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2025年10月27日 (月)

寺島靖国「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」

今回もかなり質の良い演奏と録音ものを選曲して聴きやすくジャスを楽しめる

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1134 / 2025

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Dpp_0065trw    TERASIMAレコードの話題が続くのだが、結構私は期待している寺島靖国(→)選曲によるオムニバス・アルバムの「Ballad Jazz」もののシリーズが昨年に引き続いて今年も「Vol.6」として登場だ。私の場合はピアノ・トリオのバラッド曲を比較的愛しているので、このシリーズは期待モノなのだ。しかし何時も残念なのは既に私の持っているアルバムからの選曲収載が多いことだが、今回はアルバムが持ち合わせていたのは12曲中3曲であったので、まあまあと思ってリリースと同時に購入している。このシリーズで、知らなかった好みのアルバムを発見できるのも事実で、寺島靖国には取り敢えず感謝していることも過去に何度かある。又、彼は曲全てに対しての知識をオープンにしてのライナー・ノーツも、近年のアルバムとしては充実していて何時も愉しんでいる。そんなわけで今回も内容をここで紹介するが、このアルバムは、ライナー・ノーツを見ながら聴くことをお勧めしたい。

 

(Tracklist)

1. The Old Country / Alessandro Galati Trio
2. Ida Lupino / Luca Colussi Trio
3. Prisoner of Love / Ken Peplowski
4. Mona Lisa / Frankfurt Jazz Trio
5. Evening Song / Lisa Hilton
6. Poinciana / Guido Santoni Trio
7. Poinciana / Francesco Maccianti Trio
8. Thanks for the Memories / Triology featuring Scott Hamilton
9. I Remember Clifford / Ignasi Terraza Trio
10. Stella by Starlight / TRIOISM
11. Ev'ry Time We Say Goodbye / George Mraz | David Hazeltine Trio
12. I’ll Never Smile Again / Tyler Henderson

  オープニングM1."The Old Country"は、最初から私がファンでもあるイタリアの今年三部作でTERASIMAレコードからリリースされたアレッサンドロ・ガラティ・トリオの『Plays Standards』の「3」(TYR-1123 ↓左)(このアルバムはここでも取り上げてるので参照して欲しい)の冒頭を飾る曲からスタート。ある分野ではかなりアヴァンギャスドな奏法も展開することのあるガラティだが、スタンダード曲に対しては、文句なく冒険的手法はあまりとらずに原曲を生かしながら、味わいを深めてくれ、新しい面も聴かせてくれるところが魅力だ。

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 今回の私的な注目点は、これも歴史的に私の好きなAhmad Jamalのトリオ演奏で愛されてきた曲M06."Poinciana"の登場だ。それもなんとここでつい前回私が取り上げたGudo Santoni Trioのアルバム『Plays New Standards』(TYR-1134 ↑中央)からのものと、続けてM07."Poinciana"のFrancesco Maccianti Trioの演奏のものと2曲続くのだ。珍しいですね、同じ曲を並べたのですから・・・でもそれは私の好きな曲なので、内心満足しているのである。
 もう一つ納得したのは、M03."Prisoner of Love "だ、これはKen Peplowskiのテナー・サックスがピアノ・トリオとカルトテット・スタイルで演じているのだが(↑右)、もともとサックスものは私はあまり好まない。それはサックスが登場するとガラっと演奏の質が変わって、トリオとかカルテットの良さが消えて、いつの間にかサックスのだけの曲と化してしまい、早い話が共演者との世界が失われてしまう事になるのが多いことで好まないし、その為うるさくも聴こえることだ。これはサックス・ファンには否定されるかもしれないが、どちらかというとピアノ・トリオ・ファンとしては、それが納得できない。しかしここでのPeplowskiは、そんなところと違って、トリオの構築している世界にソフトでマイルドに演奏して、共に曲を作り上げていてなかなか素晴らしい。こんなテナー・サックスなら歓迎なのだ。そんな意味で良いモノを聴かせてもらった。

