ローレン・ヘンダーソン

2025年9月26日 (金)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「Sonidos」

スタンダードもヘンダーソン節で・・・ラテンとジャズの絡みが聴きどころ

<Jazz>

Lauren Henderson 「Sonidos」
(CD) BRONTOSAURUS RECORDS / IMPORT  / BR2501 / 2025

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Lauren Henderson - vocals
Joel Ross - vibraphone
Sullivan Fortner - piano
Dezron Douglas - double bass
Joe Dyson - drums
Guests:
Luisito Quintero - percussion on #10
Eric Wheeler - bass on #3, 4, 12-14

 私の期待するなんとも魅力的な歌声で歌い上げる人気女性ヴォーカリストのローレン・ヘンダーソンの待望の2025年作品。私が彼女の歌に初めて接したのは2012年アルバム『LAUREN HENDERSON』の"Veinte Aňos"という曲であった。そしてお気に入りになってアルバムを仕入れたのは、2019年アルバム『Alma Oscura』(BSR201901)だった。これに関しては寺島靖国氏が気に入ってアルバム『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』に取り上げているが、それ以来彼女のアルバムはTerashima レコードで取り上げてきたのだが、どんな事情か今回はどうもBRONTOSAURUSレコードで輸入CDだ。

 いずれにしてもアメリカ人(マサチューセッツ出身)だが、ルーツはカリブ海にある彼女らしく、R&Bにラテンやフラメンコ、アフロカリビアンらの音楽要素がしっかりと歌われ楽しませてくれる。そして時には以前からスペイン語も交えてエキゾチックさと、なんとなくセクシーなところもあってヴォーカル・ファンを刺激するのだ。今回もそんな彼女の魅力が盛り込まれてのなんと16曲、サービス満点のアルバムに仕上がっている。

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1.Vida 4:18
2.Bold 3:28
3.Si Nos Dejan 3:37
4.Love Is Here To Stay 4:14
5.Flight 2:50
6.Luna 4:48
7.On The Street Where You Live 4:44
8.Let's Face The Music And Dance 3:37
9.This Time The Dream's On Me 4:02
10.Soledad 3:32
11.Sounds 3:24
12.Ola 2:28
13.Truth 2:12
14.Trouble 2:43
15.La Llegada 2:19
16.Sonidos 3:22

 このアルバムは、過去のアルバムと比較すると諸々の意味に於いて若干刺激度は低いかもしれない。しかしLauren Henderson にとって非常に完成度の高い作品と見なされている。それは彼女の持ち味であるラテン・ジャズ的要素とジャズ・スタンダードを融合させるというアプローチが、なかなかうまくいっていると言って良いのかもしれない。
 しかしラテンの持つ明るさよりは、今回はちょっと全体に若干「哀愁」を帯びた印象という感想も持つことが出来そうだ。もともと彼女のルーツの社会的問題の影があることは、過去のアルバムでも知るところであって、私自身がそんな見方をするためかもしれないが。
 表現力とか訴える力は相変わらず高い。 ぐっと静かな語り口から語るような演出、抑制と情感のコントロールは相変わらずの評価点。  演奏陣との関係においては、Sullivan Fortner(p,↓左)や Joel Ross(Vib↓左から2番目)、Dezron Douglas(b,↓左から3番目)、Joe Dyson(d, ↓右) をはじめとするミュージシャンの彼女の目指すところの理解度は相変わらず高く、曲の表現に彼らの果たす役割も大きい結果をもたらしている。

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 M1."Vida" このアルバムを紹介するようなラテン・ナンバーが心地よく響く
 M2."Bold" 彼女の生涯のテーマでもある逆境に対しての困難な状況やストレスに直面し、そこから立ち直り、回復しようとする心を歌っているらしい。
 M4."Love Is Here To Stay" いつもは彼女の一人ハーモニーが美しいが、ここではアカペラに近いヴォーカルと、バックの静かにして品のある演奏が光る。
 M5."Flight" ビブラフォン始めクインテット編成が生きていてスウィング感も。
 M6."Luna" 静かな美しいバラードが素晴らしい。このアルバムの一つの頂点。 ラテンとジャズの因子が繊細絡んで響き感動的。
 M8."Let’s Face the Music and Dance" ここに聴き慣れたジャズ・スタンダードを自然に溶け込こまして優しく歌う。それにビブラフォン、ピアノ 即興ソロが美しい。
 M9."This Time The Dream's On Me" 得意の彼女自身のバック・ヴォーカルも絡むハーモニーが優しく美しく。
 M10."Soledad" ぐっとラテンタッチが生きた曲。ゲストの Luisito Quintero による打楽器が彩りを加える。
 M11."Sounds" これはアルバム・タイトル曲のM16."Sonidos"の別バージョン、スペイン語歌唱を交えて、浮遊するが如くの歌声。雰囲気・情感たっぷりの世界。やはり彼女のハーモニーの歌声をラテンタッチの落ち着いた世界で締める

