カーステン・ダール

2026年3月17日 (火)

カーステン・ダール、リューベン・ロジャーズ、グレゴリー・ハッチンソン Carsten Dahl, Reuben Rogers, Gregory Hutchinson 「 Into the Storm - Live」

ピアノトリオとは何か、そして醍醐味は?・・・北欧とアメリカのジャズの融合は?
スタンダードを使ったフリージャズの実験

<Contemporary Jazz>

Carsten Dahl, Reuben Rogers, Gregory Hutchinson 「 Into the Storm - Live」
Storyville Records / Import / CD / B0GJFK7N29 / 2026

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Carsten Dahl - piano
Reuben Rogers - bass
Gregory Hutchinson - drums
2013年1月31日、ジャズハウス・モンマルトル(コペンハーゲン/ライヴ)

 現代ジャズの一つの重要な位置を占めているピアノ・トリオ。そして歴史的には私はBill Evans ,  Ahmad Jamal , Keath Jarrett にどうしても注目してしまうのだが、そんな流れを十二分に理解しつつ北欧の美学を追究しつつアメリカン・ジャズの流れを尊重しピアノ・トリオを探求しつつあるデンマークのピアニストのカーステン・ダールCarsten Dahl(1967- ↓左)の2013年に行われた奇跡的トリオのライブ音源が、何とここに来てリリースされたのである。
 つまり嬉しい事に、アメリカのリズム・セクションとしてリューベン・ロジャーズ(Bass ↓中央)、グレゴリー・ハッチンソン(Drums ↓右)を迎えてのダールの2013年コペンハーゲン、冬の夜の奇跡が、名門ジャズハウス・モンマルトルで録音され、そのスリリングなピアノ・トリオによる白熱のライヴ音源が登場した。

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(Tracklist)

1. Minoring Together (Carsten Dahl)
2. Body and Soul (Johnny Green)
3. Open Interlude / Giant Steps (Carsten Dahl / John Coltrane)
4. Sweets to the Sweet (Hugo Rasmussen)
5. Blame It On My Youth (Oscar Levant)
6. Caravan (Juan Tizol, Duke Ellington)
7. You Stepped Out of a Dream (Nacio Herb Brown)
8. Speak (Carsten Dahl)
9. The End of a Beautiful Friendship (Donald Kahn)

 

(収録曲考察)
 M1. "Minoring Together" Dahlのオリジナル。最初からフリー展開。冒頭を飾るこの曲は、どうもトリオの準備運動とかトリオの質の公開。Dahlのリズミカルなピアノが、Hutchinsonの繊細とも言えるシンバルワークとがシンクロして響く。
 M2. "Body and Soul"  バラード。ルバートで描く詩的で陰影の強いピアノとベースの旋律演奏が繋ぐ。
   M.3. "Open Interlude / Giant Steps" このアルバムの最大の聴きどころ。即興の「Open Interlude」の後に、コルトレーンのなかなか難しい曲"Giant Steps"を敢えて演奏。フリー演奏から急速なコードに突入するスリリングな展開に痺れ、難解が難解でなく誘導。このトリオの本質展開。Hutchinsonのドラミングが炸裂。
 M4. "Sweets to the Sweet" 一休み的遊び心が楽しい。北欧ジャズらしいピアノと、アメリカ的リズム隊による交錯のスイング感が見事にブレンドして気持ちよく進行、ベースの乗りも良く会場も乗っている。
 M5. "Blame It On My Youth" ぐっとロマンティックなバラード。Dahlのぐっと落ち着いた静かさのピアノの繊細そのものの「間」が見事。そしてRogersが歌うようなベースラインを重ねる様は、ライブならではの世界。
   M6. "Caravan" 私の好きな曲の登場。快調・快速テンポ演奏。ドラムの爆発力が特徴。エリントンの曲をこのトリオはアグレッシブに分解・再構築。中盤からのHutchinsonの真骨頂である変調リズミックな技が光り、続くピアノの快進撃は見事。
 M7. " You Stepped Out of a Dream" 約9分の長曲。トリオのインタープレイの聴き処満載。スタンダードを次第に組上げてゆく過程がジャズ心を満足させる。ピアノがリードし3人共に反応、それぞれのソロの受け渡しが快調で聴く方の満足感が大きい。
 M8. "Speak" 47秒の短い小品。次の最終曲への導入か。
   M9. "The End of a Beautiful Friendship" エンディングを飾るなんとなく切なくなるが、どこか温かいスタンダード。ライブの終焉を惜しむ穏やかなピアノとベースの響き。

