アメリカン・ジャズ

2025年11月28日 (金)

アーロン・パークス AARON PARKS 「By All Means」

アコースティック・ジャズ指向に回帰してのジャズの美しさと楽しさと感謝と

<Jazz>

AARON PARKS  「By All Means」
BLUE NOTE Records / Import / 7837202 / 2025

Zemi0007045800

アーロン・パークスAaron Parks (piano)
ベン・ソロモン Ben Solomon (tenor saxophone)
ベン・ストリートBen Street (bass)
ビリー・ハートBilly Hart (drums)

Aaronparks_220003_sq_byisaacnamias   アーロン・パークスAaron Parks(1983-, 米 →)のブルーノート3枚目となるアルバムがリリースされた。彼は、ここでも何回か取り上げてきた私の注目するピアニスト。編成は、2017年にリリースした『Find the Way』(ECM、2017年)で共演していたが、今回そのトリオと再びプレイしたいというアーロンの願いのプロジェクトのベン・ストリートBen Street (b, 1965-, 米 下左)、ビリー・ハートBilly Hart(ds, 1940-, 米 下中央)とのトリオ編成に加え、新進気鋭ベン・ソロモンBen Solomon (ts, 米 下右)を迎えた新たなカルテットによるものだ。

 そしてベン・ストリートとの共同プロデュースの形をとっていて、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴをきっかけに急速に実現したとのこと。もともとこのピアノ・トリオの美しさと収録曲はパークスの作曲されたモノだけに、美しさが期待される。ソロモンのtsは、パークスの言葉によると「"ここに管楽器を入れてみたいな”と思ったのは、私はコンピング(伴奏)が大好きだし、単に自分がバンドをリードしていくだけではなく、ピアノのサウンドがバンドの一部になっているように響くのも好きなんだ。」と言う事らしい。さてどんな役割を果たすかが注目される。

7ce4a57dbac20447b99c745wFac_hartbillyw_20251128195401_k8c6967editarw

  本作について、アーロン・パークスは「この作品が過去のアルバムと全く異なるものだとは思っていない。これはジャズの伝統、ブラック・アメリカン・ミュージックの伝統を愛するレコードで、それはノスタルジアや保護ではなく、その系譜や連続性の中で生きるということを意図しているんだ。アルバム・タイトルもそれを意味していて、それは大きな肯定であり、『パーティに参加しよう』という意思表示なんだよ。そして何よりも一緒に演奏すること、曲の中で互いに即興で演奏することの喜びがテーマとなっていて、ただ音楽を愛することについて表現しているんだ」と語っていると。

 これは、音楽の方向性として 直近作の『Little Big Ⅲ』などで見せたエレクトリック/融合志向からは一転して、今作は伝統的なアコースティック・ジャズ/ポスト・バップ志向ということで、パークス自身によれば、「ジャズ/ブラック・アメリカン・ミュージックの伝統の中で生きる」という事で、私自身も実はほっとしてこのアルバムに興味を持ったところである。

(Tracklist)

1.A Way
2.Parks Lope
3.For María José
4. Dense Phantasy
5.Anywhere Together
6. Little River
7. Raincoat


000000220002w  このアルバムは、結論的にはアーロン・パークス自身のルーツに回帰して、所謂ジャズの伝統のアメリカン・ミュージックの歴史と遺産に敬意を払いながら、「今」を生きるミュージシャンとして作り上げた静かで美しい作品ということになる。ピアノ・トリオに止まっていないで、今回はtsを加えてのカルテットであったが、これも体勢を評価しての彼の実験でもあったろう。私としては無理にtsを加える必要があったのかと言いたいが、そこにはミュージシャンの技巧や斬新さよりも、今様のスタイルを評価しての“演奏や即興の喜び”を聴く者の期待も優先して、その結果としてのスタイルだったと推測する。そして生まれたものは、音には柔らかさと暖かさと、未来希望思考が描かれている。

 M1."A Way" 自分を見つめるこのアルパムは、ちょっと内省的な傾向を持つが、このルバートを加味したバラードで幕を開ける。ハートの巧みなブラッシさばき、ストリートのベースは情景を描き、パークスの美的なピアノの質感がなんとなく親密な世界を築いている。そこに問題のソロモンのサックスだが、思いの外音色がトリオの思索的な流れに優しく乗って感情の表現に貢献している。
 
 M3."For María José"(妻へ)、M4."Dence Phantasy"M6."Little River"(息子へ、子守歌として作られたとか)といったバラード曲のトラックは、ピアノの優しさ溢るる音とメロディーでParks の家族への感情を感謝の気持ちも込めて演じられ、温かさと優しさ、抒情性が強く感じられこのアルバムの良さを感じられるところ。

 一方、パークスが若き十代に作曲したM5."Anywhere Together"は、リズムセクションのエネルギッシュな活気性とそのスウィング感あふれる活力は、このアルバムでも両極の一方を担って楽しくしている。巧みなシンバルアクセントとダイナミミックなハートのドラムは、このアルバムの中でも印象的。
 ラスト曲M7."Raincoat"は、ちょっとリラックスして、ラテンっぽいリズムをストリートとハートが抑えた演奏で進行し、どことなく平和感のあるピアノとサックスで落ち着いた曲。

 音楽的には、ややスローなテンポで流れるバラード調。サックスが吹きまくるというので無く、落ち着いたサックスとピアノの対話的演奏などが主力で、“優しさ”と“感情の深み”をたたえるジャズだ。夜や深い思索の時間に“静けさと余韻”、"抒情"を楽しみたい時などにしっくりくるアルバムだと思う。 

(評価)
□ 曲、演奏 : 88/100
□ 録音   : 88/100

(試聴) "Dence Phantasy"

 

| | コメント (4)

2025年11月 1日 (土)

アルマ・ミチッチ、エリック・アレキサンダー ALMA MICIC with E.Alexander「LILAC WINE」

既に完成したヴォーカルで編曲にも力が入って自己の世界に導く

<Jazz>

ALMA MICIC with E.Alexander「LILAC WINE」
【HYBRID CD】 Venus Records / JPN / VHGD-10023 / 2025

71y5k1vjiel_acw

アルマ・ミチッチ Alma Micic (vocals)
エリック・アレキサンダー Eric Alexander (tenor & alto saxophones)
ラレ・ミチッチ Rale Micic (guitar)
ブランダン・マッキューン Brandon McCune (piano)
アレキサンダー・クラフィ Alexander Claffy (bass)
ジェイソン・ティーマン Jason Tiemann (drums)

Recorded at Van Gelder Studio in New Jersey on April 19, 2025.
Engineered by Maureen Sickler
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Venus Hyper Magnum Sound Direct Mix

572001193_1023615w  アルマ・ミチッチの"ヘレン・メリル&クリフォード・ブラウンに捧ぐ!"と言うことでのヴォーカル・アルバムがVenus Recordから登場。彼女はセルビア出身でここ数年NYで活躍中で、昨年ここで取り上げたアルバム『You're My Thrill』(VHGD-10013,2024)で話題になった。知らなかったが、なんとヘレン・メリルってクロアチア出身なんですね、ということは元々は同じ国同士(旧ユーゴ)という関係だったという事だ。そんなことからおそらくミチッチにとっては、メリルは憧れのジャズ・ヴォーカリストという事なんだと思う。

 彼女に関しては、前記事(2024年11月10日)を見て欲しいが、今回はエリック・アレキサンダーとの共演が更に色濃くなってのTSとのクインテットとの共演( ジャズ界で有名なVan Gelder Studioにて録音)ということが話題という処か。その点は私はちょっと腰が引けるところだが、収録曲はヘレンも得意であったバラード系の曲が中心になっていて、その点は救いである。

(Tracklist)

