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2026年3月28日 (土)

ティアニー・サットン Tierney Sutton 「Talking To The Sun」

ブラジル音楽とシャンソンを加味した異色のヴォーカル・アルバム

<Contemporary Jazz>

Tierney Sutton & Charlier/Sourisse 「 Talking To The Sun」
Gemini Records / Import / CD / GR2529 / 2025

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Tierney Sutton – vocals
Andre Charlier – drums, percussion
Benoît Sourisse – piano, organ, whistle
Serge Merlaud – guitars

Mv5bnzk4ndc2ntutzwiyw    時に、なんとなく変ったモノが聴きたくなると言う悪い癖のある私だが、ふと10年ちょっと前から私にとっては異色のジャズ・ヴォーカル・アルバムとして、米国のティアニー・サットン(→)というコンテンポラリー・ジャズとして位置づけられている実力派シンガーがいる。昨年末にニュー・アルバムがリリースされていたが、ちょっと気分が乗らず今になって聴いてみたという処だ。

 このアルバムはフランスの著名なドラマーとキーボードの名手のユニットである「Charlier/Sourisse(アンドレ・シャルリエ&ブノワ・スリス ↓左)」と共演し、夫でフランス人ギタリスト、セルジュ・メルロー(↓右)が加わってのカルテット編成で、彼女のキャリアの中でも特に「ブラジル音楽へ傾倒」しつつ、フランス色の加味したジャズとして、「作詞家としての進化」が加わった意欲ボーカル作品と位置づけられるものだ。

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(Tracklist)

1. Talking to the Sun (Charlier/Sourisse/Sutton)
2. Que reste-t-il de nos amours? (Leo Chauliac/Charles Trenet)
3. Modinha (Jobim/Sutton/Vinicius de Moraes)
4. Flor de Lis (Djavan/Regina Werneck)
5. Play for Me (Pra Quem Quiser Visitar) (Guinga/Sutton)
6. Laptop choro (Charlier/Sourisse/Sutton)
7. Eu nao existo sem voce (Jobim/Sutton/Vinicius de MoraesSonnenberg/Sutton)
8. Springtime, I'll be there (Charlier/Sourisse/Sutton)
9. The Prince of Calais (Charlier/Sourisse/Sutton)
10. Bluesette (Thielmans/Gimbel)
11. Les etoiles de Lea (Charlier/Sourisse/Sutton)

 ブラジル音楽やボッサを、爽快であり又一方深みのある表現力で捉えたヴォーカル作品だ。曲はジョビンやジャヴァンといったブラジルの巨匠のカバーと、Charlier/Sourisseの作曲にサットンが自身の世界から詞を造り歌い上げたオリジナル曲が中心を成している。まさに米・仏・ブラジルといった三国ミックスといった感じだ。

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M1." Talking to the Sun" アルバム・タイトル曲、Charlier/Sourisseによる複雑なメロディで私には異様。サットンが歌詞を付けたオリジナル曲。歌声も楽器の様相をなして難解。
M2." Que reste-t-il de nos amours?" シャンソンの名曲。フランス語での歌、うまくボサノヴァ・テイストが加味されている。静かに語り聞かすサットンのヴォーカル、おお、なかなか味がある良好な世界だ。
M3." Modinha" ジョビンの名曲。ティアニーが新たに英語の歌詞を書き下ろし、ピアノがリードしドラマチックで内省的な歌でのバラードに仕上げている。中盤のギター・ソロもいい。聴き応え十分。
M4." Flor de Lis" ジャヴァンの代表曲。ブノワ・スリスの口笛が入って、心地よい軽快なブラジル・ムード。
M5." Play for Me (Pra Quem Quiser Visitar)" 現代ブラジルの作曲家ギンガ(Guinga)の曲。これもサットが自己の英語詞で歌い、ギターとの親密な落ち着いたデュオ・タイプの空気感。
M6." Laptop choro" ブラジルの「ショーロ」という伝統的リズムらしい軽快なオリジナル曲。不規則リズムで難しい。デジタル現代の疲れを歌っているらしいが・・・。
M7. "Eu não existo sem você" ジョビンの名曲。元々の詞にサットンが新しい歌詞を追加、愛の歌のようだが、極めてリズムと発声をも抑制した歌い回しで、ちょっと「静」で内省的、彼女らしい歌、悪くない。
M8." Springtime, I'll be there" Charlier/Sourisseの作曲によるオリジナル。静かに明るく希望の表現。ギターのサポートが行き届いている。
M9." The Prince of Calais" オリジナル曲。静かにぐっと深く迫るヴォーカル。演奏陣の緊密なインストゥルメンタルに近い高度なインタープレイが聴き処でもある。
M10." Bluesette" トゥーツ・シールマンスの名曲。ブラジル風の世界、ギター・ジャズの軽快さ。
M11." Les étoiles de Léa" 締めくくりの叙情的なオリジナル・フランス語曲。フランスとアメリカのジャズの美しい融合、楽器のような美声を漂わせる。