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 まさに「ピアノ・トリオの醍醐味」を凝縮した一枚。さすが現代ジャズの最高峰が顔をそろえるとこうなるんですね。個人の演奏が上手いというところよりは、外れて外れない調和のそれぞれの立ち位置のスリルが楽しい。特に「ハッチンソンのドラムがピアノを煽り、それにロジャーズが重厚な安定感を与えることで、ダールのリリシズムがより一層際立っています」という評価を見るが、まさにそこがピアノ・トリオの真髄であって、これもかってビル・エヴァンスが、彼の美旋律にあきたらず、トリオという世界に三者の対話型を求めた大きなポイントが結実しているように思う。そして、更にAmad Jamalのリズムを停止と間と無音空間などの劇的展開。そして更にKeith Jarrettのライブの花形即興型の味と、揃えにそろえたジャズ美学。
 いまや、そのピアノ・トリオ・ジャズの真髄を探求するカーステン・ダールの北欧抒情美学と、Jarrettを超える荒々しさの加味した即興の緊張感、トリオの味わいある相互作用など、一つの世界に止まらないとみころがこのライブに展開しているところが聴き処だ。今このライブをアルバムとしてリリースしたということの意味は果たして何処にあったかは別にして、私にとってはピアノ・トリオのに対するカーステン・ダールの一つの回答として受け止めた次第である。まだ早いが、お見事な一枚で今年No.1になりそうだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 : 95/100
□ 録音        : 88/100

(試聴)

 

 

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2026年2月18日 (水)

カーステン・ダール GinmanBlachmanDahl「Play Ballads」

バラードというトリックでのスタンダード曲の老獪な新解釈

<Jazz>

GinmanBlachmanDahl「Play Ballads」
Storyville Records / Import / LP / 6014365 / 2025

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Carsten Dahl (piano)
Lennart Ginman (bass)
Thomas Blachman (drums)

録音:2024年4月24日-25日、MillFactory Studio(コペンハーゲン、デンマーク)

  デンマークの熟年期に入った3人のピアニストのカーステン・ダールCarsten Dahl(1967- ↓左)、ベーシストのレナート・ギンマンLennart Ginman(1960- ↓中央)、そしてドラマーのトーマス・ブラッハマンThomas Blachman(1963- ↓右)か​​らなる2005年からの名門ジャズ・トリオ : "ギンマン・ブラッハマン・ダール"の新作である。これは「バラード演奏」と銘打ってはいるが、なかなか単純ではない彼ら特有のスロー・テンポにこだわったスタイルで演奏された15曲のジャズ・スタンダード曲集。

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 2005年の「来日ツアー」では、結構好意的に受け止められ、本国デンマークに於いても、各種メディアからも、こうしたタイプは結構歓迎されているようだ。取り敢えず経験豊富な中での表現の繊細さや演奏の落ち着きが高く評価されたという事だと思う。
 冒険的・実験的な演奏に評価が集まる今日だが、このトリオの熟練した演奏とジャズ界でのクラシックな楽曲に対して意外に新鮮な展開で、とにかく丁寧な対応と表現が歓迎されたようだ。

 (Tracklist)

01. Angel Eyes
02. Gone With the Wind
03. Autumn in New York
04. But Beautiful
05. Take the ‘A’ Train
06. Chelsea Bridge
07. Blue Monk
08. Here’s That Rainy Day
09. Work Song
10. There Is No Greater Love
11. C Jam Blues
12. Don’t Go To Strangers
13. Satin Doll
14. Come Sunday
15. Things Ain’t What They Used to Be

   各曲は、おそらく意図的だと思うが、とにかくスローテンポで対応して、それによってメロディーの繊細な美しさと曲の描く世界の深みと彼ら自身をも探求するかの演奏だ。特にダールのピアノは繊細で一音一音の響きを大切にしている感のあるタッチで、当初思ったよりは即興因子も少なくはないのだが、基本的にはおとなしい流れでリードしている。そしてギンマンのベースとブラクマンのドラムはやはり意識的な控えめな対応だが、それでもやはり曲の展開にはなくてはならないリズム隊の役割を十二分に果たしている。
 
