ラ-シュ・ダニエルソン Lars Danielsson Liberetto 「 Echomyr」
美しいメロディ・アンサンブル音楽に心の内面を描く深層の音楽が・・・
<Jazz>
Lars Danielsson Liberetto 「Echomyr」
ACT MUSIC / Import / CD /ACT80412 / 2026
Lars Danielsson : double bass, cello, gimbri (#10), piano (#10), electric guitar (#6),
Gregory Privat : piano,
John Parricelli : guitar,
Magnus Öström : drums & percussion,
Guests:
Arve Henriksen : trumpet on #3, 7,
Magnus Lindgren : flute & alto flute on #6,
Carolina Grinne : english horn on #8
音楽作曲:ラース・ダニエルソン
録音:2025年4月6日〜9日および10月28日〜31日
スウェーデン出身のもはや重鎮ベーシスト、ラーシュ・ダニエルソンLars Danielsson(1958年生まれ、スエェーデン)による音楽ジャンルを広く見渡してのクラシック室内楽、ルーツの北欧と世界各地の民族音楽とを融合し、自らの音楽世界を構築するプロジェクト「Liberetto」の第5作(オーケストラ共演盤を抜いて)となる新作の登場。
メンバーにはピアノにGregory Privat(↓左、 1,2作はティグラン、その後の3作から)、John Perricelli(g、↓左から二人目)、Magnus Öström(ds、↓左から三人目)を主体に、更にゲストを迎えての 曲によってトランペットやフルート、イングリッシュホルンのメンバーの集結。
この「Liberetto」というバンド・プロジェクトは、2011年からで互いの信頼と友情に基づき構成されていて、その名は「libretto」(クラシック的構造)と「Liber」(自由=即興)のかけあわせた造語で、メロディー中心主義で室内楽的アンサンブルの尊重、国際色豊か(アルメニア、中東、アフリカと勿論北欧などの要素がある。民族楽器も登場)ということで、繊細で透明なサウンドやリズムの尊重、抒情を大切にといった世界感を持って演奏する。
そんなことから「美」「知性」のバランス感覚がよいことや、ユーロの抒情性に評価がある。ダニエルソンのベーシストが主導する作曲の美しさはなによりも人気があり、ドラムスもリズム隊としての支えばかりでなく、曲の色・味にも貢献していて頼もしい。
さてこのアルバムもそんな中での久しぶりに2023年のオーケストラ版は別にすると5年ぶりとなり、期待して聴くことになるのだが、ある意味「Liberettoの到達点」的な存在ではないかと思いつつアプローチすることとなった。収録曲全曲ダニエルソンのオリジナルである。
01 Pre 00:37
02 Allan 06:09
03 Supreme 06:51
04 Glòr 05:49
05 Sensitiva 04:38
06 Ascending 05:05
07 Himlen Över Dig 02:38
08 Echomyr 05:48
09 Presto 04:22
10 Something She Said 03:19
先行シングルとして、M4,M8が抒情性を植え込んでいたが、それぞれの曲が、かなり特徴があるので詳しくみることとする。
M1. "Pre" チェロ、ベースによる短い導入曲。今作のイメージを植え付ける(?)。
M2. "Allan" "孫への心"の明るい展開、ベース主導、中盤からピアノ、後半合奏でこのプロジェクトのお披露目。
M3. "Supreme" ぐっと落ち着いて響くベース、至高の世界感、中盤からTpが入ってジャズ色が高まる。
M4. "Glòr" ギターの民族的フォーク、トラッド様響き。光り輝き親しみやすいメロティー。
M5. "Sensitiva" ダニエルソンのベースが前面 に出てのメロディーを演じての内省的世界。曲は私好みではある。ギターのサポートで進行し、ピアノの音が後半に美しさを放つが、ちょっと不完全燃焼(ギターとピアノ編成の難点か)。
M6. "Ascending" フルートの参加で、ちょっと田舎のお祭り的、ここでのピアノは魅力無し。
M7. "Himlen Över Dig" ギターの調べとミュートを効かせたトランペット再登場で、短く詩的な小品だが広く展開する広さが好感。
M8. "Echomyr"(タイトル曲)メロディを主役に内省的でありながらプラス思考の動きが展開する不思議な曲。決して悲観的で無いところに好感が持てる。
M9. "Presto" リズムカルにして多彩な技法のベース演奏が聴き処か、ピアノの軽快さも印象的。
M10. "Something She Said" 最後に深く内省的になる。ダニエルソンがピアノ演奏してのギターとのデュオ。社会的背景(戦争の広がりなど)に反応しての思索的終曲、アルバムの締めくくりとして重要。
私の好みであるところのTigran時代のようなピアノの美旋律による世界が後退しているのは、ちょっと寂しかった。時にフルート、トランペットなども加わり各種楽器が多くなって、アルバム自体の色が多彩と言うより統一感が無くなってしまっている。ただそのあたりはダニエルソンの音楽的狙いがありそうだが、まだ私には十分伝わってこなかったということなのかも知れない。ヨーロッパ古典音楽の構築性、北欧フォークの素朴な旋律、ジャズの即興性とグルーヴ感へのアプローチなとなど聴くポイントは多い。
さて「異質のM10の締めの曲」の意味づけに関心が引き寄せられる。つまり結論から言うと、アルバムとして築いてきた"美しい旋律の北欧的なローカル美"、そして"音楽のアンサンブルの調和"など、そうしたモノからある意味別の感覚の“心からの声”という印象なのである。しかしこれで締めるところにも大きな意味があろうと推測する。そこを見逃してはならない。
ダニエルソンは、この曲について、明言はしていないようだが、近年の不安定な世界情勢(ウクライナ、中東情勢、ヨーロッパの現実、米国の姿勢)で感じた「無力感・不安・祈り・隔離」が作らせ演奏したものかと解釈するのだ。直接的な抗議や政治的メッセージではないというところが注目点で、曲のタイトルが「“Something She Said”(彼女が言った何か)」が又意味深なのだ。とても具体的な彼女とは思えない、つまり彼に伝わる事柄の脳裏に印象的な一つの象徴的存在なのだろうか?、とにかく聴く者に感じて欲しい世界感覚と自己の深い心を訴えたとしか思えない。
(評価)
□ 曲、演奏、コンセプト : 90/100
□ 録音 : 90/100
(試聴)
"Sensitiva"
*
"Something She said"












































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