エミリー=クレア・バーロウ Emilie-Claire Barlow 「La Plus Belle Saison」
「北米のパリ=ケベック」ゆかりの曲をフランス語で歌った異色の作品
<Jazz>
Emilie-Claire Barlow 「 La Plus Belle Saison」
Empress Music / Import / CD / EMG465 / 2026
Emilie-claire Barlow (vocals, arrangements)
Francois Richard (piano, harmonium, wurlitzer, mellotron)
Adrian Vedady (double bass)
Ben Riley (drums, percussion)
Kiko Osorio (percussion)
Joe Grass (guitar, mandolin)
Reg Schwager (guitar)
Francois Bourassa (piano)
John Sadowy (piano)
Lex French (trumpet)
Mario Allard (flute, baritone saxophone, tenor saxophone, alto saxophone)
Andre Leroux (clarinet, flute, tenor saxophone)
Guillaume «Guibou» Bourque (clarinet, bass clarinet, tenor saxophone, baritone saxophone)
Melissa Pipe (bassoon, baritone saxophone, flute)
Francois Pilon (violin)
Melanie Belair (violin)
Veronique Vanier (viola)
Sheila Hannigan (cello)
Belle Grand Fille (vocals)
Judith Little-daudelin (vocals)
Karine Pion (vocals)
カナダのケベックと言えば、歴史ある都市でフランス人が築いた入植地。従ってカナダではフランス文化が根強く残っていて「北米のパリ」ともいわれる。公用語もフランス語だ。音楽活動も歴史的に盛んで、世界のミュージシャンのこの地のライブものも結構よく聴く。
そんなケベックを題材にしたカナダの歌姫エミリー=クレア・バーロウ Emilie-Claire Barlow (1976年トロント生まれ)のアルバムがリリースされた。「ケベックの豊かな音楽遺産に敬意を表した珠玉のフランス語アルバム」という肩書きだが、彼女のスタンダードものは結構味わい深いことは解っているので早速聴いてみた次第。
勿論彼女のヴォーカル・アルバムだが、バックはシンプルなものでなくて、上記のように、クレジットなどからみてもかなり豪華。曲により演奏も違う。そして歌の言語も全てフランス語(もともと彼女はフランス語には通じている)というので、これは今までの彼女のアルバムとは様相が違うと思って聴いた方が良い。特にジャズを基盤にフォーク、サンバ、オーケストラル・ポップなど多岐にわたり、それなりにアレンジも施されているという特徴もの。モントリオールで録音され、ピアニスト/アレンジャーの François Richard (↓右)と共同プロデュースされたものである。
(Tracklist)
1.Dans les rues de Québec 02:33
2.Quelles sont les chances? 04:22
3.Je suis en amour 05:25
4.J'ai rencontré l'homme de ma vie 04:10
5.Si doucement 04:07
6.Comment t'aimer encore 04:08
7.Les deux printemps 03:39
8.D'la bière au ciel 03:58
9.Jerrycan 03:34
10.Le vent m'appelle par mon prénom 04:50
11.Pendant que 05:05
このアルバムは彼女の 従来の「英語スタンダード中心のジャズ歌手」というイメージを完全に変えたという意味では一つの価値あるアルバムだ。ここまでの幾つかの賞に輝いた約30年のキャリアから一歩広げた文化的意味合いのこもったアルバムとみるべきものであった。 彼女の親しみやすい歌声と技の豊富なヴォーカルの円熟した力量で、ケベック音楽への深い親密感・愛情が展開する。
ただ、そうした性格から曲はケベックのフランス語ポップス/シャンソンの名曲をアレンジを施して再解釈してのオマージュというところで、その意味では一貫しているが、アルバムとして聴いてみると、あまりにも性格の違った曲と演奏が不自然に並んでいる印象が特に前半にあって、どうも聴く方は気持ちが落ち着かない。"音楽的探究心と芸術性が結実した極上のヴォーカル・アルバム"との評もあるが、その意味も解らないではないが、充実した歌声とストリングスやアコースティック主体の多彩なサウンド、そして更に大半のリズムは軽やかなラテンやブラジル風味の面白さなどがあるのだが、どうもアルバムとしての感動が生きてこないのが残念だ。
M1."Dans les rues de Québec"(ケベックの街角で)ケベックの街の情景と郷愁を描く。スウィングし小粋なフレンチ・ジャズの印象、オープニングとしてはこんなところか。
M2. "Quelles sont les chances"(どれほどの確率で)男性ヴォーカルとデュエット、ポップな曲だが魅力感じない。
M3. "Je suis en amour"(私は恋している)複数の管楽器で豪勢なミディアムテンポ・ジャズ。 ブラジル音楽のロマンティックな世界か。
M4. "J'ai rencontré l'homme de ma vie"(人生の人に出会った)シャンソン的バラード。
・・・・ここまででは、アルバムとしての目的がケベックにまつわるものというだけなのか、彼女が何を歌いこみたいのかよく解らない。フランス語のせいか、訴えてくるモノが解らない(英語でも解らないが)。
M5. "Si doucement"(とても優しく)ピアノ中心のバックでのジャズバラード。彼女の声と歌いこみがようやくここに来て聴ける。ここから始まるようなモノ。
M6. "Comment t'aimer encore"(どうやってまだあなたを愛せるの)別れの余韻を描く歌。ここには、彼女の得意とする感情表現が聴ける。メランコリックで感情表現が深く、アルバムの抒情的ハイライト。Tpのバックが効果を上げる。ようやく彼女を聴いた感じになる。まずこの曲は私の推薦曲。
M7. "Les deux printemps"(ふたつの春) 恋人の瞳を「二つの春」にたとえる詩的な歌。軽やかなテンポ 全曲から一転して明るいメロディ 幸福にあふれた世界が聴ける。ただ前曲との対比でちょっと流れが不自然、曲も好まない。
M8. "D'la bière au ciel"(天国のビール)さらに軽快に、ユーモラス?、ただ聴くのみ。
M9. "Jerrycan" 珍しくロックぽいフォーク・ポップ色の曲。ちょっと展開に面白み。
M10. "Le vent m'appelle par mon prénom" (風が私の名前を呼ぶ)ストリングスとピアノで広がり、彼女のヴォーカルには、訴えが感じられる。叙情性・哀感・美を感ずる。このアルバムでは出色。
M11. "Pendant que" ぐっと深く人生や時間を静かに見つめる歌。ゆったりしたバラード。ここに来てこのアルバムも救われた。
私が注目できたのは11曲の中でM6, M9, M10, M11の4曲のみ。とにかく取り上げた曲そのものが、ケベックの歴史的産物なのか、私の評価では現代にどうもマッチしない。編曲の妙も感じられるが、なんとなく古くさい。そうかと言って古典的味わいも感じられない。まさに中途半端。ようやく上記4曲でバーロウの良さと曲の味が感じられたところ(その点は救いであった)。おそらくケベック現地では喜ばれたかもしれないが、他国ではどうだろうと・・・残念ながらそう思った次第。ストリーミングなどで、上記4曲を聴くと言う事ぐらいで納めて良いアルバムだ。
(評価)
□ 選曲・編曲 : 75/100
□ 演奏・歌 : 87/100
□ 録音 : 87/100
(試聴)
推薦の曲"Le vent m'appelle par mon prénom"
*
アルバム導入曲"Dans les rues de Québec"











最近のコメント