 私の以前からの印象としてダールというピアニストの印象は、このアルバムとはちょっと違うんですね。勿論北欧としての深遠なる詩情を描く点は素晴らしいのだが、それに加えて即興的因子を大切にしつつ、自由で抽象的・フリー寄りになり、単に安全運転だけでなく前衛的にもなることもあってその展開にはある意味でのジャズとしての面白みを感じてきた。しかし、このアルバムではその点が抑制されていて、ちらっとその面が見えたかと思っても、ぐっと押さえられてしまう。それは彼の意志なのか、このトリオの他の二人とのバランス的感覚でのことなのか、若干残念にも思いつつ、いやこのアルバムはそうした狙いではないところに目的があると、判断すべきなのか・・・実はこれはこれ悪くはないのだが、そんなことを少し疑問に思いつつ聴いたのである。

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 M1. "Angel Eyes" ちょっと暗めなイントロから始まる。音の間(ま)を活かした静謐な演奏。原曲の哀愁がより内省的な方向に誘導されて、ピアノのフレーズの繰り返しが心に響いてくる。
 M2. "Gone With the Wind" (風と共に去りぬ)しっとりとした哀愁を誘うアレンジで、緩やかなテンポが余韻をうみ深く深淵に。
 M3. "Autumn in New York"(ニューヨークの秋) ベースのメロディとピアノのアレンジが、都市の夕暮れを情緒豊かに描き格調高い。
 M4. "But Beautiful" 「美しさ」がテーマ。豊かなハーモニーの展開が印象的。
 M5. "Take the ’A’ Train" (A列車で行こう) ドラムスがかなりのインパクトを示し、ぐっとテンポを落としての表現に驚き。
 M6." Chelsea Bridge" じっくりと暗さが襲ってくる。どこか緊張感を誘導。
 M7. "Blue Monk" モンクの曲、ブルースの要素を優しくしっとりとした展開で。
 M8. "Here’s That Rainy Day" どこか憂いを帯びたバラード。ピアノとリズムのながれで雨の日の情景が浮かんでくる。
 M9. "Work Song" ゆったりしてはいるが、ピアノとドラムスのパワーのある訴えが響く。このあたりは単なるバラードとは捉えられない。
   M10. "There’s No Greater Love" ベースがリズムを刻み、内面から湧き上がるピアノ、ドラムスの感情的訴え。後半に来てようやくダールの単純でない音楽世界が明快になってくる。
 M11."C Jam Blues" エリントンに敬意を表しつつ、ゆっくりとしたブルースで、従来とは別感覚に。彼らトリオの楽しさも伝わってくる。
 M12. "Don’t Go to Strangers" / M13. "Satin Doll" 緩やかなテンポで、トリオのジャズ・アンサンブルを聴かせる。
 M14. "Come Sunday" アルバム終わりに近く、祈りの日、静けさの心を、老獪だ。
 M15. "Things Ain’t What They Used to Be" しっかり展望がきかれる納めの曲。

 なかなか、老獪な展開を聴かせるアルバムだ。スローに徹してここまで変化を聴かせる技には恐れ入る(M9.M10あたりに頂点を築く)。ゆったりとしたテンポと丁寧な表現によって、スタンダード曲の別の面を見せつけられたようなアルバムだ。演奏技術の高さだけでなく、ただ演奏だけしてきたのではない曲に描くモノをじっくりと三人の人生経験を盛り込んだ協調関係で描くところは、なかなか得がたいモノがあるアルバムだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 :    90/100
□   録音       :    90/100

(試聴)

 

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2025年6月16日 (月)

ステファン・パスボー Stefan Pasborg 「Dear Alex」

ステファン・パスボーが贈る、アレックス・リール追悼盤

<Jazz>

Stefan Pasborg 「Dear Alex」
Stunt Records / Import / STUCD25112 / 2025

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Stefan Pasborg (drums, percussion)
Fredrik Lundin (tenor sax)
Carsten Dahl (piano)

