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2026年1月28日 (水)

マリオ・モンテッラ Mario Montella Trio 「 Elsewhere」

デビューアルバムであるが、洗練された曲構成、叙情性、即興の自由を見事に融合させた現代ジャズ 

<Contemporary Jazz>

Mario Montella Trio 「 Elsewhere」
Abeat / Import / CD / ABJZ285 / 2025

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Mario Montella (piano and compositions)
Gianfranco Coppola (doublebass)
Giuseppe D'Alessandro (drums)

Recorded,Mixed & Mastered by Stefano Amerio
at ARTESUONO RECORDING STUDIOS - CAVALICCO (UDINE) ITALY
2025年5月9日録音

343327128_13744w  イタリアのコンテンポラリー・ジャズ界で好評のマリオ・モンテッラ・トリオのデビューアルバム。リーダーのマリオ・モンテッラ(→)は、ナポリ出身のピアニストで、クラシックとジャズの両方の訓練を受けたミュージシャンとのこと。クラシック音楽の基礎をしっかりと身につけた上で、自身の創造力と即興性を融合させたジャズ・ピアノを展開している。
 目下彼に関する情報も少ないが、洗練されたソングライティング、リリシズム、そして即興の自由さを融合させたまさに現代的なコンテンポラリージャズを展開して好評の為、早速聴いてみたという処だ。現在まで、ソロ、デュオ、トリオ、カルテットなどの編成で活躍。ライブ演奏のほか、イベント出演やレッスン・ワークショップの提供も行っているようだ。
   そしてこのアルバムは7曲の構成であるが、全てモンテッラ自身のオリジナル曲で挑戦している。

(Tracklist)

1. Italy 09:31
2. Lunar 06:20
3. Las Vegas 07:17
4. Habemus Papam 06:37
5. Ballad Of Fairies And Witches 05:51
6. Blue Sea 07:42
7. My Laura 07:43
(*All composed by Mario Montella)

 なかなか、イタリアはやはり音楽の国、こうした実力者が多い。 このマリオ・モンテッラも広く知られる存在ではないが、作曲においては非常に完成した境地を持っていて、このトリオにおける表現力も人並み以上のものを感ずる。
 タイトルは「Elsewhere」は、"どこか別の場所で"という意味か、想像上の独自の音響的「別世界」を自ら提供しようとする・・・それは、味な無音空間を生かし、そしてトリオの三者同士の深遠な対話で構成される内省的ではあるが彼ら独特の空間であるようだ。

 そしてマリオ・モンテッラのピアノは独自のタッチと作曲を持って先導し、ジュゼッペ・ダレッサンドロの繊細なドラミング、ジャンフランコ・コッポラのコントラバスは妙に生きて曲を構成する。トリオは既に彼ら自身の世界を誇らしげに見せて、余裕すら感ずる演奏は驚きだ。これに関しては、録音関係は、例の名エンジニアのスファノ・アメリオによるハイ・センスを経て完成したもので、この力も音質と表現の深みによって、描く世界を倍増しているように思う。

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 M1. "Italy" なんと冒頭 10分に迫る長曲。ピアノが中心だか、ベース/ドラムは、支えるというより対話的。現実か空想かダイナミズムが迫ってくる
 M2. "Lunar" 美しさと余韻
 M3. "Las Vegas" インタープレイが活発で躍動的
 M4. "Habemus Papam" まさに即興の美学
 M5. "Ballad Of Fairies And Witches" ちよっとミステリアスで、空想・幻想世界が襲う
 M6. "Blue Sea" 波のように揺れながらも、ステック音に支えられ前半ピアノ、中盤ベースが広がりの世界へ、そして終盤はドラムスの響きが勢いを増して、三者のアンサンブルの妙
 M7. "My Laura"  どこか満足感のある人間的世界で締めくくる

 デビュー作でありながら、「円熟」「時間空間の彩」「人間の内面への探求」と驚きの完成度の高いアルバム。いっやーー、恐ろしいトリオの出現だ。技巧的にも優れていて、更にトリオの対話的交わりが高度。これには録音・ミックスの高技術によるトリオ三者の演奏が十分手に取るように聴かれることだ。結論的に、美の探求感も忘れていないハイレベル・アルバム。欧州美学が凝集している作品だ(ちょっと褒め過ぎか)。

