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2025年7月28日 (月)

ビル・エヴァンス COFFEE BREAK JAZZ 「BILL EVANS - BLEND」

ジャズに興味が湧いた初心者にも勧められるコンピレーション盤

<Jazz>

COFFEE BREAK JAZZ 「BILL EVANS - BLEND」
Universal Music (Verve/Riverside)/ JPN / UCCU1697 / 2025

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Bill Evans (p)
Paul Motian (d)
Scott LaFaro (b)
Jeremy Steig (fl)
Jack DeJohnette (d)
Eddie Gomez (b)
Philly Joe Jones (d)
Jim Hall (g)
Percy Heath (b)
Sam Brown (g)
Marty Morell (d)

Images-2w_20250725153501   人気の「COFFEE BREAK JAZZ 」シリーズに装いも新たにしてビル・エヴァンスBill Evans(1929-1980)が加わってリリースされた。
 日本で最も人気のあるジャズ・ピアニストだが、今年没後45年になるが、つい先頃掘り出し物のとしてのニュー・アルバム(『FURTHER AHEAD - Live in Fland 1964-1969』)がリリースされたばっかり、彼の音楽は今も世界でトップをゆく愛され方だ。そして今作は彼の往年の名曲群をコンパイルした新編成コンピレーション・アルバムとなっている。まあこうしたアルバムがリリースされるのは、ファンへのサービスということもあるが、まだまだこれからジャズを愛してゆこうという人々への入門盤として門戸を広げ、今後へのジャズの道を更に開いてゆこうという商業ベースでの意義も大きいものとして企画されているのだろう。

 名作『ワルツ・フォー・デビイ』(M1.)から初めて彼がエレピを導入して行なった多重録音アルバム『フロム・レフト・トゥ・ライト』(M9.)に至るエヴァンスの豊富なユニバーサルミュージック名作アルバムからから選ばれた名曲の14曲。人気曲を取り上げてのアルバムとなっていて、バック・グラウンド・ミュージック的聴くにも十分贅沢モノだが、それもジャズの一つの役割的なものとして大きな価値がある。

(TRACKLIST)

1.ワルツ・フォー・デビイ / Waltz For Debby
      AL『Walz for Debby』take2, 1961 Village Vanguard
2.スパルタカス 愛のテーマ / Love Theme from "Spartacus"
      AL『ホワッツ・ニュー』より
3.ナーディス / Nardis
      AL『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』より
4.枯葉 / Autumn Leaves (Take 1 / Stereo)
      AL『ポートレイト・イン・ジャズ』より
5.あなたと夜と音楽と / You and the Night and the Music
      AL『インタープレイ』より
6.ソワレ / You and the Night and the Music
      AL『フロム・レフト・トゥ・ライト』より
7.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ / Here's That Rainy Day
      AL『エクスプロレイションズ』より
8.ララバイ・フォー・ヘレン / Lullaby For Helene
      AL『アローン』より
9.いつか王子様が / Someday My Prince Will Come
      AL『フロム・レフト・トゥ・ライト』より
10.ビューティフル・ラヴ / Beautiful Love(Take 2)
      AL『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』より
11.ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ / When I Fall in Love
      AL『エクスプロレイションズ』より
12.ア・タイム・フォー・ラヴ / A Time For Love
      AL『ポートレイト・イン・ジャズ』より
13.星に願いを / When You Wish Upon a Star
      AL『アローン』より
14.マイ・フーリッシュ・ハート / My Foolish Heart
      AL『インタープレイ』より

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 ビル・エヴァンスのアルバムは「名演はあるが名録音無し」と言われるぐらい残念ながらオーディオ的には殆ど今一歩というモノであると言って良いのだが、近年リマスターされての改善が図られていて、完璧とは行かないが音質的にも改良盤となってきていて、ここに登場する曲群も、かなり安心して聴けるようになってきている。それでも時代の流れを感ずるところであるが、昔を思えばそれなりに良くなったと・・・いうところで聴いているのである。
 そんな中でも、アルバム『You Must Believe In Spring』(Remmatered 2022)あたりが、私はベスト録音と思っているのだが、ここでは取り上げられていない。
 しかしなんと言ってもこのアルバムの目的からも、しっかりとM1."Waltz For Debby" M14."My Foolish Heart"でオープニングと締めをきちんと押さえているところは、このアルバムの真面目さとサービス精神が感じられるとこだ。
 そしてM3."Nardis"M4."Autumn Leaves"は人気曲で、特にM3.はマイルス・デイビスの作曲だが、エヴァンスはこの曲にはそれなりの思い入れがあったり、演奏の要求もあったりで彼のこのタイプのアルバムだと載せないわけには行かない重要曲だ。
 M9."Someday My Prince Will Come"も愛されてますね。マイルスは2度3度とグラミー賞を獲得しているが、この曲もそうですね。
 M13."When You Wish Upon a Star"も欠かせないですね、小学生の女の子もピアノでこの曲は弾いてますね。
 そしてM7."Here's That Rainy Day"のように彼のソロ演奏もきちんと収めて、なかなか頑張っているアルバムとも言える。