1.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ You’d Be So Nice to Come Home To (Cole Porter) 5:11
2.ライラック・ワイン Lilac Wine (James Shelton) 4:35
3.オール・オブ・ミー All of Me (Marks/Simons) 4:34
4.カムズ・ラブ Comes Love (Stept/Brown/Tobias) 4:21
5.アイ・ハブント・ガット・エニシング・ベター・トゥー・ドゥ I Haven’t Got Anything Better To Do (Vance/Pockriss) 6:47
6.野生の息吹 Wild is the wind (Tiomkin/Washington) 5:25
7.ラバー・マン Lover man (Jimmy Davis) 4:18
8.夜も昼も Night and Day (Cole Porter) 4:06
9.ス・ワンダフル ’S Wonderful (George Gershwin / Ira Gershwin) 2:46
10.マスカレード・イズ・オーバー Masquerade is Over ( Wrubel / Magdison ) 4:27

  メリルの十八番であるCole Porterの有名曲M1."You’d Be So Nice to Come Home To"からスタート。この曲彼女の伴侶であるラレ・ミチッチのギターから始まって、時代の違いがそのまま現れ、そして歌はスキャットを使ったメリルとは異なった世界の曲を構築している。そしてエリック・アレキサンダーのサックスはおもむろに後半に登場して更にジャズ色を深め最後にアルマ・ミチッチの歌い上げるところで終わる。

 M2."Lilac Wine"は、アルバム・タイトル曲で、私の注目曲。多くが歌う曲だが、私はエリザベス女王のお気に入りのジョージア出身のKatie Meluaやアイルランド出身のImelda Mayなどのどちらかというとポピュラー系、ロック系の歌手の歌が印象深い。失恋曲であるだけに、しっとりと歌い上げるところが注目。彼女もギター・ムードとサックスの支えでなかなか旨く哀感たっぷりに仕上げている。

571197814_102361524790w  M3."All of Me "のジャジーなリズムカル展開は解るが、やはりM1.M2.では、おとなしかったTSがかなり前面に出てきて、ヴォーカル・アルバムといえども、演奏陣も対等に曲を演ずるのは悪いことでは無いが、ちょっとうるさい感じだ。
 M4."Comes Love "は、ギター、ベース、ドラムスがリズムをユニゾンで刻む楽しさでジャジーにヴォーカルと競う。
 M6."Wild is the wind" 静かなギターの導入で、しっとりと歌い上げて聴き入ってしまう。ピアノの響きも情感たっぷり。そして次第に情熱的な歌に変化、私はこのアルバムでは一押しだ。TSがあまり力まないのが良かったのかも。
 M9."’S Wonderful "フェイクを効かせて、かなり変化した曲仕上げ、そしてアップテンポでジャズの楽しみと言えばそうとも言えるが。
 M10."Masquerade is Over "前曲とガラッと変わってピアノのみの伴奏で静かに説得力ある歌。このあたりが私は楽しめる。

 まあ、ジャズに何を求めるかであるが、彼女ぐらいになるとしっとり歌い込む実力があって、澄んだ声と声量とでなんでもこなしそうだ。アップテンポの曲もあるが、それを生かしたバラード曲の対比が効果があり、その点が私にとっては良かった思うところだ。もともとTSはうるさいと感ずることが多い私であるので、今回もエリック・アレキサンダーとの共演自体、私は疑問であったのだが、まあ彼女にとっては恩人だからそれはそれとして聴いておこうと思うところ。そのあたりは好みとしてそれぞれが楽しめば良いことである。

(評価)
□ 編曲・歌・演奏 : 88/100
□ 録音        : 87/100
(試聴)

 

| | コメント (2)

2025年9月20日 (土)

アベル・ロガンティーニ Rogantini - Dutil - Boco 「 Bill Evans Memories」

エヴァンス流にこだわらずに、自己のModal Jazzを演じきって成功している

<Jazz>

Rogantini - Dutil - Boco 「Bill Evans Memories」(En Vivo)
RGS Music / Import / RGS20972 / 2025

61s3k2amgrl_ac_sl900w

Abel Rogantini (piano)
Ezequiel Dutil (double bass except 04, 12)
German Boco (drums except 04, 07, 10, 12)

Recorded Live at Thelonious Club on September 27 2024

Rogantiniaw   もうヴェテランとも言えるアルゼンチンの実力派ピアニスト:アベル・ロガンティーニAbel Rogantini(1969年アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ, →)を中心とする連名ピアノ・トリオ(Ezequiel Dutil (b, ↓左)とGerman Boco (d,↓右)による )の、ビル・エヴァンスへのトリビュート演奏作品。ブエノスアイレスのジャズクラブThelonious Clubでのライヴもので9曲が選ばれ収録されている(+bonus Track 3曲)。  

 実は私はこのピアニストに関しては、過去に特にマークしてこなかったのだが、今回のアルバムを聴いてライブの為もあるか、なかなか素晴らしいModal Jazzを演じていてここに取り上げる次第だ。もともとアレンジャーとしての活動や、編成とかオーケストラとの経験も豊富であり、アルゼンチンというお国柄も加味されてのことか、インプロにも優れて実に味のあるジャズを展開していて聴き応え十分である。
 そしてトリオとしてのピアニストのロガンテイーニとDutil(B)とBoco(D)の二人は、ジャズ・フィーリングが一致しているのか、なかなか見事なバランスのとれた演奏を展開しているのが素晴らしい。

A548636514838967579327Germanbocow

(Tracklist)

01. Waltz For Debby (Evans - Lees)
02. Israel (J. Carisi)
03. The Peacocks (J. Rowles)
04. Noelle's Theme (M. Legrand) (solo piano)
05. A House Is Not A Home (Bacharach - David)
06 I Love You (C. Porter)
07. Minha All Mine (F. Hime) (p & b duo)
08. On Green Dolphin Street (Kaper -Washington)
09. Beautiful Love (V. Young)
【bonus tracks】
10. Minha All Mine (alternative take) (F. Hime) (p & b duo)
11. Beautiful Love (alternative take) (V. Young)
12. Noelle's Theme (alternative take) (M. Legrand) (solo piano)

 なかなかモード系のジャズ(modal Jazz)のセンスに溢れたキレのある耽美的ロマンティック・スタイルに叙情性もある。捨てがたい味は軽妙にして粋な味が支配しているところで、躍動感もたっぷりで、百選連覇のアルゼンチン・ピアノ・トリオの気持ちのよい胸のすくエヴァンス・トリビュート・ライヴがたっぷり聴ける。
 私がとりついたきっかけはビル・エヴァンスの名前とピアノ・トリオと言う事であったが、期待以上の特に軽妙さに惚れ込んでここに大推薦するアルバムと言いたい。

  とくに評価のポイントとして、エヴァンス自身とそのトリオのスタイルを思ったほど意識することなく、ごく自然に自己流の解釈と曲の分析を行っての演奏法で、エヴァンスの描くところを生かしつつ、爽やかにして乗りの良い曲に仕上げている。何というか、大げさだが、ジャズの真髄をゆく爽快感が見事である。そして詩情世界が美しく描くところの曲は、ぐっとピアノの響きが心に流れ込んでくる。

539449415_1832152603w

 全体にライブならではの即興や空気感、聴衆とのインタラクションが感じられる演奏が多くこの辺りはもうベテランの世界だ。M01.“Waltz For Debby (En Vivo)” このエヴァンスの代表作をも見事に彼のものにしてリズムとハーモニーのバランスがいい。
 M03.“The Peacocks (En Vivo)”  抒情的で静かな美しさ。ピアノの余韻や音の強弱・遅速が見事に。 
   M04.“Noelle’s Theme (En Vivo)”  感情の起伏があり、ライブ感が強い
   M07. "Minha All Mine" 流麗なピアノの美しさは見事で、bonus track(スタジオ録音か、音もリアル)では又異なるメロディーの表現で美の描きが二通り楽しめる。それは同様にV.YoungのM09. "Beautiful Love" でも。ベースの運びが快感。
 M06."I Love You"そして M08. "On Green Dolphin Street"では、ドラムスの力強さが聴きとれ、ジャジーな展開の楽しさが聴ける。