(評価)
□ 曲・演奏  : 90/100
□ 録音   : 88/100

(試聴)

 

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2026年1月22日 (木)

ソレン・ヘベ Søren Bebe Trio 「 Gratitude」

「感謝」の心を、聴きやすい叙情的な曲展開で・・ユーロ叙情派ピアノ・トリオの面目躍如

<contemporary Jazz> 

Søren Bebe Trio 「 Gratitude」
FROM OUT HERE MUSIC / IMPORT / CD / FOHMCD026 / 2025

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Søren Bebe (piano)
Kasper Tagel (bass)
Knut Finsrud (drums)

Recorded on 4&5 April 2025 by Augast Wanngen at The V-Recording, Denmark 

Unnamedw_20260122111001  前回に続いて、私の注目のデンマークの人気中堅抒情派ピアニスト:ソレン・ベベ (サン・ビービー、1975年デンマークのオーデンセ=Odense生まれ、Aarhs王立音楽アカデミー2004年卒 →)の今回はニュー・アルバムを取り上げる。レギュラー・トリオによる、コンピレーション・アルバムの前作『First Song』(FOHMCD024)に続く通算9作目の最新アルバム。(リリースは2025年)

 この作品も、「北欧ジャズらしい静謐さ・内省的な美が基調にあって余韻を大切にする空間的な演奏が中心」と評価は高い。もともとの聴きやすいメロディラインは、彼特有のエレガントな雰囲気で生まれる叙情的な世界にあるので、なんとも気持ちが良い。このトリオは2007年結成で、既にそれなりの歴史を積み上げてきているので、難しいことなく三者の一体感が捉えられていて、スムーズなトリオ演奏が出来ている。

 説明では、このアルバムはタイトルが「感謝」であり、「感謝、繋がり、そして人生の静かなひとときの美しさを深くパーソナルに反映した作品」と説明されている。つまり「ファンへの感謝としての贈り物的なもの」とソレンは説明している。
 このトリオ、今や世界各地だライブ活動が成功していて、彼のそんな親密感ある感謝の言葉なのかもしれない。

(Tracklist)

1. Frostblad
2. Good Enough
3. Tystrup Sø
4. A Much Simpler Song
5. And So It Goes
6. Silent Listener
7. Chico
8. Throw It Away
9. Gratitude

 「感謝」というその誠実名気持ちがアルバムの9曲に貫かれ、そしてソレン自身のオリジナル曲7曲と、トリビュートとしてのビリー・ジョエルのM5."And So It Goes"は、原曲の静かさを特にアレンジすることなく繊細に演じ、アビー・リンカーンのM8."Throw It Away"も、ソレンが初期から影響を受けたジョン・スコフィールドへのオマージュということで、ちょっと控えめで情緒ある演奏とアレンジで好評。
  そして彼自身の曲M3."Tystrup Sø"(デンマークのソーレと言うところにあるソレンの故郷近くの湖にちなんで名付けられた)にみる内省的な曲と不思議にうまく調和していて、アルバムとしての完成度も高い。シンバル音がゆたりした曲のメリハリとなっている。

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 オープニングのM1."Frostblad"は、静かな自然の姿、北欧の風景を想像させる。
 M2."Good Enough" 落ち着いた世界、想いの深さの余韻が好感。
 M4."A Much Simpler Song" ここでちょっと軽やかに。
 M6."Silent Listener" タイトルの通り、静けさを"聴く"ことをテーマにしたピアノトリオ曲。アンビエント的空間の美。
 M7." Chico" アルバムにメリハリをつける軽快・リズム感の曲。
 M8."Throw It Away" スタンダート曲、メロディーを演ずるピアノを主として、ここではベース、ドラムスは支え役。
 M9."Gratitude"タイトル曲であり、アルバムのテーマを最後に表現して纏め上げる。やはり「感謝の気持ち」が余韻を残して伝わってきた。素晴らしい。

 今回も心休まる世界の中でのメロディの美しさと静謐な空間を大切にした繊細極まりない表現が見事。ちょっと内省的なところもあるが、なんといっても聴きやすさが彼らの演ずるトリオとしての展開の世界で、所謂派手なところは無いが、なんとなく心に響いてくるところが評価ポイント。
 尚、録音もなかなか良いレベルにあることを付け加える。