 まあ、どれがこれがという事よりもこうして人気曲や聴きやすく心地よい曲なども纏めてくれたので、聴くには極めてとっつきやすいアルバムであるし、なんと言ってもエヴァンスの入門アルバムとしてはガイダンス的でもあって文句のないところであろう。

(評価)
□ 選曲・演奏 90/100
□ 音質改善度 88/100

(試聴)

 

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2025年7月23日 (水)

ペーター・ヴースト Peter Vuust Quartet 「 Homage」

ヴーストが誘導するハード・バップのアメリカン・ジャズにヤンソンの北欧ジャズならではの詩情が垣間見る世界 

<Jazz>
Peter Vuust Quartet 「Homage」
Storyville Records / Import /1014366 / 2025

How

Peter Vuust Quartet :
Claus Waidtløw クラウス・ヴァイトルウ (tenor saxophone except 01, 09) (soprano saxophone on 01, 09)
Lars Jansson ラーシュ・ヤンソン (piano)
Peter Vuust ペーター・ヴースト (double bass)
Morten Lund モーテン・ロン (drums)

Producer: Peter Vuust
Mix & master: Lars Nilsson
Assistant engineer: Michael Dahlvid & Joar Hallgren
Liner notes: Peter Vuust
Photos: Nilento Studio
Cover design: Paul Tippett
Recording: Lars Nilsson, Nilento Studio, Gothenburg, Sweden, January 2024

Portraetafjazzmusikerew  デンマークを代表するジャズ・ベーシストであり作曲家であり、しかも脳科学者でもあるという異才の異才そのもののペーター・ヴースト(1961年生まれ)の、デンマークのクラウス・ヴァイトルウ(1967-)のテナー・サックスとスウェーデンのベテランのラーシュ・ヤンソン(1951-)のピアノをフィーチュアし、ドラムはやはりデンマークのモーテン・ロン(1972-)が務めるという強力なカルテットのアルバム。
 スカンジナビアで最も有名なジャズ・ミュージシャン4人が、強烈かつ楽しい創作プロセスで結集し、複雑な音楽性と表現力豊かな深みを追求すると言うのだ。
 私がこのアルバムに注目するのは、私のお気に入りのここでも何回か取り上げてきたピアニストのヤンソンLars Janssonの魅力が第一であったのだが、今回の企画者ヴーストが音楽が脳に与える神経学を研究する学者であるので、このアルバムではそれがどんな形で生かされているのかというちょっと変な興味もあったと言うところである。

  このカルテットのリーダーのペーター・ヴーストPeter Vuustは、ジャズの複雑さと音楽の科学的理解を融合させるユニークな能力で受賞歴のあるとか、つまりミュージシャンとしての成功に加えて、音楽が脳に与える影響を専門とする神経科学者として広く認知されているらしい。彼の創造的な企画と展開が未来志向であり、そこに彼の音楽的洞察力が作り上げるカルテットのサウンドがこの新しいアルバムを完成させたようだ。そこにはジャズ・ミュージックを歴史的に築いてきた歴史的・伝説的な先人への賛辞を込めているらしい。

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(Tracklist)

01. Homage to Keith
02. Oh, Jaco!
03. The Maróczy Bind
04. Finca la Huerta
05. Quiet Now
06. Rhythm & Blues
07. Simple Song
08. Mont Ventoux
09. Waltz
10. Marrakech
11. Monday
(以下Bonus track)
12. Giving Birth
13. The Naked Trees
14. On Grey Day

