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2026年5月12日 (火)

コンラッド・パシュクデュスキ Konrad Paszkudzki trio「 Putting'On The Ritz〜Irving Berlin Songbook」

伝統的なアメリカン・ジャズのスウィングの流れに現代性が見える世界

<Jazz>

Konrad Paszkudzki trio「 Putting'On The Ritz 〜Irving Berlin Songbook」
Venus Records / JPN / SACD / VHGD-10027 / 2026

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コンラッド・パシュクデュスキ Konrad Paszkudzki - piano
ディラン・シャマト Dylan Shamat - bass -
ダグ・マーカス Dag Markhus - drums
Produced by Tetsuo Hara
Recorded at Trading 8s Recording Studio, Paramus, NJ
on August 27th and September 16th , 2025.
Engineered by Chris Sulit
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara

Konradpaszkudskiw  ここで取り上げるは、正統派のジャズ・ピアニストと言われるNYで活躍中のコンラッド・パシュクデュスキKonrad Paszkudzki (→)が率いるトリオによる “Irving Berlin Songbook” というシリーズ的作品。これは米国の歴史的偉大な作曲家に捧げるシリーズ(2017年より)の第7集と言う事になるようだ。過去には、ガーシュイン、コール・ポーターなどを取り上げ、トリオ・メンバーも不変(ディラン・シャマトDylan Shamat (bass, ↓左)  、ダグ・マーカスDag Markhus (drums, ↓右))で、今回は"アーヴィング・バーリンIrving Berlin (1988-1989)"を取り上げている。私自身はこのシリーズには特に接してこなかったのだが、ここまで続けて築き上げているシリーズということだと、やっぱり尊重しつつ聴いてみたいと言うことになるのだ。

 ピアニストのパシュクデュスキは、名前からしてなんとなく想像は付くのだが、彼はポーランド出身である。そしてオーストラリア育ち、15歳から大学で学び、18歳で学位を取得する天才ピアニスト。そして現在ニューヨークで活動中だが、Venusレコードで活躍中のあのニッキ・パロットの紹介があって、こうしてVenusからアルバム・リリースしていると言う事だ。

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(Tracklist)

01 Count Your Blessings 
02 What'll I Do 
03 I Used To Be Color Blind 
04 Let's Face The Music And Dance 
05 Change Partners 
06 No Strings 
07 The Best Thing For You 
08 I Love A Piano 
09 Puttin' On The Ritz 
10 Isn't This A Lovely Day 
11 The Best Things Happen While You're Dancing
12 Be Careful, It's My Heart 
13 Always 

  やはり原曲を意識しての全体的に懐かしのクラシックなジャズのイメージが湧いてくる。ピアノ・トリオで粋なスウィングが溢れて抵抗なく聴くことが出来る。そしてただノスタルジックに演ずるので無く結構テンポやリズムは現代的。曲のイメージの仕上げは"ロマンティックでエレガント"で、飾りが多くならずメロディの美しさを最大限に演じ、タッチは重くならず、トリオ全体が軽やかにスウィングする心地よさが全編を通して充実している。
 つまり古典的ジャズに対しての「革新性」の追求というよりは、洗練されたリズム感にてのアメリカン・スタンダードの美しい旋律を呼び起こして、スウィング感の尊重と、ピアノ・トリオの三位一体の追求を試みているとみることが出来た。

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 M01." Count Your Blessings" 穏やかな幕開け。「歌心」がストレートに演じられて聴く方の気分を良くしてくれる。
 M02. "What'll I Do" なんとなく切ないメロディが迫るバラード。ピアノ美しさが曲の全編に流れる。
 M03. "I Used To Be Color Blind" 中音域の響きが豊かで展開も快調。
   M04. "Let's Face The Music And Dance" 小気味よい前進するテンポ。トリオの息の合ったところが粋で快感、聴き慣れた曲をジャズとして堪能できる。
 M05. " Change Partners" ピアノが哀愁を帯びたメロディをほぼ演じきるが。ベースラインの支えがジャズとしてのスリリングな味を出す。
 M06. "No Strings" 軽快に弾むようなスウィング感。
   M07. "The Best Thing For You" アップテンポで快調、ピアニストの流れる演奏が冴える。
 M08. " I Love A Piano" ピアニストも曲に酔っての演奏で、その遊び心も楽しめる。
 M09. " Puttin' On The Ritz" アルバム・タイトル曲。 都会的センスが響き、このトリオの現代性を込めての快演。
   M10. " Isn't This A Lovely Day" 懐かしの時代の明るさが目に浮かぶ。
 M11. " The Best Things Happen While You're Dancing" ドラムのブラシワークに乗って。
   M12." Be Careful, It's My Heart" ベースが詠う世界と弾むピアノの繊細さが妙に合っている。
   M13. " Always" 快適なリズムと快感のピアノの音、トリオの乱れぬ演奏が聴き処。