 彼女のアルバムはやはり彼女にしか無いヴォーカルが魅力だ。今作はかなり感情を抑えているが、そこがむしろある意味哀感があり響いてくる。ちょっとマニヤックな感がある作品であるが、聴きこむにつれて味が出てくるところはさすがである。

 強いて問題点を挙げるとしたら、短いトラックの曲がちょっと多すぎたかなぁと、一曲をじっくり聴きたかった。又、今回はインパクトという面ではちょっと弱かったのではないかとも言える。しかし逆にそのスタイルに敢えて今回は挑戦したのかもと想像したりもする。つまり万人受けよりは、繊細な深みのある表現性を重視しての音楽作品としての価値を狙ったアルバムと考えられ、やっぱり彼女のヴォーカル・アルバムは一筋縄では語れないと言っても良いところにある。 それぞれの曲の本質と歌う内容をもう少し研究すると、意外に彼女らしい世界が見えてくるのかもと・・・ふと思ったりしている。
 

(評価)
□ 曲・編曲・歌   90/100
□ 録音       88/100
(試聴)



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2024年6月 8日 (土)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「Sombras」

ダークな中に力強さと美しさとが・・・深く聴き、評価する必要があるアルバム

<Jazz>

Lauren Henderson 「Sombras」
Brontosaurus Records / Import / BR2401 /2024

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Lauren Henderson - vocals
Joel Ross - vibraphone
Sean Mason - piano
Jonathan Michel - bass
Joe Dyson - drums

  ニューヨークやマイアミで活躍しラテン・ルーツの持ち味での人気ヴォーカリストのローレン・ヘンダーソン。レコーディング・アカデミーから「ラテンアメリカのサウンドをブレンドし、拡大している10人のジャズ・アーティスト」の1人として認められいる。更にこのところ寺島靖国氏にも注目され、日本盤もリリースされた。私も2019年のアルバム『Alma Oscural』(BSR201901)以来、注目している。一方ニューヨーク・タイムズ紙には「慰めのささやきと説得力のある宣言の中間」と評価を得ている。そして今年、旧作でも共演のジョエル・ロス(vib 下左)、ショーン・メイスン(p 下左から2番目)、ジョー・ダイソン(ds 下左から3番目)、ジョナサン・マイケル(b 下右)らコンセプトに理解あるメンバーと録音し、ここにニュー・アルバム登場。

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 アルバムタイトルの「Sombras」はスペイン語で、英語で「Shadows」と訳される。このタイトルは、自分の祖先が自分の「影」であるという考えを描いている。ヘンダーソンは自作曲を重んじているのは、現在のアイデンティティと芸術性を模索している作品として音楽アルバムを造るところに意味を持っているからである。。 パナマ、モントセラト、カリブ海にルーツを持ちながら、北米で育った彼女は、多様な現代社会の文化の中で自らの回答を求めている。ヘンダーソンはオリジナル作品を通して自身の歴史を紐解き、アメリカにおけるアフリカン・ディアスポラ(子孫の集合体)の背景を反映した意味のある作品作り上げている。それはかってここで取り上げられたアルバム『La Bruja』にも通じている。

 

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1. Fuego
2. Seasons
3. Venas
4. Sombras
5. Illumination
6. Tormento
7. Walking
8. Dignidad
9. Shadows

 

 ヘンダーソンは、独特のハスキー・ヴォイスで潤い豊かな歌唱を今回も魅惑的に聴かせてくれ、一方内省的であり情熱的であるという複雑な構図を描いている。歌詞は当然オリジナルで、英語とスペイン語の2つの言語を使い分け、私には理解はなかなか大変だが、アフリカン・ディアスポラが家系図を通じてヘンダーソンに与えた影響の質や、より広いクリエイティブな世界を象徴的に表しているようだ。曲は静かでありダークなところが聴く者を引き付ける。このアルバムも「影」が何であるかは、聴く者も理解すべきところだ。  