 究極、エヴァンス風と云う世界よりも、トリオの目指すモード系抒情派ハード・バップ・ピアノの正統らしいダイナミックにしてメロディックなプレイを演じている。そしてなんと言ってもシャープでキレのある軽妙さが良く、そこに美的感情が交錯した魅力がたっぷりだ。自己流を通したことが、むしろ成功している要因かも。
 その上、重厚さと優しさを使い分けるベースや、鋭くきびきびとし、時にパワー・アップするドラムの活躍も、ライブを重ねた結果でもあるのか、各々ピッタリとツボにハマッた世界を演じて居る。
 彼の強みは、ブルース、バップ、モードの伝統的ジャズ・フィーリングを身につけつつ、 アルゼンチンという伝統音楽的リズム(タンゴTango, フォルクローレFolklore, カンドンベCandombeなど)と南米の伝統音楽的要素をも持つということなのかもしれない。
 私は、派手さは無いが、ジャズというものを心得ている名演と言いたい。今年の傑作アルバムにする。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   90/100 
□ 録音         85/100

(試聴)

 

| | コメント (0)

2025年8月31日 (日)

リンダ・メイ・ハン・オー Linda May Han Oh 「Strange Heavens」

コードレス・トリオでスリリングな演奏を展開

<Contemporary Jazz>

Linda May Han Oh 「Strange Heavens」
BiophiliaRecords / Digital Album (Flac)

Kbsm1h25cw2nb_600


Linda May Han Oh – electric & acoustic bass, voice
Ambrose Akinmusire – trumpet
Tyshawn Sorey – drums

  またしても問題作の出現。CDリリースが無いのか、ストリーミングで聴いているアルバム。これはマレーシア出身でオーストラリア育ちのベーシスト/作曲家リンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh,1984-)の前作2023年『The Glass Hours』以来のいよいよ円熟期に入っていこうとしている40歳に入っての2025年新譜だ。昨年にはVijay Lyerの『Compassion』(UCCE-1204/2024)での活動に着目したが、相変わらずのスリリングな演奏で、このアルバムでも迫ってくる。
 この作品は、彼女のデビー作『Entry』(2009)と同様での原点回帰か、所謂コードレス・トリオ(ピアノやギターといった和音楽器を欠いた編成)での演奏で、ジャズ演奏のちょっと異端にして神髄に迫るとも言えるグルーヴ感もたっぷりの世界だ。彼女のベースに加えての共演者は、以前からも共演しているトランペッターのアンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire, 1982-)(↓右)とドラマーのタイショーン・ソーリー(Tyshawn Sorey)(↓左)という現代ジャズ界を突っ走っている彼らを迎えていて、共に非常に親密な演奏を繰り広げていて期待が大きい。

Lindamayhanohrobly1908x1024 Track Listing:
1. Portal
2. Strange Heavens
3. Living Proof
4. Acapella
5. The Sweetest Water
6. Noise Machinery
7. Home
8. Paperbirds
9. Folk Song
10. Work Song
11. Skin
12. Just Waiting

  コードレス・トリオとしての威力が発揮されて、ベース奏者のリンダ・オーにとっては、トリオとしてのドラムスと共に対等な立場に出て、自己の企画された意志を表現しているように思う。それはトランペットのソロ楽器奏者アキンムシーレにとっても自己のメロディーの流れでリードできるところが、主張しやすいと同時に、ベース、ドラムスと対等にリズムを刻むことも出来て互いのインプロの意義が大きくなってスリリングな展開にも至りやすい事を助長する役目を楽しんでいる。特にこのアルバムでは三者が会話型ジャズを楽しんでいるようにも聴ける。
 そして生まれる流れは、かなり奥深く現代社会に問題意識を持って切り込んでゆくスタイルを作り上げ、しかもそれにはジャズというものをコンテンポラリーに構築するグルーヴ感も見事で楽しめる。

Unnamed2w_20250831163901



 まず導入のM1."Portal"では、今日のソーシャルメディアのストレス誘発的な性質に触発されたといわれる曲で、リンダ・オーのベースの自由自在な展開が聴ける。ドラムスは緊張感を生むに十分の演奏で、トランペットが訴えを描きかなりスリリングな展開。
 テーマのM2." Strange Heavens" 悲観的社会と無気力現代人批判らしいが、新たな可能性への希望を確信のベース音。
 M3." Living Proof"は、"生きる証"ということらしいが、移民の苦労の中で生きてきた母親の強さというパワーを描く演奏、反抗と自己主張の表現。
 M5."The Sweetest Water"は三者それぞれの表現の尊重される曲。鋭いベースワークとドラムスの支えに澄んだトランペットがメロディを奏でて迫る。M6."Noise Machinery"の重厚なベース音に堪能。
 M7."Home"-M10."Work Song"は、移民が新しい国で直面する挑戦と適応の物語を語る彼女のオリジナル曲。彼女のこれまでの人生での経験を重低音でリアルに演ずる。
 M12."Just Waiting"(ただ待っているだけ)melba Listonのソウフルなバラード曲でアルバムを閉じる。

 こうしたジャズの世界で、社会問題をテーマに描くという技能は、ヴォーカルの無い曲においては、それなりに卓越したモノが要求されると思う。それをベース奏者である彼女にとっては、"コードレス・トリオの再展開という手法で"と言うところに至ったのかもしれない。ジャズの味を決して失わないというよりは、むしろ逆にそのグルーヴ感を高めたこの世界の構築はお見事であった。今年の問題作の一つだ。

(評価)
□ 作曲・編曲・演奏  90/100
□ 録音        88/100

(試聴)

 *

 

| | コメント (0)

2025年8月26日 (火)

ブラッド・メルドー SOLO CONCERT(Montpellier) & BRAD MEHLDAU TRIO (Gilmore Fes.2025)

<Brad Mehldau のニュー・アルバム>
「RIDE INTO THE SUN」
Warner Music Japan / JPN / WPCR-18764 /2025

81bz7ddwjbl_ac_sl1500_

 コンテンポラリー・ジャズ・ピアノ界で今や泣く子も黙るパワーのあるブラッド・メルドー、ジャズからクラシック、そしてポップスやロックの魅力をクラシックにも通じた感覚の彼の音楽に対して深い解釈で探求しながら、ジャズ・シーンに大きな影響をもたらしつつ活躍中だ。

 そんな現代ジャズ探求の道の中で待望のニュー・アルバムの登場、其れがなんと過去に共演したことのあるインディー・ロックのシンガー・ソングライター、エリオット・スミスの楽曲(10曲)を、メルドーのセンスを生かした独自の解釈で編曲したソングブック的作品『RIDE INTO THE SUN』(↗)(スミスの曲からインスピレーションを受けたというオリジナル4曲も)である。メルドーは「エリオット・スミスは、独特のハーモニーを通してだけではなく、明暗の融合を巧みに表現する稀有な才能の持ち主だった」と語っている。

 今月末に一般にお目見えだが、何個かの曲が既に聴ける。スミスの代表曲"Between The Bars"は、トリオもので美しい演奏で良いのだが、"Tomorrow Tomorrow"、"Southern Belle"は、男性ヴォーカルもの(feat.Daniel Rossen)であり、又"Better Be Quiet Now"は、前半は優しく美しいフォーク調ピアノソロ、このままの方が私は良いのではと思うが、中盤からストリングス・オーケストラなどが入り、ポピュラー・ミュージックなタイプ。"Colorbars"は、マンドリンと男性ヴォーカルもの。・・・・こんな調子で、どうも私の最も期待するところのアコースティックなジャズ・ピアノ・トリオ・アルバムとは言い難い。
 このようにオフィシャル・リリースものでは、彼の探求と実験が続いていているのだ。そんなこともあって、むしろ近年は、世界各地での彼のライブものがプロ収録でどんどん準オフィシャルに出て来るので、ついそちらの方に私は寄っていってしまう。彼の純粋な(ちょっと変な言い方だが)ジャズは、なかなか難解もあるが、やはり魅力はトップ・クラス、そこでこのところはブートものでむしろ満足しているのである。