 サットンは、本作で11曲中8曲に歌詞を提供(または加筆)しており、これまでの「歌い手」だけでなく、「物語を作り語る=作詞家・語り手」としての評価も現実化している。特にブラジルの名曲に英語詞でのアプローチは、一歩前進なのか、完成度というところでは良い評価を得ているアルバムだ。
 注目の3人のフランス人ミュージシャン(Charlier/Sourisse/Merlaud)との共演により、アメリカのジャズ・シンガーが歌う「ブラジル音楽」の世界に、洗練されたヨーロッパ的な世界が面白い。そんな「グラミー賞常連」の技が感じられる作品。基本的にはブラジル音楽への深い親密感に、ちょっと洒落たフランス語歌唱という離れ業を展開。ドラムスはかなり抑制的。

 彼女を異色性として表現するのも問題あろうかと思うが、声のコントロールと表現はやはりトップクラス。空間処理が極めて洗練していて、更に米×仏×ブラジルを文化的にこなしきる技には敬服する。新しい創作フェーズへの到達意外にも「温かみと親密さ」を感じる一枚に作り上げたという意欲たっぷりのアルバムだ。

(評価)
□ 編曲・作曲・演奏・歌 : 88/100   
□ 録音         :   88/100

(試聴)

*
 " Que reste-t-il de nos amours? (Leo Chauliac/Charles Trenet)"

 

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2026年3月23日 (月)

マリリン・クリスペル、アンデルス・ヨルミン Marilyn Crispell , Anders Jormin 「 Memento」

デュオ作品として互いの尊重に溢れ、空間を意識した間の生かされた音の美の即興とインタープレイ

<Jazz>

Marilyn Crispell , Anders Jormin 「 Memento」
ECM / Import / CD / 88088089 / 2026

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Anders Jormin(double-b)

Producer : Manfred Eicher
Engineer(Mastering,Mixing,Recording) : Stefano Amerio

  マリリン・クリスペルMarilyn Crispell(↓左、 1947年、フィラデルフィア生まれ)と言えば、名門ニューイングランド音楽院でクラシック・ピアノと作曲を学んだ女流ピアニストだが、若きときにジャズに転向して、人生をピアノと共に歩んできたと言って良いようなベテラン・ミュージシャン。現代ジャズ界において「最も独創的で、深遠な精神性を持つピアニスト」と言われている。
 そんな彼女の長年の信頼を築いたアンデルス・ヨルミン(↓右 1994年からコラボレーションを行ってきたスウェーデンのコントラバス奏者)との二人のデュオ作品がリリースされた。ヨルミンは彼の音楽的精神性をクリスペルに与えた一人と言われるベーシストであるが、初めてデュオ作品が作り上げられ、それがこの『Memento』である。

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  私自身は殆ど彼女の評価に値する知識を持っていないようなものだが、彼女は28歳の時に、ジョン・コルトレーンの伝説的名盤『A Love Supreme(至上の愛)』を聴き、その即興演奏の自由さと精神性に衝撃を受け、ジャズの道へと転向したと言われている。そして彼女の音楽を聴くには大きく分けて二つの時代があったことを知っていた方が良さそうだ。それはまずは「即興の攻撃的爆発的展開」の時代(1970年代末〜90年代前半)で、前衛ジャズの巨匠アンソニー・ブラクストンAnthony Braxtonのアヴァンギャルドなカルテットに10年間在籍。即興演奏のセンスを磨き上げた。当時は打鍵は強烈で超絶的なスピード演奏、特に複雑な構造を持つフリージャズを展開した。しかしその後一転してのECM時代を迎え「静寂と叙情」の時代(1990年代後半〜現在)に入った。それは内面的な精神性の領域への道であって、空間や「音の質と音の間の沈黙」を重視するスタイルへ進化したのだ。そしてその流れの探求は現在も続いていて、このアルバムもその一連の中にあると言うことを知りつつ聴くことが、内容にも迫れる一つの道として重要なようだ。
   尚、Mastering,Mixing,Recording Engineerは名手Stefano Amerioである。

(Tracklist)

1.For the Children%
2.Dialogue%
3.Embracing the Otherness%
4.Contemplation in D%
5.Three Shades of a House - Morning#
6.Three Shades of a House - Evening#
7.Song*
8.Memento*
9.Beach at Newquay*
10.The Dark Light#
11.Dragonfly*

   (Composer)
     % :Anders Jormin, Marilyn Crispell
     #  :Anders Jormin
     *  :Marilyn Crispell