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 ヨーロッパのリジェンド・ドラマーであるアレックス・リール(スウェーデン,上左)の弟子として知られるステファン・パスボーStefan Pasborg(上右)が、師アレックス・リールの死に対して捧げたアルバム。実力派のフレズリク・ロンディン(Sax)と、カーステン・ダール(Piano)をフィーチャーしてのベースレスの変則トリオ作品だ。

  1940年9月13日生まれのアレックス・リールは2024年6月9日に亡くなった、満83歳だった。彼はデンマーク音楽史にて象徴的存在で、ジャズ黄金期における発展に不可欠なドラマー。彼は、ジャズ、ロック、実験音楽と広きに通じたドラマーとしてエネルギーに溢れ、世代を代表する才能として貴重そのものの存在であり、デンマーク音楽は当然だが国際的にもジャズを支える存在だった。70年以上にわたり、ビル・エヴァンス、ベン・ウェブスター、デクスター・ゴードン、マイケル・ブレッカー、ケニー・ドリューなど、世界を代表する偉大なジャズ・ミュージシャンたちと共演してきた。
 そしてステファン・パスボー(b.1974)にとっては特別な存在で、リールはパスボーの名付け親になり、3歳のパスボーにスネア・ドラムをプレゼントしたというエピソードも持つ深い関係で、50年にわたって音楽で、パスボーの人生にインスピレーションを与え続けてきた存在。
 その現れとして、二人のアルバムがある。『DRUM FACES』(STUM 222131, 2014,下左)、これはなかなかパワフルなアルバム。近年の『Univers Live 』(STUCD21012,2023, 下右)は、2009年から2019年のライブもので、味なジャズを堪能できる。

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 又、アレックス・リールAlex Rielの近年のアルバム『OUR SONGS』(2021)や私の注目ピアニストのカーステン・ダールCarsten Dahlの近作『Interpretations The Norway Sessions』(Storyville Records 1014363, 2024)はここで取り上げているので参照。
 
 パスボーは数ケ月前にアレックス・リールのお気に入りの曲リストを発見し感銘を受け、デンマークを代表するカーステン・ダール(下右)、フレズリク・ロンディン(下左)の2人のミュージシャンを招き、このアルバムのレコーディングが実現した。「ダニー・ボーイ」、「虹の彼方に」、「ムーン・リバー」、「星に願いを」といった名曲に加え、「In Another Way」では、リールの即興曲を再現しているところが注目点。アレックス・リールがデビュー作で使用したのと同じドラム・キット、1960年代の伝説的なグレッチ・ドラムを使用してパスボーがアレックス・リールへと贈る追悼作として完成したモノ。

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(Tracklist)

1.Danny Boy
2.Somewhere Over The Rainbow
3.Smile
4.Idaho
5.In Another Way
6.Den milde dag er lys og lang
7.Moon River
8.Moppin’ and Boppin’
9.Den Blå Anemone
10.When You Wich Upon A Star

 M1.2.3.4.と、ぐっとポピュラーな名曲を並べてスタートする。しかしそこはただでは収まらず、リールがデビュー・アルバムで披露した無伴奏ソロ即興「In A Way」の音源から幾つかのパッセージが使用され、そのリールの演奏のあとに自己のパスボーの即興を加えるという演奏などなかなか味なアイデアも演じられていて楽しいアルバムになっている。
 又サックス・ピアノ・ドラムスという異色トリオのエネルギッシュな展開と、逆に深遠なる世界も演じて興味をそそる世界を構築しているのが凄い。