 全曲ペーター・ヴーストによる曲のようだ。

 ユーロ・ジャズと言っても歌心のイタリア系とは明らかに異なるオーソドックスな硬派筋の今日型ビ・パップと言うかハード・バップ路線と言った方が良いタイプだ、つまり北欧系の情緒系かと思ったが、どうもそれが主流としはいない。しかしメロディアス流れはちゃんと維持してのブルース・テイストも描き正攻法勝負のスインギー快演が展開し、確かに歴史的ジャズを尊重しての流れを維持している。つまり私が好むところの北欧らしいというよりは全体的にはアメリカの歴史を描いているように感じた。それはオープニングのM01." Homage to Keith"からしっかり感じ取れるが、つまり伝統的なジャズ・メンへの賛辞となれば当然この姿と言うことであろう。しかし冒頭のピアノ・ソロからは彼の北欧の美学が溢れている。
 そして更にM09."Walz"於けるヤンソンのピアノの美旋律、そしてソプラノ・サックスの流れはやっぱり味わい深く北欧の情緒がにじみ出ていて、ベースの語りも感動的であった。そしてピアノの音の余韻を生かした曲運びはこのアルバムでは異色でお見事。

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 いずれにしても私の注目のヤンソン(p)は、自分のリーダー作品のような優美で情緒豊かな詩人ぶりは隠せないところであろうが、それはここではちょっと仕舞っておいて、M02."Oh,Jaco!"M04." Finca la Huerta"のように、珍しくジャズ王道路線で楽しませてくれているのである。しかもM.6"Rhythm & Blues"のような意外にもアメリカン・ジャズ色のヤンソンがしっかりと聴けるという楽しさがある。これはハード・バップ・テナーのヴァイトルウの真剣プレイを演じさせ、それに乗せていくヴーストのリーダー手腕によるものであろう、その点はなかなかのものだ。
   
 締めの曲のバラードのM11."Monday"は、やっぱりメロディー派の味わいが溢れている。この曲の後半のピアノ・ソロには、やっぱりヤンソンらしさがにじみ出ていて、その流れにサックスも同調した曲展開はユーロの良さを感ずる。

 全体にちょっと表現がおかしいが、非常に真面目さを感ずる演奏だ。遊び心と言うよりはやはりジャズ界への先人に対しての感謝と賛辞というところは見事に演じきっている。スカンジナビア・ジャズとしては今やECM的なところを頭に描きやすいが、ここでは所謂モダン・ジャズ時代に纏められるオーソドックス・ジャズで今や珍しい世界を構築していて聴き応え十分。
 冒頭に取り上げた「音楽が脳に与える世界とは?」としては、ジャズの王道に北欧風情緒がうまくミックスして、全く疲労感がなかったところが、一つの表れとして受け取った。

(評価)
□ 曲・演奏 :    88/100   
□   録音   :    88/100

(試聴) "Homage to Keith"

 

 

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2025年7月17日 (木)

ブッゲ・ヴェッセルトフト Bugge Wesseltoft 「Am Are」

アコースティックからエレクトロニクスを駆使して、それぞれの特殊性を演じ新しい潮流を作り上げる
・・・・その多様性の複数セクションの登場

<Contemporary Jazz>

Bugge Wesseltoft 「Am Are」
JAZZLAND / IMPORT / CD / 規格番号 3779705 通販番号 1008991662 / 2025

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Bugge Wesseltoft- Piano, Synthesisers, organ, Fender Rhodes
Elias Tafjord - Drums
Rohey Taalah - Vocal
Martin Myhre Olsen - Saxophone
Arild Andersen - Acoustic Bass, Effects
Gard Nilssen - Drums
Sveinung Hovensjø - Electric Bass
Jon Christensen - Drums and Bells
Jens Mikkel Madsen - Acoustic Bass
Øyunn - Drums
Oddrun Lilja - Guitar
Sanskriti Shrestha - Tablas, Harp

All songs recorded in Buggesroom by Bugge Wesseltoft and mixed by Ulf Holand at Holand Sound, except:
“Am Are” and “Jazzbasill” recorded and mixed in the Village Recording, Copenhagen, by Thomas Wang.
“Bag” and “Reel” recorded and mixed in Rainbow Studio, Oslo, by Martin Abrahamsen.

Mastered by Helge Sten at Audio Virus LAB.
Produced by Bugge Wesseltoft.

Buggewesseltoft216621w  ノルウェーのジャズ・ピアニスト、ブッゲ・ヴェッセルトフト(1964年生まれ)の2025年新作アルバム登場。彼はキーボーディストとしてアコースティクからエレクトロニクスに広く通じ、ミュージック・スタイルもロック、ジャズ、クラブ・ミュージックなどを熟し、エレクトロ/ アンビエント/ テクノとジャズを融合させる新しい潮流を創り上げた。そして彼独自のジャズ表現を形作ってきており、私の最も注目のミュージシャン。具体的にはそれぞれ特徴あるソロ・アルバム、そして「New Conception of Jazz」、「Rymden」、「OKWorld!」 などのグループ 活動、更にSidsel Endresen、Henning Kraggerud、Henrik Schwarz 等とのコラボなどと多彩、過去にもここでいろいろと何回か取り上げてきているが、1997年の『It's Snowing On The Piano』(ACT920-2)以来私は虜になっている。
(参考:https://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat69900516/index.html)