 こんなことから、寺島靖国のこのシリーズでの選曲の一つの思想を感じてくれると思うが、その点からもこのアルバムの良さが見えてくるのである。又この世界、欧州系のミージシャンの登場も多く私的には馴染みやすい。
 更に選曲に於いては、録音の質にもこだわりを持つ寺島靖国がオーディオ・マニアであることの結果であろうと思われる良録音が多く、その点も評価したい。そしてこのシリーズは、年に一回ぐらいのリリースがこの数年順調であって、私もそれを喜んでいるのである。

(評価)
□ 選曲・演奏  88/100
□ 録音     88/100

(試聴) 
Ken Peplowski "Prisoner of Love"

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2025年10月22日 (水)

ギド・サントーニ Guido Santoni 「Plays New Standards」

ヨーロピアンのクラシカルなセンスを生かして、心静かに誠実に情感を持って描く世界

<Contemporary Jazz>
Guido Santoni 「Plays New Standards」
(SACD) TERASIMA Records / JPN / TYR-1132 / 2025

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Guido Santoni (piano)
Danilo Gallo (bass)
U.T. Gandhi (drums)

Recorded, mixed & mastered by Stefano Amerio 

Mainw  寺島靖国の企画によるピアノ・トリオによるスタンダード集も、最近はAlessandro Galatiによるものが印象深いが、ここに来て同じイタリアのピアニストのギド・サントーニGuido Santoni(→)によるアルバムを登場させた。サントーニのアルバムは、今までに2021年のピアノ・トリオ作品『Hill Tribes』(ART212)は聴いたのだが、オリジナル曲集であった為か、私の理解不足でそれほど印象に残らなかった。しかしこのトリオはスタート時の好評であったアルバム『Inside a Dream』(ART094,2011) は、メロディアスでとっつきやすく、トリオとしてのインタープレイも優れた好盤だ。そしてこの今回のこのアルバムは、それより続いている三者の関係が熟している老獪なトリオ(Danilo gallo(b, 下左)、 U.T.Gandhi(d, 下右))によるもので、彼らはヨーロッパのジャズの一つの特徴でもある何となくクラシック音楽からの芸術性とジャズの自由に自己の表現の操れるインプロヴィゼイションとが結びあった展開が見事なピアノトリオと評されているのである。

 しかしこれだけ実力のあるサント-ニであるが、彼に関する情報は意外に少ない。幼少期からピアノには接していたようで、イタリアのロッシーニ音楽院で音楽を学び、初期にはエレクトリック・ジャズ、ソウル、ファンクなども手掛けていたが、2000年ごろから音楽的ビジョンに彼自身の個性が表れ、トリオかソロ演奏が中心となる。トリオ編成では、イタリアらしくメロディアスで、かつ深みのある、ヨーロッパのジャズ的感性を持ちながらも伝統的ジャズのグルーヴ・即興性も併せ持つ演奏スタイルとして評価を獲得している。

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 このアルバムのもう一つの注目点は、やはりオーディオ的感覚として、名エンジニアのステファノ・アメリオの手により録音、ミックス、マスターと作り上げられた点だ。今やユーロ・ジャズの聴き方には、その音質の加味された上での評価が成される演奏スタイルが多く、そんな点からも聴きごたえがあるかどうかに関心が持たれ、SACDとして発売されていて、其れを鑑賞するのである。

 

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01. Mi Sono Innamorato Di Te (Luigi Tenco)
02. Poinciana (Buddy Bernier – Nat Simon)
03. Edith And The Kingpin (Joni Mitchell)
04. Blu (坂本 龍一)
05. Estate (Bruno Martino)
06. Tu Si' ‘Na Cosa Grande (Domenico Modugno)
07. Midnight Mood (Joe Zawinul)
08. Seven Days (Pat Metheny)
09. Bill Evans (Lyle Mays)
10. Infant Eyes (Wayne Shorter)

 

 スタンダード集というが、M02, M05 あたりは私の好みの曲ですぐ解るが、他は初めて聴くと言った感じのモノが多い。そして演奏は静かにしかも深く描く世界が見事である。これによってライナー・ノーツでは、「陰」と決めつけているが、決して「陰」ではなく、演ずるピアノの音には華もあり、「静」を通して「思索的」でもあり「美」があり「深い」のである。これを「陰」と言ったら、音楽が泣く。繊細な詩情性が「陰」といったら芸術家が泣く。
 そしてライナー・ノーツでは、これもアレッサンロ・ガラティと比較していて、それは良いが、ガラティは「陽」といっている。私ガラティのファンであるが、彼の作品を過去から聴き込んで来ているのだが、決して単に「陽」と決めつけられない。「陽」に感じられるところはメロディーの展開に彼の演奏は華があるからだと思う。ガラティを単に「陽」と言う事に非常に納得がゆかない。これは余談だが、こんな先入観を持たせてアルバムを聴かせるのは、書いた後藤誠一の見識を疑う。そのあたりはどうも聴く前から不信感に襲われた。日本盤はそれだから困る。