     - - - - - - - - - - - -  

(以下はブートによる最近のBrad Mehldauのライブもの)

<Contemporary Jazz>
(この7月収録もの)
BRAD MEHLDAU 「SOLO CONCERT IN MONTPELLIER 250709」
STARGAZER'S / CD /FILE NUMBER 00508 / 2025

Img307wImg308w

Brad Mehldau : Piano
Recorded Live at Domain d'O.Montpellier,France.July 09.2025

 今年2025年来日後のユーロ・ツアーでのついこの間の7月9日、フランスでのソロ・コンサートが行われ、その模様がフルに収録されている。リリースがなんと1ケ月後には、と言う早さで良いですねぇ・・・。サウンドボード収録での良質音源でFMオンエアーされたもののマスターからで、音質はブートとしては良質。中身は彼のかなりリラックスしたピアノ・ソロもので、主たるは所謂ジャズ・スタンダードでなくロック、ポップスものを編曲してジャズ仕上げしたモノで、なかなか楽しい。ジャズの一つの道を開拓している彼のソロモノと言うことだが、多彩な鍵盤の音で飽きさせないどころか、不思議に聴き入ってしまう。"Sweet Adejine"のテクニックは見事であり、ビートルズの曲"Baby's In Black","And I Love Her"などなかなか良いし、ニルバーナ"Smells like teen Spirit"、ビリ-・ジョエル"VIENNA"なども聴き処が多い。
 (曲目は下記)
Soundboard Recording (DISC 1) : 1. OPTIMISTIC 2. ST. ANNE'S REEL 3. ALREADY DEAD - SWEET ADELINE 4. TRAILER PARK GHOST - GOLDEN LADY 5. BABY'S IN BLACK - SMELLS LIKE TEEN SPIRIT     (DISC 2) : 1. AND I LOVE HER 2. INCHWORM 3. VIENNA 4. LITHIUM 5. WHEN I FALL IN LOVE

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

<Contemporary Jazz>
(来日メンバーのトリオもの)
BRAD MEHLDAU TRIO 「GILMORE INTERNATIONAL PIANO FESTIVAL 2025」
   STARGAZER'S FILE Number 00509 / 2025

CD(2) : EXCELLENT Soundboard Recording // 80 min
Blu-Ray(1) : PRO-Shot / Full HD (1920x1080) 16:9 / Dolby Digital Stereo / 88 min

Img309wImg310w

Brad Mehldau - piano
Christian McBride - double bass
Marcus Gilmore - drums

Recorded Live at Gilmore International Piano Festival, The Gilmore, Kalamazoo, MI, April 13, 2025

  こちらは、今年の来日前のブラッド・メルドウの期待のトリオでのライヴ音源。2025年(2024年か?)の「ギルモア・インターナショナル・ピアノ・フェスティヴァル」での音源(CD)とプロショット映像(Blu-ray)のカップリング収録されている。一緒にツアーをすることはめったにないグラミー賞受賞ジャズアーティスト3人による特別なコラボレーションであり、日本公演でも大歓迎された。
 このライブは、Cole Porterの"Anything Goes"からスタート、静かな自信のにじむステージ模様と、とにかく演奏に隙が無い、そしてそれぞれのパートからソロ演奏まで緻密な演技に圧倒される。三者のインタープレイにおいても緻密にして流れが見事でありながら、それぞれの個性もちゃんと出しているところはさすがであり素晴らしい。

Dscf1429trwDscf1437trw

 私にとっての目玉はスタンダードのイタリアの"EATATE"だ。お気に入りの曲だけに何度も聴いてしまう。この演奏に於いてもメルドウのパッサージ・ワークがずば抜けていることが解る。そしてビル・エヴァンスの"Young and Foolish"のバラード演奏が良いですね。
   このトリオは、「マクブライドが特徴的な音色とメロディーラインでリードし、メルドーがハーモニーのアイデアを拡張し、ギルモアが複雑で反応の良いリズムを加える」と評価されている。まあメルドーの曲構造の構築がすばらしくマクブライドのメロデックさとギルモアの緻密な反応の良いリズムとで魅了している。最後の"Thank of One"は、三者のバランスが良いですね。
 (参考)
 ☆マクブライドChristian McBride(米、1972-)=インサイド・ストレートやクリスチャン・マクブライド・ビッグ・バンドなどのアンサンブルを率いる。実験的で自由奔放なジャズをも演ずる。ファンク、ソウル、ラテン、ヒップホップ、リズム&ブルースなど。
   ☆ギルモアMarcus Gilmore(米、1986-)=象徴的なドラマー、ロイ・ヘインズの孫。祖父譲りのエッジの効いたサウンドとヴァラエティに富んだトリッキーなプレイで、新世代ドラマーとして共演者から注目を浴びる。チック・コリアと共演。ヴィジェイ・トリオのメンバー。

  又、このライブ映像はYouTubeで公開されていて、すこぶる好評だが、良好音質でのCDで別に聴くのもオツなもの。

(Tracklist) 
(CD / DISC 1) 1. ANYTHING GOES 2. SOLID JACKSON 3. AT A LOSS 4. GRAVY TRAIN
(CD / DISC 2) 1. ESTATE 2. CODEX 3. YOUNG AND FOOLISH 4. THINK OF ONE
(Bru-Ray) 1. Warm-Up 1. ANYTHING GOES 2. SOLID JACKSON 3. AT A LOSS 4. GRAVY TRAIN 5. ESTATE 6. CODEX 7. YOUNG AND FOOLISH 8. THINK OF ONE 

(試聴)

 

| | コメント (2)

2025年8月12日 (火)

ガブリエル・ラッチン Gabriel Latchin Trio 「The Man I Love」

 ストレート・アヘッド・ジャズを踏まえた英国流バップ・ピアノの粋な王道

<Jazz>

Gabriel Latchin Trio 「The Man I Love」
DISCUNION(Alys Jazz) / JPN / AJ1505JP / 2025

20250719_72d726w

Gabriel Latchin (piano)
Jeremy Brown (bass)
Joe Farnsworth (drums)

307873668_599845828366wjpg  前作から2年、英国ロンドン生まれで、そのままロンドンのシーンで活動し、Alys Jazzよりの過去の作品がそれなりに好評であった正統派ピアニストであるガブリエル・ラッチンGabriel Latchin(→)の、トリオ編成では5作目がリリースされた。ここでは2年前に前作『View Point』(2023)を取り上げたが、あれはオリジナル曲集であったが、今作はガーシュウィン曲集ということでスタンダード集で、トリオ・メンバーは前作と変わらずの米国からのジョー・ファンズワース(ds ↓右)と英国出身で米国でも活躍中のジェレミー・ブラウン(bass ↓左)だ。

 そもそもガーシュウィンが生み出した曲というのは、総じてはメロディー自身に魅力があるので、ミュージシャン自身の個性や表現を演じても、曲そのものが聴く者に受け入れやすいという利点がある。それを意識してのことか、かなりオーソドックスでありながらフリー感覚を演ずることにも余裕感があっての演奏スタイルの感じられる演奏集でアルバム造りがされている。

JeremybrownwJoe_farnsworthw

(Tracklist)