 やはり「粋なスウィングの楽しさ」と言うのが、よき時代からのジャズ世界の味だというのがよく解る演奏で、多岐にわたるジャズ・アルバムを聴いている中で、こうした世界にふと現代的なアプローチで帰ってみるのはなかなか良い事だと思わせる。
 私が何時も偏って聴く「北欧的世界」、「ECM的な流れ」、「イタリア的な歌心・メロディ」、「クラシックがベースにあるポーランド流ジャズ」などなどから、ふとこの「アメリカンな軽妙なスウィング・ジャズ」も、時には良いモノだと聴いた次第である。
 特にこのトリオの演奏は、技巧に酔って難解に流れることなく、聴きやすさに溢れているところが又一つの良かった点でもあると評価したい。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏  :     88 /100
□   録音        :     88 /100

(試聴)

 

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2026年5月 6日 (水)

ガブリエル・カヴァッサ Gabrielle Cavassa 「 DIAVOLA」

 極めて親密な囁きで、人の内面に迫ってくる歌声は見事な表現力だ

<Jazz>

Gabrielle Cavassa 「 DIAVOLA」
Universal Music / JPN / CD / UCCQ-1229 / 2026.5

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ガブリエル・カヴァッサGabrielle Cavassa(vo, ag on #4)
ジェフ・パーカーJeff Parker(eg)
ラリー・グレナディアLarry Grenadier(b)
ブライアン・ブレイドBrian Blade(ds)

ジョシュア・レッドマンJoshua Redman(ts on #2, 9)
ポール・コーニッシュPaul Cornish(p on #8, 9, 10)

Images1w_20260506101601    異色のヴォーカリストの登場ですね。この米国のガブリエル・カヴァッサGabrielle Cavassa という女性の名門ブルーノートからの初リリース作と言うことと、昨年(?)か、来日しての好評だったという経歴の目下の注目株との前知識だけでの、取り敢えず聴いてみたという経過だ。それが1曲目が短い歌無しでの異様な曲でおやっと思いつつ、2曲目の誰もが知ってるバカラックの曲「雨にぬれても」が、ギターの調べの導入での彼女の歌が始まるが、なんと意外にあの軽快な曲が、物憂いヴォーカルがしっとりと内省的なムードで歌い上げられて、ややこれはちょっと其の気で聴かないと・・と、思わされる。そんなアルバムのスタートで、ただ事で無いヴォーカル・アルバムとインプットされる事となった。

 このガブリエル・カヴァッサ という女性は、1994年カリフォルニア州生まれ、ルーツはイタリアとか、サンフランシスコ州立大学で音楽学士号を取得。ニューオルリンズが活動拠点で、2020年に初のアルバム『Gabrielle Cavassa』(私は未聴)を自主制作。2021年に「サラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンクール」で優勝を果たし、2024年に名門ブルーノートと契約。昨年の初来日公演があり好評。ジャズ界で話題を集めている新星でこれが待望のメジャー・デビュー作だ。

 本作は、彼女の歌に惚れ込んだと言われるドン・ウォズとジョシュア・レッドマンによるプロデュースでの制作。ジェフ・パーカー(g, 1967年-, ↓左)、ラリー・グレナディア(b,1966年-, ↓中央) 、ブライアン・ブレイド(ds, 1970年-, ↓右)というハイレベルのトリオ・メンバーを主体にしたバックにて製作されている。そして肝腎の歌は、とにかく、「ナチュラルな歌声の中にも圧倒的な表現力を持つ」と言われ評判は良い。さてさてそのあたりに注目して聴いてみようというところ。

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(Tracklist)

01. ヘヴン・サイズHeaven Sighs (Jeff Parker)
02. 雨にぬれてもRaindrops Keep Falling On My Head (Burt Bacharach, Hal David)
03. プリズナー・オブ・ラヴPrisoner of Love (Clarence Gaskill, Russ Columbo, Leo Robin)
04. ボシー・ノヴァ Bossy Nova (Gabrielle Cavassa)
05. トゥ・セイ・グッバイTo Say Goodbye (Lani Hall, Edu Lobo, Torquato Pereirade, Araujo Neto)
06. アンジェロ Angelo (Luigi Tenco)
07. ビー・マイ・ラヴBe My Love (Nikolaus Brodszky, Sammy Cahn)
08. ディアヴォラ Diavola (Gabrielle Cavassa, Alexander Warshawsky)
09. クッド・イット・ビー・マジック Could It Be Magic (Barry Manilow, Adrienne Anderson)
10. 別れの夜La notte dell’addio (Alberto Testa, Arrigo Amadesi, Memo Remigi, Giuseppe Diverio)