 これはまさにECMにふさわしい空間を活かしたぐっと深遠な二人の即興(4曲)から、両者の多彩な自作曲(7曲)までを収録。繊細にして透明に響くピアノの旋律がベースの多彩な音と溶け合い、静謐ながらも懐かしさと暖かさとの叙情性を描き出している。
 アルバムの主題は「記憶・喪失・つながり」というところにあって、スタートから即興4曲が並び、まさしく空間を意識したデュオ即興演奏の深い世界で幕を開け、その後、まずヨルミンの作曲2作品、そしてクリスペルの曲3曲へと移行する。そしてその後両者1曲づつで、最後はクリスペルの曲でゲイリー・ピーコックに献呈する曲で締める。

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 M1." For the Children"  世界各地での紛争の結果犠牲になった子供たちに捧げられた曲。ピアノの優しい響き、高音域での即興のベースのアルコが哀愁を帯びて響く。このアルバムのテーマに迫る心の宿るところの基礎を描く。冒頭からぐっと引き寄せられてしまう。
 M2."Dialogue" (対話)  デュオの相対する呼吸の本質を、音数の少ないピアノとベースの音で知らしめる。
 M3."Embracing the Otherness" (他者を受け入れる) 極端に間を活かした演奏、「他者の音」を探りつつ自己の存在を確認するような見事な現代即興。
 M4."Contemplation in D" 美しい響き、なんとなく浮遊的で瞑想を誘う。
 M5.、M6."Three Shades of a House – Morning、Evening"  透明なピアノ主体で、北欧的な光の情景か。ヨルミンの代表曲を「Morning」と「Evening」の2つの変奏で収録。静けさの中での明暗の対比が。
 M7."Song" 90年代作曲の再演「距離」をテーマにした抒情曲
   M8" Memento"(タイトル曲)ピアノ独奏、喪失とつながりを象徴的に。
 M9." Beach at Newquay" クリスペルが海岸線を描いた曲。ヨルミンのベースが「海鳥」の鳴き声の様に響き、情景描写の極みで映像的。
 M10."The Dark Light" 短い抽象曲 光と影の対比。
 M11."Dragonfly" ゲイリー・ピーコックへの献呈曲、シンプルに美しく、敬愛の念を持って静かな希望を感じさせる余韻を持たせた締めくくり。

 長年の信頼関係のもたらすものか、相手の演奏の音を聴くことから、それにそってのインタープレイが演じられる。デュオの醍醐味の一つである対抗的に主張し合うというパターンでなく、演じられた音、それを拾って騒がず急がず広め深めてゆく流れは状況の充実に大きく寄与している。透明なピアノの旋律に対してベースの美音と溶け合って、曲の流れを深い味わいに高め、しかも叙情性をも感じさせるのである。
 このように演じた音を大切にして消え去るまでの間を尊重して、沈黙をも曲に生かし続く音選びの思慮深い技が聴き者に情景を描かせる。そして深い内省にまで繋げてゆくテクニックはお見事であった。
 これはECM的な世界の極みと言っても良いだろうと思われ、それはアイヒャーにとっても満足感が高かったに相違ない。
 さすがに、「老獪な世界構築の技」に痺れたアルバムであったと評価する。

(評価)
□ 曲、演奏 :   92/100
□   録音   :   88/100

(試聴)

 

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2026年3月17日 (火)

カーステン・ダール、リューベン・ロジャーズ、グレゴリー・ハッチンソン Carsten Dahl, Reuben Rogers, Gregory Hutchinson 「 Into the Storm - Live」

ピアノトリオとは何か、そして醍醐味は?・・・北欧とアメリカのジャズの融合は?
スタンダードを使ったフリージャズの実験

<Contemporary Jazz>

Carsten Dahl, Reuben Rogers, Gregory Hutchinson 「 Into the Storm - Live」
Storyville Records / Import / CD / B0GJFK7N29 / 2026

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Carsten Dahl - piano
Reuben Rogers - bass
Gregory Hutchinson - drums
2013年1月31日、ジャズハウス・モンマルトル(コペンハーゲン/ライヴ)

 現代ジャズの一つの重要な位置を占めているピアノ・トリオ。そして歴史的には私はBill Evans ,  Ahmad Jamal , Keath Jarrett にどうしても注目してしまうのだが、そんな流れを十二分に理解しつつ北欧の美学を追究しつつアメリカン・ジャズの流れを尊重しピアノ・トリオを探求しつつあるデンマークのピアニストのカーステン・ダールCarsten Dahl(1967- ↓左)の2013年に行われた奇跡的トリオのライブ音源が、何とここに来てリリースされたのである。
 つまり嬉しい事に、アメリカのリズム・セクションとしてリューベン・ロジャーズ(Bass ↓中央)、グレゴリー・ハッチンソン(Drums ↓右)を迎えてのダールの2013年コペンハーゲン、冬の夜の奇跡が、名門ジャズハウス・モンマルトルで録音され、そのスリリングなピアノ・トリオによる白熱のライヴ音源が登場した。