01. Summertime (4:25)
02. How Long Has This Been Going On? (5:30)
03. It Ain't Necessarily So (4:32)
04. 'S Wonderful (5:03)
05. Embraceable You (3:42)
06. They All Laughed (4:51)
07. The Man I Love (5:08)
08. Someone To Watch Over Me (6:02)
09. Love Walked In (4:00)
10. I Got Rhythm (3:58)

  ガーシュウィンの曲は、もともと管弦楽曲というスタイルで聴くことになるモノが多いが、ピアニストにとっても大いに愛されてきている。そしてこのラッチンにとっても彼はユーロ系ミュージシャンとは言ってもどちらかというと、米国に生まれ発展したジャズの流れに基づいてのバップ&ブルースの伝統的流れに根幹を持っていて、洗練された垢抜けした小粋な雰囲気でのスウィンギン・グルーヴィーの世界とちょっとエレガントなプレイを演じている。かなり打鍵もクラシックで鍛えられた力のある確かさといってよいところにある。まあどちらかというとスッキリとした爽やかな世界で、やはりストレート・アヘッド・ジャズの世界を基礎に彼なりの英国流バップ・ピアノ発展が十分加味された感がある。

494962082_1436076971071878w

 M01."Summertime"は、ピアノの冒頭からの流れが美しいですね、そして中盤の変調と続く編曲、インプロは洒落ているそのもの。究極のジャズの持つ一つの世界だ。
 そしてM02."How Long Has This Been Going On?"になって、ぐっと深く沈み込む、それも暗さよりは安堵の世界。M01.からの流れも見事。
 M04." 'S Wonderful "のなじみの深い曲でも、かなり粋な編曲であるが、そこにはユーロ系の情感と言うよりは、やっぱりエレガントに仕上げている上に、明快なかなり力強さもあって彼の意欲が感じられた曲作りになっている。
 アルバム・タイトル曲M07." The Man I Love"トリオ3者のゆったりとしたスウィングしての展開で、ピアノの抑揚が溢れた流れに、ベース重厚な音のリズムに加えドラムスはスリリングさが溢れていて、ラッチンのピアノへの色づけも良くグルーヴ感を盛り上げているのもさすがだ。
 私はM08."Someone To Watch Over Me "のようなピアノ・ソロ・バラード展開が好きですね。

 ユーロ系ジャズは、北欧のクラシックからの流れを加味した深遠な世界、イタリアの歌心ジャズなどと私の好みを満足させてくれるが、こんなアメリカン・ルーツ・ジャズも、ふとジャズの原点の良さを感じ取れて時には良いものである。そしてラッチンはその上にガーシュウィンの曲の味を一層盛り上げていると言っても過言では無い。

(評価)
□ 選曲・編曲  88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

*

 

| | コメント (0)

2025年8月 7日 (木)

ニッキ・パロット Nicki Parrott 「After Midnight」

ブルース好きのパロットの編曲とヴォーカルが聴きどころ

<Jazz>

Nicki Parrott 「After Midnight」
vinus records / JPN / CD / VHGD-1002 / 2025

615zgbs1zcl_ac_slw2

ニッキ・パロット Nicki Parrott - ボーカル&ベース
スティーブ・ラッセル Steve Russell - ピアノ
デイブ・サンダース Dave Sanders - ドラムス
マーサ・バーツ Martha Baartz - テナー&アルトサックス
ジム・ケリー Jim Kelly - ギター

E89e16991679155d5a860d2w   今やビーナス・レコードの完全に顔となったオーストラリアのベーシスト・ヴォーカリストのニッキ・パロットNicki Parrott(1970年生まれ)のニュー・アルバム。彼女のアルバムはここで何回か取り上げてきたが、私の場合、惚れ込んでしまうとか、どうも好きになれないとか、そうした感情の湧かない不思議な存在でここまで来ている。もともとはベーシストとしてのジャズ演奏者であったが、そのヴォーカルも認められて現在はむしろヴォーカリストとしてのアルバム造りが多い。今回は母国オーストラリアでの収録のようだが、「ボーカルがセクシーに切なくブルースの夜を彩る」というキヤッチフレーズ(あまりセクシーという感じで無いが)でのアメリカ音楽のルーツに迫って、そのジャンルもジャズということにこだわらず、ブルース、カントリーの要素も取り込んでの彼女流のジャズ・アルバムに仕上げている。そしてバックはピアノ・トリオであるが、曲によってギター、サックスを取り入れて、味付けしている。レイ・チャールズ、B.B.キング等のブルース・フィーリングをニッキ流のジャズ・ヴォーカルでの世界に生かしている様を聴きこむのも楽しい。

(Tracklist)

1.アイ・ラブ・ビーイング・ヒア・ウィズ・ユー I Love Being Here With You (ペギー・リーとビル・シュルーガー) 4:12
2.アンチェイン・マイ・ハート Unchain My heart (Bobby Sharp)4:21
3. オール・アイ・ドゥ・イズ・シンク・アバウト・ユー All I Do Is Think About You (スティーヴィー・ワンダー、クラレンス・ポール、モリス・ブロードナックス) 4:01
4. クレイジー・ヒー・コールズ・ミー Crazy He Calls Me (カール・シグマン (音楽) & ボブ・ラッセル (歌詞)5:15
5. アフター・ミッドナイト After Midnight (J.J. Cale) 4:13
6. スリル・イズ・ゴーン The Thrill Is Gone (ロイ・ホーキンス、リック・ダーネル) 4:01
7. 恋に破れて What Becomes Of The Brokenhearted?(ウィリアム・ウェザースプーン、ポール・ライザー、ジェームズ・ディーン) 4:07
8.アイ・ドント・ニード・ノー・ドクター I Don't Need No Doctor (ニック・アシュフォード、ヴァレリー・シンプソン、ジョー・アームステッド) 3:55
9.偽りの恋 Your Cheatin' Heart (Hank Williams) 4:02
10.ワイルド・ウーマン・ドント・ハブ・ザ・ブルース Wild Women Don't Have The Blues (アイダ・コックス) 3:35
11.ヒー・コールド・ミー・ベイビー He Called Me Baby (HARLAN HOWARD) 4:37
12.ユー・ドント・ノー You Don't Know (ウォルター・スプリッグス) 4:20
13.レット・ザ・グッド・タイムス・ロール Let The Good Times Roll (サム・シアード&フリーシー・ムーア) 3:30
14.虹の彼方に Somewhere Over The Rainbow (Written by Harold Arlen (music) and Yip Harburg (lyrics) 2:58

 Parrott本人の話によると、これは「このアルバムは深夜にぴったり、長い一日のおわり、あるいは深夜のライブの後、リラックスしてお酒を飲みながら足を伸ばして聴きたくなるようなアルバム」と言ってるようだ。いわゆるアメリカン・ジャズの全盛期に戻って、しかも深夜に一日を回顧してホッと出来るときの気持ちを支える歌として彼女は仕上げたようだ。

Nickiparrottjazzbassistvow



 もともとペギー・リーのファンであったようでここでもM1."I Love Being Here With You "を取り上げている。なかなかスタートにふさわしいメロディアスな曲、サックスも入って賑やか。
 続くは、レイ・チャールズのなじみの曲M2."Unchain My heart"では、ぐっとしっとりとしたムードから、軽快な展開まで盛り込んで快調。M8." I Don't Need No Doctor "も彼のヒット曲、ギターと女性バッキング・ヴォーカルも入って聴き応えあり。
 M3." All I Do Is Think About You "はStevie Wonderの曲だが、Parrottのベース・ソロとギターで優美な展開。
 M4."Crazy He Calls Me "は、しっとりとして歌い込んで私の好み、これぞ深夜向き。
 タイトル曲M5."After Midnight"は、Claptonを思い出す、なんとギターが有効なカントリー・ロック調で。
 M6."The Thrill Is Gone"、M12."You Don't Know "は、ブルース調の登場でB・Bキングのヒット曲で、バックはギターが活躍。 
 M9."Your Cheatin' Heart "ハンク・ウィリアムズのカントリーの名曲「偽りの恋」の登場、ちょっと意外。
 M10."Wild Women Don't Have The Blues"、M13."Let The Good Times Roll"と彼女の好きなブルースをParrott節で・・・。
 M14." Somewhere Over The Rainbow "は、Parrottでなければ出来ないベースとヴォーカルを演ずるソロ展開。この手法、もう一曲ぐらいあっても良かったのでは。