 それはさておき、M01."Mi Sono Innamorato Di Te"から素晴らしい演奏だ。心静かな流れから真実の心を訴える。これは「陰」でなく「誠実さ」である。これはお見事な編曲。
 M02."Poinciana"は、この曲は私がファンであるAhmad Jamalしかないと思うところが、それに追従するのでなく、サントーニも自分の世界に昇華してのリズムが聴き処、とても「陰」には思えない。
 坂本龍一のM04."Blu"も、タイトルはブルーだが、この叙情性は決して「陰」では無い。
 M05."Estate"これぞ私の好きなイタリアの曲、夏に高揚感から起きた事への恨み節で・・・むしろ熱情から覚めた平常心。

 こうしてサントーニは、安定感の中に誠実さを描いてくれる・・・先にも書いた「陰」とは別世界。私から見ると、比較対象となった「陽」と表現されたアレッサンドロ・ガラティは、透明感のある音色と繊細なタッチでメロディ重視の抒情性を描く、むしろ派手な即興よりも、深く内省的な情感をも描くこともあり、冷たさでなくイタリア的詩情での温かさを逆に感じさせてくれる。それを単に「陽」と片付けられると、ファンとして情けない。そしてこのサントーニを比較するならば、「陽」に対比しての「陰」でなく、「心静かさ」「誠実さ」そして「秘めた情感」等が感じられると言うのが私の印象だ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   90/100
□ 録音         90/100

(試聴)

当アルバムは日本盤でまだYoutubeにアップされていないので
過去の同じトリオのアルバム「Inside a Dream」より、参考までに ↓

 

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2025年10月17日 (金)

トマス・リュッケルト Thomas Rückert Trio 「For All We Know」

ジャズのスタンダードを自己の即興レベルに引き上げ、奥深い世界へと導く

<Jazz>

Thomas Rückert Trio 「For All We Know」
 (CD)DOUBLE MOON / IMPORT /  DMCHR71467 / 2025年05月13日 

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Thomas Rückert- Piano
Reza Askari - Double bass
Fabian Arends - Drums

録音:2024年6月7日、ロフト・ケルン(ドイツ) 

 ドイツのケルン出身でニューヨークでも活躍するピアニスト、トーマス・リュッケルト(1970-)が、同じケルン出身の若手のベーシストのレザ・アスカリ(1986- 下左)、ドラマーのファビアン・アーレンズ(1990- 下右)2人と演ずるピアノ・トリオの最新作。
   このアルバムは、今年5月にリリースされたモノだが、ここに来て聴いたところ、注目点の多いものであり、又全てがちょっと一段落的に落ち着いたこの秋に、ゆったりじっくり聴きこむには最良のアルバムで、決して無視できない貴重な世界を構築している為、ここに取り上げることにしたもの。

Csm_rckert_profilw  このトーマス・リュッケルト(→)は、私は殆ど接点が無かったが、現在55歳言うことで、最も油ののった時にある。幼少期から音楽的環境に育ち、7歳でピアノを始めた。16歳からサックスやドラムにも関わって来たようだ。1990年からはケルン音楽大学(Musikhochschule Köln)で学んだ。インド、アフリカ、アメリカ・北米など、各地で音楽を学ぶ旅をした経験があるという。2002〜2006年頃、自身のトリオ(弟ヨッヘン・リュッケルトがドラム)で、アルバムを制作。代表的な作品として 『Debut』(2002年)、『Dust of Doubt』(2004年)、『Blue in Green』(2006年、抒情的で空間を生かしたサウンドが特徴)など。 ジャズ・フェスティバルなど国内外での演奏多数。他のミュージシャンとの協働も多く、リー・コニッツ(Lee Konitz) をはじめ多数。教育・その他の活動ジャズピアノの教育者としても活動。 演奏スタイルには即興を重んじるアプローチが評価されている。

