« トマス・リュッケルト Thomas Rückert Trio 「For All We Know」 | トップページ | 寺島靖国「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」 »

2025年10月22日 (水)

ギド・サントーニ Guido Santoni 「Plays New Standards」

ヨーロピアンのクラシカルなセンスを生かして、心静かに誠実に情感を持って描く世界

<Contemporary Jazz>
Guido Santoni 「Plays New Standards」
(SACD) TERASIMA Records / JPN / TYR-1132 / 2025

552846300_137796w

Guido Santoni (piano)
Danilo Gallo (bass)
U.T. Gandhi (drums)

Recorded, mixed & mastered by Stefano Amerio 

Mainw  寺島靖国の企画によるピアノ・トリオによるスタンダード集も、最近はAlessandro Galatiによるものが印象深いが、ここに来て同じイタリアのピアニストのギド・サントーニGuido Santoni(→)によるアルバムを登場させた。サントーニのアルバムは、今までに2021年のピアノ・トリオ作品『Hill Tribes』(ART212)は聴いたのだが、オリジナル曲集であった為か、私の理解不足でそれほど印象に残らなかった。しかしこのトリオはスタート時の好評であったアルバム『Inside a Dream』(ART094,2011) は、メロディアスでとっつきやすく、トリオとしてのインタープレイも優れた好盤だ。そしてこの今回のこのアルバムは、それより続いている三者の関係が熟している老獪なトリオ(Danilo gallo(b, 下左)、 U.T.Gandhi(d, 下右))によるもので、彼らはヨーロッパのジャズの一つの特徴でもある何となくクラシック音楽からの芸術性とジャズの自由に自己の表現の操れるインプロヴィゼイションとが結びあった展開が見事なピアノトリオと評されているのである。

 しかしこれだけ実力のあるサント-ニであるが、彼に関する情報は意外に少ない。幼少期からピアノには接していたようで、イタリアのロッシーニ音楽院で音楽を学び、初期にはエレクトリック・ジャズ、ソウル、ファンクなども手掛けていたが、2000年ごろから音楽的ビジョンに彼自身の個性が表れ、トリオかソロ演奏が中心となる。トリオ編成では、イタリアらしくメロディアスで、かつ深みのある、ヨーロッパのジャズ的感性を持ちながらも伝統的ジャズのグルーヴ・即興性も併せ持つ演奏スタイルとして評価を獲得している。

44595wUtgandhipressoteatrow

 このアルバムのもう一つの注目点は、やはりオーディオ的感覚として、名エンジニアのステファノ・アメリオの手により録音、ミックス、マスターと作り上げられた点だ。今やユーロ・ジャズの聴き方には、その音質の加味された上での評価が成される演奏スタイルが多く、そんな点からも聴きごたえがあるかどうかに関心が持たれ、SACDとして発売されていて、其れを鑑賞するのである。

 

558134445_1386763616351157w (Tracklist)

01. Mi Sono Innamorato Di Te (Luigi Tenco)
02. Poinciana (Buddy Bernier – Nat Simon)
03. Edith And The Kingpin (Joni Mitchell)
04. Blu (坂本 龍一)
05. Estate (Bruno Martino)
06. Tu Si' ‘Na Cosa Grande (Domenico Modugno)
07. Midnight Mood (Joe Zawinul)
08. Seven Days (Pat Metheny)
09. Bill Evans (Lyle Mays)
10. Infant Eyes (Wayne Shorter)

 

 スタンダード集というが、M02, M05 あたりは私の好みの曲ですぐ解るが、他は初めて聴くと言った感じのモノが多い。そして演奏は静かにしかも深く描く世界が見事である。これによってライナー・ノーツでは、「陰」と決めつけているが、決して「陰」ではなく、演ずるピアノの音には華もあり、「静」を通して「思索的」でもあり「美」があり「深い」のである。これを「陰」と言ったら、音楽が泣く。繊細な詩情性が「陰」といったら芸術家が泣く。
 そしてライナー・ノーツでは、これもアレッサンロ・ガラティと比較していて、それは良いが、ガラティは「陽」といっている。私ガラティのファンであるが、彼の作品を過去から聴き込んで来ているのだが、決して単に「陽」と決めつけられない。「陽」に感じられるところはメロディーの展開に彼の演奏は華があるからだと思う。ガラティを単に「陽」と言う事に非常に納得がゆかない。これは余談だが、こんな先入観を持たせてアルバムを聴かせるのは、書いた後藤誠一の見識を疑う。そのあたりはどうも聴く前から不信感に襲われた。日本盤はそれだから困る。

 それはさておき、M01."Mi Sono Innamorato Di Te"から素晴らしい演奏だ。心静かな流れから真実の心を訴える。これは「陰」でなく「誠実さ」である。これはお見事な編曲。
 M02."Poinciana"は、この曲は私がファンであるAhmad Jamalしかないと思うところが、それに追従するのでなく、サントーニも自分の世界に昇華してのリズムが聴き処、とても「陰」には思えない。
 坂本龍一のM04."Blu"も、タイトルはブルーだが、この叙情性は決して「陰」では無い。
 M05."Estate"これぞ私の好きなイタリアの曲、夏に高揚感から起きた事への恨み節で・・・むしろ熱情から覚めた平常心。

 こうしてサントーニは、安定感の中に誠実さを描いてくれる・・・先にも書いた「陰」とは別世界。私から見ると、比較対象となった「陽」と表現されたアレッサンドロ・ガラティは、透明感のある音色と繊細なタッチでメロディ重視の抒情性を描く、むしろ派手な即興よりも、深く内省的な情感をも描くこともあり、冷たさでなくイタリア的詩情での温かさを逆に感じさせてくれる。それを単に「陽」と片付けられると、ファンとして情けない。そしてこのサントーニを比較するならば、「陽」に対比しての「陰」でなく、「心静かさ」「誠実さ」そして「秘めた情感」等が感じられると言うのが私の印象だ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   90/100
□ 録音         90/100

(試聴)

当アルバムは日本盤でまだYoutubeにアップされていないので
過去の同じトリオのアルバム「Inside a Dream」より、参考までに ↓

 

|

« トマス・リュッケルト Thomas Rückert Trio 「For All We Know」 | トップページ | 寺島靖国「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

ギド・サントーニは初めて聞きましたが澄んだピアノに静かなジャズの展開、夜長にゆっくりと聴く込むと幸せな気分になれそうです!

投稿: ローリングウエスト | 2025年10月22日 (水) 18時28分

ローリングウエスト様
コメント有難うございます
ジャズのこうした世界は知らない人が多いですが、ジャズは聴かない人もフト聴いてみると惹かれる人も多いです。
そんな意味では寺島靖国も貢献していると言えるでしょう・・・こうした世界はユーロ・ジャズの魅力でもあります。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2025年10月23日 (木) 09時21分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« トマス・リュッケルト Thomas Rückert Trio 「For All We Know」 | トップページ | 寺島靖国「For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」 »