(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音   : 90/100

(試聴)

 

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2026年1月17日 (土)

ソレン・ベベ (サン・ビービー) Søren Bebe Trio 「First Song」

哀愁・美旋律・叙情的アルバム -- 過去のシングル・デジタル・リリースを集めて一枚に

<Contemporary Jazz>

Søren Bebe Trio「First Song」
FROM OUT HERE MUSIC / IMPORT(EU) /  CD / FOHMCD024 /  2023

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Søren Bebe : piano
Kasper Tagel : bass
Anders Mogensen : drums(Track1,2,3,5,8,9)
Knut Finsrud : drums(Track 4,6,7,10)

8b883c41c7507fc6f03w ソレン・ベベ(サン・ビービーSøren Bebe →)はデンマーク出身(1975年生まれ)の注目ピアニストだ。彼については過去にここで数枚のアルバムを取り上げているが、日本初お目見えは2010年の2ndアルバム『From Out Here』で、それ以来私はファンと言って良い。
 今回のこの8枚目のアルバムは、 2023年リリースのトリオ初のコンピレーション・アルバム で、過去約9年間に作られたデジタル・シングル10曲をまとめたもの。CDやアナログ盤で聴けるのはこれが初だ。ここにきてCDを入手したので取り上げる事とした。

  彼はヨーロッパのジャズおよび現代音楽シーンを代表するピアニストと言われていて、スカンジナビアでは人気のトルド・グスタフセンや故エスビョルン・スヴェンソンとよく比較もされる。8歳で初めてピアノのレッスン受け、2004年、著名なスウェーデンのジャズピアニスト、ラース・ヤンソンらに7年間師事した後、オーフス(デンマーク)の王立音楽アカデミーを卒業し、卓越したソリストのための音楽の上級大学院ディプロマを取得したという経歴だ。そして2007年にトリオを結成し、その後9枚のアルバムをリリースして、世界中で多くのコンサートをしてきている。(この後9作目のアルバム『Gratitude』(FOHMCD026, 2025)が昨年リリースされ(↓)、ここに日本にて一般輸入販売・・・次回紹介予定)

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 いずれにしてもソレン・ベベの音楽的視野は、大御所アメリカや近年盛んなヨーロッパのジャズのジャンルの境界にとどまらず、クラシック、ロック、ポップ、フォークにまでに及んでいて、彼に影響を与えた人物を尋ねると、名前はオスカー・ピーターソン、キース・ジャレット、そして最近ではアーロン・パークスが挙がるようだ。彼のトリオのミュージシャン、クヌート・フィンスルード(d ↓左)とカスパー・タゲル(b ↓右)は、どちらもスカンジナビアでは実力と人気のミュージシャンで、ベベのピアノ演奏にぴったりの世界を構築してくれる。本作前の最新作は7作目『Here Now』(2023)であった。

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 とにかく「ベベは、エロール・ガーナーやビル・エヴァンスからキース・ジャレットに至る叙情的ピアニストの伝統に属している」との評価はその通りだと、それは私好みの世界に入るのである。

(Tracklist)

1 First Song (Charlie Haden)
2 Echoes II (Kasper Tagel)
3 Be Still (Søren Bebe / Kasper Tagel / Anders Mogensen)
4 Breathe (Søren Bebe)
5 Pavane for a Dead Princess (Maurice Ravel)
6 Evening Song (Søren Bebe)
7 Deer Spirit (Søren Bebe)
8 Song for Alberte (Søren Bebe)
9 Ennio (Søren Bebe)
10 Elegy for an Angel (Søren Bebe)               ()内 作曲者

◇トラック1,8 = 2015年11月にデンマーク・コペンハーゲンのMillFactory(担当:Boe Larsen) で録音、ミキシングとマスタリングはヤン・エリック・コングスハウグ(Rainbow Studioにて)。

◇トラック2,3,5,9 =  2019年1月、デンマーク・コペンハーゲンのThe V-Recording(担当:Thomas Vang)で録音、 ミックス&マスタリングはジョン・フォムスゴー(Karmacrewにて)。