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(Tracklist)

1.For All We Know (Fred Coots) - 13:51
2.Blue Monk (Thelonious Monk) - 7:41
3.Stella By Starlight (Victor Young) - 7:58
4.Black Orpheus (Luiz Bonfa) - 9:43
5.How Deep Is the Ocean (Irving Berlin) - 8:00
6.Bewitched, Bothered and Bewildered (Rogers and Hart) - 8:47
7.Embraceable You (George Gershwin) - 7:49
8.Body And Soul (John W. Green) - 12:09

   評判通り、即興が素晴らしい。このアルバムはライブものであるだけ、ジャズ・スタンダードを演じては居るが、ありきたりにただ再現するのではなく、ジャズの醍醐味でもあるいつの間にか彼らの即興曲の場となり、オリジナル曲かと錯覚するほどに、思索的であったり、感覚、情緒をしっかり表現し居るところが凄い。

 そしてライブでもある為か長曲が多く、冒頭のM01."For All We Know "は、13分を超え、冒頭から丁寧に深く深く内省的な彼らの世界に誘導されてゆく、その他の曲も 7から9分という長さだ。
 M6."Bewitched, Bothered and Bewildered "などを聴いても、聴き慣れたピアノによるメロディーが時に顔を出しその間、ピアノ、ベースがぐっと深く沈み込んで語り聴かすスタイルで、思索の世界に入り込む。
 M7."Embraceable You"などは、いかにもジャズ・リズムを演じてくれるが、原曲が解らないぐらいに彼らの世界に引っ張り込まれ、ベースとドラムスの共演が印象的。
 納めの曲M8."Body and Soul" まさにSoulの世界。

 とにかくスタンダード集でありながら、その匂いを感じさせつつ、究極彼らのオリジナル曲へ誘導され、そこにはなんと哲学的奥深さを感ずる世界が待っていて、ドイツらしい真面目さをも響き伝わったくるというジャズ界の中でも、注目すべき一枚であると感じている。私の評価は高い。

(評価)
□ 編曲・演奏 92/100
□ 録音    88/100

(試聴)



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2025年10月12日 (日)

ヨーロピアン・ジャズ・トリオ European Jazz Trio 「European Comfort」

ロックなどの暦年の注目曲にアプローチ、まさにジャズ・イージーリスニング

<Jazz>

European Jazz Trio 「European Comfort」
(CD) M&I / JPN / pccy30252 / 2025

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Marc van Roon(piano) マーク・ヴァン・ローン
Frans van der Hoeven(bass) フランス・ヴァン・ダー・ホーヴァン
Roy Dackus(drums) ロイ・ダッカス

 

 ヨーロピアン・ジャズ・トリオは、オランダのジャズ・ミュージシャン3名で三十数年前に結成されたジャズ・ピアノ・トリオ。1989年のアルバム『Norwegian Woodノルウェーの森』が大ヒットし人気者に。そして1995年に2代目ピアニストとしてマーク・ヴァン・ローン(1967-)を迎えて後は、フランス・ヴァン・ダー・ホーヴァン(B, 1963-)とロイ・ダッカス(D, 1964-)とでの中堅からベテランと言われるキャリアーのメンバーによるトリオで、世界的活動を続けている。彼らはその後もクラシックから映画音楽、ロック、ポップスまでを彼らなりきの独特な解釈で、音楽を境界無くジャズへと編曲演奏して人気を維持している。彼らにとって"『ジャズ』とは、形式やメロディ、サウンド、リズム、グルーヴを自由に組み合わせて表現する音楽"と言うことなのかもしれない。


 今回のアルバムは10年ぶりの新作と言うことで、ビートルズ、オアシス、ジョニ・ミッチェル、イーグルス、スティング、エルトン・ジョン、プリンスなどほぼロック系の人気曲を取り上げて、ヨーロ独特の洗練されたアレンジでカバーし、比較的優しいピアノ・トリオ演奏で、とにかくリラックスして楽しめる一枚に仕上がっている。日本にもライブ活動するようで期待を高めている。

