ペーター・ヴースト Peter Vuust Quartet 「 Homage」
ヴーストが誘導するハード・バップのアメリカン・ジャズにヤンソンの北欧ジャズならではの詩情が垣間見る世界
<Jazz>
Peter Vuust Quartet 「Homage」
Storyville Records / Import /1014366 / 2025
Peter Vuust Quartet :
Claus Waidtløw クラウス・ヴァイトルウ (tenor saxophone except 01, 09) (soprano saxophone on 01, 09)
Lars Jansson ラーシュ・ヤンソン (piano)
Peter Vuust ペーター・ヴースト (double bass)
Morten Lund モーテン・ロン (drums)
Producer: Peter Vuust
Mix & master: Lars Nilsson
Assistant engineer: Michael Dahlvid & Joar Hallgren
Liner notes: Peter Vuust
Photos: Nilento Studio
Cover design: Paul Tippett
Recording: Lars Nilsson, Nilento Studio, Gothenburg, Sweden, January 2024
デンマークを代表するジャズ・ベーシストであり作曲家であり、しかも脳科学者でもあるという異才の異才そのもののペーター・ヴースト(1961年生まれ)の、デンマークのクラウス・ヴァイトルウ(1967-)のテナー・サックスとスウェーデンのベテランのラーシュ・ヤンソン(1951-)のピアノをフィーチュアし、ドラムはやはりデンマークのモーテン・ロン(1972-)が務めるという強力なカルテットのアルバム。
スカンジナビアで最も有名なジャズ・ミュージシャン4人が、強烈かつ楽しい創作プロセスで結集し、複雑な音楽性と表現力豊かな深みを追求すると言うのだ。
私がこのアルバムに注目するのは、私のお気に入りのここでも何回か取り上げてきたピアニストのヤンソンLars Janssonの魅力が第一であったのだが、今回の企画者ヴーストが音楽が脳に与える神経学を研究する学者であるので、このアルバムではそれがどんな形で生かされているのかというちょっと変な興味もあったと言うところである。
このカルテットのリーダーのペーター・ヴーストPeter Vuustは、ジャズの複雑さと音楽の科学的理解を融合させるユニークな能力で受賞歴のあるとか、つまりミュージシャンとしての成功に加えて、音楽が脳に与える影響を専門とする神経科学者として広く認知されているらしい。彼の創造的な企画と展開が未来志向であり、そこに彼の音楽的洞察力が作り上げるカルテットのサウンドがこの新しいアルバムを完成させたようだ。そこにはジャズ・ミュージックを歴史的に築いてきた歴史的・伝説的な先人への賛辞を込めているらしい。
01. Homage to Keith
02. Oh, Jaco!
03. The Maróczy Bind
04. Finca la Huerta
05. Quiet Now
06. Rhythm & Blues
07. Simple Song
08. Mont Ventoux
09. Waltz
10. Marrakech
11. Monday
(以下Bonus track)
12. Giving Birth
13. The Naked Trees
14. On Grey Day
全曲ペーター・ヴーストによる曲のようだ。
ユーロ・ジャズと言っても歌心のイタリア系とは明らかに異なるオーソドックスな硬派筋の今日型ビ・パップと言うかハード・バップ路線と言った方が良いタイプだ、つまり北欧系の情緒系かと思ったが、どうもそれが主流としはいない。しかしメロディアス流れはちゃんと維持してのブルース・テイストも描き正攻法勝負のスインギー快演が展開し、確かに歴史的ジャズを尊重しての流れを維持している。つまり私が好むところの北欧らしいというよりは全体的にはアメリカの歴史を描いているように感じた。それはオープニングのM01." Homage to Keith"からしっかり感じ取れるが、つまり伝統的なジャズ・メンへの賛辞となれば当然この姿と言うことであろう。しかし冒頭のピアノ・ソロからは彼の北欧の美学が溢れている。
そして更にM09."Walz"於けるヤンソンのピアノの美旋律、そしてソプラノ・サックスの流れはやっぱり味わい深く北欧の情緒がにじみ出ていて、ベースの語りも感動的であった。そしてピアノの音の余韻を生かした曲運びはこのアルバムでは異色でお見事。
いずれにしても私の注目のヤンソン(p)は、自分のリーダー作品のような優美で情緒豊かな詩人ぶりは隠せないところであろうが、それはここではちょっと仕舞っておいて、M02."Oh,Jaco!"やM04." Finca la Huerta"のように、珍しくジャズ王道路線で楽しませてくれているのである。しかもM.6"Rhythm & Blues"のような意外にもアメリカン・ジャズ色のヤンソンがしっかりと聴けるという楽しさがある。これはハード・バップ・テナーのヴァイトルウの真剣プレイを演じさせ、それに乗せていくヴーストのリーダー手腕によるものであろう、その点はなかなかのものだ。
締めの曲のバラードのM11."Monday"は、やっぱりメロディー派の味わいが溢れている。この曲の後半のピアノ・ソロには、やっぱりヤンソンらしさがにじみ出ていて、その流れにサックスも同調した曲展開はユーロの良さを感ずる。
全体にちょっと表現がおかしいが、非常に真面目さを感ずる演奏だ。遊び心と言うよりはやはりジャズ界への先人に対しての感謝と賛辞というところは見事に演じきっている。スカンジナビア・ジャズとしては今やECM的なところを頭に描きやすいが、ここでは所謂モダン・ジャズ時代に纏められるオーソドックス・ジャズで今や珍しい世界を構築していて聴き応え十分。
冒頭に取り上げた「音楽が脳に与える世界とは?」としては、ジャズの王道に北欧風情緒がうまくミックスして、全く疲労感がなかったところが、一つの表れとして受け取った。
(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音 : 88/100
(試聴) "Homage to Keith"















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