ラーシュ・ヤンソン Lars Jansson - Erik Söderlind 「Why Does Rain Fall」
人間的成熟を基礎に、アルバム精神に「禅の心」が流れての双頭カルテット・ジャズ
<Contemporary Jazz>
Lars Jansson - Erik Söderlind 「Why Does Rain Fall」
Prophone / Import / CD / PCD 400 / 2026
Lars Jansson ラーシュ・ヤンソン (piano)
Erik Söderlind エーリク・セーデルリンド (electric guitar except 07, 09, 12) (acoustic guitar on 07, 09, 12)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (acoustic bass)
Paul Svanberg パウル・スヴァンベリ (drums)
2025年12月スウェーデン-ストックホルムのRMV Studio録音
スウェーデンの大御所である人気ヴェテラン抒情派ピアニストのラーシュ・ヤンソンLars Jansson (1951年エレブルÖrebro生まれ →)と、ヤンソンと過去にも共演しているやはりスウェーデンの円熟中堅ギタリスト:エーリク・セーデルリンドErik Söderlind (1981年クリシャンスタードKristianstadまれ ↓左)がコンビを組んで、ベース&ドラムを伴ってのカルテットによる最新アルバムである。今回は双頭アルバムといってよいタイプと評価されていて、演ずる曲も二人が持ち寄ってのオリジナル曲13曲集である。
ラーシュ・ヤンソンと言うと、やっぱり北欧の抒情ということで、日本では非常に高い人気が築かれてきているが、母国では「ジャズの教授」とも呼ばれるぐらい若いミュージシャンの教師としての役割も果たしていて慕われているとのこと。又エーリク・セーデルリンドは、ややアーシーなギターの音色が注目されて、この二人の対話に興味が湧くところだが、前作の『What The Moment Brings』(2024年)に続く作品としてファンは喜ぶ処にある。更にリズム隊としては、スウェーデンのエレガントで人気のベースのニクラス・フェーンクヴィスト(↓中央)と、スウィング感に魅力のドラムスのヤンソンの息子のパウル・スヴァンベリ(↓右)という構成で、フロントの二人を支える形となっている。
このアルバム・タイトルの「Why Does Rain Fall」は、"なぜ雨は降るか"と言う事だが、この世界は、“The sound of the rain needs no translation”(雨音に翻訳はいらない)と言う事に繋がり、「あるがままを受け入れる」という「禅」の言葉を引用したところにあるらしく、今回のアルバムの精神が推して知るべしという処のようだ。
(Tracklist)
01. Iris (Erik Söderlind)
02. Why Does Rain Fall (Lars Jansson)
03. Grandpa Funk (Lars Jansson)
04. Jazzmusikal 1B (Erik Söderlind)
05. Stop Those Waterfalls (Lars Jansson)
06. Donna Andrade (Erik Söderlind)
07. One Who Knows (Lars Jansson)
08. Les French Alps (Erik Söderlind)
09. I Am That (Lars Jansson)
10. The Gardener (Erik Söderlind)
11. Grandpa Dancing On The Table (Lars Jansson)
12. Ravel (Lars Jansson)
13. A Garden Of Unknowing (Lars Jansson)
北欧ジャズ界を代表するピアニスト、ラーシュ・ヤンソンと、近年円熟味を増しているスウェーデンの実力派ギタリスト、エーリク・セーデルリンドの二人がタッグを組んだなんとなく「師弟」のような親密さと、熟成されたインタープレイが非常に抵抗のない難解でなく聴きやすいジャズとして聴くことが出来る。この息の合った二人の対話は、どこか温かく、お互いへの深いリスペクトに満ちていて気持ちが良い。ただ良く聴くと時にスリリングなインタープレイも聴かれ味がある。
M01. "Iris" E.Söderlindが自身の娘「イリス」に捧げた曲とか。美しいギター家族への愛情が溢れるような曲。
M02. "Why Does Rain Fall" L.Janssonによるアルバム・タイトル曲。「あるがままを受け入れる」という「禅」の思想からの精神性を描く。「静」でありながら複雑なカルテット4者の音。
M03. "Grandpa Funk" かなりグルーヴィ。アッシーなギターが生きる。
M04. "Jazzmusikal 1B" 一転、ぐっと迫る深さから物語的な流れ。
M05. "Stop Those Waterfalls" L.Janssonの若手の頃のピアノ奏法(アルベジオ)にベテラン・ドラマーから注文がついたという話からを描いた曲とか、ピアノの美しさが聴ける。
M06. "Donna Andrade" E.Söderlind のブラジルの歌姫Leny Andradeに捧げられた曲。ギターとピアノにボサノヴァの匂いが。
M07. "One Who Knows" バッハの世界。L.Janssonの美ピアノのクラシカルな精神、美しい。気品のベース、アコギの登場。
M08. "Les French Alps" 今度はE.Söderlindのフランス・アルプスの美世界を描く。
M09. "I Am That" L. Janssonの2004年に発表した曲。ピアノとアコギの静かな世界。ヤンソン・ジャズの真髄。
M10. "The Gardener" E.Söderlindの庭師の祖父へのギターが語る思い出の郷愁の曲。
M11. "Grandpa Dancing on the Table"(作曲:L.Jansson)コミカルな展開(おじいちゃんがテーブルの上で踊っている)により、カルテットの一体的な楽しさが目に浮かぶ。
M12. "Ravel" ここでもギターはアコーステイック、L.Janssonが影響を受けたというクラシックのモーリス・ラヴェルの世界へ。
M13. "A Garden of Unknowing"「無知の庭」という難解なタイトル。どうも決めつけの結論は必要なく、全て余韻を残す静謐なピアノとギターの調べで、安堵感の世界へ。
北欧コンテンポラリー・ジャズの深さを知らしめるテーマを持った力みのない自然体の仕上がりで押し切ったという珍しい作品と評価する。ラーシュ・ヤンソンの境地がアルバムの意志を大きく広げたのであろうと推測する。鋭さのあるテクニカルなプレイのエーリク・セーデルリンドと思って聴くと、意外や意外そのイメージでない、むしろトリビュート曲が多く何かむしろ感謝の意が広く覆っているようにも聴けた。ギターのトーンに「精神的円熟と優しさ」が満ちていた。そこに、ラーシュ・ヤンソンの気品に満ちたピアノのリードが加わって、タイトルの「雨の自然さ」が広がりのある世界観を作り出しているのだ。
北欧的自然観の世界から、人間的成熟を基礎に築かれた「音楽としての成熟」が余韻のある世界を響かせている見事な作品。
(評価)
□ 曲・演奏・コンセプト : 90/100
□ 録音 : 87/100
(視聴)
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