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(Tracklist)

1. Minoring Together (Carsten Dahl)
2. Body and Soul (Johnny Green)
3. Open Interlude / Giant Steps (Carsten Dahl / John Coltrane)
4. Sweets to the Sweet (Hugo Rasmussen)
5. Blame It On My Youth (Oscar Levant)
6. Caravan (Juan Tizol, Duke Ellington)
7. You Stepped Out of a Dream (Nacio Herb Brown)
8. Speak (Carsten Dahl)
9. The End of a Beautiful Friendship (Donald Kahn)

 

(収録曲考察)
 M1. "Minoring Together" Dahlのオリジナル。最初からフリー展開。冒頭を飾るこの曲は、どうもトリオの準備運動とかトリオの質の公開。Dahlのリズミカルなピアノが、Hutchinsonの繊細とも言えるシンバルワークとがシンクロして響く。
 M2. "Body and Soul"  バラード。ルバートで描く詩的で陰影の強いピアノとベースの旋律演奏が繋ぐ。
   M.3. "Open Interlude / Giant Steps" このアルバムの最大の聴きどころ。即興の「Open Interlude」の後に、コルトレーンのなかなか難しい曲"Giant Steps"を敢えて演奏。フリー演奏から急速なコードに突入するスリリングな展開に痺れ、難解が難解でなく誘導。このトリオの本質展開。Hutchinsonのドラミングが炸裂。
 M4. "Sweets to the Sweet" 一休み的遊び心が楽しい。北欧ジャズらしいピアノと、アメリカ的リズム隊による交錯のスイング感が見事にブレンドして気持ちよく進行、ベースの乗りも良く会場も乗っている。
 M5. "Blame It On My Youth" ぐっとロマンティックなバラード。Dahlのぐっと落ち着いた静かさのピアノの繊細そのものの「間」が見事。そしてRogersが歌うようなベースラインを重ねる様は、ライブならではの世界。
   M6. "Caravan" 私の好きな曲の登場。快調・快速テンポ演奏。ドラムの爆発力が特徴。エリントンの曲をこのトリオはアグレッシブに分解・再構築。中盤からのHutchinsonの真骨頂である変調リズミックな技が光り、続くピアノの快進撃は見事。
 M7. " You Stepped Out of a Dream" 約9分の長曲。トリオのインタープレイの聴き処満載。スタンダードを次第に組上げてゆく過程がジャズ心を満足させる。ピアノがリードし3人共に反応、それぞれのソロの受け渡しが快調で聴く方の満足感が大きい。
 M8. "Speak" 47秒の短い小品。次の最終曲への導入か。
   M9. "The End of a Beautiful Friendship" エンディングを飾るなんとなく切なくなるが、どこか温かいスタンダード。ライブの終焉を惜しむ穏やかなピアノとベースの響き。

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 まさに「ピアノ・トリオの醍醐味」を凝縮した一枚。さすが現代ジャズの最高峰が顔をそろえるとこうなるんですね。個人の演奏が上手いというところよりは、外れて外れない調和のそれぞれの立ち位置のスリルが楽しい。特に「ハッチンソンのドラムがピアノを煽り、それにロジャーズが重厚な安定感を与えることで、ダールのリリシズムがより一層際立っています」という評価を見るが、まさにそこがピアノ・トリオの真髄であって、これもかってビル・エヴァンスが、彼の美旋律にあきたらず、トリオという世界に三者の対話型を求めた大きなポイントが結実しているように思う。そして、更にAmad Jamalのリズムを停止と間と無音空間などの劇的展開。そして更にKeith Jarrettのライブの花形即興型の味と、揃えにそろえたジャズ美学。
 いまや、そのピアノ・トリオ・ジャズの真髄を探求するカーステン・ダールの北欧抒情美学と、Jarrettを超える荒々しさの加味した即興の緊張感、トリオの味わいある相互作用など、一つの世界に止まらないとみころがこのライブに展開しているところが聴き処だ。今このライブをアルバムとしてリリースしたということの意味は果たして何処にあったかは別にして、私にとってはピアノ・トリオのに対するカーステン・ダールの一つの回答として受け止めた次第である。まだ早いが、お見事な一枚で今年No.1になりそうだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 : 95/100
□ 録音        : 88/100

(試聴)

 

 

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2026年3月12日 (木)

