コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」
独特のリズム感と空気感により表現主義的センスが生きている
<Jazz>
Colin Vallon 「Samares」
ECM / Internatinal Version / 6593279 / 2024
Colin Vallon(piano)
Patrice Moret(double-bass)
Julian Sartorius(drums)
2023年6月,7月 Auditorio Stelio Molo RSI,Lugano 録音
Engineer:Stefano Amerio
Produced by Manfred Eicher
久しぶりですね、スイス人ピアニストのコリン・ヴァロンのニュー・アルバムだ。前作がなんと2017年の『Danse』ですから7年ぶりの登場。構成はトリオ・アルバムでメンバーはスイス出身で固められ前作と変わっていない。
そして変わらずの ECMからのリリースであり、と、なると誰もが知っている通りマンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher)が創設したレコードレーベルでの彼のプロデュースする音楽哲学は「The Most Beautiful Sound Next To Silence (沈黙の次に美しい音)」であり、かって私がこのコリン・ヴァロンのアルバムの評価は、まさにそれを地で行くものと評価していた。おそらく今作もと、そのパターンは私の好むところで期待が大きいのである。
そもそもコリン・ヴァロン・トリオは1999年に設立され、1stアルバム『Les Ombres』は、2004年にスイスのレーベルUnit Recordsからリリースされた。そして2007年、『Ailleurs』がHatHut Recordsからリリースされ、2011年に国際的な実績のあるレーベルECM Recordsから3枚目のアルバム『Rruga』をリリースし、2014年には『Le Vent』、2017年には『Danse』をECMからリリースしたという経過だ。そしてジュリアン・ザルトリウスのみは『Le Vent』からトリオ・メンバーとなっている。
コリン・ヴァロン(1980年生まれ)は、紹介では、過去において、ラリー・グレナディア、ホルヘ・ロッシー、ジェフ・バラード、アンブローズ・アキンムジーレ、ヴォルフガング・ムスピール、トム・ハレル、ケニー・ウィーラーなどのアーティストと共演したり、レコーディングを行ったりしてきていると。
又、ベースのパトリス・モレット(スイス、1972年生まれ、下左)は、2005年よりこのトリオ入り、クラシック・ベースを基礎としている重量感あるベース・サウンドを奏でる。ジュリアン・サルトリウス(スイス、1981年生まれ、下右)は2014年より当トリオに加わって、コーディネーション(リズム・反応・バランスなど)の才能が評価されている
(Tracklist)
1. Racine
2. Mars
3. Lou
4. Ronce
5. Étincelle
6. Timo
7. Samares
8. Souche
9. Brin
期待通りのリリシズムとメランコリーの流れを感じ取れるアルバムだ。ヴァロン自身のオリジナル曲により構成されていて、アルバム・タイトルのフランス語の 「Samares」は、"サマラという実"のことを指していて、見た目は種と葉の中間のような形をしており、翼のような羽ばたきが特徴だとか、そんなイメージはこのトリオが演ずるところとかなりマッチングが良いようだ。自然の植物からのインスピレーションを瞑想的に描くことに一つの世界観に誘導しているようだ。
M1."Racine"(根)、M4."Ronce"(荊またはブラックベリー)、M9." Brin"(小枝または草の葉)など、植物由来が曲名となっている。
なかなか描くところの真髄に迫るのは難しいが、演ずるところ、このトリオそれぞれが音質と音色に対する強い意識を共有していると言われ、おり、非常に複雑なアンサンブルサウンドがリリカルな世界で構築されている。 今回は新たに導入したエレクトロニクスの効果も興味のある処。
いずれにしてもオープニングM1." Racine"から、深遠な世界にどっぷり浸かることが出来る。ドラムス(パーカッション)の微妙な響きが印象的。そして M2." Mars" でリリカルなピアノのメロディーが登場する。
M3."Lou" 優しさはこの上なく、M4."Ronce"の後半の盛り上がりが面白い。
M5."Étincelle" 重く響くベースに誘われピアノの美旋律が流れ、M6."Timo"のリズムカルなひねりは先進的。M7."Samares" では、まさにピアノの響きが広く展開し語り聴かせる。
M8."Souche" で、やや瞑想的に沈むもピアノの美しさは描かれ、M9."Brin"にて、安堵感に通ずる雰囲気を描いて納めている
やはりヴァロンの独特のリズム感と空気感の表現主義的センスが生きているリリカルな世界は相変わらずで、ベースがピアノを導き、ピアノの世界を独特な手法でサポートするドラムス、トリオの相互関係が即興的な世界でも見事に充実していて素晴らしい。歴史的ピアノ・トリオ・スタイルから一歩も二歩も進歩した世界を聴かせてくれる。
又Stefano Amerioの録音は、立体的なトリオの配置が心地よく聴きとれて、特にメロディーを支えるベース・ドラムスの生かし方は素晴らしかった。
(参考)Colin Vallonに関する過去の記事はこちら →https://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat59236188/index.html
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 90/100
(試聴) "Mars"














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