アンナ・コルチナ Anna Kolchina 「 Reach For Tomorrow」
哀感と懐かしさをさそうソフトで優しいヴォーカル、ギターとのデュオで・・
<Jazz>
Anna Kolchina 「Reach For Tomorrow」
OA2 Records / Import / CD / OA222247 / 2026
Anna Kolchina : Vocal
(参加ギタリスト)
PAUL BOLLENBACK (エレクトリック M9,M11)
PETER BERNSTEIN (エレクトリック M3,M4,M5)
ILYA LUSHTAK (エレクトリック M1)
ROMERO LUBAMBO (アコースティック M7,M10)
RUSSELL MALONE (エレクトリック M8)
YOTAM SILBERSTEIN (アコースティック、エレクトリック M2,M6,M12)
過去に、ここでとり挙げてきたロシア出身でニューヨークで活躍という異色のシンガーのアンナ・コルチナ(1984年生まれ →)の4thアルバムの登場だ。そしてこの内容は、彼女の歴史をたどるようなアルバムで、彼女が尊敬するギタリストたちとの交流を通して紡がれたジャズ・ヴォーカリストとしての歩みをまとめ上げたアルバムという面白い企画になっていて、音楽的な回想録であり、長く深く個人的な旅路をたどる流れで出来上がっている。特に彼女が親しいコラボレーターとして選んだギタリストたちとの親密な音楽的対話を通じて展開していて、それはなんと6人のギタリストとそれぞれとのデュオ・アルバムといった形を取っている。
更に、彼女はこのアルバム・ジャケに見るように、幼い頃のソビエト連邦時代から、なんと馬に魅了されていたと言われ、力強さ、動き、そして深く詩的な何かを象徴する馬の持つ性質と、馬に染み付いた感情は、サンクトペテルブルクの音楽院時代からイタリアへ渡り(Venus Recordsからイタリアのメンバーとデビューアルバムをリリース)、そこでシーラ・ジョーダンと出会い、ニューヨークへ移ることを勧められるまで(2017年)、彼女を支えて来たと言われている。その点はこのアルバムでダイレクトに現れている訳でしないが、そこでそんな意味合いがこめられたアルバムという事で聴くと、又一味違ったものを感じ取れるのかもしれない。
(Tracklist)
1. Dancing in the Dark
2. You and the Night and the Music
3. Who Can I Turn To?
4. Invitation
5. All or Nothing at All
6. Right from the Start
7. What Now My Love?
8. Vacation from the Blues
9. Wrap Your Troubles in Dreams
10. So Many Stars
11. Whistling Away the Dark
12. Reach for Tomorrow
曲は、ジャズ・スタンダード中心で、ヴォーカル+ギターのデュオ・タイプの為、彼女の歌はかなりリアルに聴き取れる。そして歌は、過度な装飾はなく、比較的シンプルにジャズ情緒豊かな解釈で、声と演奏の「空間」を感じさせる世界を作っている。抑制された表現の中に豊かな感情が宿るという歌と演奏で好感が持てる。 ヴォーカルと演奏のそれぞれの味を聴き取れる録音も良い。
M1. "Dancing in the Dark" アカペラ・ヴォーカルでしっとりと入り、ILYA LUSHTAK(ロシア生まれ、NY拠点の熟練ジャズ・ギタリスト)は静かにサポート。
M2. "You and the Night and the Music" 夜のロマンティックな雰囲気。ギターは、YOTAM SILBERSTEIN (アコギ、イスラエル出身のギタリスト)で、バック演奏での絡みがうまい。
M3. "Who Can I Turn To?" 哀愁あるスタンダード。表情豊かで、感情の機微があるPETER BERNSTEINのギターで。
M4. "Invitation" 何となく親密感が湧いてくる。
M5. "All or Nothing at All" 期待の定番曲、メロディより優しい説得力の歌い回し。
M6. "Right from the Start" YOTAM SILBERSTEINのギター、 比較的軽快で温かみのあるメロディ。ヴォーカルの柔らかさが活きている。
M7. "What Now My Love?" 深い味わいのバラード調。丁寧な歌い上げが好感。
M8. "Vacation from the Blues" ゆったりとブルース感覚。RUSSELL MALONEのギターが対話的で魅力。
M9. "Wrap Your Troubles in Dreams" ジャズっぽい歌と演奏の展開。
M10. "So Many Stars" メロディアスな美しさと柔らかい歌唱で、ブラジリアン・ギターのROMERO LUBAMBO のアコギも生き生き。
M11. "Whistling Away the Dark"哀愁のある歌、PAUL BOLLENBACK のギターの音色とともに聴きどころ。アルバムのクライマックス。
M12. "Reach for Tomorrow" タイトル曲。なんと言っても爽やかで希望を感じるフィナーレで安堵。
とにかくいずれのギターも過度なアレンジや即興を避けた演奏で(エレキであってもアコースティックな演奏法)、ヴォーカルとの間を大切にしているため、細やかなニュアンスが深い味わいを持って楽しめる。どの曲もコルチナ自身の感性で丁寧にソフトに優しく歌い上げている点が好感が持てる。彼女のこのアルバムは、忘れた頃にやってきた懐かしさもあるものであったが、とにかく久々に聴いたせいもあってそれが好感に一層拍車をかけたところである。ジャズ・アルバムもこうしたセンスも失って欲しくないアルバムであった。
(評価)
□ 選曲・歌・演奏 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)





















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