 そして近年はピアノ・ソロ・アルバムが多かったが、今回のこの『Am Are』は、彼の異色の世界そのものが凝縮されたと言える世代を超えて又いろいろなスタイルを演ずるミュージシャンをフィーチャーして特別な集団を作り上げていて、「音のテクスチャ、ムードとスタイルのダイナミックなコントラストを探求し、まばらなアレンジからダブとループの複雑なレイヤー、即興の相互作用まで多岐にわたる」と評されていて、まさにその通りである。従ってこのアルバムには、ヴェッセルトフトが共演者に刺激を与え、そして彼らの反応から刺激を受け、それを一つの世界に構築すると言うそれぞれの特徴持ったセレクションを収録しているという極めて異色の作品集となっている。

(Tracklist) 曲によりクレジットされているミュージシャンが異なるので下参照
                          (クリック拡大)

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1.How?, 2.ReiN, 3.Is Anyone Listening?, 4.BAG, 5.Reel, 6.Render, 7.Vender, 8.JazzBasill, 9.Am Are, 10.ThinkaHeaD

All songs by Bugge Wesseltoft, except “Is Anyone Listening?” - lyrics and music by Rohey Taalah and Bugge Wesseltoft; Vocal/Sax arrangement by Martin Myhre Olsen.
“Render” and “Vender” by Wesseltoft, Hovensjø and Christensen.

 とにかく聴きごたえ十分というか、圧倒されるというか、気持ちを高揚させてくれる。それは私にとっては昔プログレッシブ・ロックが台頭して、クラシック、ジャズ、ロックの感動を演じ上げた特異なロック現象を好んで聴きこんだという若き頃の私の感覚に若干共通した感覚で対峙したところである。アコースティック・ジャズを演じ、そしてエレクトロニクスを取り込み、北欧の世界に流れる歴史的民族性に迫る音楽をも演じ、彼の多様性の極みの成果がここに凝縮している感がある。

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*
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 アルバムは、Wesseltoftがソロで演ずるM1."How?"から始まり、静かにシンセが流れ、美しい旋律のピアノが前面に出て、落ち着いたミニマルな演奏の響き、物語の始まりのような展開。
 M2."reiN"では、ドラムのE.Tafjordが加わり、Wesseltoftのシンセサイザーとピアノが複雑に流れる。なかなか状況表現の繊細でいてダイナミクスのあるドラムスがややアヴァンギャルドな世界を後押しする。
Roheytaalahw  M3."Is Anyone Listening?"は、ソウフルな曲だ。Rohey Taalah(→)のヴオーカルが一層その流れを深める。パーカッシブなピアノの音が面白い。M.M.OlsenのTSが優しくアクセントを効かせ、退廃的な独特な美しいヴォーカルを押し上げる。
 M4."BAG"は、B.Wesseltoft(ピアノ、シンセ,↑上段左)、A.Andersen(ベース, ↑上段中央)、G.Nilssen(ドラム, ↑上段右)のクラシックなピアノトリオがここで初めて登場。快適なテンポからベースとピアノのユニゾン効果が響き、次第に美しいピアノの流れに入る。そして続くM5."Reel"もこのトリオ2曲目、静かに不安の感ずるベースの流れにドラムスの金属音が響き、おもむろにピアノがメロウに語る都会的ダウンビートの展開。ぐっと深く本領発揮だ、聴き入ってしまう。
 続くは、Wessltoft(ローズ、コルグMS20シンセ)、S.Hovensjø (エレクトリックベース, ↑下段左)、J.Christensen(ドラム、ベル, ↑下段左から二番目)の別の2番目のピアノトリオが登場。これが又まったく異なる世界で迫ってくる。最初のトラックM6."Render"では、異様な世界をエレクトリックな音でダイナミックでありながら深く沈み深淵に描く。M.7"Vender"もこのトリオで、コンテンポラリーの極み。エレクトリック・キーボードの流れとベースが延々と続くドラムマシンのループに絡み合う様が魅力。
 M8."JazzBasill"は3番目のピアノトリオで、J.M.Madsen(アコースティックベース,↑下段右から二番目)、女流ドラマーØyunn(↑下段右)とのトリオ。洗練されたクラシックなピアノ・トリオ・スタイルを聴かせる。リリカルでありなから、ジャジーなスイングもしてみせる。同メンバーでのM9."AM ARE"は、アルバム・タイトル曲、メロディを聴かせる静かな夜のジャズ。
 M10."Think Ahead" 最後に異色な構成のトリオ(Wesseltoft(ピアノ、オルガン)、O.Lilja(ギター)、S.Shrestha(タブラ、ハープ))が登場。静かなミニマムな流れのピアノにギターがサポートして、中盤では3者での自然界の荒々しさを抽象的に響かせ、最後はギターとピアノで未来志向に纏める憎い終わり方。