 音楽的には、名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者のジョエル・ロスが全面参加して、都会的色合いの味わい深いところを加味させて聴かせ、ジョナサン・マイケルの力強いベース、ショーン・メイスンの多芸のピアノ、ジョー・ダイソンの活発なドラムスも魅力的。

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M1. "Fuego"スペイン語で「火」を意味する。スタート曲として力強さに驚くが、イデオロギー的な火を灯し、リスナーに直接訴える。「自分たちが培ってきた美しい炎を忘れず、それを当たり前だと思わず、消し去らないように」と、そして「燃えるような情熱と、人間として向上し、発展するために私たちを鼓舞するものを受け入れる」と。続くM2. "Seasons"で静かに見つめなおす。ヴィブラフォンが心に響き深い心情を描く。
 M4. "Sombras"(影) 「光に向かっているとき、私たちは足場を失うかも、しかしここまでの旅から得た力がある」と。「私たちは逆境に直面しているが、進歩を受け入れることで浮上するチャンスがある」ここでこのアルバムの"信念"をリスナーに訴える。これはアルバム全体のモチーフ。曲はピアノの印象的なフレーズをバツクに展開。
 そしてM5. "Illumination"は、M1.の「火の光」をつなぐ曲で、そしてM6. "Tormento"(苦しめる)が登場、ここでは彼女の心情が歌い上げられ、このアルバムの一つの頂点となる曲。そしてM8."Dignidad"を経て、最後は「Sombras」を英語でM9. "Shadows"(影)としてまとめ上げる。全曲一貫したコンセプトで作り上げられている。歌詞が十分理解してみる必要があろうと、私は目下道半ばである。

 とにもかくにも、ヘンダーソンを理解している彼女のディスコグラフィー全体を手がけたFlux Studiosのダニエル・サニントがエンジニアを務め、演奏陣は基本的に彼女の世界に共感し通じているメンバーで、心情的に理解のある協力関係により、セッションはスムーズに、そしてむしろ盛り上がってクリエイティブに進行できたようだ。そのため単なるヴォーカル・アルバムというのでなく、演奏面にもラテン色の上に洗練された都会的センスを盛り込んでいて注目される。彼女自身はこのアンサンブルの各メンバーの個人的な影響と関わりに感謝の気持ちを込めて認めている。彼女の言葉は「私が尊敬し、大切にしているアーティストとコラボレーションし、彼らに輝くためのスペースを与えることが不可欠です・・・いつもバンドの優しさと忍耐力に魅了されています。それは私たちの創造であり、プロセスはオープンで協力的です」と。
 今回のアルバムは、過去の彼女のアルバムの流れの中でも最もコンセプチュアリスティックな作品として受け入れ、アフリカン・ディアスポラの根源に迫るものとしてとらえて聴いたところである。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  90/100
□ 録音      88/100

(試聴)

"Sombras"

"Illumination" 

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2023年4月 3日 (月)

寺島靖国プレゼンツ 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.6」

ジャズ・ヴォーカルは女性の独壇場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.6」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1110 / 2023

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 寺島靖国氏監修のジャズ・ヴォーカルのコンピレーション・アルバムだが、6巻目となってリリースされた。このジャズ・ヴォーカルの世界は、もう何年も女性の天下となって近年も相変わらずだが、やはり今年も全14曲全て女性ヴォーカルという結果だった。
 寺島氏のライナーでは、このジャズ・ヴォーカル集は、彼の注目した世界各国のレコード会社は関係なくしかもあまり耳にしたことのないヴォーカリストを近年のものに限って取り上げてという事のようだが、果たしてどんなものになったか注目してみてください。

(Tracklist)

1 The Old Country / Viktoria Tolstoy
2 I'm a Fool to Want You / Sarah Lenka
3 Beautiful Love / Anna Kolchina
4 Spring Will Be a Little Late This Year / Diana Panton
5 Histoire D'un Amour / Carin Lundin
6 What Is This Thing Called Love / Lisa Roti
7 Poor Butterfly / Peg Carrothers
8 Close Your Eyes / Ksenia Parkhatskaya
9 Alone Together / Johanna Linnea Jakobsson
10 Wild Is The Wind / Liane Carroll
11 Chez Laurette / Laura Anglade & Sam Kirmayer
12 Lili Marleen / Isabel Santol & Julian Joseph
13 Perfidia / Lauren Henderson
14 Wild Is The Wind / Lauren Henderson