 M1."Danny Boy" 訴える豪快なサックスのサウンドでスタート。ちょっと管モノに弱い私には若干抵抗あり。
 M2."Somewhere Over The Rainbow" パーカッションから入るが、この曲もサックスがメロディーを奏で、ピアノ、ドムスが状況描写を美しく支える
 M3."Smile"ドラムスはやや劇的な流れを演じるが、ピアノはむしろ心理的深さを描く、この相性が非常に面白く、サックスは静かにメロディーを流して曲を展開。
 M4."Idaho" 次第に快活な曲展開となって、ドラムスの役割が大きくなる。サックスとピアノがシンクロして曲を高める
 M5."In Another Way" いよいよパスポーの技が盛り上がり、それは彼のソロでの静かな音でシンバル、トライアングル、タムタムの音を交えて深遠な環境を造り上げ、そこにかってのリ-ルの即興演奏を再現し、この曲を造り上げる
 M6."Den milde dag er lys og lang"前曲の深遠さに続いて、静かなスタートから中盤のピアノ、サックスのインプロを誘導し、ジャズのクルーヴィな盛り上がりを見せて最後は美しさも描きジャズの醍醐味を演ずる。このM5.からM6.の流れはこのアルバムでも聴き処だ
 M7."Moon River"ここでは比較的解りやすく安堵。中盤のサックスとピアノ掛け合いが面白く、後半には彼らのセンスによる即興によるメロディーの繋ぎが見事
 M8."Moppin’ and Boppin’"ドラムス・ソロからスタートして三者のエネルギーのぶつかり合いの盛り上がりが聴きどころ
 M9."Den Blå Anemone"の美しいピアノ響きがドラムス支えでほっと聴き惚れ、サツクスが中盤から加わるも流れはピアノの美メロディー
 M10."When You Wich Upon A Star"シンバルなどの響きが深遠な世界を描き、サックスが聴き慣れたメロディーを静かにうたう

 やはりパスポーの繊細にして豪快なドラムスそしてパーカッションが先導して曲を進める手順が主力だ。サックスは威勢が良くてちょっと出すぎの感もないではないが、丁寧でソフトタッチの曲もあって、これは一つのこの変則トリオの当然の流れなのかもしれない。サックス好きには文句なしだろう。そして私はもう少しダールの北欧流哀感のピアノのウエイトが欲しかったと思うのだが、これもこんなところなのかもと妥協して聴いたところだ。全体に変化も多くドラムスの楽しさも伝わって、出来の良いアルバムと評価したい。録音はトリオをしっかり掴んで高音質。

(評価)
□ 選曲・演奏 :   88 / 100
□   録音    :   90 / 100
(試聴)

*

 

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2025年4月 7日 (月)

カーステン・ダール Carsten Dahl Golden Ratio Trio 「Interpretations The Norway Sessions」

音楽の深さへの誘いといえる世界を描く

<Jazz>

Carsten Dahl Golden Ratio Trio 「 Interpretations The Norway Sessions」
(CD) Storyville Records / Import / 1014363 / 2024

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Carsten Dahl (piano)
Daniel Franck (bass)
Jakob Høyer (drums)

[1-6]: Musikloftet AS, Oslo, Norway, Vidar Lunden, January 7, 2023
[7-12]: Thor Neby Studio, Oslo, Norway, Thor Bjørn Neby, March 12, 2024

Imagesw1  デンマークのピアニスト、カーステン・ダール(1967 -)(→)率いるピアノ・トリオの新作アルバム。彼についてはここで数年前に取り上げたが、その演ずるところのクラシック音楽から受けたであろうところ(バッハからラフマニノフと言う名が出てくる)とアグレッシブなジャズへの挑戦的なアプローチの両面の緻密にして美しさのある演奏には驚きを隠せない。つまり叙情的な処と、攻めの因子の調和が凄い。今回もそれを十分に堪能できるものとして受け入れた。

 彼のその特徴は、ドラムスとピアノの両方を幼少期から演奏し、そして学んできたという経過が生んだモノかも。そして2015年までデンマークの新文化院でピアノを教えていたが、「芸術が本当に何であるかを理解するための精神的で高度に宗教的なアプローチが、学校のプログラムの一般的な考え方と一定の対立を引き起こした」そのため、辞任したと述べているようだ。1982年にジャズ・ミュージックのプロになつてから現在まで多くのアルバムに演奏の姿を残しているが、一方なんと画家としての活動もあるようだ。
 その為か、彼の音楽に述べるところは「絵が解釈を指示し、ミュージシャンが単に絵の具と絵筆の役割を果たす小さな絵画」に例えていて、そして「この『Interpretations』は、リスナーが新しく深い方法で音楽と関わるように促します。行動と一時停止、期待と驚きの微妙なバランスこそが、この音楽を真に繁栄させるのです」と、なかなか難しい話をしている。

 なおトリオはスウェーデンのベーシスト、ダニエル・フランク(↓左)とデンマークのドラマー、ヤコブ・ホイヤー(↓右)と組んでいる。

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(Tracklist)

