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2026年5月22日 (金)

ママル・ハンズ MAMMAL HANDS 「 CIRCADIA」

 ミニマリズムをベースに展開する異色のトリオ編成で描くストーリー性の高い世界

<Jazz>

MAMMAL HANDS 「CIRCADIA」
ACT Music / Import / CD / ACT8042-2 / 2026

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Nick Smart (piano) (keyboard on 5)
Jordan Smart (tenor saxophone except 4, 5, 6) (alto saxophone on 4, 6)
Rob Turner (drums except 5)

2025年3月20-24日英ウェールズ(Wales)のGiant Wafer Studios録音

 ジャズの新展開を思わせるこのベース・レスのトリオ「ママル・ハンズ」が、どうも評判が良いので、今年のニューアルバムを聴くこととしたもの。現代英国ジャズシーンにおいて確か兄弟であるピアノ(Nick Smart)とサックス(Jordan Smart)が展開するバンド。それもミニマルな因子、エレクトロニカの世界が入り交じり、ベース・レスのトリオとくる若干ジャズにおけるジャンルも難しいこともあって、私のようなアコースティックなピアノ・トリオ・ファンであると二の足を踏むのである。ただ幸いなことに、近年の構築された「ストリーミング環境」で、良質な音でリリースされた世界のアルバムが殆ど聴けるとなれば、自然に聴くことになるので便利な世の中だ。

 今回のアルバムは彼らの6作目ということで、完全に脂がのりきっているのだが、なんと「新体制への移行」と「レーベルの移籍」という転換期というもの。トリオの大切な結成以来のドラマーが脱退、GoGo Penguin(ゴーゴー・ペンギン)の立役者のドラマー、ロブ・ターナーRob Turnerの加入だ。どうも友人関係にあったようで、彼が加入したことで、このバンドも又新しい時代に入った。 更にレーベルは近年私の接触が多いACTということで、身近になった感もある。

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 そもそも「ママル・ハンズ」は、英国はノリッジで2012年に結成され、アンビエント、ジャズ、電子音楽、ワールドミュージックなどを融合させたスタイルで、3人のメンバー全員が作曲して、ピアノ、サックス、ドラムスという異色のトリオ・スタイルにて、グループとしのダイナミズムな世界を創造する事で歩んできた。しかし2024年に、オリジナル・ドラマーのジェシー・バレットが脱退を発表したが、このバンドの継続は表明されていて、ここに心機一転「6作目」の登場となったモノだ。ただし、2018年、メンバーのスマート兄弟は新プロジェクト、「スンダ・アーク(Sund Arc)」なるものをもスタートさせている。それはやはりポスト・クラシカル、ポスト・エレクトロのフェーズへ2人でアプローチしていると言われている。
 そんな経過であったが、取り敢えず今回新生トリオの方の新作リリースがあったので、それにアプローチしてみよう。

(Tracklist)

1. Window To Your World
2. Helios
3. Alia's Abandon
4. Paper Boats
5. Fallow Tide (solo keyboard)
6. Forgotten Friend
7. A Thread In The Dark
8. Four Flowers
9. Submerge

 アルバム・タイトルである『CIRCADIA(概日リズム、生命の周期)』が示す通り、説明では"終わりと始まり"、"生命の循環や呼吸"、"光と影のサイクル"をテーマにしたトータル・アルバムと言う事だ。そして演奏内容として、もともと私は管楽器は若干抵抗があるのだが、更にベース無しというにはちょっと寂しさが感じられるが、キーボードの左手の領域とドラムスの力でリズムの低音部分が充実していて、寂しいという事はなく、むしろ強いリズムが流れる。又ピアノによるミニマルな演奏にサックスがメロディー部分を歩調を合わせて流して思いの外充実している。又。ジャズ、クラシック、フォーク、エレクトロニカの要素を取り入れていると評されているが、実際にはアコースティック楽器にこだわっているようで、エレクトロニックな音も敢えて工夫しているようである。

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 M1. "Window To Your World" トータル・アルバム的展開のオープング曲。ピアノのメロディーが語るように流れ、緻密に構築されたメロディの変化してゆく中にドラムスのリズムの推進力が絡み合って面白い。サックスの盛り上りも圧巻。
 M2. "Helios" 「ギリシャ神話の太陽神」か、打って変わって美しくきらめくピアノのリフと、ドラムの躍動感。ダイナミックに明暗を描く。
 M3. "Alia's Abandon" 複雑なリズムが展開。ピアノとドラムが緊張感へ誘導、サックスがメロディを流す。スピード感が刺激的。
 M4. "Paper Boats" 水面に浮かぶ紙のボートか、繰り返され進行するミニマルなピアノのフレーズ。なんとなく安堵感が生まれる。
 M5. "Fallow Tide" アンビエントな世界の間奏曲。疾走感から一転し静かな美の世界。
 M6. "Forgotten Friend" 友を懐かしむのかノスタルジック。ここでも3人のアンサンブルの密度の濃さは聴き処。
 M7. "A Thread in the Dark"「暗闇の一本の糸」ということか、静かに探るような緊張感から、次第にジャジーな物語を感ずる曲。
 M8. "Four Flowers" 気品あるピアノ、サックスは多彩でリズムと協調して展開。力強いドラムス。
 M9. "Submerge" アルバムを締めくくり、エレクトロ世界のイントロから始まり、サックスは静かに歪んだ音で、クリスタルなピアノと呼応して混沌の世界へ、そして次第に沈み込み、残ったピアノの音が消えて締めくくる壮大な曲。

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 社会や環境そして生命の循環を描いたのであろうか、一つの絵巻を見聞した気持ちで聴き終えた。基本的にはミニマリズムが流れていて、それをジャズとして何処まで受けいれて行くかと言うことに尽きるのではと思いつつ聴いた次第である。ただそれは私がのめり込んでゆくところでないことは解ったが、描く世界は悪くない。
 私が最も心配したのはピアノとサックスの関わり合いであるが、基本的に曲によってその役割が交代したりで、それぞれを生かす方法論が行き届いて、さすが基本的にこのペアでスタートしているだけのことはある。つまり片方を潰してしまわない役割の分配と競合がスマートてあった。つまりエレガンス派のピアノとジャズ・グルーヴ感に進んでゆくサックスが、意外に歩調が合っているのであった。そしてあくまでもポップ感覚を大切にして現代音楽には突っ込まないところが受けているのかも知れない。
 

(評価)
□ 曲・演奏  :      88/100
□   録音    :      88/100

(試聴)

 

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コメント

ジャズにベースがいないなんて目から鱗です!サックス、ピアノ、ドラムだけのトリオ編成でしたか!透明感があるのに、呪術的・スピリチュアルな感じが同居しているような印象!

投稿: ローリングウエスト | 2026年5月24日 (日) 11時04分

ローリングウエスト様
コメント有り難うございます
ちょっと珍しいトリオですね。私は本来のトリオの方が落ち着きますが、でも聴いてみるとミニマリズムの世界は是れで良いのではとも思いました。
いろいろな実験的世界も楽しいですね

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2026年5月26日 (火) 08時32分

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