◇トラック4,6,7,10 = 2023年4月 コペンハーゲンのThe V-Recording(担当トーマス・ヴァンデンマーク)で録音、ミックス:オーガスト・ワンングレン(Virkelighedenにて)、マスタリング:ジョン・フォムスゴー(Karmacrewにて)

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 北欧ジャズらしい 叙情的・メロディアスな現代ジャズ が特徴で、暖かく繊細なサウンドが中心です。過去のシングル曲を中心に構成されており、ソロやトリオならではの即興とアンサンブルが楽しめます。

 M1. "First Song" (Charlie Haden)  チャーリー・ヘイデンの名曲で、トリオはアルバム冒頭で敬意を込めた演奏を広げる。穏やかに静かに心休まる世界。
   M2. "Echoes II" (Kasper Tagel) トリオのそれぞれの楽器の存在が適当に現れ対話してリズミックな展開。
 M3. "Be Still" (Bebe/Tagel/Mogensen) いっやー、静かさの表現が、トリオとしてお互いに響き合い素晴らしい空気感。
   M4. "Breathe" (Søren Bebe) ピアノの流れがクラシック的、繊細なピアノが美しい。
 M5. "Pavane for a Dead Princess" (Maurice Ravel) ラヴェル(クラシック)の名曲をジャズ・トリオで再構築。ベースとドラムスがかなりお上品にピアノを支える。
 M6. "Evening Song" (Søren Bebe) 一日の終わりのシーンを、ピアノの優しいフレーズが描く。
 M7. "Deer Spirit" (Søren Bebe) べべらしい情感の深まりを演ずる。
 M8. "Song for Alberte" (Søren Bebe) ピアノがバラードで歌う、ベースの支えが有効に。
 M9. "Ennio" (Søren Bebe) 静かな中にドラマチックな物語が。
 M10. "Elegy for an Angel" (Søren Bebe) 哀愁の曲。ラストトラックで、心情を描く。

 期待通りの美しい叙情的世界、全てを聴いて心が落ち着く。北欧ジャズらしくメロディが美しく、「静けさ」「空間感」に包まれ、ジャズとしては聴くに実に抵抗のないアルバム。過去の曲選りすぐんでのことと思うが、よくここまで一枚のアルバムとして纏めたものだと感心した。

(評価)
□ 曲・演奏 :    90/100
□   録音   :    90/100

(試聴)


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2026年1月12日 (月)

ロレンツォ・リウッツィ Lorenzo Liuzzi Trio 「The Door Ajar」

静かな中にユーロ的ジャズの現代的センスを表現する

<Contemporary Jazz>

Lorenzo Liuzzi Trio 「 The Door Ajar」
 DODICILUNE DISCHI /  IMPORT / CD / ED601 / 2025

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Lorenzo Liuzzi (piano)
Marco Centasso (double bass)
Raul Catalano (drums)

605506704_2535309trw  ヴェネツィアのピアニストであり作曲家のロレンツォ・リウッツィ(→)の新作初リーダー作CD。このアルバムはリウッツィが自身のトリオとしてマルコ・チェンタッソ(b)、ラウル・カタラーノ(d)と共演している。
 リウッツィは日本でそれほど知れ渡っているところにはなく、私も今回初めて注目した。彼はパリのIMEP Paris College of Musicでジャズと音楽理論を学び、magna cum laude(優秀な成績)で卒業。過去に Icebergs、Isthme Quintet、L’Incanto といったグループでの活動やシングル/アルバム録音を行い、パリとヴェネツィアを往来しながら演奏活動を行ってきたという。現在、ヨーロッパ圏を中心にライブ演奏やセッション活動中で、現代イタリアの若手ジャズプレイヤーだ。

 彼のジャズの流れは、アメリカ黒人の流れというのでなく、ヨーロッパ的クラシックからの流れにあるジャズ美学で、そしてイタリア独得の泣きや歌心でなく、フランス的洒落た世界感もありそうだ。そしてピアノ・トリオを軸としていて、ただリーダーといえども、トリオ三者の水平感覚で臨んでいるようだ。 

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1.See you on the next step
2.Laguna rush
3.Une histoire d'amour
4.Besame mucho
5.Aida
6.A different kind of love
7.Michel
8.Beforesun