1. Interpretations
2. Morgonsang
3. Kristallkorall
4. The Golden Ratio
5. Vacker
6. Open Window
7. Wind
8. Sound of the Waves
9. Birds
10. The Art of Thinking
11. All Will Be Fine, Mother
12. Monk'ish Dancesteps
13. Breathing

[1-6]: Musikloftet AS, Oslo, Norway, Vidar Lunden, January 7, 2023
[7-12]: Thor Neby Studio, Oslo, Norway, Thor Bjørn Neby, March 12, 2024

  さて、こうして聴いてみると、このアルバムは2つの異なるレコーディング・セッションによって構成されていて、M1.からM6.の最初のセッションは美しく深淵な世界から真摯にして美的世界が描かれるが、M7.からM12.の2番目のセッションは、より生々しく、よりアグレッシブにして動と静が入り乱れ二面性によって音楽が築かれる。この様には説得力があり、描くところ繊細にしてスリリングな曲展開に圧倒される。

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   M1. "Interpretations" ダールの言う"解釈"と言う意味だろうか、三者によるアルバム・タイトル曲で、それぞれが如何に進もうとするかと言う主張とガイドが示されているのか、メロディーよりそれぞれの響きと音が絡み合う。
 M2. "Morgonsang" 優しさの溢れる示唆に満ちたピアノの響き、M3. "Kristallkorall" さらに深遠な世界に真摯に流れ、M4. "The Golden Ratio"でべースが深く沈むが、ピアノは決して暗くならずに静かに語る
 そしてM5. "Vacker" どこか心にゆとりを持って明るく新鮮な世界広がる。そしてM6. "Open Window"にて、希望に満ちた豊かさを描かれ、ここまでで最初のセッションは締めくられる。

 続く後半次のセッションにM7. "Wind"が展開する。ここからはガラッと変わってアグレッシブな攻めの前衛的響きが展開。そしてM8. "Sound of the Waves"ここでは異様なほどの静粛空間が襲う。ベースが刻むところからピアノが呼応し、ドラムスのブラッシングの音が、更に不安に導く。
 M9. "Birds"で再び前衛的響きが不安に進行展開し、三者のアグレッシブなインプロの交錯が見事。
 M10. "The Art of Thinking" 描くところ美旋律は無く、響きによる一つのアートに描き上げる、M11. "All Will Be Fine, Mother"テンポはゆったりとなって疑問から一つの光明に歩み始める。
 M12. "Monk'ish Dancesteps"再び荒々しさが・・・そしてM13. "Breathing"の落ち着いた世界が築かれる。

 いずれにしても、この一枚のアルバムの中で作り上げる"動と静"と"美とスリリングな不安"の対比が、クラシック音楽の世界からアヴァンギャルドな因子の感じられるジャズの攻めとの展開に圧倒されて、あっという間に終わってしまう感覚になる。ホイヤーのドラミングは繊細にして刺激的、フランクのベースは深く心に響く、ダールの叙情的美とスリリングな前衛性の二面のピアノとのトリプル作用が、描くところ新鮮だ。相変わらずカーステン・ダールの音楽的芸術性の奥深さに堪能するアルバムであり、音楽の深さへの誘いでもある。

(評価)
□ 曲・演奏  :    90/100
□   録音    :    88/100

(試聴)

 *

 

 

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2022年1月25日 (火)

アレックス・リール Alex Riel ・Bo Stief・Carsten Dahl 「OUR SONGS」

アメリカン・ジャズをも飲み込んだ北欧浪漫派の老獪な決定打の登場だ

<Jazz>

Alex Riel ・Bo Stief・Carsten Dahl 「OUR SONGS」
STORYVILLE / Import / STORYVILLE 1014336 / 2021

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Carsten Dahl (piano)
Bo Stief (bass)
Alex Riel (drums)

Recorded On June 8&9, 2021

  デンマークの大御所アレックス・リール(1940年コペンハーゲン生まれ)のドラムス、同じくコペンハーゲン生れの大ヴェテランのボ・スティーフ(1946生まれ)のベース、そして中堅のピアノの人気者カーステン・ダール(1967年やはりコペンハーゲン生まれ)の連名による北欧(デンマーク)ピアノ・トリオ作品。