エミリー=クレア・バーロウ Emilie-Claire Barlow 「La Plus Belle Saison」

「北米のパリ=ケベック」ゆかりの曲をフランス語で歌った異色の作品

<Jazz>

Emilie-Claire Barlow 「 La Plus Belle Saison」
Empress Music / Import / CD / EMG465 / 2026

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Emilie-claire Barlow (vocals, arrangements)
Francois Richard (piano, harmonium, wurlitzer, mellotron)
Adrian Vedady (double bass)
Ben Riley (drums, percussion)
Kiko Osorio (percussion)
Joe Grass (guitar, mandolin)
Reg Schwager (guitar)
Francois Bourassa (piano)
John Sadowy (piano)
Lex French (trumpet)
Mario Allard (flute, baritone saxophone, tenor saxophone, alto saxophone)
Andre Leroux (clarinet, flute, tenor saxophone)
Guillaume «Guibou» Bourque (clarinet, bass clarinet, tenor saxophone, baritone saxophone)
Melissa Pipe (bassoon, baritone saxophone, flute)
Francois Pilon (violin)
Melanie Belair (violin)
Veronique Vanier (viola)
Sheila Hannigan (cello)
Belle Grand Fille (vocals)
Judith Little-daudelin (vocals)
Karine Pion (vocals)

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 そんなケベックを題材にしたカナダの歌姫エミリー=クレア・バーロウ Emilie-Claire Barlow (1976年トロント生まれ)のアルバムがリリースされた。「ケベックの豊かな音楽遺産に敬意を表した珠玉のフランス語アルバム」という肩書きだが、彼女のスタンダードものは結構味わい深いことは解っているので早速聴いてみた次第。

 勿論彼女のヴォーカル・アルバムだが、バックはシンプルなものでなくて、上記のように、クレジットなどからみてもかなり豪華。曲により演奏も違う。そして歌の言語も全てフランス語(もともと彼女はフランス語には通じている)というので、これは今までの彼女のアルバムとは様相が違うと思って聴いた方が良い。特にジャズを基盤にフォーク、サンバ、オーケストラル・ポップなど多岐にわたり、それなりにアレンジも施されているという特徴もの。モントリオールで録音され、ピアニスト/アレンジャーの François Richard (↓右)と共同プロデュースされたものである。

(Tracklist)

1.Dans les rues de Québec 02:33
2.Quelles sont les chances? 04:22
3.Je suis en amour 05:25
4.J'ai rencontré l'homme de ma vie 04:10
5.Si doucement 04:07
6.Comment t'aimer encore 04:08
7.Les deux printemps 03:39
8.D'la bière au ciel 03:58
9.Jerrycan 03:34
10.Le vent m'appelle par mon prénom 04:50
11.Pendant que 05:05

 このアルバムは彼女の 従来の「英語スタンダード中心のジャズ歌手」というイメージを完全に変えたという意味では一つの価値あるアルバムだ。ここまでの幾つかの賞に輝いた約30年のキャリアから一歩広げた文化的意味合いのこもったアルバムとみるべきものであった。 彼女の親しみやすい歌声と技の豊富なヴォーカルの円熟した力量で、ケベック音楽への深い親密感・愛情が展開する。
 ただ、そうした性格から曲はケベックのフランス語ポップス/シャンソンの名曲をアレンジを施して再解釈してのオマージュというところで、その意味では一貫しているが、アルバムとして聴いてみると、あまりにも性格の違った曲と演奏が不自然に並んでいる印象が特に前半にあって、どうも聴く方は気持ちが落ち着かない。"音楽的探究心と芸術性が結実した極上のヴォーカル・アルバム"との評もあるが、その意味も解らないではないが、充実した歌声とストリングスやアコースティック主体の多彩なサウンド、そして更に大半のリズムは軽やかなラテンやブラジル風味の面白さなどがあるのだが、どうもアルバムとしての感動が生きてこないのが残念だ。