 こんなところだが、結論的に私が聴いていたアルバムは丁度半分の7枚で、過去にこのブログで取り上げたのは3枚でした。しかしコロナ禍の為かその点は不明だが、このところ女性ヴォーカルものもちょっと下火であった印象だった。近年のものをと寺島氏は言っているが、意外に古いものも多いという印象だ。
 ジャズ・アルバムとしては、私も女性ヴォーカルものは結構聴く方だと思うが、このところの私の注目株というか、聴いてきたものは、もう誰もが知っているDiana Panton(下左), ちょっと本格派Viktolia Tolstoy, そしてAnna Kolchina(下左から2番目), Sarah Lenka。注目株としてLauren Henderson(下左から3番目)と最近のJohanna Linnea Jakobssonというところであり、ここでも紹介してきた。その他は殆ど聴いてこなかったわけで、確かに日本でそれほど聴かれていないヴォーカリストもさすが寺島靖国氏取り上げている。

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 とにかくヴォーカルものというのは、歌がうまくても声の質が気に入るかどうかなどと実力ばかりでないところと、好みの問題があってなかなか難しい。又このところ少々歴代の人気ヴォーカリストのアルバムが少なかったような気がする。コロナ・パンデミックで活動低下という事であったかどうか、そんな中でのコンピレーション・アルバムであった。

 私としてはM1."The Old Country "のViktolia Tolstoyは、人気と実力はそれなりだが、どうもあまり乗り気にならないのだが。
 M2."I'm a Fool to Want You"のフランス人のSarah Lenkaは興味があります。かって「Hush」(EMO121/2012)というアルバムをここで取り上げた、もう大分前だ。聴く者を引きつける。(2015.1.06)。
 又M3." Beautiful Love "のロシアのAnna Kolchinaはなかなか魅力的。彼女に関しては2018年に「Wild Is The Wind」(VHD01228/2017)を取り上げて高評価をした。
 M4."Spring Will Be a Little Late This Year "のカナダのDiana Pantonは、今や人気者というところだ、このアルバム「Blue」(MZCF1453/2022 下左)も最近ここで取り上げたが好評価の盤。
 M6."What Is This Thing Called Love "のLisa Roti (上右)は、彼女も聴いてこなかった歌手だが、曲を歌い込んでなかなかいいです。取り敢えず注目。
 

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 M5."Histoire D'un Amour"  Carin Lundinこれは知らなかったがなかなか魅力あり。
 M7."Poor Butterfly"のPeg Carrothersは素人っぽいところが良いと言えばいい。異色で興味が分かれそう。
 M8."Close Your Eyes " Ksenia Parkhatskayaは少々興味をもった
 M9."Alone Together " Johanna Linnea Jakobssonは、昨年ここでもアルバム「Alone Together」(DUATO112/2022 上中央)取り上げた新進気鋭アルト・サックス奏者・歌手で今後に期待。
 M10."Wild Is The Wind " Liane Carroll貫禄の魅力・・・聴いてこなかったのが不思議だ。
 M11."Chez Laurette"  フランスのLaura Anglade  知らなかった。少々興味持った。
 M12." Lili Marleen " Isabel Santol  なかなか旨いがどんな曲をこなしてきたか。
 M13."Perfidia",M14."Wild is the Wind" この Lauren Hendersonは、私の以前からの注目株で既に2回ここで取り上げてきた。なかなか不思議な魅力のある世界でこの「La Bruja」(CDB5609106462/2022 上右)は近作のアルバム。

 というところで、今回の「Vol.6」では私の一番のお勧めはLauren Hendersonですね。聴いてなかったLisa Roti、Laura Angladeは少々アプローチしてみたいと思った。いずれにしても女性ヴォーカルで占められた今回の「Vol.6」であり、男性陣はどうなっているのか、奮戦を期待したいところだ。

(評価)
□ 選曲  87/100
□ 音質  87/100

(試聴)
Lauren Henderson

*

Diana Panton

 

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2023年2月 1日 (水)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「La Bruja」

ラテン・ジャズの官能的な世界と心に響く郷愁と叙情性は見事

<Latin Jazz>

Lauren Henderson 「La Bruja」
Brontosaurus Records / Import / CDB5609106462 / 2022

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Musicians
Lauren Henderson: vocals
Joel Ross: vibraphone [featured – 3, 4, 8]
Nick Tannura: guitar [featured – 1, 2, 5-7, 10]
Gabe Schneider: guitar [featured 9, 11]
Sean Mason: piano [featured – 3, 4, 8]
John Chin: piano [featured – 1, 5, 7, 9, 11]
Eric Wheeler: bass [featured – 1, 3-5, 7-9, 11]
Joe Dyson: drums [featured 1, 3-5, 7-9, 11]

