フリー Flea 「HONORA」
パンク・ロック以上に心が奪われたトランペット・ジャズへのアプローチ
<Rock, Free Jazz>
FLEA (RED HOT CHILI PEPPERS) 「HONORA 」
Nonesuch/ Warneer Music Japan / JPN / CD / WPCR18816 / 2026
Flea(b, tp, vo)
Anna Butterss(b)
Jeff Parker(g)
Deantoni Parks(ds)
Mauro Refosco(per)
Rickey Washington(afl)
Vikram Devasthali(tb)
Chris Warren(vo)
Josh Johnson(sax,produce)
Nate Walcott(Key)
etc
sp.guestー
Thom Yorke(vo,p)
Nick Cave(vo)
etc
相変わらずJazz界も日本では低迷しているようだが、最近のJazz雑誌としてはシンコーミュージック・エンターテイメントからの「JAZ.in」という雑誌がここに来て月刊誌としてようやく今月号で30巻目を迎えた。と言う事はもうあと半年で3年経過と言うことで何とか維持されている。その30巻目でのトップ記事がこのパンク・ロックのレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RHCP)のベーシストのフリー(本名マイケル・ピーター・バルザリー(Michael Peter Balzary、1962年10月16日 生、63歳 →)は、オーストラリアのメルボルン郊外バーウッド出身)のソロ・アルバム『オノラHONORA』を取り上げていて、ロックでもパンクにはあまり興味の無かった私だが、フリーのこの作品がかなり注目点が多いと言う評判で、ここに聴いてみたという次第である。
そのフリーであるが、主たるベースの外に近年は元々のマスターした楽器のトランペットに興味を持って、ジャズ・アルバムの製作が夢であったという事のようで、このアルバムではベース以上にかなりのウェイトでジャズ・トランペットを演奏している野心作。又ヴォーカルも披露しているのだ。
そして豪華なコラボレーターとして、アンナ・バターズ(Bass ↓左)やジェフ・パーカー(Guitar ↓左から2番目)といった現代LAジャズの最前線にいるミュージシャンに加え、トム・ヨーク(レディオヘッド ↓右から2番目)やニック・ケイヴ(SSW,オーストラリア出身 ↓右)といったビッグネームが参加しており、単なる「ロック・スターの趣味」を超えた音楽的探求のニュアンスの高い挑戦したアルバムとして見て取れる。
(tracklist)
01. ゴールデン・ウィングシップ / Golden Wingship
02. ア・プリー / A Plea
03. トラフィック・ライツ / Traffic Lights
04. フレイルド / Frailed
05. モーニング・クライ / Morning Cry
06. マゴット・ブレイン / Maggot Brain
07. ウィチタ・ラインマン / Wichita Lineman
08. シンキン・バウト・ユー / Thinkin Bout You
09. ウイロウ・ウィープ・フォー・ミー / Willow Weep for Me
10. フリー・アズ・アイ・ウォント・トゥ・ビー / Free As I Want to Be
11. アイズ・ライク・ツー・フライド・エッグス / Eyes Like 2 Fried Eggs (ボーナス・トラック)
とにかく、ロック界というよりジャズ界の兵どもを集めての演奏には、野心作と言われるだけのちょっと驚きの世界が展開している。
アルバム・タイトルの『HONORA』だが、フリーの愛する家族の一員に因んでいるらしい。このアルバムでフリーは作曲・編曲は勿論手掛けていて、やはり近年猛練習したと言うトランペットを主力にベースと共に全編で演奏している。特に彼のトランペットは、70年代スピリチュアル・ジャズへの敬意として、マイルス・デイヴィスやオーネット・コールマンといった巨匠たちの影響があるとの評価を受けていて、即興性は勿論だが哀愁感を描くに使われ、更にアンビエントな質感が構築されている。トランペッターとしての内省的な面も見せたフリーが聴きどころだ。
そして彼と共にアルバムを作り上げたのは、現代ジャズの先駆者からなる精鋭メンバーたちがいてのこと。その力は有効に展開しているところは、それこそフリーの力だろう。
ヴォーカルは、フリー自身に加え、彼の友人である「レディオヘッド」のフロントマンであるトム・ヨークと「二ック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ」のフリーと対立していたニック・ケイヴが登場と言う男性ヴォーカルが聴ける。近年のジャズをほゞ押しなべて席巻している女性ヴォーカルとは異なった世界がなんとも頼もしい。
M1. "Golden Wingship" 幕開けのインスト曲。ロック的フリー・ジャズがオープン
M2. "A Plea" フリーのTpがスピリチュアルに訴える。こりゃ大変なアルバムだと恐れおののく。ファンク展開にジャズ・スウィングが。「平和と愛のために生きよう」との訴え。
M3. "Traffic Lights (feat. Thom Yorke)" トム・ヨークがピアノとヴォーカル参加、パーカッションがラテン的。ヨークの儚いボーカルがどこか不安感が漂っている。ギターのリズムも入って美しさを表現、ファンク的Tpでジャズの歌となった。
M4. "Frailed" 10分を超える曲。本アルバムの人気曲ではないが、これぞ私の最も虜になった曲。ベースの刻むリズムで始まり、KeyやBassのアルコによる美しさと不安感と哀感とのアンビエントな世界が展開。1/3過ぎからリズムに力が入り、後半のTpとギターの絡む展開などの聴きどころ満載。
M5. "Morning Cry" フリー自身の作曲。奇妙なTpフレーズが難解なジャズ・ナンバー。ジェフ・パーカーのギターの巧みな演奏がうける。
M6. "Maggot Brain"カバー曲。フリーがトランペットで哀愁たっぷりにメロディー演奏。
M7. "Wichita Lineman (feat. Nick Cave)" かっての対立者ニック・ケイヴをバリトン声の歌で迎え、フリーがTp演奏、こんなに優雅に。
M8. "Thinkin Bout You" これも優雅なカバー曲。ストリングスをバックに、フリーがBassとTpで美しくお上品に。
M9. "Willow Weep for Me" シンセサイザーを流して、Tpが歌うスタイル。ちょっと奇抜。
M10. "Free As I Want to Be" ドラムスのパンチ力、ギターの響きがロック的だが取り敢えず纏まった形の終焉へ。
久々に、ジャズとしてのロックの味の発展形であるかっての'70年代のプログレッシブ・ロック的な様相のあるフリー・ジャズ曲(M4)にも巡り合えて、面白かった。そして男性ヴォーカルもやはり時には良いものである。
若き頃のトランペットを、60歳を前に、再び手に取り、その腕を磨き始めたというフリー。彼の「新たな挑戦」、そして昔からの「ジャズへの愛」を形としてなんとしても創り上げたかったという"ジャズ・アルバム"がここに誕生したということで、とりあえずお祝いしたい気持ちであるが、参加ジャズ・ミュージシャンの個々の特徴あるインプロヴィゼーションを旨く生かしてのサイケデリックな展開とか、フリージャズ的流れ、そしてロックのダイナミズムも交錯して面白い。このアルバムでは、彼のメッセージが前面に出ていることの賛否もあるようだが、「フリー個人の極めて真面目な世界」として評価を受けている。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 : 88/100
□ 録音 : 87/100
(試聴)









































































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