ヴィクトリア・トルストイ VIKTORIA TOLSTOY & JACOB KARLZON 「WHO WE ARE」
抒情派ジャズ・ヴォーカルが描くジャズを超えたロマンティック・ドリミーな世界
<Jazz>
VIKTORIA TOLSTOY & JACOB KARLZON 「 WHO WE ARE」
Act Music / Import / CD / ACT80382 / 2026
Viktoria Tolstoy ヴィクトリア・トルストイ (vocal)
Jacob Karlzon ヤコブ・カールソン (piano, keyboard, programming)
2025年8月25日-26日スウェーデン-ストックホルムのMusikaliska Kvarteret録音
スウェーデンで活躍するロシア系人気歌姫:ヴィクトリア・トルストイ(1974年スウェーデン・マーシュタ生まれ)の登場である(前回はここでアルバム『Stealing Moments』(ACT97472)を2024年に取り上げている)。
ここに彼女と30年という長年共演してきた敏腕ピアニスト:ヤコブ・カールソン(1970年スウェーデン・ヨンショーピング市生まれ)との名コンビによるデュオ作品が完成した。
カールソンはピアノの他キーボードやプログラミングも並行してこなし、作曲も主として彼の手による世界で、今回はトルストイは、彼女独得のソウルフルな歌を彼の描く世界に協調するスタイルでのアルバムとみた。オリジナル以外は、ビリー・ジョエル、トリ・アモス、トム・ヨークの曲を独特な解釈をして、カールソンの曲群に調和を取っている。
結果は、彼女の抒情派ジャズ・ヴォーカルがロマンティックでドリミーな世界を構築していて、ジャズ・ヴォーカル・アルバムとしては若干異色の作品の感はある。
(Tracklist)
01. Satellites (Jacob Karlzon) 5:02
02. Who We Are (Karlzon) 6:05
03. And So It Goes (Billy Joel) 3:54
04. Cloud On My Tongue (Tori Amos) 4:33
05. The Great Escape (Karlzon) 5:09
06. Off-White (Karlzon) 7:30
07. Trigger Warning (Karlzon) 5:50
08. Stay (Karlzon) 5:28
09. Fallen Empire (Karlzon) 5:41
10. Let There Be Love (Karlzon) 5:40
11. True Love Waits (Radiohead) 4:26
やはり彼女の世界らしく、所謂ジャズ・アルバムと一口に言えない世界を作り上げていて、歌の世界は情緒的な語りかけのような優しさに包まれたような表現が特徴的である。そしてメロウ・テンダーといった表現が当たっているかと思うが、ジヤズの世界としては明らかに異色と言って良い。それは曲が漂うように進むため、印象的なインパクトのあるテーマが叩き付けてこない。そうゆうところが良いという面と印象的は迫力不足という面との両極があってなかなか評価も難しい。そしてその難しさが訴えてくるところに聴いたものだけが知る世界が存在している。
M1. "Satellites" オープニングだが、トルストイの優しげなしっとりとしたヴォーカルとちょっと異空間的に誘うサウンドでエレクトロとピアノが交差する導入曲。浮遊感が漂う。
M2. "Who We Are" アルバム・タイトル曲。深いムードに入る。歌とピアノが対話しているようだ。終盤に躍動感と広大な世界を描く。
M3. "And So It Goes" Billy Joel の名曲のカバー、アカペラで入ってしっとりと歌う、ピアノが支える。優しさが流れる。後半ピアノの美旋律。 なかなか味な仕上げ。
M4. "Cloud on My Tongue" Tori Amos カバー、ピアノの美フレーズと上品さのある歌が見事に交錯と協調し物語が展開。
M5. "The Great Escape"自由や解放の感覚をテーマにしていると、珍しく躍動感が。
M6. "Off-White" ピアノと優しい歌が美しく、再び瞑想的でジャジーとは別世界。
M7. "Trigger Warning" リズミカルに進行、ここではちょっと面白い展開。
M8. "Stay" 留まることへの想い、しっとり深い叙情性。この世界がこのアルバムの訴えどころ。歌と低音のピアノのハーモニーが美。
M9. "Fallen Empire" タイトルの示すところが難しいが、時代の流れのドラマチックな様相が伝わってくる。
M10. "Let There Be Love" 愛を肯定的に語っている。歌とピアノの対話がバラードの美の極致で見事。
M11. "True Love Waits" Radioheadのカバー、なかなか静謐にアレンジ。トルストイの声がタイトルの「待つことの真実」を心に響かせる。
ピアノ、キーボード、プログラミングで描くカールソンの世界の多彩性が見事に結実しているが、ただ私としては、エレクトロなサウンドには若干の抵抗もないではない。しかしトルストイのヴォーカルが見事に語り、歌い、説得し、納得を描く。そしてジャズ的に崩すと言うところはあまりなく、エレガントな真摯な歌唱は好感が持てる。
全体的には、ちょっとジャズ世界としてはコンテンポラリーで稀有な存在だが、こうした世界で心を宿わせるアルバムもあってよいのだろう。これは二人で長年築いてきたものがないと作れないアルバムだと思う。いっやージャズというものの守備範囲は広い。
(評価)
□ 作曲・演奏・編曲・歌 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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コメント
スウェーデンで活躍する音楽家、最近北欧系の音楽家にも興味ありです。しかし美人ですね~!あっそっちじゃないか・・(苦笑)
投稿: ローリングウエスト | 2026年2月 8日 (日) 19時17分
ローリングウエスト様
コメント有り難うございます
北欧は、私にとっては現在ジャズの宝庫です。
ジャズ・ヴォーカルは、圧倒的に女性天国ですね。私は、この前に書いた小曽根真のアルバムにも登場しているポーランドのアンナ・マリア・ヨペックのファンですが・・・来日もしています。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年2月 9日 (月) 08時56分
風呂井戸さま、リンクをありがとうござました。m(_ _)m
私もこのアルバム好きです。
2人は対等な関係で、演奏も一体化していて、
とても親密なデュオだとおもいました。
北欧アンビエント・ジャズの空気も感じられる静謐な世界。
雪国の世界にも通じるところがあって、重宝してます。
私の投稿のリンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2026/02/post-a0c975.html
投稿: Suzuck | 2026年2月10日 (火) 07時35分
Suzuck様
コメント有り難うございます
女性ヴォーカルのピアノとのデュオものは、その歌唱をじっくり聴けて良いですね。私はカールソンはピアノのみで対応して欲しかったと思ってますが・・・まぁそのあたりは、いろいろでしょうね。
やっぱり北欧系は素晴らしい世界を構築してくれて最高です。民族的世界とややダークでありながら、ちゃんと一筋の光明があるところ、そしてピアノが美しい。そんなところもヴィクトリア・トルストイは今回も描いていると思います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年2月10日 (火) 11時20分