シャイ・マエストロ Shai Maestro「Solo: Miniatures & Tales」
内なる音楽の姿と思考を表現、極めてパーソナルな初のピアノ・ソロ作品
<Contemporary Jazz>
Shai Maestro「Solo: Miniatures & Tales」
BELIEVE RECORDINGS / IMPORT / BLV8889 / 2025
Shai Maestro : piano
イスラエル出身で、若干19歳でアヴィシャイ・コーエン・トリオに抜擢され、私は2008年のアルバム『Gently Disturbed』で初めて知ったピアニスト/作曲家のシャイ・マエストロ(Shai Maestro, 1987-)の初のピアノ・ソロ作品が登場している。世界で好評でECMでのリリース(『Human』(ECM2688/2021)は重要なアルバム)などを経て現在はスペインを拠点に活動しており、巨匠キース・ジャレットからも賞賛されるという若きジャズ・ピアニストだが、今、彼は人生における一つの転機を迎えていると言っても良いだろう。それは、ちょうど表に出てのミュージシャンとしての活動が20年経っての40歳を迎える自分自身を見つめる時を迎えたと言うことでもあり、初のソロ・ピアノ・レコーディングという形が適当であったろうと推測するのだ。そしてジャズという音楽ジャンルの中で、"曲の構成と即興性のバランスを探求すること"と、"自分自身の生き方を見つめてみる"と言うことが重要であったのだろうと推測する。
そんな意味で、「Miniatures(小型、縮図)」と「Tales(物語、譚)」に大別される二つを対比しつつ、影響を受けない自己のみのソロ演奏世界で見つめ直そうとしたのではないかと、推測しながら聴いているのだが、マエストロに言わせると「このレコードで、相反するものを提示した。たとえば、即興と作曲、あるいは暗色と明るい色、不協和音と協和音などの対比を試みた。このアルバムは2つのパートに分かれている:「Miniatures」では、小さく短い、しかし完全に即興で行った演奏を収録した。そして「Tales」では、書かれた(作曲された)素材に長く深く身を任せ、シンプルなメロディーやハーモニーを膨らませてどれだけのものを引き出せるかを探求している。」と言う事のようだ。
(Tracklist)
1.3 Colors
2.All The Things You Are*
3.Gloria
4.Aba (For Gil Maestro)
5.Monkey Mind (Chaos Is An Intimate Thing)
6.An Old Family Photo
7.From One Soul To Another
8.Dakini(The Sky Dancer)
9.For All We Know*
10.Mystery And Illusions
(*印 カバー)
このアルバムの収録曲は、2つのパートに分かれている。小品群「Miniatures」(束の間の瞬間を捉えた、短く即興的な即興演奏)と「Tales」(メロディーとハーモニーの可能性を広げる、広大で深く探求された作品)だ。これまで彼のピアノはトリオやカルテットのようなフォーマットの中でしか聴いてこなかつた訳だが、今作では他者の意思とか連携とから離れての、自分の自由な発想の赴くままに演ずることが出来る状況で、そこには彼の意志が見事に表現されている。
オープニングは、複雑なる多くの音が聴き取れる緻密な演奏、ミニマルな展開のM1."3 Colors"。そしてジャズ・スタンダードを彼のセンスでアレンジしたM2."All The Things You Are"。ソロの自由さに音の美しさを訴えている。これらの小品は「Miniatures」だということか。
彼の優しさ溢れる美メロディがたまらないM3."Gloria"は、彼のパートナーに捧げた楽曲、クラシックのピアノ曲を聴くようだ。明るさもあって素晴らしい。これを聴くとマエストロだと感じ取れる。
そしてM4."Aba"は、彼の父親に捧げたもの。美しいテーマがしっとりと。彼のルーツ中東を訪ねて・・・。
M5. "Monkey Mind "混沌とした世界。M6."An Old Family Photo" 回顧の優しさ。
M7."From One Soul To Another"は、アルバム『The Stone Skipper』(2016)の収録曲。印象に残る瞑想的な演奏「Tales」の世界。
M8."The Sky Dancer"心の安定と飛躍。
M9."For All We Know"しっとりと描き、展開の美しさはクラシック音楽にも通じ、ダイナミックさも加味して訴える。
M10."Mystery And Illusions" 安定した美。
ソロ・ピアノ・アルバムは、彼の新たな挑戦のスタートと言う事だろう。ECMという名門レーベルを離れてBELIEVEのでのリリースは「新しい表現の場」を探求し訴える処か。極めてパーソナルな作品とみるが、短い「Miniatures」と深い「Tales」が交錯する構成は、飽きさせずに演ずるところの深さも楽しませてくれる。トリオ編成を好む私にとっても、時にソロの味わいも悪くは無かった。
(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)








最近のコメント