものとして演ずるミュージシャン。

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(Tracklist)

1 A Visit to Reality (E)
2 The Mayfly           (E)
3 Shades of Leaving        (T)
4 Endless Like the Sea    (E)
5 Destination Unknown   (E)
6 Run Away            (T)
7 Up in the Sky       (E)
8 Departure            (E)
9 Interlude No. 2    (T)
10 The Earth Shall Remember   (E) 
11 Final Walk          (E)
12 Soon with You    (E)
13 Evening Land     (M)

作曲 
(E): Emil Brandqvist , (T):Tuomas A. Turunen, (M):Max Thornberg

 やはりこのトリオは、やや複雑なアレンジで美しいメロディーを聴かせる。哀感の雰囲気も描くが、全体に暗さはない。独創的なリズミカルな感動的な雰囲気のある作品群である。
 又、録音も優秀、それぞれの楽器ははっきりと、細かいニュアンスで聴ける。ステージ上の彼らの位置は聴きやすいバランスを構成。ミックスは繊細で、上質な高音、音像はクリアにしてソフト、聴きやすい。

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 アルバムはフランクヴィストのM1."A Visit to Reality"で幕を開け、歯切れの良いドラムスの音が流れを造り、ベースとピアノが生き生きと流れ、三者の融合が神秘的。ブランクヴィストのドラミングはこの曲では意外にパワフルであり、トゥルネンの甘いメロディックなピアノラインにドライブとサポートの完璧なバランスが面白い。続くM2."The Mayfly"で曲調は更に美しさを増す。
 そしてM4."Endless like the Sea"は、スローで内省的な作品だが、美しくピアノがメロディーを聴かせ、ベースとピアノの繊細な相互作用を引き立てるドラムスの繊細なブラッシさばきが聴かれる。続くM5."Destination Unknown  "で希望のテーマに迫る。
 エモーショナルなM7."Up in the Sky"は、引き付けるタイプの魅力の音楽で、ソーンバーグのベースは、中盤のアルコなどで、トゥルネンの美しいピアノのメロディーにさらに装飾を加えている。
 トゥルネンの曲の一つは、情熱的なM3."Shades of Leaving"で、速い単音からソーンバーグとの素晴らしいインタープレイを伴うメロディーへと移行し、M6."Run Away"は、なかなか即興演奏の味を誘導している。
 このトリオは、クラシック音楽の影響が強く、特にトゥルネンのソロ曲であるM9."Interlude No. 2"ではどっぷりその世界に浸れる。
 ブランクヴィストのM10."The Earth Shall Remember"もトリオのバランスの取れた演奏で、基本的にはクラシックの世界だ。そして更にM11."Final Walk"もピアノの流れはクラシック、それをドラムス、ベースが支えて味な美しいジャズ世界へと構築している。
  ソーンバーグが作曲した優しい最後のバラード曲M12."Evening Land"でもブラシを中心に繊細なドラムスが聴かれる

 
 時には緊張感を高める「静」の世界に誘導し、一方時には感情に訴える演奏を、そして更に時には優しく慰め、時にはアタックしてくるパワーもみせる。これは、ジャズの要素をしっかりと認識し演じて、その上になんとクラシックの世界への誘導もしてくれるのだ。偏らずに多くの人々に訴え受け入れられる音楽として聴いた。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    90/100

(試聴)

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