 いつも思うのだが、彼女のアルバムは嫌みが無く大きな癖もなく、適度な編曲と歌詞で旨くこなしてくれるので、非常に聴きやすい。そんなところが逆にのめり込むこともなく、逆に嫌うこともなく、ニュー・リリースごとに聴いてしまうのである。今回の特徴は、彼女の好むブルース調曲が明瞭にでているが、ジャズ展開に編曲を加えられいて、なかなか面白く新鮮に聴くことが出来た。

(評価)
□ 選曲・編曲・歌 :    88/100  
□   録音      :    88/100
(試聴) "Crazy He calls Me"

 

| | コメント (0)

2025年7月28日 (月)

ビル・エヴァンス COFFEE BREAK JAZZ 「BILL EVANS - BLEND」

ジャズに興味が湧いた初心者にも勧められるコンピレーション盤

<Jazz>

COFFEE BREAK JAZZ 「BILL EVANS - BLEND」
Universal Music (Verve/Riverside)/ JPN / UCCU1697 / 2025

61u95fxtbol_ac_sl850w

Bill Evans (p)
Paul Motian (d)
Scott LaFaro (b)
Jeremy Steig (fl)
Jack DeJohnette (d)
Eddie Gomez (b)
Philly Joe Jones (d)
Jim Hall (g)
Percy Heath (b)
Sam Brown (g)
Marty Morell (d)

Images-2w_20250725153501   人気の「COFFEE BREAK JAZZ 」シリーズに装いも新たにしてビル・エヴァンスBill Evans(1929-1980)が加わってリリースされた。
 日本で最も人気のあるジャズ・ピアニストだが、今年没後45年になるが、つい先頃掘り出し物のとしてのニュー・アルバム(『FURTHER AHEAD - Live in Fland 1964-1969』)がリリースされたばっかり、彼の音楽は今も世界でトップをゆく愛され方だ。そして今作は彼の往年の名曲群をコンパイルした新編成コンピレーション・アルバムとなっている。まあこうしたアルバムがリリースされるのは、ファンへのサービスということもあるが、まだまだこれからジャズを愛してゆこうという人々への入門盤として門戸を広げ、今後へのジャズの道を更に開いてゆこうという商業ベースでの意義も大きいものとして企画されているのだろう。

 名作『ワルツ・フォー・デビイ』(M1.)から初めて彼がエレピを導入して行なった多重録音アルバム『フロム・レフト・トゥ・ライト』(M9.)に至るエヴァンスの豊富なユニバーサルミュージック名作アルバムからから選ばれた名曲の14曲。人気曲を取り上げてのアルバムとなっていて、バック・グラウンド・ミュージック的聴くにも十分贅沢モノだが、それもジャズの一つの役割的なものとして大きな価値がある。

(TRACKLIST)

1.ワルツ・フォー・デビイ / Waltz For Debby
      AL『Walz for Debby』take2, 1961 Village Vanguard
2.スパルタカス 愛のテーマ / Love Theme from "Spartacus"
      AL『ホワッツ・ニュー』より
3.ナーディス / Nardis
      AL『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』より
4.枯葉 / Autumn Leaves (Take 1 / Stereo)
      AL『ポートレイト・イン・ジャズ』より
5.あなたと夜と音楽と / You and the Night and the Music
      AL『インタープレイ』より
6.ソワレ / You and the Night and the Music
      AL『フロム・レフト・トゥ・ライト』より
7.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ / Here's That Rainy Day
      AL『エクスプロレイションズ』より
8.ララバイ・フォー・ヘレン / Lullaby For Helene
      AL『アローン』より
9.いつか王子様が / Someday My Prince Will Come
      AL『フロム・レフト・トゥ・ライト』より
10.ビューティフル・ラヴ / Beautiful Love(Take 2)
      AL『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』より
11.ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ / When I Fall in Love
      AL『エクスプロレイションズ』より
12.ア・タイム・フォー・ラヴ / A Time For Love
      AL『ポートレイト・イン・ジャズ』より
13.星に願いを / When You Wish Upon a Star
      AL『アローン』より
14.マイ・フーリッシュ・ハート / My Foolish Heart
      AL『インタープレイ』より

Maxresdefaulttrw_20250727200501

 ビル・エヴァンスのアルバムは「名演はあるが名録音無し」と言われるぐらい残念ながらオーディオ的には殆ど今一歩というモノであると言って良いのだが、近年リマスターされての改善が図られていて、完璧とは行かないが音質的にも改良盤となってきていて、ここに登場する曲群も、かなり安心して聴けるようになってきている。それでも時代の流れを感ずるところであるが、昔を思えばそれなりに良くなったと・・・いうところで聴いているのである。
 そんな中でも、アルバム『You Must Believe In Spring』(Remmatered 2022)あたりが、私はベスト録音と思っているのだが、ここでは取り上げられていない。
 しかしなんと言ってもこのアルバムの目的からも、しっかりとM1."Waltz For Debby" M14."My Foolish Heart"でオープニングと締めをきちんと押さえているところは、このアルバムの真面目さとサービス精神が感じられるとこだ。
 そしてM3."Nardis"M4."Autumn Leaves"は人気曲で、特にM3.はマイルス・デイビスの作曲だが、エヴァンスはこの曲にはそれなりの思い入れがあったり、演奏の要求もあったりで彼のこのタイプのアルバムだと載せないわけには行かない重要曲だ。
 M9."Someday My Prince Will Come"も愛されてますね。マイルスは2度3度とグラミー賞を獲得しているが、この曲もそうですね。
 M13."When You Wish Upon a Star"も欠かせないですね、小学生の女の子もピアノでこの曲は弾いてますね。
 そしてM7."Here's That Rainy Day"のように彼のソロ演奏もきちんと収めて、なかなか頑張っているアルバムとも言える。

 まあ、どれがこれがという事よりもこうして人気曲や聴きやすく心地よい曲なども纏めてくれたので、聴くには極めてとっつきやすいアルバムであるし、なんと言ってもエヴァンスの入門アルバムとしてはガイダンス的でもあって文句のないところであろう。

(評価)
□ 選曲・演奏 90/100
□ 音質改善度 88/100

(試聴)

 

| | コメント (0)

2025年7月 8日 (火)

ディナ・デローズ Dena DeRose 「Mellow Tones」

究極のジャズ・クラブ・ヴォーカルの世界を演ずる名アルバムと言いたい

<Jazz>

Dena DeRose 「Mellow Tones」
HIGH NOTE RECORDS / IMPORT /  CD /  HCD7354 / 2025

61ndzuhhytl_850w

Dena DeRose - vocals and piano
Martin Wind – bass
Matt Wilson – drums

Ed Neumeister – trombone (tracks 1 & 9)

Dena_derose2009w2   米国の実力派ピアニスト兼ヴォーカリスト、ディナ・デ・ローズ(1966年NY生まれ)の2025年新作アルバム『Mellow Tones』が登場。2020年にここで取り上げたアルバム『Ode to the Road』(FCD7323)以来か、彼女はキャリア30年以上、25枚以上の録音モノを持っていて、今日の最も洗練されたジャズ・アーティストとして美的センス溢れるレコーディングで、パンデミック以来ここに戻ってきた。近年は27年間の教育者としての活動も比重が大きくなっていて、音楽と舞台芸術大学のジャズインスティテュートでジャズボイスの教授として過去19年間、オランダのフローニンゲンのプリンスクラウス音楽院、デンハーグの王立音楽院など。現在オーストリアのグラーツに住んでいる。