 彼女の歌は、叫び上げるのでなく囁くような歌と極めて親密な表現力豊かな物語を聞かせるような流れで、深みがあってそこにはなんとなく誠実さも感じられ聴き入ってしまうムードを持っている。声の質も悪くは無い。これは単なるスタンダード集ではなく、彼女のソングライティングに込められた世界を訴えている。

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 M1." Heaven Sighs" ジェフ・パーカー作曲の不思議な雰囲気のインスト曲でヴォーカルなし、意味深な雰囲気での幕開け
 M2. "Raindrops Keep Falling On My Head" バカラックの有名曲のカヴァー、あの軽快な曲が、極めて内省的で物憂げな深い世界へ、しかしただ暗いというのとは異なる。後半にTsがジャズ・ムードを盛り上げる。
 M3." Prisoner of Love" 静かなegとdsをバックに、彼女の中・低音を生かした感情を抑えたヴォーカルが響き、ゆったりとそして「間」を生かしての歌。
   M4." Bossy Nova" ギターによるブラジル風のリズム。彼女のオリジナル曲。
   M5. "To Say Goodbye" おそらく愛する人だと思うが別れの瞬間を繊細に陰影を描いた曲。感情の表現が深い。
 M6." Angelo" イタリア曲のカバー。コントラバスのアルコ奏法と彼女のイタリア語の歌が、ぐっ深く人間関係の暗部を描く。そして後半の美しいギターと歌声の対比が見事。 
 M7." Be My Love" 静かに、スローに、瞑想的。
 M8. "Diavola (悪魔)" アルバム・タイトル曲、劇的展開、このアルバムの頂点に。「天使から悪魔への変貌」を描くとのこと。不安をbが表現し緊張感を高め、歌は抑圧から解放への圧巻な展開。
 M9." Could It Be Magic" ピアノで描く純粋性の美しさ。彼女の歌はまさに祈り。
  M10." La notte dell'addio"  イタリア語で「別れの夜」。穏やかにピアノとのデュオで静かな世界 「失うこと」を「受け入れる」事でアルバムを閉じる。

 まさに、トータル・アルバムとしての彼女の訴えと生き様の10曲であった。元の曲をこうも自分の世界に誘導する歌唱力に脱帽である。なるほど、彼女の評価が高いことを知らされた。囁きの美学から物語性と曲を歌うことの音の質を高める技法が秀悦だ。なおバック・トリオもかなり曲のテーマと質感を高めるに貢献度が高く、彼女の歌を反映するするが如く演じていて、見事であった。

 テーマは解説でも見るように、人間の二面性を「天使と悪魔」と表現し、「愛・執着・別離」といった事の感情の世界を展開する。
 ジャズとしてのスウィング感とかスリル感とか即興の流れを重視するので無く、曲の内面の物語性とか情感を求めた世界で、これも一つのジャズの流れとして知らしめられた感がある。「内省的でありながらどこか暖かさが」を、スタンダード、ポップ、イタリア歌曲、そして自己のオリジナル曲と広く求めて、それを自己の世界へと変貌させる。久々に見事なヴォーカル・アルバムとして聴くことが出来た。

(評価)
□ 編曲・作曲・歌・演奏 :  90/100
□  録音          :  88/100

(試聴)

 *

 

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2026年5月 4日 (月)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi Bebo Ferra「EVANSCAPE」

"エヴァンス探求の道"は、「エヴァンス風」から一歩進んだ「エヴァンス風感性」へ

<Contemporary Jazz>

Enrico Pieranunzi Bebo Ferra 「EVANSCAPE」 
BONSAI MUSIC / Import / BON260401 / 2026

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Enrico Pieranunzi (piano)
Bebo Ferra (guitar)
Diego Imbert (double bass, guest on 2 tracks)

  イタリア・ピアノ界の至宝エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi(1948年ローマ生まれ)については、多くを語る必要も無いが、最新アルバム『EVANSCAPE』が登場した。これは"ピアニスト、ビル・エヴァンスに捧げられたアルバム"と言う事だが、彼が長年敬愛し、研究し続けてきたジャズ・ピアノのまさに巨匠のビル・エヴァンスに焦点を当てている。このことは過去にも試みて来た事で、今回は特徴としてイタリアを代表するギタリストであるベボ・フェッラBebo Ferra(1962年カリアリ生まれ)とのデュオを中心に作り上げられている点にある。もともとピアノとギターの対話という事の難しさがある中で、敢えてなんとデュオという更にごまかしのきかない世界での挑戦、そこには何かの挑戦的試みがあるのだろうか。興味が尽きないところであるが、 ビル・エヴァンスがかってジム・ホールと残した名盤『Undercurrent』や『Intermodulation』があるが、そんな事もイメージしての事だろうか。