 とにかくアルバム3枚以上聴いたような多様な世界に引き込まれる一枚である。ブッゲ・ヴェッセルトフトの幅広さと二面性というか三面性というか、アコースティックとエレクトロニックな世界を対比し、彼のピアノやシンセ等のキー・ボードにて共通性・統一感を築き、一つのアルバムとして仕上げた多面な世界が凝縮されていて、圧巻の世界。
 録音が又素晴らしく、それぞれの多様なミュージシャンの演ずる音がクリアに聴き取れてリアルである。これは私の評価だと今年度のトップクラスというところに位置づけられる恐ろしいアルバムだ。

(評価)
□ 曲・演奏  :  90/100
□ 録音    :  90/100

(試聴)
"Am Are"

 *
"Render"

 

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2025年7月12日 (土)

シーネ・エイ Sinne Eeg ・Jacob Christoffersen「SHIKIORI 想帰庵」

150年の歴史を持つ日本の家をコンサート会場にしてのライブ録音

<Jazz>

Sinne Eeg ・Jacob Christoffersen「SHIKIORI 想帰庵」
Stunt Records / Import / JSTUCD-25032 / 2025

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Sinne Eeg (vocals)
Jacob Christoffersen (piano, Fender Rhodes, additional vocals)

Leylxgsht3zma_600w  日本でも人気者のデンマークの歌姫・シーネ・エイSinne Eeg(シン・イーグ, 1977年生まれ)と20年にわたる音楽的パートナーシップを経たピアニスト・ヤコブ・クリストファーセンJacob Christoffersenとのデュオ・アルバムの登場だ。 しかもこの新録音は、日本の古民家「SHIKIORI 想帰庵」でのライヴ録音、そして日本をテーマにした楽曲を含むオリジナルとスタンダード・ナンバー、デンマークと日本の詩の融合という曲も含めての親密感のあるアルバムとして話題である。

 この会場である「SHIKIORI」は、コントラバス奏者松永誠剛が築150年ほどになるという祖母の家を改築して作った音楽空間で、福岡県の山と田んぼに囲まれた農村に佇む民家に世界各国の一流ミュージシャンたちが訪れて様々なイベントを行われているようだ。そしてそこでシーネ・エイとクリストファーセンが極東の歴史的・民族的異空間での演奏は、二人にとってはかなり特別感覚の元での体験であったと想像も難くない。特に日本に親近感を持っているシーネは、この作品にはそれなりの思い入れもあったと思うので、聴く我々もそんな処にも思いを馳せて鑑賞したいアルバムである。

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01. Losing You (Sinne Eeg / Søren Sko)
02. Hebi (Sinne Eeg)
03. Soba Flower (Japanese Ver.) (Jacob Christoffersen / REMI)
04. Lush Life (Billy Strayhorn)
05. Better Than Anything (David Wheat / Bill Loughorough)
06. Maria (Leonard Bernstein / Stephen Sondheim)
07. Cold (Annie Lennox)
08. A Second Chance At Love (Jacob Christoffersen / Lisa Freeman)
09. But Not For Me (George & Ira Gershwin)
10. Don't Be So Blue (Sinne Eeg)
11. Seems Like Yesterday (Jacob Christoffersen / Helle Hansen)*
12. Soba (Jacob Christoffersen)*
(*=CD版のみ収録)

  オリジナル曲(シーネ3曲、クリストファーセン3曲)とビリー・ストレイホーン(M04.)、レナード・バーンスタイン(M06.)、アニー・レノックス(M07.)の人気曲の不思議な融合を試みたこのアルバムは、「人間の存在、不完全さ、そして深い人間同士の繋がり」などを称えているのだという。特別な下準備も不要で、2人のアーティストがしっとりとしたこの和風の部屋にいて、お互いに気持ちを一つにして、周囲の親密感ある空間の精神に反応するだけで見事に仕上がって行ったようだ。