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 M1."Dans les rues de Québec"(ケベックの街角で)ケベックの街の情景と郷愁を描く。スウィングし小粋なフレンチ・ジャズの印象、オープニングとしてはこんなところか。
 M2. "Quelles sont les chances"(どれほどの確率で)男性ヴォーカルとデュエット、ポップな曲だが魅力感じない。
 M3. "Je suis en amour"(私は恋している)複数の管楽器で豪勢なミディアムテンポ・ジャズ。 ブラジル音楽のロマンティックな世界か。
 M4. "J'ai rencontré l'homme de ma vie"(人生の人に出会った)シャンソン的バラード。
 ・・・・ここまででは、アルバムとしての目的がケベックにまつわるものというだけなのか、彼女が何を歌いこみたいのかよく解らない。フランス語のせいか、訴えてくるモノが解らない(英語でも解らないが)。
   M5. "Si doucement"(とても優しく)ピアノ中心のバックでのジャズバラード。彼女の声と歌いこみがようやくここに来て聴ける。ここから始まるようなモノ。
 M6. "Comment t'aimer encore"(どうやってまだあなたを愛せるの)別れの余韻を描く歌。ここには、彼女の得意とする感情表現が聴ける。メランコリックで感情表現が深く、アルバムの抒情的ハイライト。Tpのバックが効果を上げる。ようやく彼女を聴いた感じになる。まずこの曲は私の推薦曲。
  M7. "Les deux printemps"(ふたつの春) 恋人の瞳を「二つの春」にたとえる詩的な歌。軽やかなテンポ 全曲から一転して明るいメロディ 幸福にあふれた世界が聴ける。ただ前曲との対比でちょっと流れが不自然、曲も好まない。
 M8. "D'la bière au ciel"(天国のビール)さらに軽快に、ユーモラス?、ただ聴くのみ。
 M9. "Jerrycan" 珍しくロックぽいフォーク・ポップ色の曲。ちょっと展開に面白み。
 M10. "Le vent m'appelle par mon prénom" (風が私の名前を呼ぶ)ストリングスとピアノで広がり、彼女のヴォーカルには、訴えが感じられる。叙情性・哀感・美を感ずる。このアルバムでは出色。
 M11. "Pendant que" ぐっと深く人生や時間を静かに見つめる歌。ゆったりしたバラード。ここに来てこのアルバムも救われた。

 私が注目できたのは11曲の中でM6, M9, M10, M11の4曲のみ。とにかく取り上げた曲そのものが、ケベックの歴史的産物なのか、私の評価では現代にどうもマッチしない。編曲の妙も感じられるが、なんとなく古くさい。そうかと言って古典的味わいも感じられない。まさに中途半端。ようやく上記4曲でバーロウの良さと曲の味が感じられたところ(その点は救いであった)。おそらくケベック現地では喜ばれたかもしれないが、他国ではどうだろうと・・・残念ながらそう思った次第。ストリーミングなどで、上記4曲を聴くと言う事ぐらいで納めて良いアルバムだ。

(評価)
□ 選曲・編曲 :   75/100
□ 演奏・歌  :   87/100
□   録音    :   87/100

(試聴)
推薦の曲"Le vent m'appelle par mon prénom"

*

アルバム導入曲"Dans les rues de Québec"

 

 

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2026年3月 6日 (金)

アンドレア・モティス Andrea Motis 「 INTIMATE」

表現力あふれるヴォーカルが前面に出た親近感あるアルバム造り

<Jazz>

Andrea Motis 「 INTIMATE」
Elemental / Import / CD / EM5990436 / 2026

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ANDREA MOTIS(vo, tp.)
JURANDIR DÃ SILVA(g. on tracks 1,2,6,9,11,12,14,15,16)
JOSEP TRAVER(g. on tracks 1,3,4,5,7,8,9,10,13,14,17)

Special Guest:
JAQUES MORELENBAUM(cello on tracks 5,8)

Andreamotissanw  前回から女流管奏者が続くが、トランペッター&ジャズ・シンガーとして世界から注目されるバロセロナ出身のアンドレア・モティス(⇢)の2026年新作アルバム登場。
 前作は2024年『Febrero』(JJAMCD00302)で、ここでも取り上げたが、チリのクラシック・アンサンブルであるカメラータ・パパゲーノと共演もので、ちょっと私が以前の流れから彼女に期待するモノから別方向のもので、今作も恐る恐るという事であったが、今回は彼女のヴォーカルをしっとりと美しく優しくソフトに披露して、まさにファン向きの親密なる世界で訴えてくるもので、ほっとしている。あのトランペットは時折入るも、いかにも今回は添え物の趣である。

 バルセロナ、リオデジャネイロ、モントリュー・デ・セガラで録音され、ロンドンのアビー・ロード・スタジオでアレックス・ウォートンによってマスタリングされたものと紹介され、主としてボーカルとギターのデュオ・スタイル。そして一部で自己のトランペットを加え、更にブラジルの重鎮ジャック・モレレンバウムJAQUES MORELENBAUM(↓右)の叙情的なチェロがぐっと優雅さを加えてくれる。

 そして何と17曲を盛り込んで、彼女の世界に引っ張り込む。中身はジャズのスタンダード、フォークソング、ボサノバ、シャンソンを演じ、それぞれの言語も使い分けムードを盛り上げている。曲はイミー・ワインハウス、シコ・ブアルケ、ビル・ウィザース、ジョルジュ・ブラッサンスらの作品を彼女なりきの世界に描いて、更に自身のオリジナル曲も収録されている。ようやく彼女の良さが大いに盛り込んだ作の登場となった感がある。
 共演は、ギターは、実力のJURANDIR DÃ SILVA(↓左)とJOSEP TRAVER(↓中央)で、モティスを盛り上げてくれる。