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(Tracklist)
01 Michelle (John Lennon, Paul McCartney) ミッシェル
02 An Englishman in New York (Sting) イングリッシュマン・イン・ニューヨーク
03 Your Song (Elton John) 僕の歌は君の歌
04 Wonderwall (Noel Gallagher) ワンダーウォール
05 Nothing Compares 2 U (Prince) 愛の哀しみ
06 All Night Long (Lionel Richie) オール・ナイト・ロング
07 I'm Not in Love (Graham Gouldman, Eric Stewart) アイム・ノット・イン・ラヴ
08 She's Always a Woman (Billy Joel) シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
09 Xanadu (Jeff Lynne) ザナドゥ
10 The Sound of Silence (Paul Simon) サウンド・オブ・サイレンス
11 Time After Time (Cyndi Lauper, Robert Hyman) タイム・アフター・タイム
12 Every Breath You Take (Sting) 見つめていたい
13 Purple Rain (Prince) パープル・レイン
14 Big Yellow Taxi (Joni Mitchell) ビッグ・イエロー・タクシー
15 Hotel California (Don Felder, Don Henley, Glenn Frey) ホテル・カリフォルニア
16 The Greatest Love of All (Michael Masser) グレイテスト・ラヴ・オブ・オール

  まーなんと言って良いか、イージー・リスニングものですね。今これを書いている時に流して聴いているのだが、とにかく苦にならないし、そうかと言って注目度の高いインパクトのあるモノが聴こえたということもなく、16曲が流れた。そんなところが又ある意味良いのかもしれない。

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  スタートのM01."Michelle"は、Beatlesでスタートと、彼らのロックへの評価が見えてくる。この曲は編曲が思いの外かなりジャジーに成されているが、意外に難しくなく、抵抗なく受け入れられる。そんなところが旨いのかもしれない。そしてStingのM02."An Englishman in New York "は、軽妙に比較的優しく流す。
 PrinceのM05."Nothing Compares 2 U"、そしてM07." I'm Not in Love "M08."She's Always a Woman"は、ピアノの音色も美しく情感たっぷりに、ベースも静かに支えてくれる。
   Paul Simon のM10."The Sound of Silence"は、メロディーの流れを変えてのルバート奏法による工夫が見られ、なかなか広がりもあって面白く仕上がっている。
 M11."Time After Time"は静かに優しく心豊かに・・・。
 M14."Big Yellow Taxi "Joni Mitchellのこの曲は展開がこのアルバムの中でも最もジャズっぽく、味がある。
   M15." Hotel California"元はギターの美しいこの曲をどう展開するかと注目したが、なんとフェイク、アドリブの最も効かした編曲で珍しく原曲とは大きく異なって意外性があった。

 究極、ピアノの澄んだ美しい音を中心にしたメロディーにつられて流れるトリオ・パターン。ベースは意外に重く入ったり素直な音程を響かせたりと曲による変化は芸達者だ。ドラムスの小技の使い方やビートの展開などオーソドックスで嫌みが無い。
 ジャズ的アレンジを展開するも、ポピュラー・ミュージック的な展開に誰もがついて行ける因子を持っていて、一、二の曲を除いて、原曲の流れはきちんと守っているので、ポピュラー愛好者のジャズ入門にも適していて愛されそうだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 87/100
□ 録音       87/100

(試聴)

 

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2025年10月 6日 (月)

ム-ン・ヘウォン MOON haewon with Tsuyoshi Yamamoto 「 Fascination」

バラード曲の味わいも更に深まって・・・・お見事

<Jazz>

MOON haewon with Tsuyoshi Yamamoto 「 Fascination」
(CD)SOMETHIN'COOL / JPN / SCOL1079 /2025

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MOON haewon(vo) へウォンMoon
Tsuyoshi Yamamoto (p) 山本剛
Hiroshi Kagawa (b) 香川裕史
Chicco Soma (ds) チッコソウマ

