トーマス・ストレーネン Thomas Strønen「Off Stillness」
音の錬金術師による 即興、アレンジの展開による静謐にしてスリリングな五重奏曲
<Contemporary Jazz>
Thomas Strønen/Time Is A Blind Guide 「Off Stillness」
ECM / Import / ECM2842 / 2025
Thomas Strønen(ds), Håkon Aase(vln), Leo Svensson Sander(Violoncello), Ayumi Tanaka (p), Ole Morten Vågan(b)
Design; Sascha Kleis
Engineer: Peer Espen Ursfjord
Mixing: Manfred Eicher, Thomas Strønen, Michael Hinreiner
Producer: Manfred Eicher
Recorded December 2021 at Rainbow Studio, Oslo
Mixed July 2024 at Bavaria Musikstudios, München
「トーマス・ストレーネンとTime Is A Blind Guide」の第三作目のアルバムである。ストレーネンThomas Strønen(→)は1972年12月7日生まれのノルウェーのジャズ・ドラマーで、既に70枚以上のアルバムを録音しているという超活躍のミュージシャン。
この結成されているメンバーは、非常に珍しいアコースティックなアルケミー(このような表現がされているが、この意味は錬金術(れんきんじゅつ)、つまり秘術というか、価値あるものの作り上げる技)が、取り入れられている。それは、所謂ベースはジャズ・トリオの弦楽器として一般的だが、それにヴァイオリン、チェロが加わっての珍しい3つの弦楽器がジャズ演奏に挑戦し、所謂ジャス・トリオの常連のピアノやドラムス(パーカッション)と時に対立的に演奏が響くといいながらも、究極各楽器が全体として機能し展開する世界を構築しているのだ。非常に希有な世界に浸れて、いかにもECM的である。
そして前作から、チェロには、ルーシー・レイルトンに代わってレオ・スヴェンソン・サンダーが加入し、ちょっと印象的に新鮮なアンサンブルの音を醸し出す。今回も全体像では異質の世界に入り込めて、それはオスロのレインボー・スタジオで2021年に録音され、2024年にミュンヘンでミキシングされた本作は、今回も大御所マンフレッド・アイヒャーがプロデュースを担当して、我々に音楽というモノの普遍性を知らしめるべく響いてくるところが魅力。
なお、収録曲全曲ストレーネンのオリジナル曲である。
(Tracklist)
1. Memories Of Paul (Thomas Strønen) 5:08
2. Season (Thomas Strønen) 6:31
3. Fall (Thomas Strønen) 7:18
4. Tuesday (Thomas Strønen) 3:23
5. Cubism (Thomas Strønen) 4:06
6. Dismissed (Thomas Strønen) 6:47
7. In Awe Of Stillness (Thomas Strønen) 7:52
あのストレーネンの打楽器的面が強調されるドラムスに誘導される5者による特異な音楽的世界は、まさに独自の次元に存在している。そこではジャズを基本としている中で、室内楽、即興演奏とアレンジがある意味混在という形にも聴こえるが、実は整然とした世界を構築しているのだ。ピアノは田中鮎美によるもので、澄んだ音色で、流れを整然とさせる役割を担ったような演奏だ。ヴァーガンのコントラバスはやや異様に響くが、ホーコン・アーセのヴァイオリンとサンダーのチェロがメロディーの表現にリード的な役割を果たしながら共鳴する。そして究極それぞれが無くてはならない役割を担った全体の運動体的とも言えるクインテット演奏となる。
M1. "Memories of Paul" 穏やかに次第に引き込んでゆく。ピアノとバイオリンが静かに流れてまさに序章、しっとりした導入で聴き手を静寂の世界へ導く。(ブレイとモチアンに捧げる曲のようだ)
M2. "Season "循環する四季の表現か。風景が目に浮かぶ牧歌的世界。 詩的な景色描写。
M3. "Fall" 弦で描きピアノがサポート、ちょっと内省的。いっやーなかなか静謐な表現に驚く。季節の変化に人間的な対応が。
M4. "Tuesday" 日常のささやかな詩的な瞬間。ピアノの優しいタッチの最小限の音で構成され、静寂すら感ずるた余韻の豊かさが印象的。 M5. "Cubism" 断片的音による構築の試みが展開。アルバム中盤の余裕。ストレーネンの真骨頂の変化を楽しむ。
M6. "Dismissed " パーカッシヴな動きから、アルバム全体でも緊張感と動的なダイナミックな側面が強く出る曲。珍しくピアノの低音の響きが。
M7. "In Awe of Stillness" 終盤に壮麗なまとめの一曲。与える描く世界の質感が尊重される序盤から、静寂を尊び訴えてくる瞬間を動と対比してスリリングに表現、余韻を残して締める。アルバム全体を総括するような、静と動の統合。
ジャズの五重奏曲として、基本的には控えめで、しかし緻密性の高い演奏で、そして「静と動のバランスや空間表現」が凄い。騒がずの演奏に緊張感たっぷりという密度の高いハイレベル演奏と評価したい。
(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音 : 90/100
(試聴)






一方のギタリスト、ロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli)も、クラシックとジャズを並行して研究してきた演奏家/作曲家。ジャズギターはバークリー音楽大学でギャリソン・フェウェル(Garrison Fewell)に、さらにイタリアのジャズギターの巨匠サンドロ・ジベリーニ(Sandro Gibellini)にも師事してきた。代表作は『City of Dreams』(2017年)など。














最近のコメント