 ヴェネツィアとパリでの滞在の結果による10年の構想で生まれた作品と紹介されている。このタイトル「開かれた扉」の本作は、創造性と精神性、直感と現実の関係性を解放の型で探求し演じているという、ちょっと難しい説明。収録はリウッツィ自身が手掛けた7曲のオリジナル楽曲に加え、何故か20世紀メキシコを代表する作曲家・ピアニストのコンスエロ・ベラスケスへのトリビュート曲として誰もが知るM4." Besame Mucho"を収録されている。

 音楽的創造性では、やはりユーロ美学だが、ユーロでも北欧系によく描かれるトラッド的なものを導入する世界ではなく、彼らの"現実の世界観"にて描くところに集中している。その為か深遠なる過去に想いを馳せる叙情性を描くというものではない。トリオ三者の対話的インタープレイが効果を発揮してちょっと洒落た現代ジャズという感じ。これが「開かれた扉」か?。

 M1. "See You on the Next Step"オープニングのこの曲は、ベース音からスタートして、ピアノによるスケール感ある進行とドラムのブラシ中心の響きより、トリオとしてのそれぞれの意味合いを演ずるという期待感ある曲。
 M2. "Laguna Rush" ヴェネツィアのラグーナ(潟)か、激しさはない引き寄せる波の姿が頭に浮かぶ。やはりベースの役割が明瞭に見えてインタープレイ有効な演奏トリオだ。8分に及ぶ曲。
   M3. "Une histoire d’amour" ピアノの繊細な美しい叙情性溢れるメロディ、なかなか良い。ベースはピアノとのハーモニー、ドラムスは影で支える。こうした世界はピアノのメロディーを表に出して愛の物語を描く。
 M4. "Besame Mucho" がらっと変わって、ベラスケスの名曲登場。トリオ・ジャズとして即興的なアプローチが後半に優位となり、ちょっと異なった情感が引き出すムード、甘さは引っこんでいる。
   M5. "Aida" ピアノのリズムにあふれた展開が面白い。トリオのアンサンブルを強調する曲作り。
 M6. "A Different Kind of Love" 多彩な「愛」の形をピアノのメロディで表現しているらしい。曲は穏やかで物語的だが後半にベースがジャズっぽくいい役をする。
 M7. "Michel" 物語を演じているのか、変化に富んだ展開とリズムが曲全体の表情を豊かにしている。
 M8. "Beforesun" タイトルどおり、夜明け前の静粛性と一日の展開への期待感を描いているようだ。結構ピアノは「間」というものを多用している。暗さはなく未来志向型。

 コンテンポラリーな因子の強いトリオ演奏で、三者互いのインタープレイが印象深く、ピアノ・トリオの道を更に切り開く意欲が感じられる評価が高いアルバムとして聴いた。一聴の価値ありとして勧める。

(評価)
□ 曲・演奏 :    88/100
□ 録音   :    88/100

(試聴)

 

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2026年1月 6日 (火)

ファビエンヌ・エルニ Fabienne Erni とバンド「ILLUMISHADE」

<Rock>

スイスのロック界の歌姫 Fabienne Erni 

ソロ曲「Stone by Stone」 = ソロ・アルバムへの道か 

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Fabienneerni05w  ファビエンヌ・エルニ Fabienne Erni (→)、彼女は、私の注目株のスイスの実力歌姫だ。2006年に1stアルバムをリリースしたロック・バンド「Eluvetie」(2017年からメンバー入り)と最近2020年にデビューしたバンド「ILLUMISHADE」 の創始者でヴォーカル及びピアノ担当のミュージシャンだ。そして私が彼女に興味を持ったのは、二年前の2024年の「ILLUMISHADE」の2ndアルバム『Another Side of You』からというところなのである。

 そして現在、ソロでのニュー・ソングとして昨年(2025)8月発表"Sky's Breath"、12月第2弾発表の "Stone by Stone"がデジタル・リリースされ、どうも後から後からソロのニュー・ソングが出そうで、いよいよ纏めてのニュー・ファースト・ソロ・アルバムのリリースかと、ちよっと期待しているのだが・・・ 。 彼女はこのように2つのバンドに所属していて、「Eluvetie」は、民族楽器が多用される異色のフォーク・メタルで、一方特に近年、彼女がウォルフJonas Wolf(ギター)と共に主体的に結成した「ILLUMISHADE」はメタル系の因子の強いシンフォニック・ロックである、しかし若干プログレッシブな色合いも見せ、なんとなく私は興味を持ったという経過だ。