Recorded at Studio Tanta & 54it Sutudio, April 16 - April 19, 2025

529805544_24490w    既にここで何回か取り上げた韓国のジャジーポップ・グループWINTERPLAYのヴォーカルとして日本でもファンを獲得、その後ジャズ・シンガーとして『キス・ミー』(ユニバーサル・ミュージック)、ほか3作を発表してきたMOON haewon(文慧媛(1984年生まれ、韓国・全州市出身)→)。昨年、リリースした山本剛のピアノ・トリオとの初共演作品『Midnight Sun』(scol 1072)は好評で、ちょっとした波に乗っていて、ここに早くも続編のアルバムの登場だ。
 もともと山本剛のピアノはムード派なので、彼女のもつ透明感あふるる歌声、そしてなんとなくクールで佇まいのおとなしさとがうまくマッチングして、ジャズ・ムードが盛り上がっての高評価。直ちに再共演と言うことになったのだろう、いずれにしても取り敢えず前作の線を維持しての主としてバラード曲を中心に作り上げてきた。

(Tracklist)

01 Solitary Moon
02 Dream a Little Dream of Me
03 Fascination
04 Early Autumn
05 Once in a While
06 The Very Thought of You※
07 Water Fog
08 Mood Indigo
09 Prelude to a Kiss※
10 Them There Eyes
11 Alfie
※CD限定収録曲(LP未収録曲)

 さてオープニングは、P.メセニー&C.ヘイデンの名演のM1."Solitary Moon"からスタート、歌詞を付けて冒頭から透明感と甘さと、爽やかな歌声が、哀愁ただようメロディックな山本のピアノが響き、いかにも前作を思い出させる世界が流れる。
 そして聴いてゆくと、ぐっとムードたっぷりのバラード曲のM04."Early Autumn"、 M06."The Very Thought of You"、M.09."relude to a Kiss"、M11."Alfie"が流れ、今回はそのあたりに焦点を当てていることが解る(ところが、このM06.、M09.は、LPには収録されていない。私はその点不思議に思っているのだが、要注意)。どうも彼女自身も前作の経験があり今作の方が、このトリオともなじんでのことか、ムードの表現が一層しっとりと歌い上げて味付けが深まっている。

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   私が彼女の歌をWINTERPLAYのアルバム(『Songs of Colored Love』(Emarcy, 2009)、『Sunshine』(Uccy-10006,2010))で初めて聴いたのはもう15年も前になるが、当時も澄んだ声の質の良さは注目したが、やはりそれなりの年期は意味があって、ここまで味付けのあるムーディなヴォーカルに円熟してきていることにある意味感動もする。
 タイトル曲M03."Fascination"は、彼女の自作曲、リズムカルでなかなか垢抜けている。
 M07."Water Fog"も彼女自身の曲、語り聴かせるところが旨い。
 M08."Mood Indigo"は、ジャジーな味も楽しませる。
 M11."Alfie"は、ピアノとのヴォーカル・デュオのバラード曲、両者の味が出て美しくまとめ上げている。

 どちらかというと、トーン高めの澄みきった端麗クール・ヴォイスが、とにかく歌詞の意味をかみしめてメロディー感覚の優れたセンスをいかしてしっとりと迫ってくる。山本剛のピアノは、デュオ曲で実感できるがヴォーカルを生かすのが旨い。もともとの叙情性を生かしてムードが盛り上がる。
 今アルバムはMOON自身の曲などを取り上げたりして、彼女の因子も高まっているが、この組み合わせは更にスタンダードの名曲にもいろいろと深入りして聴かせて欲しいと思うところだ。

(評価)
□ 曲・演奏・歌   88/100
□ 録音       88/100

(試聴)

*

 

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2025年10月 1日 (水)

ディーター・イルク Dieter Ilg 「 Motherland」

故郷の「ドイツ黒い森」を想い描く叙情性ゆたかなトリオ作品 

<Jazz>

Dieter Ilg 「 Motherland」
(CD)JAZZLINE / IMPORT/ CD31458 / 2025

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Dieter Ilg (b)
Rainer Böhm (p)
Patrice Héral(ds)
Till Brőnner (tp,flh)

Dieterilgw    ドイツのベテラン・ベーシスト、ディーター・イルクDieter Ilg(1961年生まれ、→)が長年活動を共にするピアノ・トリオ・スタイル(ドイツ人ピアニストのライナー・ベームとフランス人ドラマーのパトリス・ヘラルを擁するトリオ)でのニュー・アルバム。このトリオではACTからクラシックをジャズで構築する一連のアルバムをこの16年間リリースして、かなりの支持を得てきた。