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 M01." Losing You"(あなたを失う)のしっとりしたピアノとややハスキーなヴォーカル、しっかり寂しさの情感の溢れた様が伝わってくるスタートだ。なかなか魅力的な導入曲。
 2013年にSHIKIORIを訪れた際の体験がタイトルになっているM2."Hebi "(蛇)が登場し、又同様にその時の曲M03."Soba Flower" (そばの花)は日本語で歌っている安らぎの自然の情景が親密感を増しますね、来日経験も多いので日本語も美しく。そしてこの曲は最後の締めとしてスキャットとインストで登場。
 M04."Lush Life"(緑豊かな生活)充実感の自然の世界から、M05."Better Than Anything "の曲調の変化の見事な歌回しは彼女の実力の姿だろう。
 M06."Maria"のピアノの静と彼女のしっとりの歌い込みは見事。 
 M09."But Not For Me" の導入部の説得力はハイレベルで聴かせ、そしてM10."Don't Be So Blue "のバラードの展開で、ピアノの導入から歌い込みの流れはジャズ・ヴォーカルの極みに迫る。
 そしてM11."Seems Like Yesterday"の展望の世界の登場がこのアルバムを感動のモノに押し上げ、CDのみ収録のこのM12."Soba"のインスト版が実はアルバムを実に貴重な世界に押し上げていて、この曲は大きな意味があると聴き込んだ。

 シーネ・エイのジャズ・ヴォーカルが今や芸術性の高みにも迫りつつあるところに納得するアルバムだ。もともとのややハスキーであるが、ハートウォーミングな人情味のヴォーカルは情感に満ちたジャズを構築する。そしてクリストファーセンの安定感のあるピアノはバックを築き上げる世界と同時に二人の対話は誠実真摯なところがにじみ出ていて、好感の持てるジャズであった。このような環境でのスタイルはデュオが又効果を上げている。

(評価)
□ 曲、編曲、演奏、歌   90/100
□ 録音          88/100
(試聴)

 *

 

 

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2025年7月 8日 (火)

ディナ・デローズ Dena DeRose 「Mellow Tones」

究極のジャズ・クラブ・ヴォーカルの世界を演ずる名アルバムと言いたい

<Jazz>

Dena DeRose 「Mellow Tones」
HIGH NOTE RECORDS / IMPORT /  CD /  HCD7354 / 2025

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Dena DeRose - vocals and piano
Martin Wind – bass
Matt Wilson – drums

Ed Neumeister – trombone (tracks 1 & 9)

Dena_derose2009w2   米国の実力派ピアニスト兼ヴォーカリスト、ディナ・デ・ローズ(1966年NY生まれ)の2025年新作アルバム『Mellow Tones』が登場。2020年にここで取り上げたアルバム『Ode to the Road』(FCD7323)以来か、彼女はキャリア30年以上、25枚以上の録音モノを持っていて、今日の最も洗練されたジャズ・アーティストとして美的センス溢れるレコーディングで、パンデミック以来ここに戻ってきた。近年は27年間の教育者としての活動も比重が大きくなっていて、音楽と舞台芸術大学のジャズインスティテュートでジャズボイスの教授として過去19年間、オランダのフローニンゲンのプリンスクラウス音楽院、デンハーグの王立音楽院など。現在オーストリアのグラーツに住んでいる。

 この待望の新アルバムは、デローズの特徴的なスウィングとセンチメンタルなバラードを披露し、「リラックスしたスウィング感を醸し出す非常にエレガントなピアニスト兼シンガー」としての彼女の評判が強調されている。そして20年以上にわたっての親密な関係のあるマーティン・ウィンド(bass ↓左)、マット・ウィルソン(Drums ↓中央)、そしてスペシャル・ゲスト・トロンボーン奏者のエド・ノイマイスター(2曲 ↓右)といったリズム・セクションをフィーチャーしていての余裕の世界が見えている。

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(Tracklist)

1. In a Mellow Tone 7:41
2. Autumn in New York 4:12
3. Two for the Road 4:32
4. Stairway to the Stars 3:40
5. Only Trust Your Heart 5:36
6. Hold Fast to Your Dreams 6:56
7. Thank You for Everything 5:56
8. Maybe September 4:59
9. My Frame for the Blues 5:31

 パンデミックで活動が抑制された時は、ミュージシャンの誰もがそうであったように、彼女にとっても相当のストレスであったと言われているが、もともと彼女はピアニストとしてジャズに接していたが、21歳のとき、手根管症候群と関節炎と診断され、右手に激しい痛みを訴え、ピアノを弾くのを止めざるを得なくなった。彼女は落ち込み、薬物とアルコールに頼ったという経験があり、その後、ヴォーカルを勧められた後、何度かの手術にてそれを克服したという経験があり、今回もこのアルバムがパンデミックを克服した証拠としてジャズ総決算的美学のアルバムとしてリリースされていて歓迎。