 そして今回、彼女のソロ・アーティストとしての曲は、バンドでの活動とちょっと異なっていてメタルからバラード、サウンドトラック的な物語風な感情表現に傾いている。そして歌詞には、自分の体験やストーリーを織り込んでいて、下に紹介する"Stone by Stone"では、元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの「壁」と同じように、人の痛みと心の壁を歌い、壁の中にいても「光るもの」を求める気持ちなどを歌っている。
 このような曲群は声を張り上げるメタルから、"Sky's Breath"などでは、どっちかというと息づかいが強調されたウィスパーよりのところも多くなり、内省的な世界をも描こうとしている。
 こうして約10曲前後なりの構成のアルバムに興味は湧くという状況で、リリースが待たれるところである。

(追記2026.1.17)
 Fabienne Erni : 初ソロ・アルバム「Starveil」3月13日リリース決定
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"Stone by Stone"

"Sky's Breath"

 

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 さて、私がファビエンヌ・エルニを知ることになったバンド「ILLUMISHADE」について、2024年のアルバム『Another Side of You』をここに、少々記しておく

<Rock, Symphonic/modan metal>

ILLUMISHADE 「Another Side of You」
NAPALM / Import / NPR1270DGS / 2024 

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Fabienne Erni(ヴォーカル/ピアノ)
Jonas Wolf(ギター)
Mirjam Skal(オーケストレーション/シンセ)
Yannick Urbanczik(ベース)
Marc Friedrich(ドラム)

 スイスからのシンフォニック・メタル・バンドの「イルミシェード」の2作目で、日本ではデビュー・アルバムだった。このメンバーは、既に日本でも人気のあるバンド「エルヴェイティEluveitie」のファビエンヌ・エルニ(v)とヨナス・ヴォルフ(g)を中心に、新進気鋭の映画音楽作曲家ミルヤム・スカル(syn)が加入して結成されたバンド。

 音楽性としては、叙情性豊かなメロディとドラマチックな展開を得意とするモダン・シンフォニック/メタル。壮大な音響にヘヴィであり、又メロディアスな表現が魅力。 ボーカルの表現力(Fabienne Erni)、ギターの技巧(Jonas Wolf)が高評価。

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1.Enter the Void
2.ELEGY
3.ENEMY
4.In the Darkness
5.Cloudreader
6.Here We Are
7.CYCLONE
8.Fairytale
9.The Horizon Awaits
10.HYMN
11.TWILY
12.Riptide
13.Hummingbird
14.Verliebt

  オープニングM1. "Enter the Void" シンセ/弦楽器が幻想的。見事な入り口を飾る雰囲気最高。
 M2. "ELEGY"叙情的なメロディと重厚なギター。Fabienne の美声と重厚感のある演奏。
   M3. "ENEMY"、M4. "In The Darlness"このあたりがアルバムの注目曲。歌い上げるヴォーカル、ヘヴィなギターのエモーショナルな展開。
 M5. "Cloudreader" 叙情的でありつつ歌メロが暖かくギターが泣きポップな魅力。
 M6. "Here We Are" 人気曲。コーラスが印象的。「今・ここ」を肯定するバンドの存在の主張。
 M7. "CYCLONE" ヘヴィにしてパワフル。展開と変調が見事。
 M8. "Fairytale" 美しく叙情豊かなバラード曲。中盤の美曲。美ヴォーカル。
 M9. "The Horizon Awaits" 後半への誘導。美しく展望的。
 M10. "HYMN" M11."TWILY"は、歌・メロディ・演奏が明瞭で訴えてくる。
 M12. "Riptide" 音響の広がりが重く、リフが印象的なヘヴィ・トラック。ヘヴィ系好き向き。
   M13. "Hummingbird" 終演への近づきを感じさせるファビエンヌのヴォーカルがジックリと。
 M14. "Verliebt "(feat. Coen Janssen) ピアノとヴォーカルによる優しき美的クライマックス。