 本作は故郷に想いを馳せてと言うことのようで、ヘンデルの楽曲を2曲演奏。そしてトランペット奏者のハーブ・アルパートによる演奏でヒットした"Schwarzwaldfahrt(黒い森の散策)"に注目して、自己の故郷(Motherland=“母なる地”)の出身地オッフェンブルク/シュヴァルツヴァルト(「Schwarzwald黒い森」)を連想してのアルバムを造りあげた。そのドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)と言うのは、フランスと国境を接するドイツ南西部にある山岳地帯で、その鬱蒼とした常緑樹林の森や美しい村(ゴシック様式の建物など)で知られる処のようだ。そして何故かこのアルバムには、不思議にもバカラックの"Close to You"をノスタルジーを滲ませてカバーしている(それはどうも地元のレストランで聴いて印象に残った曲で取り上げたとか)。そしてハープ・アルパートを意識してか、朋友であるトランペットのティル・ブレナーを2曲でフィーチュアしている。しかしメインは自身とメンバーの美しいオリジナル7曲により構成されている。いろいろと多岐にわたっているようだが、一貫して自己の懐かしき故郷への物語を作り上げているのだ。

(Tracklist)

1 Schwarzwaldfahrt
2 Anundfürsich*
3 Glorious#
4 Soil*
5 Motherland*
6 Time For A Change*
7 Menuet#
8 People Make The World Go Round*
9 B*
10 Close To You
11 It's Time To Change*

#印 クラシック・ナンバー
*印 トリオ・メンバーのオリジナル

 ピアノトリオとしてのアンサンブルを重視して、そしてジャズとしての即興性・瞬間性を重んじる方向性は十分感ずるところにあった。それによりジャズとして聴きごたえがありながら、ぐっと迫る静けさや叙情性が十二分に描かれていて、これはなかなか私の好きな世界を演じている。

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 幕開けとして冒頭から「黒い森」(写真上)のテーマを前面にM1."Schwarzwaldfahrt(黒い森の散策)"で、ピアノ・トリオにトランペットをフィーチャーしてカルテット演奏。おやおやこれはどうなるのかと思いきや続くM2."Anundfürsich"からはピアノ・トリオでの叙情性ある優しい曲展開を聴かせる。
 M3. "Glorious" ヘンデルの登場。イルクの編曲で柔らかい世界。ジャズらしいリズムと即興も演ずる。 
 M4. "Soil" イルク自身のオリジナル曲。タイトルが示すような“土地”“土壌”への親近感、ベースの低音による重みや深さがあり、ピアノが美しく表現、聴き応えがある。
 M5. "Motherland" タイトル曲でやはりイルクの曲。このアルバム全体の中心でアルバム・テーマを描く。故郷への想いを表現、叙情性がありながらドラマティックな展開がインパクトある。
 M6. "Time For A Change" イルクの曲が続く。ゆったりとした展開。“時の流れ”と"変化"に想いを馳せて故郷に思いを巡らすことの意義を語る。
 M7. "Menuet" ここで美しいメロディーが流れる 、ヘンデルの“Minuet”(Water Music)からの編曲だ。彼の生涯テーマのクラシックとジャズの架け橋だ。ちゃんとジャズ即興の要素が重ねて演じ一つの美学の締めくくりをしている。
 M9. "B "ちょっと意味ありげなタイトル。アルバムの終盤に来て気分転換をさせる手法か。
 M.10."Close To You" バカラックの彼自身が印象深く聴いた曲を登場させ、ノスタルジーを讃えつつ、トリオ+ブレナーのペットでアレンジによる心地よさを増強させ、このアルバムの意味をこの終盤にて訴え纏め上げる。
 M11. "It’s Time To Change" 終曲。ぐっと静かに深くアルバムのテーマを問いかける。なんとなく希望が感じられるのが旨い。

 変化を受け入れつつ故郷を美しく描いて想う心が響いてくるアルバムだ。ここにはやっぱりクラシックをジャズに生かそうとしてきた彼の手法が生きていて、一つの美学を結実している。イルクの重厚なベースにベームのピアノはかなり優しく乗って、その結果スリリングという世界では若干もの足りなさはあるが、テーマの叙情性美学が描かれていて嫌みの無い真摯に聴けるアルバムである。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     87/100

(試聴)



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