 中身は、これも注目点だが、"彼らのオリジナル曲とエヴァンス関係のカバー曲の融合"という事なのか、 エヴァンスのオリジナル曲(2曲)、エヴァンスが好んで演奏したスタンダード(1曲)、そしてピエラヌンツィとフェッラがエヴァンスに捧げたオリジナル曲(8曲)が収録されている。造語のアルバム・タイトルの「エヴァンス的な風景(Landscape)」とは何を目指してのことか、近年 ピエラヌンツィが多方面への試みにエネルギーを注いでいるが、考えられる一つにはクラシック音楽(特にドビュッシーやラヴェル)の世界だが、果たしてそれにエヴァンス・ジャズの流れとの溶け合いを試みたのだろうか、聴いてみてのお楽しみだが、つまり"これは何をさしているのか"が、聴くことの大きな目的になったのである。

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(Tracklist)

1.Dreams and the Morning夢と朝*
2.Song for Helenヘレンのための歌(Bill Evans)
3.Passing Shadows通り過ぎる影*
4.Incanto(Bebo Ferra)
5.Il giardino di Anneアンの庭*
6.Very Early(Bill Evans)
7.Twolinessi二元性*
8.Siren's Lounge*
9.Once Upon a Summertime(M.Legrand)
10.Calling Enricoエンリコを呼ぶ(Bebo Ferra)
11.Evanscape*

 *印 E.Pieranunzi 作曲

  全体的に、ゆったりとしたテンポのバラードを基調としたこの演奏曲群は、聴いていて疲れなくて良い。又、比較的技巧に偏らずそのまま演じて聴かせてくれるので、聴く方にとっては聴きやすい世界だ。エヴァンスの代表的なテーマ、「ヘレンへの歌」「ベリー・アーリー」「ワンス・アポン・ア・サマータイム」の再解釈を試みつつ、インスピレーション豊富な彼らの多彩なオリジナル作品群を交互に展開する。
 ディエゴ・インベルトのコントラバス(「ヘレンへの歌」「エンリコを呼ぶ」)も、加わることにより、より内省的な叙情的な世界を深く変化させる効果が効いている。

 ピエラヌンツィとフェラは、デュオの難しさの代表的なピアノとギターを競合の形で無く対話的に演じ、技巧を装飾するので無く、親密で対話的なデュオを通してのアプローチを通して、エヴァンスに向かって精神的な世界に一つの目的を持ったことが見えてくる。

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 M1. "Dreams and the Morning" 静かな朝の光を感ずる美しい繊細なタッチ。 叙情的な導入曲。
 M2. "Song for Helen" 「Evans精神」の象徴的曲。後期の優しさの名バラード、ギターの響きにピアノがバックを支えベースの入ったトリオ演奏。
 M3. "Passing Shadows" Pieranunziの抒情曲の内省的再演。ピアノとギターで影の重なりの様。
 M4. "Incanto" Ferraの曲で、「魅了」の意味、ギター主導の幻想的楽曲、デュオの妙が響く。  
 M5. "Il giardino di Anne" Pieranunziのリリカル系曲をエブァンス風抒情に再演。
 M6. "Very Early" Evansのワルツ、ピアノとギターの独得な多彩な変化が。
 M7. "Twoliness" 二元性のデュオ表現。そのスリル感と緊張感。対話の楽しみ。
 M8. "Siren's Lounge"二者の空間が聴き処。ここでは希有なデュオの現代性が迫る。
 M9. "Once Upon a Summertime" エヴァンスも愛したスタンダード、ノスタルジックな静かな詩情、注目演奏ぐっと惹かれる。
 M10. "Calling Enrico" Ferraからのオマージュ。温かみあり。
 M11. "Evanscape" アルバム・タイトル曲。エヴァンスを探る究極の答えの風景は決して暗くないところに。

  こうして聴いてみると、ピエラヌンティの"エヴァンスへの探求の道"は、「エヴァンス風」という単なる演奏技巧の世界で無いことが見えてくる。それは、代表的なカヴァー曲の演奏からも、彼ら自身の演奏を妥協無く極めるところに向かっていることが聴き取れ、それが十分に知ることが出来た。つまりこのアルバムは、単なる「エヴァンスの模倣」の世界ではなく、ピエラヌンツィが長く探求してきた「イタリア的叙情性を持った彼自身のミュージック」を"エヴァンスの精神が流れているかどうか"と言うことだと知るのである。ジャズ・ピアノを好む者として、静謐で美しい室内楽的なサウンドを求める者として、このアルバムのようにエヴァンスの曲を演奏し、一方自作曲の演奏であっても 両者にエヴァンスの精神が自然に流れていることが重要としているのだ。

「エヴァンス風=スタイルの模倣」ではなく「エヴァンス的な感性で」というところに"彼の探求の道"が見えてきたアルバムであった。

(評価)
□ 選曲・作曲・演奏  90/100
□ 録音        88/100

(試聴)

 

 

 

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