 アレックス・リールはもう80歳の大台に乗っているんですね、叙情派のビル・エヴァンスとの共演や、欧州ではエンリコ・ピエラヌンツィとの共演などと多くのキャリアのある彼だが、今回は地元の2人のお互い知り尽くしたメンバーでの聴き慣れたスタンダードとスウェーデンのホークソングなど交えての北欧ジャズを展開。特に若干若いのがダールだが、彼は今や最も革新的なピアノ奏者と言われ注目を浴びている。こんなトリオとなると我々から見ると見逃せないところだ。

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01. My Song (Keith Jarrett)
02. Høstdansen (Riel, Stief, Dahl)
03. Moon River (Henry Mancini)
04. Den Milde Dag Er Lys Og Lang (Carl Nielsen)
05. The Poet (Carsten Dahl)
06. Vem Kan Segla Forutan Vind (Trad.)
07. My Funny Valentine (Richard Rodgers)
08. Stella By Starlight (Victor Young)
09. Giant Steps (John Coltrane)
10. Jag Vet En Dejlig Rosa (Trad.)
11. Drømte Mig En Drøm (Trad.)

 "抒情的な王道ピアノトリオ作"と評されているが、まさにそんなところだ。そして情緒豊かな演奏と人生の回顧的な優しさが感じられる演奏、更に三者それぞれが自己の世界感の中で見事にトリオとしての役割を果たしていて、快感そのもの。

 オープニングは、旧くは私をピアノ・トリオ・ファンに誘導したキース・ジャレットが登場、曲はM1." My Song "で、あの記念すべき北欧オスロでの録音のヨーロピアン・カルテットですね、従ってこの曲を登場させるのが解ります。キースの優しさの再現に十分、3分46秒でフェードアウトしてしまうが、最低6、7分は聴きたかった。
 M2."Høstdansen"は、唯一の三者連名の曲、ここで取り敢えずトリオの顔見せ的な楽しさが伝わってくる。
 M3."Moon River " こんなところでHenry Manciniとは驚いたが、このアルバムのバラード演奏の優しさが開幕だ。
 M4."Den Milde Dag Er Lys Og Lang " 優美なピアノに惚れ惚れ。
 M5."The Poet" ダールの曲、ピアノの情緒豊かに対して勝るとも劣らないスティーフのベースも中盤では旋律を奏でる。
 M6."Vem Kan Segla Forutan Vind ", M10."Jag Vet En Dejlig Rosa", M11"Drømte Mig En Drøm" スウェーデン、デンマークのトラッドというかフォークソングが登場。なかなか郷愁があって日本人の私にも伝わってくるモノがある。彼らの一つのこのアルバムのテーマなんでしょうが、北欧の哀愁と深遠さと人間らしさが満ちている。
 スタンダードはアメリカン・ジャズが主力だが、M9."Giant Steps "のコルトレーンが、オリジナル世界を追うので無く、完全に北欧化してこんな叙情性が秘めていたのかと、ビックリ。こんなところがこのトリオの主張なのかも知れない。
 ダールがムードが盛り上がると、キースなみの声を発しているが、私的には無い方が良いが、ご愛敬か。

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 とにかく、ドラマーのトリオとはいえ、彼はステック、ブラシなどを繊細に使い分け、曲の盛り上げに集中して、景気の良いドラム・ソロ等は控えての北欧ジャズに徹している。しかしこのアルバムはやはり録音が非常に良く、どうしても主役になるピアノのクリアな音は当然だが、重厚なベース、ドラムスの音もクリアーに切れ味良く繊細な部分もしっかり中央寄りで聴きとれ、トリオ作品として素晴らしい。こうしたかってのピアノの音だけがメインというトリオ作品ではなく、三者が手にとるように聴けるというのは近年の録音の進歩だと大歓迎。

 現代北欧浪漫派ならではのちょっと内省的なところを匂わせての憂愁ある優美な世界や、スカンジナヴィアンの「民謡ジャズ」的情景を加味しての郷愁感を誘ってのアルバム作りはお見事で、アメリカン・スタンダードを北欧化してしまうリリシズムの表現に万歳だ。何と言ってもこの聴きやすさの世界は老獪そのもので万人向けに仕上げてあり、普遍的名盤が出現したと言っておきたい。