 この待望の新アルバムは、デローズの特徴的なスウィングとセンチメンタルなバラードを披露し、「リラックスしたスウィング感を醸し出す非常にエレガントなピアニスト兼シンガー」としての彼女の評判が強調されている。そして20年以上にわたっての親密な関係のあるマーティン・ウィンド(bass ↓左)、マット・ウィルソン(Drums ↓中央)、そしてスペシャル・ゲスト・トロンボーン奏者のエド・ノイマイスター(2曲 ↓右)といったリズム・セクションをフィーチャーしていての余裕の世界が見えている。

AirmartinwindwS11_hero_mattwilsonw60f68493e771cw

(Tracklist)

1. In a Mellow Tone 7:41
2. Autumn in New York 4:12
3. Two for the Road 4:32
4. Stairway to the Stars 3:40
5. Only Trust Your Heart 5:36
6. Hold Fast to Your Dreams 6:56
7. Thank You for Everything 5:56
8. Maybe September 4:59
9. My Frame for the Blues 5:31

 パンデミックで活動が抑制された時は、ミュージシャンの誰もがそうであったように、彼女にとっても相当のストレスであったと言われているが、もともと彼女はピアニストとしてジャズに接していたが、21歳のとき、手根管症候群と関節炎と診断され、右手に激しい痛みを訴え、ピアノを弾くのを止めざるを得なくなった。彼女は落ち込み、薬物とアルコールに頼ったという経験があり、その後、ヴォーカルを勧められた後、何度かの手術にてそれを克服したという経験があり、今回もこのアルバムがパンデミックを克服した証拠としてジャズ総決算的美学のアルバムとしてリリースされていて歓迎。

Derosedenamaew_20250708090701Img_4895tr1w

 M1. "In a Mellow Tone" まさにこれぞジャズ、スタートは彼女の挨拶代わりのアカペラ・ヴォーカルにトロンボーンが追従して色を付ける。味なクラシックなジャズの良さが響いてくる。ソロ・ベースラインから始まり、しなやかなピアノ・ライン、優しいドラミングがピアノとベースの間の優しい関係を導く、スウィングしてジャズ美たっぷり。
  M2. "Autumn in New York" 彼女の得意なボーカル・ジャズ・フレージングの創造的リフレッシュが効いていることで、なんと魅力的に響くことか。
  M4. "Stairway to the Stars" バラード・ヴォーカルの味とピアノ・プレイの競演。
  M5. "Only Trust Your Heart "近頃のステーシィ・ケントとも違った囁くようなピアノの響きと同時に歌うデローズの歌は説得力十分の語り口で納得。
  M6. "Hold Fast to Your Dreams" 彼女の曲だが初登場らしい。ベースが響き渡って物語の始まりの如く開幕し、彼女の静かに説明する如くのピアノ、そして両者のユニゾンが楽しい。そして美しいゆったりと真摯なヴォーカル、次第に情熱的な姿へと進化していく。究極のジャズの美を感じさせ見事。
  M7. "Thank You for Everything"  M6.を引き継いで・・彼女の説得力のバラード・ヴォーカルがピアノの響きによってぐっと深く。そしてベースが更に深く説得力を発揮。 かってのよき時代の深夜の究極のジャズを演じてくれる。
  M8. "Maybe September" 情景を見事に歌いこんで心情に繋げる。静かなスティック音に乗ってベースとピアノが美しい。
  M9. "My Frame for the Blues " トロンボーン登場曲の二曲目、アルバムの締めだ。ブルース調でスウィングしてまさにジャズ・クラブの締めを演ずるのであった。

 ジャズの本質的な世界を知らしめるべく造り上げられたようなグルーヴ感のある演奏に、年期の入ったヴォーカルの味は見事である。特に後半の数曲は、情景描写は見事でジャズの神髄に迫ろうとする深い世界のヴォーカルと演奏が聴ける。そして優美さと楽しさも忘れないところの究極のジャズ演奏に浸かれる。

(評価)
□ 選曲・作曲・編曲・歌 :  90/100
□ 録音         :  88/100

(試聴)

 

| | コメント (0)

2025年7月 3日 (木)

マイケル・ウォルドロップ Michael Waldrop 「Native Son」

ドラムスとパーカッシヨンが躍動してダイナミズムと哀愁感ある世界を

<Contemporary Jazz>

Michael Waldrop 「Native Son」
ORGIN RECORDS / Import / ORIGIN82921 / 2025

91s7zarcjl_acw

Vasil Hadžimanov (piano)
Martin Gjakonovski (bass possibly except 5)
Michael Waldrop (drums)
*guests:
Brad Dutz (percussion on 1-3,5-7)
Jose Rossy (percussion on 1-3)
Chris Symer (bass on 5)

2024年8月14日-16日セルビア-パンチェヴォ(Pančevo)のFuture Nature Sound録音
(但しpercussionは米テキサス州デントンのBuffalo Sound録音)

165935296_2684w  ニューヨークを拠点に活動するアメリカのヴェテラン敏腕ドラマー:マイケル・ウォルドロップ(1961年米フロリダ州ペンサコーラ生まれ →)がリーダーとしての、かねてより親交のあったセルビアのピアニストのヴァジル・ハジマノフとマケドニアのベーシスト・マーティン・ジャコノフスキとのなんとも国際色豊かなピアノ・トリオによる作品。しかもここにパーカッション陣も加わってくるカルテットやクインテット(但しパーカッションは別録り)スタイルの曲群が大半を占める異色の作品(ピアノ・トリオ単独演奏は2曲)の登場だ。

  ウォルドロップが毎年義理の両親を訪ねる際に立ち寄ったセルビアの首都ベオグラードのクラブで、知名度の高いセルビアのピアニストのヴァシル・ハジマノフ(↓左)と知り合った。そしてその後、パンデミック中に自宅に閉じ込められたウォルドロップは、2001年に初めてこの街を知った気持ちを描き作曲した曲「ベオグラード」のリモートレコーディングセッションにハジマノフを呼ぶことを思いつき、その得られた結果に納得して盛り上がる気持ちの彼らは、昨年(2024年)にベオグラードのスタジオで会い、同様にインスピレーションを受けたマケドニアのベーシストであるマーティン・ジャコノフスキ(↓左から2番目)を加えて、この米国と旧ユーゴスラビアによるトリオとしてこのウォルドロップのオリジナル曲集をレコーディングしたのであった。
 なおゲストで米国で活躍中のパーカッションのブラッド・ダッツ(↓左から3番目)とホセ・ロッシー(↓右)を起用し、アフロキューバンと中東の打楽器を駆使して、さらに演奏を盛り上ているということになった。

Imagesvh1wGjakonovskimartin1wA4490831522419222wImg_3118jrw

(Tracklist)

1 Native Son 6:34*
2 Vasconcelos 7:57*
3 Pythia: The Speaking Water 6:17*
4 El Vino 6:27*
5 Belgrade (Београд) 6:02*
6 Bitter End 4:43*
7 Still Life 7:38*
8 The Wrong Blues 6:35

