トマス・リュッケルト Thomas Rückert Trio 「For All We Know」
ジャズのスタンダードを自己の即興レベルに引き上げ、奥深い世界へと導く
<Jazz>
Thomas Rückert Trio 「For All We Know」
(CD)DOUBLE MOON / IMPORT / DMCHR71467 / 2025年05月13日
Thomas Rückert- Piano
Reza Askari - Double bass
Fabian Arends - Drums
録音:2024年6月7日、ロフト・ケルン(ドイツ)
ドイツのケルン出身でニューヨークでも活躍するピアニスト、トーマス・リュッケルト(1970-)が、同じケルン出身の若手のベーシストのレザ・アスカリ(1986- 下左)、ドラマーのファビアン・アーレンズ(1990- 下右)2人と演ずるピアノ・トリオの最新作。
このアルバムは、今年5月にリリースされたモノだが、ここに来て聴いたところ、注目点の多いものであり、又全てがちょっと一段落的に落ち着いたこの秋に、ゆったりじっくり聴きこむには最良のアルバムで、決して無視できない貴重な世界を構築している為、ここに取り上げることにしたもの。
このトーマス・リュッケルト(→)は、私は殆ど接点が無かったが、現在55歳言うことで、最も油ののった時にある。幼少期から音楽的環境に育ち、7歳でピアノを始めた。16歳からサックスやドラムにも関わって来たようだ。1990年からはケルン音楽大学(Musikhochschule Köln)で学んだ。インド、アフリカ、アメリカ・北米など、各地で音楽を学ぶ旅をした経験があるという。2002〜2006年頃、自身のトリオ(弟ヨッヘン・リュッケルトがドラム)で、アルバムを制作。代表的な作品として 『Debut』(2002年)、『Dust of Doubt』(2004年)、『Blue in Green』(2006年、抒情的で空間を生かしたサウンドが特徴)など。 ジャズ・フェスティバルなど国内外での演奏多数。他のミュージシャンとの協働も多く、リー・コニッツ(Lee Konitz) をはじめ多数。教育・その他の活動ジャズピアノの教育者としても活動。 演奏スタイルには即興を重んじるアプローチが評価されている。
(Tracklist)
1.For All We Know (Fred Coots) - 13:51
2.Blue Monk (Thelonious Monk) - 7:41
3.Stella By Starlight (Victor Young) - 7:58
4.Black Orpheus (Luiz Bonfa) - 9:43
5.How Deep Is the Ocean (Irving Berlin) - 8:00
6.Bewitched, Bothered and Bewildered (Rogers and Hart) - 8:47
7.Embraceable You (George Gershwin) - 7:49
8.Body And Soul (John W. Green) - 12:09
評判通り、即興が素晴らしい。このアルバムはライブものであるだけ、ジャズ・スタンダードを演じては居るが、ありきたりにただ再現するのではなく、ジャズの醍醐味でもあるいつの間にか彼らの即興曲の場となり、オリジナル曲かと錯覚するほどに、思索的であったり、感覚、情緒をしっかり表現し居るところが凄い。
そしてライブでもある為か長曲が多く、冒頭のM01."For All We Know "は、13分を超え、冒頭から丁寧に深く深く内省的な彼らの世界に誘導されてゆく、その他の曲も 7から9分という長さだ。
M6."Bewitched, Bothered and Bewildered "などを聴いても、聴き慣れたピアノによるメロディーが時に顔を出しその間、ピアノ、ベースがぐっと深く沈み込んで語り聴かすスタイルで、思索の世界に入り込む。
M7."Embraceable You"などは、いかにもジャズ・リズムを演じてくれるが、原曲が解らないぐらいに彼らの世界に引っ張り込まれ、ベースとドラムスの共演が印象的。
納めの曲M8."Body and Soul" まさにSoulの世界。
とにかくスタンダード集でありながら、その匂いを感じさせつつ、究極彼らのオリジナル曲へ誘導され、そこにはなんと哲学的奥深さを感ずる世界が待っていて、ドイツらしい真面目さをも響き伝わったくるというジャズ界の中でも、注目すべき一枚であると感じている。私の評価は高い。
(評価)
□ 編曲・演奏 92/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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