(評価)
□ 演奏  90/100
□ 録音  90/100

(試聴)

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2020年10月 1日 (木)

カーステン・ダール Carsten Dahl Trinity 「painting music」

哀愁と美と・・・そして先鋭的な世界と

<Jazz>

Carsten Dahl Trinity 「painting music」
ACT Music / 9891-2 / 2019

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Carsten Dahl (p)
Nils Bo Davidsen (b)
Stefan Pasborg (ds)

Recorded in 2019 at Rainbow Studio, Oslo

Carstendahl900  デンマークを代表するピアニストのカーステン・ダール(→)は、所謂ジャズの本道をゆくスウィンギーな演奏で結構人気があったのだが、私自身はユーロ系ジャズには、特にピアノトリオとなれば叙情性を描くところを求める事が多く、これまでのめり込むことが無かった。しかし先日紹介の寺島靖国のアルバム『For Jazz Audio Fans Only  Vol.13』に取上げられた曲"Sailing With No Wind"が魅力的で、昨年リリースされたこのアルバムを聴くことになったという経過。
  彼は1967年生れだから55歳ぐらいというところだろうか、もうミュージシャンとしてのキャリアも25年以上もあって丁度円熟したよい年齢だ。しかしその人生の過程において幼少期からメンタルな問題の多難な状況があったようで、次第に変化し現在は内面的な世界も描くようになってきているようである。そのあたりが私が注目することになった点であろう。
 又、絵画的才能も素晴らしく、このアルバムでもカバー・アート、そして作品を登場させている。

 

(Tracklist)

1.Sailing With No Wind (Dahl, Davidsen & Pasborg) (5:33)
2.All The Things You Are (Jerome Kern) (6:07)
3.Somewhere Over The Rainbow (Harold Arlen) (6:43)
4.Jeg gik mig ud en sommerdag (Danish folk song) (4:18)
5.Bluesy In Different Ways (Dahl, Davidsen & Pasborg) (4:11)
6.Solar (Miles Davis) (2:43)
7.Be My Love (Nicholas Brodszky) (8:22)
8.You And The Night And The Music (Arthur Schwartz) (5:08)
9.Blue In Green (Miles Davis) (4:48)
10.Autumn Leaves (Joseph Kosma) (6:30)

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 冒頭のM1."Sailing With No Wind"が私が興味を持った曲だが、彼のピアノの響きに叙情性ある哀愁感も感じられる演奏が魅力がある。とにかく優しさの溢ふるる美旋律が留めなく流れる。どこかキース・ジャレットを思い起こすような展開をみせて、なんと彼のうなりというよりはむしろ歌に近い声も入ってくる。
 M2."All The Things You Are "は本領発揮のピアノの先鋭的なタッチにベース、ドラムスも踊る。
 なんと聴き慣れたM3."Somewhere Over The Rainbow "も登場、どこかしっとりとしかも思索的に流れるのにビックリ。
 M4."Jeg gik mig ud en sommerdag "はデンマークのフォークソング、これが又美しい。
   この他の曲はスタンダードのオンパレードで楽しませる。
 M6."Solar"のようにアップテンポで演じきるところもある。 
 M7."Be My Love"も、美しさと優しさとがピアノからベースにとやりとりし行くところが感動的。
 M8."You And The Night And The Music "がここまで超高速プレイで演じられるのも聴きどころ。
 M9."Blue In Green"これも良いのだが、ダールの歌は要らない。
 M10."Autumn Leaves"これが"枯葉"かと・・・思うところが凄い。ここまで攻撃とも言える編曲とインプロヴィゼーション演ずるのも珍しいが、それが又様になっていて、彼らの本質がここにありと言わんばかりである。シンバルが刺激的に響き速攻演奏でバトルを演ずるピアノとベース。まさに驚きの一曲。

 とにかくここに聴くカーステン・ダールのプレイは、これぞプロという世界。キース・ジャレットの世界にも一脈通ずるところがあると感ずるが、ヨーロッパ的叙情性と思索世界も見せながらの攻撃的な速攻演奏との微妙なバランスの素晴らしいアルバムだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   95/100
□ 録音         90/100

(視聴)

 

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