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2026年4月25日 (土)

ヨエル・リュサリデス JOEL LYSSARIDES 「LATE ON EARTH」

北欧の人間の内面に対峙した詩情豊かな耽美的世界をしっとりと演ずる北欧現代ジャズ

<Jazz>

JOEL LYSSARIDES 「LATE ON EARTH」
ACT MUSIC / Import / CD / ACT80212 / 2026

300

Joel Lyssarides ヨエル・リュサリデス (piano except 04)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェルンクヴィスト (bass)
Rasmus Blixt ラスムス・ブリクスト (drums except 04)

Recorded 07–08 July 2025 at Bauer Studios, Ludwigsburg
Recorded, mixed and mastered by Adrian von Ripka
Composed by Joel Lyssarides
Produced by Andreas Brandis
Photos by Andreas Brandis (Joel Lyssarides)

1900x1900000000w_20260425111901  スウェーデンの油の乗ってきた人気ピアニストのヨエル・リュサリデス(1992年スウェーデンのストックホルム生まれ)の、今回久々に不変のレギュラー・トリオにての最新アルバムの登場。前作はおそらくここで取り上げたのは2022年の『Stay Now』(ACT9942-2)だと思うが、4年ぶりになるだろうか、その間、E.S.T.がみで彼は一役買っている。そして2023年に『A Tribute To Esbjorn Svensson Trio』(ah23-196)をリリースしていて、又2024年にはViktoria Tolstoyのアルバム(『Stealing Moments』(ACT97472))などで、ピアノでサポートしている。私にとっては、注目のピアニストであり、いずれにしても彼の今回のリーダー作であるピアノ・トリオは大歓迎である。

 彼は、ヨーテボリやストックホルムでピアニスト&作編曲家として幅広く活動、近作群がいずれも高い評価を得てきた。そして今アルバムは、12曲収録で全曲彼のオリジナルである。そして長年のトリオ・パートナーであるニクラス・フェルンクヴィスト(ベース ↓左)とラスムス・ブリクスト(ドラム ↓右)と共に演奏が行われ、一層トリオとしての親密さとそれぞれの役割が充実してきているようである。

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(Tracklist)

01. Bortom Bergen 5:26
02. Mahabalipuram 4:39
03. Life In Between 4:49
04. In Itinere 1:55 (solo bass)
05. Sotira 4:56
06. Never Alone 5:54
07. Raqs Sharqi 4:57
08. Folie À Deux 3:47
09. Intermission 0:52
10. Anemoia 3:48
11. Follow The Night 3:17
12. Late On Earth 4:12
*composed by Joel Lyssarides

 これまで以上にパーソナルで感情の深淵に触れる世界に入っている。印象として北欧抒情派らしく北欧因子に満たされているが、フォーク、クラシック因子を感じさせる。しかし緩急巧みにこなして、時に入るダイナミックな攻めもみせてコンテンポラリーなジャズを展開。 そして澄み切ったピアノの音にも引き寄せられる。
 このアルバムの説明には、「自己内省と音楽的実験を繰り返して完成させた」とあって、内面的なところに迫っている雰囲気だ。そして早くも彼のキャリアにおける一つの到達点と言える内容との評価がある。そしてこのアルバムは、製作説明にあるように「完璧さを求めるのではなく、"不完全さが持つ人間味や面白さ"をあえて受け入れる」ことをテーマに制作したと言うことのようだ。
 そんな意味でも、これは夜に一人でじっくり聴くという世界にマッチしていることは事実だ。そうしたことにより、描かれているモノが見えてくると言う事かも知れない。

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M1. "Bortom bergen"「山の向こう側」の意味らしい。北欧らしい静かさの広大な風景を想起させる透明感の高いピアノのメロディーが聴かれる。このアルバムの叙情性を示すオープニング曲。
M2. "Mahabalipuram" インドの地名、複雑なリズム構造があって、リュサリデスの音楽的探究心がインド音楽に向かっているか。
M3. "Life in Between" 中間的というか曖昧と言うか精神状態や時間の流れの表現か、浮遊感のバラードで、彼の世界の表現か。
M4. "In itinere" (旅の途中で) ベース・ソロ、これもぐっと低音で、内省的。
M5. "Sotira" 「地中海的な色彩」が演じられるとの説明あり、温かさがあって魅力的。
M6. "Never Alone" ぐつと繊細に優しさが響くメロディ。たまらなく引き込まれる。感情表現が凄い。
M7. "Raqs Sharqi"「東方の踊り」の意味、リズミカルで躍動感。ちょっとエキゾチック。
M8. "Folie à deux" (共有された狂気)ピアノとリズム隊のインタープレイが聴きどころ。
M9. "Intermission"  繊細なピアノ・ソロ。気分転換。
M10. "Anemoia" ノスタルジックな気分にさせる。
M11. "Follow the Night"   夜の静寂、ちょっとダークだがロマンチックでもある。 
M12. "Late on Earth" アルバムを締めくくるタイトル曲。ゆったりとした中に不思議に安定感と希望が感じられる。

 私の好きだったE.S.T.の良さをちょっと思い起こすところも無いではないが、。以前よりも音の「間」をうまく使うような演奏と、透明感のあるピアノの響きには惹かれるところが十分にある。何故かインドが垣間見えたり民族的音楽メロディーにも立ち入ったり、三者の互いの呼吸がうまく乗ってきたのは、それだけの人生経験の積み重ねの賜とも言えそうだ。

 演奏スタイルが技巧いってんばりにならず、感情を訴えるに重きも寄せてきた「人間的な音楽」への道に入ってきたのも、むしろ芸術性から見ても音楽的評価が高まるかも知れない
 不完全な人間にとって、前向きな気持ちが誘導されるような優良作品にも聴けるし、今までの彼の人生の一つの総括と今後への展望でもあるのかとも聴ける。耽美哀愁プレイで、親しみやすさや芸術性があって感情の深さもありなかなかの素晴らしい作品であった。

(評価)
□ 曲・演奏・コンセプト :    90/100
□   録音         :    90/100

(試聴)

 

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