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(Tracklist)

1 You Sent Me Flying
2 Beatriz
3 Freight Train
4 Mi Lecho Está Tendido*
5 O Meu Amor
6 Preconceito
7 Je Me Suis Fait Tout Petit
8 De Mica En Mica* 
9 Flor De Lis
10 Little Blue
11 Tan Tranquil·la
12 Retrato Em Branco E Preto
13 Senhorinha
14 Ain’t No Sunshine
15 Tudo É Ilusão
16 Complicidad
17 To Know Him Is To Love Him

*印 Bonus Track

 まさにアルバム・タイトル通りの 親密でゆったり落ち着いた美的な世界で、ジャズらしさというよりは、彼女自身の魅力の紹介を目指した作品といっていいのではないか。温かく繊細な感情的な誠実さによって形作られたちょっとイノセントな彼女の歌声 と、とにもかくにも控えめで叙情的な トランペット が印象的で、アコースティックな演奏を基調にした弦楽器(ギター、チェロ)がなんとも良い世界を描く。

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 M1."You Sent Me Flying" ギターとデュオでスタート、Motis の歌は手に取るように物語の始まりを歌い、後半に顔を出すTp.が優しくくどさがなく対話的な表現が良い。
 M2."Beatriz" ラテンのムードの穏やかな曲。丁寧に歌い上げ、深い余韻。
 M3."Freight Train" アコギでぐっと明るく軽快、ちょっとフォークっぽく。
   M4."Mi Lecho Está Tendido" スペイン語の短い曲をしっとりした世界(このボーナストラックがナカナカ良い)。
 M5."O Meu Amor" ポルトガル語の愛の歌らしい。チェロも入って美しく。
 M6."Preconceito" ボサノバっぽい。リズムと歌が小気味よい。
 M7."Je Me Suis Fait Tout Petit" シャンソンのカバー。モティスの微細な優しさのある軽快表現が魅力。
 M8."De Mica En Mica" (Bonus Track)  ギターの対話が美しい上に、チェロがバックに絡んでお見事な優しさの美曲。 
   M9."Flor De Lis" ブラジル音楽らしいボサノヴァ・メロディライン。中盤にTp.が顔を出す。
 M10."Little Blue" ソフトなバラード、ちょっと哀感が感じられる表現。
 M11."Tan Tranquil·la" 穏やかに描く。落ち着いた 静けさの美。
   M12."Retrato Em Branco E Preto" ギターと美しく優しく歌うポルトガル語曲。
   M13."Senhorinha" ポルトガル・ブラジル音楽が伝わってくる。
   M14."Ain’t No Sunshine" 名バラード曲カバー。ぐっと抑制して唄とTp.が競演、2ギターが盛り上げて新解釈。
   M15."Tudo É Ilusão" ポルトカル語のリズムカルな哀愁の訴え。
   M16."Complicidad" 優しくギターと声の絡みの密接な世界。
   M17."To Know Him Is To Love Him" ポップ/ソウル曲のカバー、Motisの実力歌唱とギターでの印象を深める締め。

  今回のアルバムは、刺激的というか派手に訴えてくると言うものでなく、静かに耳を傾け、人生に有意義に価値を持たせようとする親密感と暖かさが際だったアルバム と言えるのではないだろうか、前作と相対して対比されるようなアルバムだ。Tp.の出番が少なかったのは彼女としてもどのように評価しているかが気になるところだが、むしろ本人の希望があってのバラードへのアプローチであったということからも、このパターンは彼女自身の一つの世界であり、ヴォーカルに重点を置いたと見たい。そしてそれを支える二人のギターが充実していて名サポート。そんな意味では、私にとって今まで聴いてきた価値がここに出たという感じでもある。
 結論として、 自身の歌声とトランペットをバランスよく美しく表現する手段とし、 アコースティックなギターと共に親近感あるジャズ作品として結実させたという彼女自身にとっても一つの記念的な一つの進歩のアルバムだと評価できそうだ。おそらく今後の活動にも何らかの意味を持って大切にされそうな予感がする。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏・歌  90/100
□ 録音          88/100

(試聴)

 

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2026年3月 1日 (日)

メリッサ・アルダナ MELISSA ALDANA 「 FILIN」

しっとりムードのテナーの哀愁演奏とピアノの囁きと語りのメロディック・バラード集

<Jazz>

Melissa Aldana 「 Filin」
Blue Note / Import / BOGC487MLG / 20226

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Melissa Aldana (tenor saxophone)
Gonzalo Rubalcaba (piano)
Peter Washington (bass)
Kush Abadey (drums)

special guest vocalist:Cécile McLorin Salvant (on 3, 5)

