エミル・ブランクヴィスト Emil Brandqvist Trio 「Poems for Travellers」
多彩なジャズ曲想とクラシック世界をも描く
<Jazz>
Emil Brandqvist Trio 「Poems for Travellers」
(CD)SKIP RECORDS / import / SKP 9166 / 2025
Piano: Tuomas Antero Turunen
Drums: Emil Brandqvist
Bass: Max Thornberg
私の注目トリオで、彼らの流れを追ってきたスウェーデンのドラマーのエミル・ブランクヴィストEmil Brandqvist(↓中央)率いるピアノトリオの2025年最新作。このアルバムは7枚目で、トリオのメンバーは変わってはいない。彼らは過去に必要に応じてゲストミュージシャンをフィーチャーすることがあったが、しかし、今回は、彼らは自分たちだけのトリオによる世界に集中するという今までと異なっていて自信の表れか。そしてオリジナル曲で迫ってきて、ブランクヴィストが主要な作曲家としてリードし(オリジナル9曲提供)、メンバーのフィンランドのピアニストTuomas Turunen(↓左 3曲)とスウェーデンのベーシストMax Thornberg(↓右 1曲)も作曲に貢献している。
(ここで過去に取り上げたアルバム)
Emil Brandqvist Trio 『FALLING CRYSTALS』(SKP 9135-2 / 2016)
Emil Brandqvist Trio 『WITHIN A DREAM 』(SKP 9141-2 / 2018)
Emil Brandqvist Trio 『SEASCAPES』(SKIP9128-2/2019)
Tuomas Turunen 『Ornaments of Time』(SKP 9139-2 / 2017)
前作『Layers of Life』(Skip Records、2023年)は、トリオの国際的な魅力が盛り上がり、ドイツのジャズチャートで2位を確保し、又SNSの世界で5,000万回以上のストリーミングを記録した。これは"インストゥルメンタルジャズのジャンルでは非常に稀な記録であり、支持の高まり"と評価されていている。
エミル・ブランクヴィストは、1981年生まれ40歳代後半を迎えいよいよ円熟してきたところである。スウェーデンの第2の都市ヨーテボリの出身。2012年にスウェーデンの長編映画『Bloody Boys』と『Vägen Hem』の映画音楽を担当。2013年にこのメンバーでトリオを結成し、2013年に弦楽四重奏も加えた『Breathe Out』でデビュー。以降、ジャズやクラシック・クロスオーヴァーの分野で人気を得ている。バンドリーダーとして、バックグラウンドで基礎を築き、共演ミュージシヤンの土台を整えるタイプのドラマー。そしてどちらかと言うと静かなプレーヤーであり、メロディックな世界を好み、ビートをタッチに変え、楽器を繊細なものとして演ずるミュージシャン。
(Tracklist)
1 A Visit to Reality (E)
2 The Mayfly (E)
3 Shades of Leaving (T)
4 Endless Like the Sea (E)
5 Destination Unknown (E)
6 Run Away (T)
7 Up in the Sky (E)
8 Departure (E)
9 Interlude No. 2 (T)
10 The Earth Shall Remember (E)
11 Final Walk (E)
12 Soon with You (E)
13 Evening Land (M)
作曲
(E): Emil Brandqvist , (T):Tuomas A. Turunen, (M):Max Thornberg
やはりこのトリオは、やや複雑なアレンジで美しいメロディーを聴かせる。哀感の雰囲気も描くが、全体に暗さはない。独創的なリズミカルな感動的な雰囲気のある作品群である。
又、録音も優秀、それぞれの楽器ははっきりと、細かいニュアンスで聴ける。ステージ上の彼らの位置は聴きやすいバランスを構成。ミックスは繊細で、上質な高音、音像はクリアにしてソフト、聴きやすい。
アルバムはフランクヴィストのM1."A Visit to Reality"で幕を開け、歯切れの良いドラムスの音が流れを造り、ベースとピアノが生き生きと流れ、三者の融合が神秘的。ブランクヴィストのドラミングはこの曲では意外にパワフルであり、トゥルネンの甘いメロディックなピアノラインにドライブとサポートの完璧なバランスが面白い。続くM2."The Mayfly"で曲調は更に美しさを増す。
そしてM4."Endless like the Sea"は、スローで内省的な作品だが、美しくピアノがメロディーを聴かせ、ベースとピアノの繊細な相互作用を引き立てるドラムスの繊細なブラッシさばきが聴かれる。続くM5."Destination Unknown "で希望のテーマに迫る。
エモーショナルなM7."Up in the Sky"は、引き付けるタイプの魅力の音楽で、ソーンバーグのベースは、中盤のアルコなどで、トゥルネンの美しいピアノのメロディーにさらに装飾を加えている。
トゥルネンの曲の一つは、情熱的なM3."Shades of Leaving"で、速い単音からソーンバーグとの素晴らしいインタープレイを伴うメロディーへと移行し、M6."Run Away"は、なかなか即興演奏の味を誘導している。
このトリオは、クラシック音楽の影響が強く、特にトゥルネンのソロ曲であるM9."Interlude No. 2"ではどっぷりその世界に浸れる。
ブランクヴィストのM10."The Earth Shall Remember"もトリオのバランスの取れた演奏で、基本的にはクラシックの世界だ。そして更にM11."Final Walk"もピアノの流れはクラシック、それをドラムス、ベースが支えて味な美しいジャズ世界へと構築している。
ソーンバーグが作曲した優しい最後のバラード曲M12."Evening Land"でもブラシを中心に繊細なドラムスが聴かれる
時には緊張感を高める「静」の世界に誘導し、一方時には感情に訴える演奏を、そして更に時には優しく慰め、時にはアタックしてくるパワーもみせる。これは、ジャズの要素をしっかりと認識し演じて、その上になんとクラシックの世界への誘導もしてくれるのだ。偏らずに多くの人々に訴え受け入れられる音楽として聴いた。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 90/100
(試聴)
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