*印はマイケル・ウォルドロップ(BMI)作曲((4)のみジャック・クーパー(ASCAP)との共作)
(8) はアレック・ワイルダー (BMI)作曲

 冒頭M1."Native Son"からドラムスとパーカッションが上手くシンクロしてリズミカルに演じ魅力的な曲展開。そしてグルーヴ感生む歯切れのいい展開でありながらどことなく哀愁漂うちょっと洒落たプレイのピアノが又いい。このダイナミズムと抒情性に満ちて圧倒するプロジェクトである『Native Son』は、この注目のピアニスト、ヴァシル・ハジマノフを我々に知らしめてくれる。このセルビア人ミュージシャンは、母国だけでなくヨーロッパでもよく知られているようだが(リーダーまたは共同リーダーとして12枚のアルバムをリリースし、12曲以上のサウンドトラックをリリースしている)、私はどうも今まで意識した記憶が無かった。
 M3."Pythia: The Speaking Water"はドラマチックだがやや暗いバラードで、リーダーによる緩やかなパーカッションと干渉してのドラミングが面白い。ここでもピアノは古代の雰囲気を伝えることを目的としたようで神秘性が描かれ物思いにふけるムードに漂っている。ジャコノフスキの響き渡るベースソロがなかなか有効で、終盤にはダッツは変わった楽器を使って、古代の雰囲気を盛り上げている。

489433473_371448497tr2w_20250703164501


 M4."El Vino"リラックスしてスウィングするミッドテンポの曲。以前にも収録されたことがあり、ウォルドロップがドラムのヒーロー、エルヴィン・ジョーンズに捧げた曲だという。ジャコノフスキは、このブルース調のナンバーでベース・ソロで説得力を示し、ハジマノフは私には解らないがハービー・ハンコックを引き合いに出しているようで、その為このセットで最もパワフルでストレートなソロを披露。ウォルドロップはドラムブレイクでいくつかの即興を演じ、トリオはこの曲では楽しんでいるといった感じだ。
 M5."Belgrade"は、前曲と対照的に、なかなか郷愁の感じられるメロウな曲。ウォルドロップの中東の魅力に向かった原点の曲ということだろう、以前に録音したこともあるが、まさにハジマノフは思慮深くこの曲の意味をかみしめて演ずる。曲の心のこもったエッセンスを美しく捉え、"ベオグラードはバルカン半島であるため、中東の影響がたくさんあるので、それを要求しました」とウォルドロップは言っている。
 M7." Still Life " ウォルドロップが1996年にミュンヘンで最初に書いた曲らしい。バラードである繊細で広々とした美曲。ハジマノフは、ここでビル・エヴァンスの世界に入り込み、一方ハービー・ハンコックの美しい雰囲気にと、言うことだが。
 M8."The Wrong Blues "アレック・ワイルダーの1959年の曲で ここでは、M4.とこれがパーカッションレスのトリオ演奏。キース・ジャレットがゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットと共演した1986年のスタンダード・ライブ・アルバムに録音した名曲。これは「それはまさに私たちが求めていた雰囲気です」とウォルドロップは言っての演奏で締めくくる。

 見事なトリオ+パーカッションで演ずる世界は、エキゾチックな躍動の世界で不思議な面白さが築かれるが、究極、アメリカン・ジャズと、かっての東欧の硬派メロディック・プレイが基調にあって見事な展開を作り、なかなか味わい深いジャズ・アルバムの本質を行くモノとして評価される。
 今回はセルビアのピアニスト・ハジマノフのクラシックに裏付けされたジャズにバルカン半島の民族音楽を融合させた独自のスタイルが垣間見る事が出来貴重であったと同時に、マカドニアのこれも人気のジャコノフスキのベースの色づけに聴き惚れ、素晴らしい世界を知ることが出来た貴重アルバムだ。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    88/100
(試聴)

 *

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

Audio CLASSIC Progressive ROCK アイオナ アガ・ザリヤン アダム・バルディヒ アデル アメリカン・ジャズ アヤ アレクシス・コール アレッサンドロ・ガラティ アンジェイ・ワイダ アンナ・グレタ アンナ・マリア・ヨペク アンヌ・デュクロ アヴィシャイ・コーエン アーロン・パークス イエス イタリアン・プログレッシブ・ロック イメルダ・メイ イモージェン・ヒープ イリアーヌ・イリアス イーデン・アトウッド ウィズイン・テンプテーション ウォルター・ラング エスビョルン・スヴェンソン エスペン・バルグ エミリー・クレア・バーロウ エミール・ブランドックヴィスト エレン・アンデション エンリコ・ピエラヌンツィ エヴァ・キャシディ オルガ・コンコヴァ カティア・ブニアティシヴィリ カレン・ソウサ ガブレリア・アンダース キアラ・パンカルディ キャメル キャロル・ウェルスマン キング・クリムゾン キース・ジャレット クィダム クレア・マーティン グレッチェン・パーラト ケイテイ・メルア ケイト・リード ケティル・ビヨルンスタ コニー・フランシス コリン・バロン ゴンザロ・ルバルカバ サスキア・ブルーイン サラ・ブライトマン サラ・マクラクラン サラ・マッケンジー サンタナ サン・ビービー・トリオ ザーズ シェリル・ベンティーン シゼル・ストーム シネイド・オコナー シモーネ・コップマイヤー シャイ・マエストロ ショスタコーヴィチ シーネ・エイ ジェフ・ベック ジャック・ルーシェ ジョバンニ・グイディ ジョバンニ・ミラバッシ ジョルジュ・パッチンスキー スザンヌ・アビュール スティーヴン・ウィルソン スティーヴ・ドブロゴス ステイシー・ケント ステファン・オリヴァ スノーウィ・ホワイト スーザン・トボックマン セバスチャン・ザワツキ セリア セルジオ・メンデス ターヤ・トゥルネン ダイアナ・クラール ダイアナ・パントン ダイアン・ハブカ チャンピアン・フルトン チャーリー・ヘイデン ティエリー・ラング ティングヴァル・トリオ ディナ・ディローズ デニース・ドナテッリ デヴィット・ギルモア デヴィル・ドール トルド・グスタフセン ドリーム・シアター ナイトウィッシュ ニコレッタ・セーケ ニッキ・パロット ノーサウンド ハービー・ハンコック バンクシア・トリオ パスカル・ラボーレ パトリシア・バーバー ヒラリー・コール ビル・エヴァンス ビル・ギャロザース ピアノ・トリオ ピンク・フロイド フェイツ・ウォーニング フランチェスカ・タンドイ フレッド・ハーシュ ブッゲ・ヴェッセルトフト ブラッド・メルドー ヘイリー・ロレン ヘルゲ・リエン ペレス・プラード ホリー・コール ボボ・ステンソン ポーキュパイン・ツリー ポーランド・プログレッシブ・ロック ポール・コゾフ マッツ・アイレットセン マツシモ・ファラオ マティアス・アルゴットソン・トリオ マデリン・ペルー マリリオン マルチン・ボシレフスキ マーラー ミケーレ・ディ・トロ ミシェル・ビスチェリア メコン・デルタ メッテ・ジュール メラニー・デ・ビアシオ メロディ・ガルドー モニカ・ボーフォース ユーロピアン・ジャズ ヨアヒム・キューン ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ ヨーナ・トイヴァネン ラドカ・トネフ ラーシュ・ダニエルソン ラーシュ・ヤンソン リサ・ヒルトン リズ・ライト リッチー・バイラーク リリ・ヘイデン リン・エリエイル リン・スタンリー リヴァーサイド リーヴズ・アイズ ルーマー レシェック・モジュジェル ロジャー・ウォーターズ ロバート・ラカトシュ ロベルト・オルサー ローズマリー・クルーニー ローレン・ヘンダーソン ヴォルファート・ブレーデローデ 中西 繁 写真・カメラ 北欧ジャズ 問題書 回顧シリーズ(音楽編) 女性ヴォーカル 女性ヴォーカル(Senior) 女性ヴォーカル(ジャズ2) 女性ヴォーカル(ジャズ3) 寺島靖国 戦争映画の裏側の世界 手塚治虫 文化・芸術 映画・テレビ 時事問題 時代劇映画 波蘭(ポーランド)ジャズ 相原求一朗 私の愛する画家 私の映画史 索引(女性ジャズヴォーカル) 絵画 趣味 雑談 音楽 JAZZ POPULAR ROCK SONYα7