イリアーヌ・イリアス ELIANE ELIAS 「Ao Vivo」
「静謐と情熱とダイナミックなブラジリアン・ジャズ」の世界
<Jazz>
ELIANE ELIAS 「Ao Vivo」
Candid / Import / CD / CDCND3396 / 2026
Eliane Elias (piano,vocal)
Leandro Pellegrino (guitar)
Marc Johnson (bass)
Rafael Barata (drums)
久しぶりの感があるが、そうでもなく2022年の『quietyde』(ccd30512)のアルバム以来だろうと思うが、もうここでは常連のイリアーヌ・イリアス(Eliane Elias、1960年ブラジル生まれ→)の2026年5月に名門Candid Recordsからリリースされた最新ライブ・アルバム『Ao Vivo』(CDCN3396)だ。
この作品は、還暦を超しての彼女の近年のキャリアの総集編とも言えるもので、2023年10月21日にサンフランシスコの「SFJAZZセンター」で行われたステージ(一夜限りのもの)を完全収録したライブ盤である。
勿論、彼女のヴォーカル、ピアノをふんだんに取り入れて、究極の「レギュラー・カルテット」による演奏、つまり彼女の公私にわたるパートナーであるベースの名手マーク・ジョンソン(↓中央)、現代最高峰ブラジリアン・ドラマーのラファエル・バラタ(↓右)、そしてギタリストのレアンドロ・ペレグリーノ(ブラジル、↓左)という、もう互いに熟知した最強の布陣が揃っている。スタジオ盤でないだけに、自由にそしてその時のムードも反映してのジャズらしい即興も入っての中身の濃い演奏が聴けるというモノ。
まあ、見方を変えればベスト盤ともいえるもので、グラミー受賞・ノミネート・アルバムからのものや、アントニオ・カルロス・ジョビンやアリ・バロッソ、ドリヴァル・カイミといったブラジル音楽界の巨匠たちの名曲をむしろ会場と楽しんでいるかの如くの演奏が聴ける。
とにかくベテラン歌手の描く歌は、例のスモーキーなソフトにして優しさが親密な声と節回しで、聴く者にとっては不安のない親密感のある世界に浸れることが出来る。そして忘れてはならないのが彼女のピアノ・タッチだ。元々の輪郭明瞭なリズムカルなところは、ブラシリアン・ミュージックを旨く表現して迫ってくるのでこれも楽しみなのである。
(Tracklist)
1.Brasil (Aquarela do Brasil) 5:18 (Ary Barroso)
2.VocÃa 4:23 (Roberto Menescal, Ray Gilbert, Ronaldo BÃ ́scoli)
3.Sambou Sambou 5:21 (Joao Donato)
4.VocÃa e Eu (You and I) 4:23 (Carlos Lyra/Vinicius de Moraes)
5.Eu Sambo Mesmo (I Really Samba) 3:07 (Janet de Almeida)
6.Bahia Medley: Saudade da Bahia/VocÃa Já Foi à Bahia 4:12 (Dorival Caymmi)
7.Esta Tarde Vi Llover 4:16 (Armando Manzanero)
8.At First Sight 7:24 (Eliane Elias)
9.A Felicidade 8:05 (A.C. Jobim, VinÃcius de Moraes)
10.SÃ3 Danço Samba 5:40 (A.C. Jobim, VinÃcius de Moraes)
ライブものというのは、その録音の音質がピンからキリまであるので不安であったが、今作はむしろ会場の関係もあろうが空間感覚がよく音質も悪くない。そしてそれぞれのミュージシャンもちゃんと意識できて良い方に入ると思う。
又前作は、かなり彼女としては「静」が描かれ異色の方に入り、ミュージシャンとしてのある山を越えて一つの世界に入ったかと思ったが、今回はまさに本来のブラジル風のダイナミックな「動」に帰っている。
そしてそれぞれの収録曲は牡下記のようであった。
M01."Brasil (Aquarela do Brasil)"サンバこそのジャズ・グルーヴ感が展開。ピアノ・タッチが躍動感あってライブらしいムード。
M02."Você" 軽快なボサノバ。ピアノに乗ってのイリアスの囁くようなヴォーカルの絡み合いが絶妙。
M03."Sambou Sambou" 彼女のピアノがよりジャジーに。弾き語りが乗っていて楽しい。
M04."Você e Eu (You and I)" モダン・ジャズらしい洗練されたハーモニーが楽しめる。マーク・ジョンソンのベースが支えていて、カルテットが生きている。
M05."Eu Sambo Mesmo" 速攻サンバ、イリアスのヴォーカル先行し最後にピアノがダイナミックに。
M06."Bahia Medley:Saudade da Bahia / Você Já Foi à Bahia"ギターを中心にカルテットの味が聴き処。バヒーアという地方の郷愁を歌ったメドレーらしいが、リズムに乗った優しきヴォーカルが印象的。
M07."Esta Tarde Vi Llover" ピアノがちょっとエレガントに語るバラード曲。
M08."At First Sight" 彼女自身のオリジナル。7分を超えるピアニストとしての熱演。
M09."A Felicidade" 聴き慣れた曲だがアレンジも見事、会場に反応してのライブこその「動」への流れの展開が最高潮。ドラム・ソロに反応してのピアノの響きが訴える一幕も。
M10."Só Danço Samba"フィナーレを飾る意味か、会場の合唱も入って、彼女のピアノが次第に高速に、そして各メンバーのソロが巡り、親密感が最高。
ジャズ・ピアニストのイリアスの味がちゃんと網羅されていて、ライブならではの会場との対話によって充実感が増している。そしてやはり歳の効か、もともと低音部に厚みのあるヴォーカルがよりソフトになって、所謂一つの世界が完成した感がある。
そしてやはりスタジオとの違いでのジャズ・ムードが高まっていて成功したアルバムと評価する。ブラジル音楽を深めてきた彼女の流れが楽しく充実感で包まれたところは、本人も納得しているのではと聴き入った次第である。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(視聴)
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