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 M1. "In a Mellow Tone" まさにこれぞジャズ、スタートは彼女の挨拶代わりのアカペラ・ヴォーカルにトロンボーンが追従して色を付ける。味なクラシックなジャズの良さが響いてくる。ソロ・ベースラインから始まり、しなやかなピアノ・ライン、優しいドラミングがピアノとベースの間の優しい関係を導く、スウィングしてジャズ美たっぷり。
  M2. "Autumn in New York" 彼女の得意なボーカル・ジャズ・フレージングの創造的リフレッシュが効いていることで、なんと魅力的に響くことか。
  M4. "Stairway to the Stars" バラード・ヴォーカルの味とピアノ・プレイの競演。
  M5. "Only Trust Your Heart "近頃のステーシィ・ケントとも違った囁くようなピアノの響きと同時に歌うデローズの歌は説得力十分の語り口で納得。
  M6. "Hold Fast to Your Dreams" 彼女の曲だが初登場らしい。ベースが響き渡って物語の始まりの如く開幕し、彼女の静かに説明する如くのピアノ、そして両者のユニゾンが楽しい。そして美しいゆったりと真摯なヴォーカル、次第に情熱的な姿へと進化していく。究極のジャズの美を感じさせ見事。
  M7. "Thank You for Everything"  M6.を引き継いで・・彼女の説得力のバラード・ヴォーカルがピアノの響きによってぐっと深く。そしてベースが更に深く説得力を発揮。 かってのよき時代の深夜の究極のジャズを演じてくれる。
  M8. "Maybe September" 情景を見事に歌いこんで心情に繋げる。静かなスティック音に乗ってベースとピアノが美しい。
  M9. "My Frame for the Blues " トロンボーン登場曲の二曲目、アルバムの締めだ。ブルース調でスウィングしてまさにジャズ・クラブの締めを演ずるのであった。

 ジャズの本質的な世界を知らしめるべく造り上げられたようなグルーヴ感のある演奏に、年期の入ったヴォーカルの味は見事である。特に後半の数曲は、情景描写は見事でジャズの神髄に迫ろうとする深い世界のヴォーカルと演奏が聴ける。そして優美さと楽しさも忘れないところの究極のジャズ演奏に浸かれる。

(評価)
□ 選曲・作曲・編曲・歌 :  90/100
□ 録音         :  88/100

(試聴)

 

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2025年7月 3日 (木)

マイケル・ウォルドロップ Michael Waldrop 「Native Son」

ドラムスとパーカッシヨンが躍動してダイナミズムと哀愁感ある世界を

<Contemporary Jazz>

Michael Waldrop 「Native Son」
ORGIN RECORDS / Import / ORIGIN82921 / 2025

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Vasil Hadžimanov (piano)
Martin Gjakonovski (bass possibly except 5)
Michael Waldrop (drums)
*guests:
Brad Dutz (percussion on 1-3,5-7)
Jose Rossy (percussion on 1-3)
Chris Symer (bass on 5)

2024年8月14日-16日セルビア-パンチェヴォ(Pančevo)のFuture Nature Sound録音
(但しpercussionは米テキサス州デントンのBuffalo Sound録音)

165935296_2684w  ニューヨークを拠点に活動するアメリカのヴェテラン敏腕ドラマー:マイケル・ウォルドロップ(1961年米フロリダ州ペンサコーラ生まれ →)がリーダーとしての、かねてより親交のあったセルビアのピアニストのヴァジル・ハジマノフとマケドニアのベーシスト・マーティン・ジャコノフスキとのなんとも国際色豊かなピアノ・トリオによる作品。しかもここにパーカッション陣も加わってくるカルテットやクインテット(但しパーカッションは別録り)スタイルの曲群が大半を占める異色の作品(ピアノ・トリオ単独演奏は2曲)の登場だ。

  ウォルドロップが毎年義理の両親を訪ねる際に立ち寄ったセルビアの首都ベオグラードのクラブで、知名度の高いセルビアのピアニストのヴァシル・ハジマノフ(↓左)と知り合った。そしてその後、パンデミック中に自宅に閉じ込められたウォルドロップは、2001年に初めてこの街を知った気持ちを描き作曲した曲「ベオグラード」のリモートレコーディングセッションにハジマノフを呼ぶことを思いつき、その得られた結果に納得して盛り上がる気持ちの彼らは、昨年(2024年)にベオグラードのスタジオで会い、同様にインスピレーションを受けたマケドニアのベーシストであるマーティン・ジャコノフスキ(↓左から2番目)を加えて、この米国と旧ユーゴスラビアによるトリオとしてこのウォルドロップのオリジナル曲集をレコーディングしたのであった。
 なおゲストで米国で活躍中のパーカッションのブラッド・ダッツ(↓左から3番目)とホセ・ロッシー(↓右)を起用し、アフロキューバンと中東の打楽器を駆使して、さらに演奏を盛り上ているということになった。