Melissaaldanaw  チリ出身の女流テナーサックス奏者メリッサ・アルダナ(1988年、チリのサンティアゴ生まれ)が ブルーノート・レコード からリリースした新作アルバム。私は殆どテナー・サックス作品はあまり取り上げることが少ないのだが、なんとジャズ・ピアノの名手ゴンザロ・ルバルカバがカルテットとして共演していることが、まずは注目点であったことと、このアルバムはアルダナにとって通算3作目のブルーノートリリースで、従来のモダンジャズ作品とは一線を画しての進歩派的・個性派的と言った面を強調した作品でなく、ジャズ・バラード/ラテン歌謡世界を探求した作品 ということで注目した。そして1940〜60年代にキューバで流行した「フィリン(Filin=“Feeling”の意)」という歌謡スタイルを、テナーサックスを中心にジャズで再解釈したというところも興味を誘ったのである。

 演奏チームは、彼女のテナー・サックスにゴンサロ・ルバルカバ(p ↓左)、ピーター・ワシントン(b)、カッシュ・アバデイ(ds)という名手たちのカルテット構成だ。更に2曲で セシル・マクローリン・サルヴァント(↓右)がvocalでゲスト参加し、そもそも歌心のある曲演奏にさらに色づけしているところも興味が湧く。

 そして意外ではあるが、彼女はここでは、技巧を深め更に極めようとするのでなく、自身が長年抱いた「バラード/ムード作品を制作したいという夢」の結晶でもあるとか、そんなところもバラード好きの私の興味を誘った処である。

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(Tracklist)

1. La Sentencia
2. Dime Si Eres Tú
3. No Te Empeñes Más
4. Imágenes
5. Las Rosas No Hablan
6. Little Church
7. Ocaso
8. No Pidas Imposibles

 確かにメリッサ・アルダナは、サックスの「音の質感」・「間」・「感情表現」を大切にした得意な攻撃性は抑えて穏やかで静かな深いバラードを演じている。思った以上にぐっとしっとりムードでテンポは抑えめで、間を生かした演奏を展開。サックスが、深い情緒感を持って旋律を分厚い音で描く点は、うるさめに高らかに歌い上げる演奏よりは、ぐっと私好み。録音もサックスのプスプスというかすれた低音部の音も旨く録音してムードを高めている。
 そしてルバルカバのピアノがやはりいい、端正でキレのある精緻な艶のあるピアノ弾奏で、更になんとなく物語を紡ぐような演奏を繰り広げるところはなかなか。もともとのラテン感覚の優れた彼を抜擢したのは成功している。
 フィリンという文化的ルーツの探求は、私には評価が難しいが、南米・キューバの味をジャズと融合するアプローチとして私には心地よかった。ゲストのサルヴァントの存在が2曲において、やはり実力のある歌の説得力が、一聴にして作品全体の価値を高めているのが解る。

W_20260227175401    M1."La Sentencia" ピアノの導入から朗々と歌うTS。しっとりとした情緒的な演奏が印象的なオープニング。
   M2."Dime Si Eres Tú" フィリンのパイオニア、セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルスの名曲というが、古典的メロディーをぐっと低音から深みある歌心の表現が特徴。
 M3."No Te Empeñes Más" サルヴァントの感情豊かなボーカルがラテン色豊かに。ピアノの間がムードたっぷり。
 M4."Imágenes" TSの描く深い心の風景は、ピアノの押さえた音と共に印象的。
 M5."Las Rosas No Hablan" ブラジルの美しい旋律の名曲。ブォーカルと演奏に哀愁と情感が溢れている。
 M6."Little Church" リアルなTSの音、語るようなピアノ、見事なジャズバラード。
 M7."Ocaso" ぐっと深く沈み込んで陰影を描き、余韻を残す演奏、痺れます。
   M8."No Pidas Imposibles" 締めくくりを長めのバラードで。

 久々にしっとりとしたTSサウンドと演奏の流れを聴いた。そしてルバルカバのピアノの語りがぐっとジャズバラードの良さを再確認させてくれた。リズム隊は明らかにサポートに回って流れを整えている。「感情の深さや味わいのバラード集」「内省と大人の価値を高めてくれるジャズ作品」と言いたいところだ。彼女のこれまでのちらっと見せるコンテンポラリーでアヴァンギャルドな面を見せる作品とは全く異なっていた。こうした感情表現に徹してのバラード世界もいいですねぇ。これからもこの世界を、何時もの現代ジャズの流れの中で、時折聴かせて欲しいと願うところだ。

(評価)
□ 編曲・演奏   90/100
□ 録音      90/100

(試聴)

 

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