ガブリエル・カヴァッサ Gabrielle Cavassa 「 DIAVOLA」
極めて親密な囁きで、人の内面に迫ってくる歌声は見事な表現力だ
<Jazz>
Gabrielle Cavassa 「 DIAVOLA」
Universal Music / JPN / CD / UCCQ-1229 / 2026.5
ガブリエル・カヴァッサGabrielle Cavassa(vo, ag on #4)
ジェフ・パーカーJeff Parker(eg)
ラリー・グレナディアLarry Grenadier(b)
ブライアン・ブレイドBrian Blade(ds)
ジョシュア・レッドマンJoshua Redman(ts on #2, 9)
ポール・コーニッシュPaul Cornish(p on #8, 9, 10)
異色のヴォーカリストの登場ですね。この米国のガブリエル・カヴァッサGabrielle Cavassa という女性の名門ブルーノートからの初リリース作と言うことと、昨年(?)か、来日しての好評だったという経歴の目下の注目株との前知識だけでの、取り敢えず聴いてみたという経過だ。それが1曲目が短い歌無しでの異様な曲でおやっと思いつつ、2曲目の誰もが知ってるバカラックの曲「雨にぬれても」が、ギターの調べの導入での彼女の歌が始まるが、なんと意外にあの軽快な曲が、物憂いヴォーカルがしっとりと内省的なムードで歌い上げられて、ややこれはちょっと其の気で聴かないと・・と、思わされる。そんなアルバムのスタートで、ただ事で無いヴォーカル・アルバムとインプットされる事となった。
このガブリエル・カヴァッサ という女性は、1994年カリフォルニア州生まれ、ルーツはイタリアとか、サンフランシスコ州立大学で音楽学士号を取得。ニューオルリンズが活動拠点で、2020年に初のアルバム『Gabrielle Cavassa』(私は未聴)を自主制作。2021年に「サラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンクール」で優勝を果たし、2024年に名門ブルーノートと契約。昨年の初来日公演があり好評。ジャズ界で話題を集めている新星でこれが待望のメジャー・デビュー作だ。
本作は、彼女の歌に惚れ込んだと言われるドン・ウォズとジョシュア・レッドマンによるプロデュースでの制作。ジェフ・パーカー(g, 1967年-, ↓左)、ラリー・グレナディア(b,1966年-, ↓中央) 、ブライアン・ブレイド(ds, 1970年-, ↓右)というハイレベルのトリオ・メンバーを主体にしたバックにて製作されている。そして肝腎の歌は、とにかく、「ナチュラルな歌声の中にも圧倒的な表現力を持つ」と言われ評判は良い。さてさてそのあたりに注目して聴いてみようというところ。
(Tracklist)
01. ヘヴン・サイズHeaven Sighs (Jeff Parker)
02. 雨にぬれてもRaindrops Keep Falling On My Head (Burt Bacharach, Hal David)
03. プリズナー・オブ・ラヴPrisoner of Love (Clarence Gaskill, Russ Columbo, Leo Robin)
04. ボシー・ノヴァ Bossy Nova (Gabrielle Cavassa)
05. トゥ・セイ・グッバイTo Say Goodbye (Lani Hall, Edu Lobo, Torquato Pereirade, Araujo Neto)
06. アンジェロ Angelo (Luigi Tenco)
07. ビー・マイ・ラヴBe My Love (Nikolaus Brodszky, Sammy Cahn)
08. ディアヴォラ Diavola (Gabrielle Cavassa, Alexander Warshawsky)
09. クッド・イット・ビー・マジック Could It Be Magic (Barry Manilow, Adrienne Anderson)
10. 別れの夜La notte dell’addio (Alberto Testa, Arrigo Amadesi, Memo Remigi, Giuseppe Diverio)
彼女の歌は、叫び上げるのでなく囁くような歌と極めて親密な表現力豊かな物語を聞かせるような流れで、深みがあってそこにはなんとなく誠実さも感じられ聴き入ってしまうムードを持っている。声の質も悪くは無い。これは単なるスタンダード集ではなく、彼女のソングライティングに込められた世界を訴えている。

M1." Heaven Sighs" ジェフ・パーカー作曲の不思議な雰囲気のインスト曲でヴォーカルなし、意味深な雰囲気での幕開け
M2. "Raindrops Keep Falling On My Head" バカラックの有名曲のカヴァー、あの軽快な曲が、極めて内省的で物憂げな深い世界へ、しかしただ暗いというのとは異なる。後半にTsがジャズ・ムードを盛り上げる。
M3." Prisoner of Love" 静かなegとdsをバックに、彼女の中・低音を生かした感情を抑えたヴォーカルが響き、ゆったりとそして「間」を生かしての歌。
M4." Bossy Nova" ギターによるブラジル風のリズム。彼女のオリジナル曲。
M5. "To Say Goodbye" おそらく愛する人だと思うが別れの瞬間を繊細に陰影を描いた曲。感情の表現が深い。
M6." Angelo" イタリア曲のカバー。コントラバスのアルコ奏法と彼女のイタリア語の歌が、ぐっ深く人間関係の暗部を描く。そして後半の美しいギターと歌声の対比が見事。
M7." Be My Love" 静かに、スローに、瞑想的。
M8. "Diavola (悪魔)" アルバム・タイトル曲、劇的展開、このアルバムの頂点に。「天使から悪魔への変貌」を描くとのこと。不安をbが表現し緊張感を高め、歌は抑圧から解放への圧巻な展開。
M9." Could It Be Magic" ピアノで描く純粋性の美しさ。彼女の歌はまさに祈り。
M10." La notte dell'addio" イタリア語で「別れの夜」。穏やかにピアノとのデュオで静かな世界 「失うこと」を「受け入れる」事でアルバムを閉じる。
まさに、トータル・アルバムとしての彼女の訴えと生き様の10曲であった。元の曲をこうも自分の世界に誘導する歌唱力に脱帽である。なるほど、彼女の評価が高いことを知らされた。囁きの美学から物語性と曲を歌うことの音の質を高める技法が秀悦だ。なおバック・トリオもかなり曲のテーマと質感を高めるに貢献度が高く、彼女の歌を反映するするが如く演じていて、見事であった。
テーマは解説でも見るように、人間の二面性を「天使と悪魔」と表現し、「愛・執着・別離」といった事の感情の世界を展開する。
ジャズとしてのスウィング感とかスリル感とか即興の流れを重視するので無く、曲の内面の物語性とか情感を求めた世界で、これも一つのジャズの流れとして知らしめられた感がある。「内省的でありながらどこか暖かさが」を、スタンダード、ポップ、イタリア歌曲、そして自己のオリジナル曲と広く求めて、それを自己の世界へと変貌させる。久々に見事なヴォーカル・アルバムとして聴くことが出来た。
(評価)
□ 編曲・作曲・歌・演奏 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)
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コメント
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m
カヴァッサは、ジョシュア・レッドマンのヴォーカル・プロジェクトで知ったのですが、
一聴にとても巧くて、ジョシュアの先見の明に驚きました。
>曲の内面の物語性とか情感を求めた世界
次回の彼女のアルバムが楽しみですね。
私の投稿のリンクも置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2026/05/post-9aefca.html
投稿: Suzuck | 2026年5月11日 (月) 07時16分