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2025年6月11日 (水)

フリストス・イェロラツィティス Christos Yerolatsitis Trio 「Daydreaming」

変拍子の多用とギリシャ文化圏のフォークぽい叙情性とで描く

<Jazz>

Christos Yerolatsitis Trio 「Daydreaming」
(CD)PK Music / Import / PK202501 / 2025 

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Christos Yerolatsitis – Piano フリストス・イェロラツィティス
Grigoris Theodoridis – Double Bass グリゴリス・テオドリディス
Attila Gyárfás – Drums アッティラ・ジャールファーシュ
Special Guests:
David Lynch – Saxophone デヴィッド・リンチ
Michalis Tsiftsis – Guitar ミハリス・ツィフツィス

Recorded and Mixed by George Kariotis
Mastered by Christoph Stickel
Recorded at Sierra Studios (Athens, Greece)
Photography by Charis Ioannou
Produced by Christos Yerolatsitis
Executive producer: Petros Klampanis


   ユーロ・ピアノものとして私は初物であるギリシャ発新世代のジャズ・ピアノトリオもの。1989年生まれ、キプロス島出身のギリシャ系ピアニスト、フリストス・イェロラツィティスChristos Yerolatsitis がトリオを組んでの作品。曲によってサックス奏者とギタリストがゲストで参加する。"変拍子を多用するオリジナル曲は変化に富み、トルコ、バルカン域、ギリシャ文化圏に息づく音楽、舞踊曲、民衆歌謡の影響を感じる"と評されている。ちょっと聴き慣れない異国ムードたっぷりのフォーキーな美メロが聴かれ関心を持ったので取り上げる。

Avatars40jmrcyzdro8bwvnw  Christos Yerolatsitis (Χρίστος Γερολατσίτης /フリストス・イェロラツィティス)略歴:1989年生まれ、キプロス拠点のギリシャ系ピアニスト、オランダでジャズを学び、ハーグの音大(The Royal Conservatory of The Hague)で学士号を取り、アムステルダムの音大 (Conservatorium van Amsterdam)で修士課程を修める。オランダでの音楽活動の後はキプロスとギリシャを拠点とし、現在はラトビアの音楽アカデミーの幹部としての責務も担う。リーダーアルバムはエレクトリックピアノでのデュオ盤『Introducing Sonica』(2022)をリリース、アコースティックのピアノトリオ作は初めて。フォークロアなど、ジャズ以外のジャンルのアルバムにも参加している

 トリオを組む2人ともオランダで出会った。ギリシャ拠点のベーシスト、グリゴリス・テオドリディス(Γρηγόρη Θεοδωρίδη(下中央), 2023年にリーダーアルバム『Green of Silence』をリリース )と、ハンガリー出身のドラマーで、母国やイタリアなどで幅広く活躍中のアッティラ・ジャールファーシュ(Attila Gyárfás(下右))が加わっている。
 ゲストにはギリシャ拠点のサックス奏者(David Lynch )とギタリスト(Michalis Tsiftsis)を起用して、アテネのスタジオで録音。プロデューサーはイェロラツィティス自身であり、総合プロデューサーのクランパニスはレーベル創始者。

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(From left: Christos Yerolatsitis, Grigoris Theodoridis, Attila Gyarfas)

(Tracklist)

1. Cactus
2. Untold I     (feat.David Lynch)
3. Untold II    (feat.David Lynch)
4. Untold III   (feat.David Lynch)
5. Memories   (feat.David Lynch)
6. Aaron
7. Daydreaming    (feat.Michalis Tsiftsis)
8. Waltz For Persefoni
9. Xondes
10. The Encore     (Feat. Michalis Tsiftsis)

 全曲、リ-ダ-・イェロラツィティスの作曲。彼のパーソナルな体験を綴っていると言われる曲が抒情的で美しい。現代的なジャズというか、独特の変拍子のリズムが印象的で、これも知るよしもないがキプロス島に根付く地中海域のメロディーと想像するのだが、なかなか素朴なフォーキーなところがあって興味をそそる。やや物悲しさの感ずるところが又引きつけるポイント。「現代ジャズ」と「地中海ムード」の融合と言ったところか。

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 M1. "Cactus" ピアノの美旋律が川の流れのように止めなく流れる。 
   M2.~M4.は、3つのパートから成る組曲"Untold (I,II,III)"、これらは本アルバムの一つの核で、ゲスト参加のサックス奏者、デヴィッド・リンチを加えたカルテット仕立てで演ずる。組み立てはかなり入念な楽曲構成で彼らのコンテンポラリーの極みを聴かせる。スタートのM2."Untold I"の奇妙なメロディーは現代のジャズか、それともバルカン域の伝統音楽かと異様感を感じながら聴くことで始まり、M3."Untold II"はアルコ奏法によるベースで流れる深淵であり幽玄な曲。ピアノがひたすらに美しく。中盤からのサックスも優しく美しく。M4."Untold III"では、サックスが心の描写のごときメロディーを奏で、ピアノはひたすら短いリフを弾き続けるコンテンポラリーな意外性を演ずる。
 M5. "Memories" ガラッと変わって緊張感から解放された豊かさがあふれたサックスとピアノが楽しく、人生の回顧が始まる。
 M6. "Aaron"優雅で美しい曲でうっとり。
 M7. "Daydreaming"  優しい展開でベースが語り、トリオにMichalis Tsiftsisのギターが加わって異国情緒豊かなジャズ。M5.とM7.はイェロラツィティスが子供の頃にキプロス島で過ごした大切な家族の暖かさの思い出を題材にした曲だという。
 M8. "Waltz For Persefoni"では、ピアノ・ソロで高音が美しく響き、ベース・ソロと楽しませ、叙情的な世界が続く。
 M10. "The Encore"  ギターを加えてのギリシャの雰囲気づくりが感ずる。

 このアルバムはどうも2つのポイントがあるように感じた。一つは、も彼らの現実のコンテンポラリーなジヤズ世界を極める挑戦。もう一つはイエルラツィティスの人生への思い出や感謝を描くといった欧州の叙情派の世界と言うところの二つだ。その両者がこのアルバムの中で対位して、変拍子の多用や、聴き慣れない民族的なメロディーをかぶせての非常に描くところが広がっている。なかなか聴きこむと味が出てくる充実盤。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    87/100
(試聴)

 

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