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(Tracklist)

1 Native Son 6:34*
2 Vasconcelos 7:57*
3 Pythia: The Speaking Water 6:17*
4 El Vino 6:27*
5 Belgrade (Београд) 6:02*
6 Bitter End 4:43*
7 Still Life 7:38*
8 The Wrong Blues 6:35

*印はマイケル・ウォルドロップ(BMI)作曲((4)のみジャック・クーパー(ASCAP)との共作)
(8) はアレック・ワイルダー (BMI)作曲

 冒頭M1."Native Son"からドラムスとパーカッションが上手くシンクロしてリズミカルに演じ魅力的な曲展開。そしてグルーヴ感生む歯切れのいい展開でありながらどことなく哀愁漂うちょっと洒落たプレイのピアノが又いい。このダイナミズムと抒情性に満ちて圧倒するプロジェクトである『Native Son』は、この注目のピアニスト、ヴァシル・ハジマノフを我々に知らしめてくれる。このセルビア人ミュージシャンは、母国だけでなくヨーロッパでもよく知られているようだが(リーダーまたは共同リーダーとして12枚のアルバムをリリースし、12曲以上のサウンドトラックをリリースしている)、私はどうも今まで意識した記憶が無かった。
 M3."Pythia: The Speaking Water"はドラマチックだがやや暗いバラードで、リーダーによる緩やかなパーカッションと干渉してのドラミングが面白い。ここでもピアノは古代の雰囲気を伝えることを目的としたようで神秘性が描かれ物思いにふけるムードに漂っている。ジャコノフスキの響き渡るベースソロがなかなか有効で、終盤にはダッツは変わった楽器を使って、古代の雰囲気を盛り上げている。

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 M4."El Vino"リラックスしてスウィングするミッドテンポの曲。以前にも収録されたことがあり、ウォルドロップがドラムのヒーロー、エルヴィン・ジョーンズに捧げた曲だという。ジャコノフスキは、このブルース調のナンバーでベース・ソロで説得力を示し、ハジマノフは私には解らないがハービー・ハンコックを引き合いに出しているようで、その為このセットで最もパワフルでストレートなソロを披露。ウォルドロップはドラムブレイクでいくつかの即興を演じ、トリオはこの曲では楽しんでいるといった感じだ。
 M5."Belgrade"は、前曲と対照的に、なかなか郷愁の感じられるメロウな曲。ウォルドロップの中東の魅力に向かった原点の曲ということだろう、以前に録音したこともあるが、まさにハジマノフは思慮深くこの曲の意味をかみしめて演ずる。曲の心のこもったエッセンスを美しく捉え、"ベオグラードはバルカン半島であるため、中東の影響がたくさんあるので、それを要求しました」とウォルドロップは言っている。
 M7." Still Life " ウォルドロップが1996年にミュンヘンで最初に書いた曲らしい。バラードである繊細で広々とした美曲。ハジマノフは、ここでビル・エヴァンスの世界に入り込み、一方ハービー・ハンコックの美しい雰囲気にと、言うことだが。
 M8."The Wrong Blues "アレック・ワイルダーの1959年の曲で ここでは、M4.とこれがパーカッションレスのトリオ演奏。キース・ジャレットがゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットと共演した1986年のスタンダード・ライブ・アルバムに録音した名曲。これは「それはまさに私たちが求めていた雰囲気です」とウォルドロップは言っての演奏で締めくくる。

 見事なトリオ+パーカッションで演ずる世界は、エキゾチックな躍動の世界で不思議な面白さが築かれるが、究極、アメリカン・ジャズと、かっての東欧の硬派メロディック・プレイが基調にあって見事な展開を作り、なかなか味わい深いジャズ・アルバムの本質を行くモノとして評価される。
 今回はセルビアのピアニスト・ハジマノフのクラシックに裏付けされたジャズにバルカン半島の民族音楽を融合させた独自のスタイルが垣間見る事が出来貴重であったと同時に、マカドニアのこれも人気のジャコノフスキのベースの色づけに聴き惚れ、素晴らしい世界を知ることが出来た貴重アルバムだ。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    88/100
(試聴)

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