  ローレン・ヘンダーソン(1986年生まれ)をここで取り上げたのは、2019年のアルバム「Alma Oscura」だった。ラテン・タッチのジャズ・ヴォーカルに魅力があり注目しいる。これは昨年リリースの自己のレーベルからは4枚目のアルバム(彼女名義のアルバムとしては9枚目)。
 このアルバムを理解するには、彼女の経歴に焦点を当てる必要がある。彼女は米国マサチューセッツ州出身のジャズ歌手だが、ウィートン大学にて音楽とヒスパニック研究を学び、後にブラウン大学とスペインのIEビジネススクールで経営学修士号を取得している。更にメキシコとスペインに留学し、伝統音楽とフラメンコの歌とダンスを学んだとか、その後のニューヨークでのジャズを身に着ける中で、それが彼女の音楽世界で生きているようだ。語学は英語とスペイン語を話す。

 このアルバムは彼女のオリジナル4曲とともにラテンアメリカとカリブ海の世界に入り込んでいる。
 一般には、このようなラテン系ミュージックは夏向きの明るいものとして捉えらいるが、この冬期真っ盛りに、来る春から夏に向けて気持ちを高めてゆくにはなかなか味なものとして、ここに取り上げたのだが・・・どうも、そう単純なものでもなさそうだ。

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1: Perfidia
2: Veinte Años [2022]
3: La Bruja;
4: Fría;
5: Así;
6: Febrero Hums [Veinte Años]
7: La Sitiera;
8: Amistad;
9: Deseo;
10: Veinte Años II [2022]
11: Silencio

 

 このアルバム・タイトル「La Bruja」は「魔女」を意味しているらしい。「呪術との関係」、「超自然的力に対する被害」、「悪魔と契約を結んで得た力をもって災いをなす存在」などで登場する女性の悲劇的世界、古典的な否定的な世界の神秘的なところにヘンダーソンは伝統音楽を通じての歴史的観点から「魔女」を歴史的遺産として現代に結び付けているのか、このアルバムもどうも現代ラテンものとして単純には迫れられないところにアプローチいるようだ。
 そんなことでは思い出すのは、メキシコにはソノラ市場(魔女市場)というのが伝統的にあって、古くからの土着の文化やスペイン侵略によるキリスト文化などが入り乱れての非科学的習慣などからの奇怪なる品を扱う市場があるようだが、こうしたものにも表れているような歴史的産物に彼女がこのアルバムで匂わせている過去の負の遺産として対峙しているのかもしれない。

  聴く我々にとっては、ラテン・ミュージックの官能的なムードをしっかり描きつつ、古典的なボレロと彼女のソフトな心地よく聴きやすい歌が聴ける。しかしオリジナル曲M3."La Bruja"で代表される曲などで、魔女裁判などの女性への哀しい歴史を取り上げ、ラテンアメリカとカリブ海のルーツへの探求を続けているのかと推測された。
 M1."Perfidia"は、メキシコの我々も知っている国際的なヒットのボレロである、亡くなった恋人に対する典型的な自己の哀れみの心のやや暗い叙情的な詩の唄のようだが、ラテンジャズにみる活力あるリズムに乗った演奏で暗くないが、人情に響くところがある。同様にM4."Fria"は、恋人との関係を描くメロディックな歌であるが、思いのほか穏やかであり、ビブラフォンが美しい。

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 M.2" Veinte Años "は注目曲だ。キューバのソングライター、マリア・テレーサ・ベラの曲で、ニック・タンヌラ(→)のギターとのデュオ、しっとりとした世界は最高だ。そしてこれはM6." Febrero Hums [Veinte Años]"に流れるが、ギターの心に響く調べと言葉のない(鼻歌とスキャット)デュエットとして再び展開する。それはこのアルバムの一つの深く心に響く世界であり、更にM10."Veinte Años II [2022]"に続くものであり、同様で究極の単なる陽気なラテンものでない真髄に導く。 

 M8."Amistad"は、奴隷にされたアフリカ人の反乱で知られるキューバのスペイン植民地時代の船の名だが、彼女の敬虔な気持ちでのアフリカンディアスポラ(本国からの離散人)の民族歴史への想いがみれるところで、黒人に対しての迫害のの哀しさにも歌いこんでいるのだ。