 ファビエンヌの美的伸びやかな声を生かして、ヨナスの重厚なリフが描く世界は、プログレッシブな要素に加え壮大感がミルヤムのキーボードによりシンフォニックに広大に作られた作品。メロディが美しくメタルやシンフォニック系要素を加味した叙情的でドラマティックなロック、注目のバンドである。

(評価)
□ 曲・演奏・歌 :   88/100
□   録音     :   88/100

(試聴) "Here We Are"

 

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2026年1月 1日 (木)

謹賀新年2026  ビル・エヴァンス Bill Evans 「Portraits at the Penthouse: Live in Seattle 」

明けましておめでとうございます
今年もよろしく御願いします
2026年 元旦

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  さて、今年も年始めは又もや、もはやピアノ・トリオ・ジャズの神様的扱いのビル・エヴァンスから始めます。それは丁度昨年末にリリースされたアルバムがあり当然取り上げることとになったモノだ。

<Jazz>

Bill Evans 「Portraits at the Penthouse: Live in Seattle 」
Universal Jazz / Resonance  / JPN / UCCJ-3059 / 2025

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ビル・エヴァンス(p) エディ・ゴメス(b) ジョー・ハント(ds)
★1966年5月12日(1-6)、19日(7-12)、シアトル、ペントハウスにてライヴ録音

 ビルヴァンスものとしては、1966年4月に結成されたエディ・ゴメス(b) 、ジョー・ハント(ds)とのトリオものはレアであり、このトリオはシカゴとかLAなどに出演していたが、公式作はなかった。これは1966年5月12日と19日にワシントン州シアトルのペントハウスジャズクラブで録音されたもので、なんと最初の公式リリースである。
 それも、このところのジャズ界の発掘王の異名をとるプロデューサーのゼヴ・フェルドマンが監修に携わるレゾナンス・レコードより世界初となる未発表ライブものである。とにもかくにも今まで公式録音のなかったこのトリオで、これはラジオDJのJim WilkeがKING-FMラジオの自身の番組用に録音したもので、今回オリジナル・テープから移籍し、Matthew Lutthansによって修復・マスタリングされたものの初めての公式リリースとなるものだという。現在LPとCDで発売されている。

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1.Introduction 00:19
2.How My Heart Sings 04:03
3.'Round Midnight 07:41
4.Come Rain or Come Shine 05:41
5.Nardis 04:54
6.Elsa 04:517.
7.Time Remembered 04:48
8.Who Can I Turn To? 04:46
9.Detour Ahead 05:29
10.Autumn Leaves 03:10
11.How My Heart Sings 03:47
12.I Should Care 02:55

 

 FM放送用録音音源と言うことで、音質もかなり良好と期待したが残念ながらどうもそれほどのモノでない。やはりセブ・フェルドマン監修といえども、これまでの発掘もこれだけ多くなると、ちょっと内容の低下があるのではと残念である。
 この当時のエバンスものも、他もなかなか良好な録音が少なく今日のような神様的存在であるともう少し気合いの入った録音もしてくれたのであろうが、それは致し方ないところだ。しかし、これまでの完全録音オフィシャルものも無かったこのトリオで、こうしてリリースしてくれたのは記録的に貴重というところであろう。

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 演奏は、エヴァンスが当時からピアノ・トリオと言えども、ピアノの世界で終わらせないというゴメスへの期待がひしひしと伝わって来る。M3."'Round Midnight"、M4."Come Rain or Come Shine" などを筆頭に、多くがベース・ソロを交えての曲の流れに構成されていて、当時21歳であっと言うゴメスの奮闘ぶりもリアルである。
 後年の名トリオ( マーティ・モレルとの)へ向かう経過段階と見てしまうのだが、高音域を聴かせるベースラインと言うか「ベースが主旋律に食い込んでくる」様子がこのアルバムでも聴き取れる。
 ジョー・ハント(ds)のなすところ、比較的ストレートでオーソドックス。ビートを見事に演じてインタープレイよりもドラムスなりきの音楽基礎を確実に築き、気を使ってか、私の気のせいか、エヴァンスとゴメスが自由に演ずる手助けをしているように聴けた。
  まあこんなエヴァンス・トリオの1幕が聴けて貴重という評価をしておきたい。

(評価) 
□ 演奏    87/100
□ 録音    80/100

(試聴)

 *

 

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