« マリリン・クリスペル、アンデルス・ヨルミン Marilyn Crispell , Anders Jormin 「 Memento」 | トップページ | フリー Flea 「HONORA」 »

2026年3月28日 (土)

ティアニー・サットン Tierney Sutton 「Talking To The Sun」

ブラジル音楽とシャンソンを加味した異色のヴォーカル・アルバム

<Contemporary Jazz>

Tierney Sutton & Charlier/Sourisse 「 Talking To The Sun」
Gemini Records / Import / CD / GR2529 / 2025

81xdw3lnbl_ac_sl1100

Tierney Sutton – vocals
Andre Charlier – drums, percussion
Benoît Sourisse – piano, organ, whistle
Serge Merlaud – guitars

Mv5bnzk4ndc2ntutzwiyw    時に、なんとなく変ったモノが聴きたくなると言う悪い癖のある私だが、ふと10年ちょっと前から私にとっては異色のジャズ・ヴォーカル・アルバムとして、米国のティアニー・サットン(→)というコンテンポラリー・ジャズとして位置づけられている実力派シンガーがいる。昨年末にニュー・アルバムがリリースされていたが、ちょっと気分が乗らず今になって聴いてみたという処だ。

 このアルバムはフランスの著名なドラマーとキーボードの名手のユニットである「Charlier/Sourisse(アンドレ・シャルリエ&ブノワ・スリス ↓左)」と共演し、夫でフランス人ギタリスト、セルジュ・メルロー(↓右)が加わってのカルテット編成で、彼女のキャリアの中でも特に「ブラジル音楽へ傾倒」しつつ、フランス色の加味したジャズとして、「作詞家としての進化」が加わった意欲ボーカル作品と位置づけられるものだ。

Charliersourisseinvitentw20230421_tierneysuttonbbw

 

(Tracklist)

1. Talking to the Sun (Charlier/Sourisse/Sutton)
2. Que reste-t-il de nos amours? (Leo Chauliac/Charles Trenet)
3. Modinha (Jobim/Sutton/Vinicius de Moraes)
4. Flor de Lis (Djavan/Regina Werneck)
5. Play for Me (Pra Quem Quiser Visitar) (Guinga/Sutton)
6. Laptop choro (Charlier/Sourisse/Sutton)
7. Eu nao existo sem voce (Jobim/Sutton/Vinicius de MoraesSonnenberg/Sutton)
8. Springtime, I'll be there (Charlier/Sourisse/Sutton)
9. The Prince of Calais (Charlier/Sourisse/Sutton)
10. Bluesette (Thielmans/Gimbel)
11. Les etoiles de Lea (Charlier/Sourisse/Sutton)

 ブラジル音楽やボッサを、爽快であり又一方深みのある表現力で捉えたヴォーカル作品だ。曲はジョビンやジャヴァンといったブラジルの巨匠のカバーと、Charlier/Sourisseの作曲にサットンが自身の世界から詞を造り歌い上げたオリジナル曲が中心を成している。まさに米・仏・ブラジルといった三国ミックスといった感じだ。

Hq720trw

M1." Talking to the Sun" アルバム・タイトル曲、Charlier/Sourisseによる複雑なメロディで私には異様。サットンが歌詞を付けたオリジナル曲。歌声も楽器の様相をなして難解。
M2." Que reste-t-il de nos amours?" シャンソンの名曲。フランス語での歌、うまくボサノヴァ・テイストが加味されている。静かに語り聞かすサットンのヴォーカル、おお、なかなか味がある良好な世界だ。
M3." Modinha" ジョビンの名曲。ティアニーが新たに英語の歌詞を書き下ろし、ピアノがリードしドラマチックで内省的な歌でのバラードに仕上げている。中盤のギター・ソロもいい。聴き応え十分。
M4." Flor de Lis" ジャヴァンの代表曲。ブノワ・スリスの口笛が入って、心地よい軽快なブラジル・ムード。
M5." Play for Me (Pra Quem Quiser Visitar)" 現代ブラジルの作曲家ギンガ(Guinga)の曲。これもサットが自己の英語詞で歌い、ギターとの親密な落ち着いたデュオ・タイプの空気感。
M6." Laptop choro" ブラジルの「ショーロ」という伝統的リズムらしい軽快なオリジナル曲。不規則リズムで難しい。デジタル現代の疲れを歌っているらしいが・・・。
M7. "Eu não existo sem você" ジョビンの名曲。元々の詞にサットンが新しい歌詞を追加、愛の歌のようだが、極めてリズムと発声をも抑制した歌い回しで、ちょっと「静」で内省的、彼女らしい歌、悪くない。
M8." Springtime, I'll be there" Charlier/Sourisseの作曲によるオリジナル。静かに明るく希望の表現。ギターのサポートが行き届いている。
M9." The Prince of Calais" オリジナル曲。静かにぐっと深く迫るヴォーカル。演奏陣の緊密なインストゥルメンタルに近い高度なインタープレイが聴き処でもある。
M10." Bluesette" トゥーツ・シールマンスの名曲。ブラジル風の世界、ギター・ジャズの軽快さ。
M11." Les étoiles de Léa" 締めくくりの叙情的なオリジナル・フランス語曲。フランスとアメリカのジャズの美しい融合、楽器のような美声を漂わせる。


 サットンは、本作で11曲中8曲に歌詞を提供(または加筆)しており、これまでの「歌い手」だけでなく、「物語を作り語る=作詞家・語り手」としての評価も現実化している。特にブラジルの名曲に英語詞でのアプローチは、一歩前進なのか、完成度というところでは良い評価を得ているアルバムだ。
 注目の3人のフランス人ミュージシャン(Charlier/Sourisse/Merlaud)との共演により、アメリカのジャズ・シンガーが歌う「ブラジル音楽」の世界に、洗練されたヨーロッパ的な世界が面白い。そんな「グラミー賞常連」の技が感じられる作品。基本的にはブラジル音楽への深い親密感に、ちょっと洒落たフランス語歌唱という離れ業を展開。ドラムスはかなり抑制的。

 彼女を異色性として表現するのも問題あろうかと思うが、声のコントロールと表現はやはりトップクラス。空間処理が極めて洗練していて、更に米×仏×ブラジルを文化的にこなしきる技には敬服する。新しい創作フェーズへの到達意外にも「温かみと親密さ」を感じる一枚に作り上げたという意欲たっぷりのアルバムだ。

(評価)
□ 編曲・作曲・演奏・歌 : 88/100   
□ 録音         :   88/100

(試聴)

*
 " Que reste-t-il de nos amours? (Leo Chauliac/Charles Trenet)"

 

|

« マリリン・クリスペル、アンデルス・ヨルミン Marilyn Crispell , Anders Jormin 「 Memento」 | トップページ | フリー Flea 「HONORA」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

女性ヴォーカル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« マリリン・クリスペル、アンデルス・ヨルミン Marilyn Crispell , Anders Jormin 「 Memento」 | トップページ | フリー Flea 「HONORA」 »