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 このアルバムでのヘンダーソンの唄は相変わらず充実感と味わいある美しさは見事であるが、更に曲によってはおそらく彼女自身のマルチトラックによると思われるハモリの歌声が美しく、なかなか手の込んだアルバム造りをしている。しかし歌いこんでいるところは歴史的なところに向かって、彼女の意識の世界を訴えながらも、何かを我々に知らしめようとしているように感ずる。スペイン語で中身の理解は大変だが、彼女の奥深いソフトなヴォーカルが妙に心に響いてくる。この力みのなさがむしろ意味深である。 しかし演奏陣はなかなか味な展開をして、ギターの味付けもよく、ピアノ・トリオのピアノ(John Chin 上左)に加えてビブラフォン(Joel Ross 上右)が健闘している。私にとっては貴重なアルバムになりそう。

(評価)

□ 曲・演奏・歌  88/100
□ 録音      88/100

(試聴)

 

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2020年12月12日 (土)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「Alma Oscura」

叙情派ラテン・ヴォーカルにセクシーアッピール度も増して

<Jazz>

Lauren Henderson 「Alma Oscura」
BRONTOSAURUS RECORDS / IMPORT / BSR201901 /2019

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Personnel:
Vocals - Lauren Henderson
Bass - Michael Thurber
Piano - Sullivan Fortner (4, 7, 8) & Damian Sim
Drums - Allan Mednard & Joe Saylor (4, 7)
Percussion - Moses Patrou
Violin Soloist - Tessa Lark
Violins - Lavinia Pavlish and Brendan Speltz
Harp - Charles Overton
Guitar - Gabe Schneider
Clarinet - Mark Dover
Flute - Emi Ferguson
Trumpet - Jon Lampley
Viola - Rose Hashimoto
Cello - Tara Hanish
Guest Vocals - Leo Sidran

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 ローレン・ヘンダーソンの実力評価については既に知られているところだが、今回私は初めて彼女のアルバムに手を付けてみた。これも寺島靖国の誘導ですね。もう8年前の『Jazz Bar 2012』、そして今年の『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』です。
 ラテン・タッチのヴォーカルが特徴あるが、マサチューセッツ州生まれだ。ただしもともとメキシコ、スペインに住んでいたことがあるようでスペイン語OKで、又フラメンコもこなしているという。
 収録曲は8曲で少なめのアルバム。プロデューサーはベーシストのMichael Thurberで4曲提供している。又彼女自身のオリジナル曲も4曲登場。うち両者の共作が1曲。

(Tracklist)
1. From The Inside Out (Leo Sidran)
2. Something Bigger (Michael Thurber)
3. Alma Oscura (Lauren Henderson & Michael Thurber)
4. El Arbol (Lauren Henderson)
5. Ven Muerte (Michael Thurber)
6. Where Are You Now? (Michael Thurber)
7. Protocol (Lauren Henderson)
8. Dream (Lauren Henderson)

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 M1."From The Inside Out" このアルバムの技術陣のMix担当のLeo Sidranの曲を、物憂げなラテンタッチで描き、なんと中盤から彼とのデュエットで仕上げた曲。意識的にセクシーにしたというのでなく、彼女の歌うところなんとなく不思議な女性としての魅力が漂う。
  M3."Alma Oscura" はアルバム・タイトル曲、プデューサーと彼女の共作曲で、このアルバムでの私の一押しの曲。しっとりとスペイン語で歌い込んで、これもなんとなくどこかセクシーなのだ。
 M5."Ven Muerte"も囁き調のヴォーカルで、雰囲気が女性ならではの味を出してうまい。
 M6."Where Are You Now?"、柔らかくソフト・タッチ・ヴォーカル、美しく歌うのだが、どこかこの作曲者のベーシストのMicheal Thurberの曲とはマッチングが良い感じで、彼女の女性的魅力を引き出している。
 M3.は、フルート、M5.はクラリネット、M6.はハープが入って曲作りも上手いし、M7."Protocol"はタンゴ調で、アルバムの曲の配列にメリハリを付けている。

 とにかく、オリジナル曲で作り上げていて、女性ヴォーカルとしてはなかなか引きつけるものがあるのが特徴。ラテン・タッチといっても、やや妖艶なムードをしっかり演ずるところは心憎いところがあるアルバムだ。今後も注目すべきヴォーカリストとしておきたい。

(参考)
Profile_vrt_raw_bw <Lauren Henderson : Discpgraphy>
Lauren Henderson (2011)
A La Madrugada (2015)
Armame (2018)
Alma Oscura (2019)
The Songbook Session (2020)

 

(評価)
□ 曲・演奏・歌   88/100
□ 録音       85/100

(参考視聴)

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