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2026年3月 1日 (日)

メリッサ・アルダナ MELISSA ALDANA 「 FILIN」

しっとりムードのテナーの哀愁演奏とピアノの囁きと語りのメロディック・バラード集

<Jazz>

Melissa Aldana 「 Filin」
Blue Note / Import / BOGC487MLG / 20226

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Melissa Aldana (tenor saxophone)
Gonzalo Rubalcaba (piano)
Peter Washington (bass)
Kush Abadey (drums)

special guest vocalist:Cécile McLorin Salvant (on 3, 5)

Melissaaldanaw  チリ出身の女流テナーサックス奏者メリッサ・アルダナ(1988年、チリのサンティアゴ生まれ)が ブルーノート・レコード からリリースした新作アルバム。私は殆どテナー・サックス作品はあまり取り上げることが少ないのだが、なんとジャズ・ピアノの名手ゴンザロ・ルバルカバがカルテットとして共演していることが、まずは注目点であったことと、このアルバムはアルダナにとって通算3作目のブルーノートリリースで、従来のモダンジャズ作品とは一線を画しての進歩派的・個性派的と言った面を強調した作品でなく、ジャズ・バラード/ラテン歌謡世界を探求した作品 ということで注目した。そして1940〜60年代にキューバで流行した「フィリン(Filin=“Feeling”の意)」という歌謡スタイルを、テナーサックスを中心にジャズで再解釈したというところも興味を誘ったのである。

 演奏チームは、彼女のテナー・サックスにゴンサロ・ルバルカバ(p ↓左)、ピーター・ワシントン(b)、カッシュ・アバデイ(ds)という名手たちのカルテット構成だ。更に2曲で セシル・マクローリン・サルヴァント(↓右)がvocalでゲスト参加し、そもそも歌心のある曲演奏にさらに色づけしているところも興味が湧く。

 そして意外ではあるが、彼女はここでは、技巧を深め更に極めようとするのでなく、自身が長年抱いた「バラード/ムード作品を制作したいという夢」の結晶でもあるとか、そんなところもバラード好きの私の興味を誘った処である。

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(Tracklist)

1. La Sentencia
2. Dime Si Eres Tú
3. No Te Empeñes Más
4. Imágenes
5. Las Rosas No Hablan
6. Little Church
7. Ocaso
8. No Pidas Imposibles

 確かにメリッサ・アルダナは、サックスの「音の質感」・「間」・「感情表現」を大切にした得意な攻撃性は抑えて穏やかで静かな深いバラードを演じている。思った以上にぐっとしっとりムードでテンポは抑えめで、間を生かした演奏を展開。サックスが、深い情緒感を持って旋律を分厚い音で描く点は、うるさめに高らかに歌い上げる演奏よりは、ぐっと私好み。録音もサックスのプスプスというかすれた低音部の音も旨く録音してムードを高めている。
 そしてルバルカバのピアノがやはりいい、端正でキレのある精緻な艶のあるピアノ弾奏で、更になんとなく物語を紡ぐような演奏を繰り広げるところはなかなか。もともとのラテン感覚の優れた彼を抜擢したのは成功している。
 フィリンという文化的ルーツの探求は、私には評価が難しいが、南米・キューバの味をジャズと融合するアプローチとして私には心地よかった。ゲストのサルヴァントの存在が2曲において、やはり実力のある歌の説得力が、一聴にして作品全体の価値を高めているのが解る。

W_20260227175401    M1."La Sentencia" ピアノの導入から朗々と歌うTS。しっとりとした情緒的な演奏が印象的なオープニング。
   M2."Dime Si Eres Tú" フィリンのパイオニア、セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルスの名曲というが、古典的メロディーをぐっと低音から深みある歌心の表現が特徴。
 M3."No Te Empeñes Más" サルヴァントの感情豊かなボーカルがラテン色豊かに。ピアノの間がムードたっぷり。
 M4."Imágenes" TSの描く深い心の風景は、ピアノの押さえた音と共に印象的。
 M5."Las Rosas No Hablan" ブラジルの美しい旋律の名曲。ブォーカルと演奏に哀愁と情感が溢れている。
 M6."Little Church" リアルなTSの音、語るようなピアノ、見事なジャズバラード。
 M7."Ocaso" ぐっと深く沈み込んで陰影を描き、余韻を残す演奏、痺れます。
   M8."No Pidas Imposibles" 締めくくりを長めのバラードで。

 久々にしっとりとしたTSサウンドと演奏の流れを聴いた。そしてルバルカバのピアノの語りがぐっとジャズバラードの良さを再確認させてくれた。リズム隊は明らかにサポートに回って流れを整えている。「感情の深さや味わいのバラード集」「内省と大人の価値を高めてくれるジャズ作品」と言いたいところだ。彼女のこれまでのちらっと見せるコンテンポラリーでアヴァンギャルドな面を見せる作品とは全く異なっていた。こうした感情表現に徹してのバラード世界もいいですねぇ。これからもこの世界を、何時もの現代ジャズの流れの中で、時折聴かせて欲しいと願うところだ。

(評価)
□ 編曲・演奏   90/100
□ 録音      90/100

(試聴)

 

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コメント

風呂井戸さん,おはようございます。

この人,まともに聞いたのは今回が初めてでしたが,これは企画の勝利という気もするものの,この歌心は大したものだと思いました。キューバの音楽の奥深さを感じられるいいアルバムですよねぇ。

ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2026/02/post-3fb8ec.html

投稿: 中年音楽狂 | 2026年3月 6日 (金) 08時19分

中年音楽狂様
コメント・リンク有り難うございます
私はTSものはあまり聴かないのですが、ゴンザロ・ルバルカバとなると聴いてしまう処なんです。しかし、彼女のTSがこれほど味わい深く演じてくれるとは、良い方への期待外れでした。
中年音楽狂様も評価は良い方で・・・良かったです。
かなりモダンな未来的世界を演ずる彼女ですが、こうした面があることが解って、これから注目してゆきたいと思っているところです。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年3月 6日 (金) 10時11分

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